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seed-destiny第04話

Last-modified: 2008-12-31 (水) 17:32:30

第4話 始動…悪魔の姫

 

「…なぜ、私が…目の前に…」

 

 拳銃を片手で握ったまま頭を抑えるもう1人のステラに、ステラは相手の動きを、見ていた。
自分にも強い頭痛がするが、我慢だ。もう1人のステラが頭痛で一瞬、体が揺らいだとき、ステラはしゃがみながら、ナイフを投げる。
それはもう1人のステラの肩に命中。それと同時に放った銃弾は、ステラの頬を掠った。
 その場で倒れるステラは、それもなお銃を拾おうと手を伸ばすが、それをステラは蹴って相手を無力化させる。
自分の姿をしたものを睨みつけるもう1人のステラ…。

 

「あなたは…誰?どうして、ステラと同じ姿をしているの?」
「それは、こっちの台詞だ!くぅ……なんで、私が……」

 

 痛みに耐えながら、声を出すもう1人のステラ…。その苦痛に満ちた表情は、かつての自分自身を思い出させた。

 

「…どうして、あなたは闘っているの?」
「私は、ネオのために…ネオが、人質にとられているから、それを守るために…」

 

 偽りの記憶…、ネオはもういない。彼女は偽りの記憶の中、いもしないもののために、戦い続けるのか…。

 

「だから、お前なんかに私は、私はああああ!!」

 

 絶叫しながら、立ち上がろうとするステラの身体に覆いかぶさり、もう1人のステラを押さえつけるステラ…。

 

「離せ!お前なんか、お前なんか……」
「……」

 

 シンを守るためには、彼女を殺さなくてはいけない。敵となるから…。
だけど、自分で自分は殺せない。そのとき、頭上から何かが落ちてくる。それはMSの足だ。
切られた部分が落ちてきたのだろう。ステラは、咄嗟に危険を察知し、頭痛で危険がわからない、
もう1人の自分の手を引っ張って、その場から離れる。
 危うく、潰されるところだった…。
そんな安心した顔をするステラを、もう1人のステラは、苦痛の表情を浮かべながらも、
ステラの身体を押さえつけ、草原に倒しながら、彼女を見る。

 

「なぜだ!なぜ、私を助けた?」
「…危なかったから」
「何を言っている!私は敵だぞ!」

 

 ステラの表情は恐怖も何も無い、ただ笑顔を向けて

 

「シンは、敵だったステラを助けてくれたから…。だからステラも、あなたを助けた」

 

 さも、当然のことをしたような言い方をするステラに、なぜ、この女はこんなに自分とは違うのかという疑問が頭に浮かぶ。
彼女は自分と違って笑っていられる。
どうして…?

 

「…変な奴だ。私は、あなたを殺すかもしれないのに」

 

 押さえつけていた力が緩む。目の前の自分を見ながら、羨望と嫉妬が入り混じる。

 

「ステラがステラを殺すの?」
「うぅ…」

 

 頭の中が混乱する。
目の前にいる自分自身の言葉が頭の中で響きわたる。
そのまま、もう1人のステラは頭の痛みから意識を失った。

 

次にもう1人のステラが目を覚ましたとき、そこはどこか建物の中のようだった。
おぼろげな視界の中で、目を覚ましたステラ。
その視界に入り込んでくる自分自身。
笑顔を向けてくるその顔は、自分には出来ないものだ。

 

「ここは…?」
「ミネルバの中」

 

 身体を起こそうとするもう1人の自分の身体を押さえるステラ。首を横に振って…

#br
「ダメ。先生が動いちゃダメだって」
「……なんで、お前は私のためにここまでしてくれるの?」
「あなたが、昔のステラに見えるから…」
「昔の…私?」

 

 ブルーコスモスにて兵器として使われていた自分。
それらすべてを覚えているわけではない。ただ、大切な記憶を失っていくことに対する絶望だけは残っていた。
次に目を覚ましたときは、まったく別の自分になっている。
それに対する恐怖と供に諦めに似たものも、ステラの心の中には溜まっていって…
やがて兵器として自分は存在していると感じ始めるにまでいたった。

 

「目が覚めたようだな」

 

 レイやルナマリアたちが部屋に入ってくる。シンは、嬉しそうな、それでいて少し哀しそうな表情を向ける。

 

「うぅぅ…わ、私を、どうするつもりだ……」

 

 頭を押さえながら、周りの人間達に敵意を向けた視線を送る。
そんな複製されたステラを心配そうに見つめるステラ。

 

「俺達は、お前をどうこうするつもりはない。捕虜として他の敵兵士と変わらずに取り扱うことになるだろう」

 

 レイの言葉を聞いているのか聞いていないのか、複製されたステラは苦しそうな表情を浮かべ続けている。

 

「シン、この子は私が見ているから…いって」
「でも、ステラ。ずっと見ているんでしょう?変わるから、休みなさい」

 

 ルナマリアの言葉を聞いてもステラは首を横に振る。先ほどからずっとこの調子だ。
頑固として彼女から離れようとしない。
仕方なく、ステラを置いて、三人は部屋に戻る。
いちおう看護兵がつくから無理はしないだろうが…。

 

「…苦しい?」

 

 額の汗をタオルで拭き取るステラ。
 必死に看護するステラ…、こんな自分をシンは救ってくれた。
今度は自分が誰かにそれをしてあげる番…。

 

「はぁ、はぁ……み、水」
「今、持って来る…」

 

 ステラは立ち上がり部屋を出て、水を汲んで戻ってくる。
すると、先ほど部屋を出て行ったシンたちが話をしていた。

 

「くそ!何も出来ないのか!!」

 

 シンは壁に拳を当てて搾り出すように声をあげる。
ステラは、その声に驚きながらも、壁越しに話しを黙って聞く。

 

「強化人間であり、複製である以上、相当な無理をさせている可能性がある。
検出された薬物量から見ても、致死量に近いものだ。敵施設にあるだろう薬品で効力を抑えられればいいんだが…」

 

 レイは自分自身のことも踏まえて話す。その言葉はステラにとっては辛いものだった。
複製は、そもそも、今現在の年齢の状態の複製を1から造ることにある。
よって、その分、複製は寿命が少ないのだ。
さらには、身体的強化、記憶処置も行なわれている。
薬が施設にあっても……。

 

「……前、ステラをブルーコスモスにシンたちが返したように?」

 

 ルナマリアがシンたちに聞く。
それはステラのガイアを撃墜した際に一時期、ミネルバで保護したことがあったのだ。
だが、それは結果的に、ミネルバでは保護しきれないという結論に至り、ブルーコスモスに返したのである。

 

「だが、それが必ずやいい結果になるとは限らない。ネオは、返したステラを戦場に再びだしたから…」

 

 ベルリン決戦でのことだ。暴走したステラをデストロイに乗せて戦いに放り出した。
もし、あのとき、ゼロが助けなくては…ステラはフリーダムによりやられていただろう。
既に、ステラはそこにはいなかった。

 

「…どこに連れて行く?」
「あんたを助けたい……」

 

 額に汗をかく、弱ったもう1人の自分自身を背負いながら、格納庫に向かう。
あたりは次の作戦に備えて、修理を行なっているが、損傷の激しいステラの機体は後回しにされていた。
そんな中、ステラはバレないように自分の機体にと向かう。
改修されてはいるが、まだ修理は完全ではない自分の機体に、
他の機体の修理に目が向いている作業員達の目を盗んで乗り込む。

 

「…基地に行く気か、殺されるよ……」

 

 気弱な声でつぶやく複製されたステラを、自分の膝に乗せるようにしてステラは、操縦桿を握る。
その操縦桿を握った手を掴むもう1人の自分。

 

「やめて。なんでそこまで私に尽くす?お前は…私にとって邪魔者のはずだ…」
「邪魔なんかじゃない!!」

 

 ステラは大きな声で、コクピットいっぱいに叫ぶ。

 

「…ステラ、あなたを失いたくない。」

 

 そういって、ステラは膝に座っている自分自身の背中に額を当てて、操縦桿から手を離し、ぎゅっと抱きしめる。
 かつて、自分が助けられたように…、今度は彼女を助けたい。
同じ傷を負う自分自身を。
それが、罪滅ぼしになるような気がしたから…。
たまにでてくる、自分が殺した人たちのうめき声。
シンたちには言わないけど、悪夢で目を覚ますことが何度もあった。
 そういった気持ちをわかってくれる人も欲しかった…、自分のことを一番にわかってくれるのは自分だから。

 

「知らないぞ、どうなっても……」

 

 複製されたステラは、始めて他人にこうやって抱きしめられたぬくもりを感じ、凍っていた心が、少しだけ解けた感じがした。
だが、頭痛や身体からの激痛や気持ち悪さは変わらない。

 

―――

 

『格納庫!ガイア、勝手に出撃します!』
「なんですって!すぐに、止めて!」
『無理です、出撃します!』

 

 タリアは、突然、飛び出したステラの行動、その意図はなんとなく読めていた。
そう、かつてシンとレイが同じように飛び出したことがあったからだ。

 

「追います。シンたちにも連絡して至急、追わせて!」
「はい!」

 

 メイリンは、艦内放送をかける。

 

―――

 

 基地施設では、防衛ラインを突破した警報が鳴っていた。
 その警報音を聞きながら、プロフェッサーの傍でたっていた男は、歩き出す。

 

「いいのかい?折角の、姫様のお目覚めが見れなくなっちゃうけど?」

 

 その言葉で足を止める、男。

 

「まさか、もう…」

 

 頷くプロフェッサーは、前の窓ガラスの向こう…水槽の中、水が抜けていく様子が映る。
青白い光の中、水槽の容器がゆっくりと開く。

 

「さぁ、キラ・ヤマト君。君が待ち求めていた歌姫のお目覚めだよ」

 

 青白い光に照らされるキラは、ガラスの向こうの部屋に、入っていく。
 プロフェサーはそれを眺めながら、微笑む。

#br
「ラクス!ラクス、しっかりして…」

 

 容器の中にいる、ラクスに声をかけるキラ。
その声でラクスはゆっくりと目を開ける。

 

「とうとう…蘇って……」

 

 目を開けるラクスの瞳が赤く輝く。

 

「……命令を」

 

 ラクスはキラの後ろ、プロフェッサーを見て、そうつぶやいた。