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seed-destiny第05話

Last-modified: 2008-12-31 (水) 19:13:44

第5話 悪夢…絶望の協奏曲

 

「マスター命令を」

 

 遺伝子改良を受けたラクスは、キラを無視して最初にそう告げた。
 キラは、一瞬何を言っているのかわからないでいた。
 ラクスはキラを通り過ぎて、前に置かれてある服を着る。

 

「…どういうことなんだ、これは…」

 

 キラはプロフェッサーのほうを見る。プロフェッサーは、にやけた表情で笑っている。

 

「ボクは、復活は約束したけど、君の望むラクス・クラインを助けるとは約束していないよ?」
「あなたっていう人は!」

 

 銃を抜き取り、プロフェッサーに向けるキラ。
 プロフェッサーは、そんなキラに対してもなんら怖気づくことなく笑っている。

 

「アハハハハ、すっごく怒っているね?僕の脳天に銃弾を撃ちこみたい、いや…それよりも手足を撃ち抜いて動きを封じてから嬲ってやろうか…。
 なるほどね〜、偽善者として名高い、キラ・ヤマトも、感情は押し殺せないようだ。面白い、面白い」

 

 そういって拍手をするプロフェッサー。
 キラは、自分の心をものの見事に読み取る、プロフェッサーに驚きと恐怖を抱いていた。

 

「実はね〜ぇ、ボクも、ラクス・クラインや、ゼロ…ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと同じく、ギアスユーザーなんだよ」

 

 サングラスに手をかけて、その目を見せるプロフェッサー…。
 そこには赤く輝く目がある。
 キラは、その目を見て呆然とする。

 

「はじめまして、ボクの本当の名前は、マオ。ギアス能力は、相手の心を読めること。本当の目的は、この世界に、改めてルルーシュやC.C.を呼び寄せること。フフフ…、前は、すれ違いでね〜…会えなかったんだよ〜、愛するC.C.を僕の手に取り戻したいのに」

 

 マオは、高らかに笑い声をあげながら、手をたたき拍手する。

 

「そんな……。それじゃー、あの計画は!?新たな人類を生み出すとか言っていたことは…あれも全部作り話だって言うのかい?この技術だって…」

 

 キラは、マオの言っていることが信じられない。
 これだけのことをたった一人で行なえたというのか。

 

「この計画自体は、本物のプロフェッサーが発案し、実行しようとしていたみたいだけどね〜。
 そのまんま、ボクが引き継ぐことにしたのさ。本物のプロフェッサーはどうにも、役者として不十分でね〜。
 人類の救済なんていうもんだから…、それじゃ〜ルルーシュたちはこない。
 もっとこの世界を絶望的な状況に持ち込まないと…」

 

 この男は、世界のことも人間のことも何も考えていない。
 ただ、己の目的のために、すべてを利用しようとしているのか。
 キラは、マオに殺意を抱いたが、それもそのまま、マオに伝わる。
 心が読まれることは、冷静であれ感情的であれ、一番厄介だ。

 

「君のやるべきことは、変わらない。僕の創生した兵器のために、この世界の人間を駆逐する。
 そうすれば…C.C.がやってくる。ルルーシュも…そのときこそ、ボクが殺してやるから〜ぁ…フフフ、アハハハハハハ…」

 

 ゲラゲラ笑いながら、キラに命令するマオ。
 キラの隣にいた複製されたラクスは、キラを通り過ぎて格納庫にと向かう。
 キラは、ラクスを止めようと肩を掴む。だが、次の瞬間、キラの身体は宙を舞っていた。
 様々な遺伝子をかけ合わせられ造られた存在。それは操縦技術だけではない。
 身体能力もかなりの強化を受けている。床に叩きつけられるキラ。

 

「すごい、すごいよ〜〜。アハハハ。さぁ〜君は向かってくるだろう、ミネルバを纏めて撃墜するんだ!
 そして次は地球全部、そして残ったプラントも纏めて潰してやるんだぁ!」
「…」

 

 キラは手を伸ばし、その自分のことを優しく受け入れてくれた存在を掴もうとするが、それは遠のいていく。
 そして、そのまま意識を失った。
 マオは、画面を見て、接近するミネルバと出撃したMS部隊。
 そしてこの基地施設に来るガイアを見つめる。
 どれもこれも、造り上げた強化人間の実験体として丁度いい。
 ギアスにより、自分の口を封じて、C.C.を惑わし、自分を殺させたルルーシュは許せない。
 だからこそ…ここで始末をつけなくてはいけないのだ。
 そのためのこれは第一歩。

 

―――

 
 

「くる…」

 

 額に汗を流しながら、複製されたステラは、ステラの膝の上に乗せられたまま、虚ろな目でレーダーを見る。
 そこに映る、敵。

 

「突破するから、捕まっていて」
「…無茶をする」

 

 ステラは、空からのライフル攻撃に対して、それを地上で回避しながらまっすぐ施設に向かっていく。
 近くをライフルが命中したときに、大きく揺れる機体。

 

「「ぐっ…」」

 

 いつの間にか、複製されたステラもステラと同じく操縦桿を握っていた。
 自分に対する思いに、感情が動かされ始めていたのだ。
 それは、かつてステラがC.C.に精神の呪縛を解かれた様に…。
 握られる手は温かい…ステラは、自分自身と重なった手を感じながら、
 目の前にいる自分自身を絶対に守りたいという子持ちがますます強くなる。

 

「このまま、施設までいくよ」
「うん」

 

 追撃をかけようとする、二機のストワイクノワールだが、
 そのノワールに対して攻撃を仕掛けるディスティニー、レジェンド、インパルス。

 

「シン!ステラを追え、俺達はこの二機を…」
「わかった。やられるなよ!」
「いいから、早く捕まえてきなさい…」

 

 レイとルナマリアの言葉を受けて、シンは、視界に見えていた基地の施設を見る。
 タリアからは、あくまでステラたちの確保が優先であり、敵に対する攻撃は控えるよう指示されていたが…。
 ミネルバから、研究施設を拡大してみるタリア。
 敵勢力の排除は目的とされていたが、基地施設の排除は項目として作戦指令書には挙げられていない。
 おそらく、それはあの施設…複製技術があるだろう施設を、自らのものとしたいと考えている、上層部による指示だろう。
 あれが利用されれば、それは結果的に今回の事件と同じことが行なわれるだけだ。
 タリアは、考えるに値しなかった。施設を守れという命令はされていない。
 ならば、敵勢力の排除と供に、施設を破壊しても問題は無い。
 いや、あったとしても言い訳は通る。

 

「…アーサー、タンホイザーの準備をしておいて」
「まさか…わ、わかりました」

 

 タリアは、覚悟を決めていた。これ以上の犠牲者は出してはいけないという気持ちを。
 デュランダル…議長だって、こんなことのために、私達に未来を託したわけではないのだから。

 ガイアは敵基地施設でとまり、コクピットを開いて、複製されたステラを背負いながらステラは降り立つ。
 そして、そのまま基地施設にと入っていく。

 

「場所を教えて…」
「研究施設は、エレベーターで移動する。暗号番号は…CC」

 

 研究所のエレベーターの前でステラは拳銃を抜き取り、ひとつを自分。
 もう1つはもう1人の自分に渡す。
 ステラの当たり前の行動に、複製されたステラは、彼女に対する敵意はもうなくなっていた。
 光がのぼってきて…そのエレベーターに、乗り込む2人。
 エレベーターは、そのまま研究施設のある地下にと向かっていく。

 

―――

 

 ディスティニーを操るシンは、研究施設の真上に来ていた。
 おそらくここにステラが、置かれてあるガイアを見て、シンは機体を降りて、向かおうとしたが、
 基地施設の中から何かが出てくる。
 新型!?シンは、サーベルを構え、出てくる機体に備える。
 コクピットでは、幾多の光に囲まれている複製されたラクスの姿がある。
 その瞳に光はない。
 完全な戦闘マシーンとかしている。そして彼女の乗ったMSが姿を現す。

 

「なんだ、あの機体は?」

 

 シンはデータをミネルバに送り、今までの機体と照合するが、該当機体はない。
 肩に丸い円を持っている白い機体…MSスターゲイザーである。
 まったく既存のMSとはコンセプトの異なった機体に戸惑うシン。
 操縦席には、複製として蘇り、様々な人間の遺伝子を組み合わせて作られた、もはやラクスとは呼べない強化人間がいる。

 

「…目標を排除します」

 

 肩の円形の部分から、こちらに向かって伸びてくる円形をビームサーベル。
 その、突然の攻撃に、シンは回避もままならず、直撃する。
 ディスティニーは、空中から、地上にと落ちていく。
 なんとか体勢を整え、着地するシン。
 相手はコクピットを直接狙ってきている。
 ディスティニーの装甲と、反射神経で直前になんとかシールドで防いだからよかったものも…
 まともに食らえば…。

 

「こいつ!!」

 

 シンは、ライフルを撃ち込む。
 スターゲイザーはそれを易々と回避しながら、こっちに撃ちかえしてくる。
 シンはディスティニーを操り、地面を這いまわるように動いていく。
 スターゲイザーは、そんなシンを追い回す。
 ライフルは的確に、シンの機体を狙ってくる。
 シンはサーベルを握り、敵に向かう。このまま防いでいては、やがてやられる。
 ならば、攻めにかけるしかない。

 

「こいつぅぅぅ!!」

 

 サーベルでスターゲイザーを狙うシン。
 例の両肩につく円形のサーベルがこちらに向かって伸びてくる。
 サーベルで防ぐが、弾き飛ばされる。再び地面にひっくり返るシン。

 

「うわああああ!!」

 

 そんな地面に倒れているディスティニーにライフルを撃ち込むスターゲイザー。
 それは、肩を貫通し、動きを封じる。
 そして、スターゲイザーはさらに、ディスティニーの両足までも、ライフルで撃ち破壊する。

 

「ぐわあああああ!!」

 

 操縦桿を必死に動かすシンだが、機体が言うことを効かない。
 スターゲイザーに乗る、禍々しいオーラを放つ存在は、口元に笑みを浮かべる。

 

―――

 

 ステラは研究施設に潜り込んでいた。
 背負っている、もう1人の自分自身の熱い息が、彼女の辛さ、苦しみを感じさせる。
 少しでも彼女の気持ちを楽にさせたい。自分もかつては体験した苦しみ。
 1人なら辛いけど、2人なら…耐えることができるはずだから。

 

「…そ、そこの部屋にはいれば…」

 

 ステラは、その言葉を聞いて、部屋の中に入る。
 その部屋は、青白い光に照らされている施設。部屋は大きなガラスで仕切られており、ガラスの向こう側には、幾つもの水槽が置かれている。
 ステラは、それらを眺めることなく、薬が多数置かれてある場所に辿り着く。
 ステラは、苦しむ複製の自分自身を、その部屋のイスに座らせる。

 

「…この薬」

 

 大きく息を吐くもう1人のステラは、置かれてある薬の錠剤を握ると、それを幾つか飲み込む。
 そうすると、大きく息を吐いて、目を閉じる。

 

「ねぇ…ねぇ?」

 

 ステラが不安そうに、もう1人の自分自身の身体を揺する。
 その言葉にゆっくりと目を開けたステラは、自分自身を眺め

 

「……安心して。少し…疲れただけだから」
「うん!よかった…、本当に、よかった」

 

 ステラは目に涙を浮かべて、そのもう1人の自分を優しく抱きしめる。
 そのぬくもりを強く感じながら、複製されたステラは、ステラを見つめる。

 

「…あなたのように、私…なれるかな?」
「なれるよ。一緒にいれば、絶対!」

 

 複製されたステラは、ステラの背後にある水槽を見る。
 あそこには、まだまだ、山のように、自分と同じようなものが存在している。
 あんなものを世に出せば、このステラに迷惑がかかる。
 それだけは…イヤだ。これだけ自分を想ってくれた彼女を…傷つけたくない。

 

「…お願いがあるの。あそこにある、水槽の電源を切ってほしい」

 

 複製されたステラは、指を差す。それはこの施設のブレーカーにもなっている。
 ステラはいっている意味がよくわからなかったが、それでも、彼女のために頷いてブレーカーに向かう。
 ブレーカーにはたくさんのスイッチがついているが…これを全部壊せばいいということか。
 ステラは拳銃を抜き取り、かまえる。

 

「は〜い、そこまで!」

 

 振り返るステラ。
 そこには、耳にイヤホンをつけ、サングラスをかけた白髪の長身の男がたっていた。

 

「ここまで来たことは立派だったけど…、残念だったね〜。
 まだまだ、ここにある人形達には頑張ってもらわなきゃいけないのさ〜」
「…なにをするつもりなの?」
「決まっているじゃないか、これで世界を破壊するのさ〜新たな戦争だよ。
 そうすれば、この世界は危機が訪れる。そのとき、C.C.は再びボクの前に姿を現すのさ〜〜」

 

 ステラには、この男が何を言っているか分からない。
 だけど、わかることはある。
 この男は敵であるということ。
 ステラは銃を身構える。

 

「アハハハ〜、さすがは元々が暗殺集団だけあるね。
 脳天、お腹…狙う場所は全て急所ってことなのかな?」

 

 マオは、笑いながら、ステラの想っていることを次々と言い当てていく。

 

「よっぽど、君の複製の事が大事みたいだね〜、好きという感情…ククク、アハハハハハ〜。
 とんでもない自己愛性格者だ。まったく、これだからブルーコスモスの強化人間は…」

 

 ステラの拳銃が鳴る。それをマオは軽々と避ける。
 心が読めるマオにとっては、相手の動きが手に取るようにわかるのである。
 ステラの目は、いつしか、以前のブルーコスモスにいたときの暗殺者のときに戻り始めていた。
 それが彼女の感情を冷静にしていく。
 だが、それこそ思う壺。冷静であればあるほど、動きが読まれていく。
 かつてのルルーシュがそうであったように。

 

「…時間は余り無いよ。ここのものたちが目覚めれば、それこそ、世界は変わる、
 ボクのC.C.が迎えに来てくれるのさぁ〜〜、アハハハハ〜〜」