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seed-destiny第07話

Last-modified: 2009-01-04 (日) 02:09:17

最終話 未来…託された世界

 

「…」

 

 緑色の髪の女が一枚の絵を眺めていた。
 彼女が立つのは、様々な絵が並ぶ白い空間。
 女は、絵から視線をそらす。
 そこに映し出されていたのは、マオの姿である。
 恐怖と絶望の表情を浮かべながら、こっちを見つめ、手を伸ばすようにして、絵画にとどまり続けている。
 女は、マオを避けるようにして、その絵から視線を外し、歩き始める。
 様々な絵が飾られたその道、光の先にいるものたちに向かって……。

 

▲▽▲

 

「奴を仕留めるには…これしかない」

 

 寒空の下で、激闘繰り広げ続けるシンは、レイとキラがスターゲイザーと戦う姿を眺めながら、ルナマリアに告げる。
 スターゲイザーは、相手が二機にも関わらず、そのパイロットの技量の高さも相まって、負けておらず、さらにいえば…。

 

「くぅぅぅ!!」
「バカなっ!?最新鋭機を圧倒しているというのか!」

 

 レイは悔しそうにコクピットをたたき怒鳴る。
 スターゲイザーは、円状のサーベルを伸ばし、二機を近づけさせない。
 あのスターゲイザーを野放しにするわけにはいかない。
 大量の核爆弾を搭載している、あの機体は一機でも、地球圏の環境を激変させる能力を持っている。

 

「ルナ…頼めるか」
「いいわよ。それしか手がなさそうだし…」

 

 ルナは、やれやれといった形で、頷いてシンのディスティニーの肩を支えながら立ち上がる。
 ディスティニーは、両足の機能を麻痺させており、インパルスに支えられている。

 

『両機、聞こえる?』

 

 ルナマリアの言葉に答えるレイとキラ・ヤマト。
 そのルナマリアの提案を聞いた2人は…。

 

「わかった。ディスティニーのパイロットにかけるよ」
「…シン、決めろよ」

 

 2人の言葉にシンは頷く。

 

「邪魔だ」

 

 スターゲイザーが一気に殲滅しようと、核爆弾を再び出そうとする。
 レイとノワールのエネルギー残量も少ない。よって攻撃に関しては、これが最後となる。二度目は無い。

 

「いくぞ!!」

 

 ルナマリアのインパルスがディスティニーを担ぎながら、ディスティニーのブースターも合わせて全開にして飛翔する。
 それを見たスターゲイザーはハエを叩き落すかのごとく、ライフルを構え、撃つ。
 ルナマリアは、それをシールドで防ぎながらなおも上っていく。
 さらには、左右両方向から、スターゲイザーに向かってノワールとレジェンドが切りかかる。
 スターゲイザーの両翼から、円形のサーベルが、両者に伸びる。受け止める二機。

 

「いまだ!シン!飛べ!!」

 

 レイの声に合わせて、シンのディスティニーを上に、押し出すルナマリアのインパルス。
 加速をつけて、スターゲイザーに突っ込む。衝撃が、両者に襲い掛かる。
 始めてはいった、敵との近距離。

 

「全身の部分を破壊した…、お前には何も出来ない」

 

 まるで機械のような口調…、これが遺伝子で造り上げられた強化人間。
 シンは、そう思いながらも、操縦桿を握り締めた。

 

「まだ俺には、これが残っている!!」

 

 シンが繰り出した唯一の腕でスターゲイザーの頭部を掴むディスティニー。

 

「!?」

 

 腕の内部からの強力なエネルギーの反応に、驚くスターゲイザー…。
 だが、気づいたときにはもう遅い。シンは操縦桿の端をあけ、そこにあるスイッチを押す。

 

「輻射波動!!」

 

 沸騰するように、期待の内部に送り込む衝撃波。
 みるみる、機体はふくらみ、機体内部から破壊されていく。
 コクピットにいる、作り出されたラクス・クラインの容姿をした強化人間もまた、その強力な衝撃波に頭を抱える。
 遺伝子による無理矢理な強化は、その圧力で、人間の構造バランスを崩す。
 悲鳴をあげながら血を溢れさせる。

 

「シン!!」

 

 エネルギーを使い果たした、シンのディスティニーはそのまま、スターゲイザーから離れ、落ちていく。
 それをキャッチするルナマリア。
 それと同時に、スターゲイザーは身体のあちこちから爆発を起こし、空中で爆散する。

 

「…やったわね、シン」
「俺だけのおかげじゃない。レイ、ルナ……そして、今回は、あいつも」

 

 心の底から喜ぶようなことはしないシン。
 キラは、爆発するスターゲイザーを眺めながら、残り僅かなエネルギーの中で、レイたちに背中を見せる。

 

「これからどうするつもりだ?」

 

 レイは、ノワールを見て聞く。

 

「……僕は、ラクスの求めていた世界を守るつもりだ。
 今の作られたラクス・クラインが、彼女の求めた世界かどうかを見極めたい、そして…俺は、ラクスを利用したものを叩く」

 

 そういうと、キラは、ノワールを基地施設に向ける。ライフルを向けるキラ。
 残ったエネルギーで、基地施設を破壊するつもりだ。
 だが、そのとき、大きく基地が轟音を響かせて爆発する。

 

「なんだ!?」
「自爆した…」

 

 炎の柱が立ち上る中、シンたちは驚きの表情を見せていた。
 そこを走る影…、それは、ステラの機体である。シンはそれを見つけて叫ぶ。

 

「ステラ!」

 

 シンの声に、レイは頷き追う。
 ルナマリアもまたシンのディスティニーを抱えて、ステラを追う。
 残ったキラ・ヤマトは自分を利用したものの最後を見ながら、飛び去っていく。
 キラが離れていく様子を確認するレイ。
 レイは、キラを追う事はしなかった。感情を押し殺し、任務に従った結果である。
 これが正しい結果だったのかはわからない。だが1つはっきりといえる。
 自分たちは戦いに勝った。異邦人の力を借りず、自分たちの手で未来を守った。
 これは、価値ある、大きな勝利なのだ。

 

▲▽▲

 

 ステラのMSが止まった場所は、湖だった。
 いつしか、空は灰色の雲に覆われて白い雪が降り出し始めていた。
 下がっていく気温の中で、ステラは、亡骸である彼女の分身を、湖の前においていた。
 ステラは彼女のもう二度と動かない身体を見つめながら、思い出していた。
 今までのことを。本来ならば、これからもっといろいろな世界を見ていくはずだった。
 自分が感じたものを一緒に共有できるはずだった。
 彼女は、このまま眠る。
 誰の手も届かないところで、誰にも邪魔されることなく深い水のそこで。
 もし、自分だったら…どうして欲しいかを考えて至った結論。

 

「……ステラ」

 

 振り返るステラの前にいたのは、シンやルナマリア、レイたちの姿だった。
 シンは、ステラの前に横たわるもう1人のステラを眺めていた。
 何があったかははっきとはわからない。だが、現実はこうして横たわっている。
 すべてが上手く行くわけじゃない。
 もし、ルルーシュが、ベルリンでステラを助けなければ、こうなっていたのは今のステラのほうかもしれないのだから。

 

「戦うこと……本当は好きじゃなかった。みんなと一緒にいたいって…言ってた」
「あぁ。わかっていたよ」
「ステラ、忘れない。絶対に……」

 

 ステラは強い口調で、そう告げる。
 レイは目を閉じ、その言葉を聞き続ける。
 強化人間と、複製された存在。やはり、それは悲劇を生み出すもの。
 自分やステラは、その中でも恵まれた存在なのだろう。こういったものたちを二度と生み出してはいけない。
 レイは、心に刻み込む。

 

「……もう、誰も苦しめない。誰も虐めない……」

 

 ステラは、亡骸を湖の中に沈めていく。
 ゆっくりと沈んでいく亡骸。
 本当は、傍においておきたかった…離れたくなどなかった。
 だけど、彼女は、研究施設にて最後にステラと約束をした。

 

▲▽▲

 
 

「…いやぁ、いやぁあぁぁ!!」

 

 大声で施設中に響くように叫ぶステラ。
 そんなステラの頬に手をあてたもう1人のステラは、眠そう目を必死にあけるような少女のように、優しい表情だった。

 

「私は、あなたとずっと一緒にいる。あなたが笑えば、私も一緒に笑う。あなたが哀しめば、私も一緒に哀しむ…」
「…そんなこと、出来ない。ステラがいなきゃ、一緒にいてくれなきゃ出来ない!!」

 

 感情的になるステラを見つめ、首を横に振るもう1人のステラ。

 

「鏡を覗いて見て。そこに、私はいるから…」
「かがみ?」
「…そう、私はあなたの虚像、だから…。話せなくなっても…一緒にいるよ、ずっと」
「約束?」
「うん、約束…」

 

 2人は小指を重ねる。
 互いに向けて、微笑む2人……。
 そして、彼女は眠るように目を閉じた。

 

 雪の降る中、沈んでいく彼女との約束。
 そう、彼女を忘れなければ、彼女は自分と供に存在する。
 誰かが覚えていれば、その人間がこの世界に生きていた証はあり続ける。
 だからステラは忘れない。
 もう二度と。自分と出会った人たちは…みんな、全員。
 海の中に消えていくものを最後まで見届けながら、ステラはお守りである、首にかけられた起動キーを握りしめ続ける。

 

 スイスにおける戦いは、ザフト上層部に伝令された後、戦いはなかったこととして抹消されることになる。
 火種を大きくすれば、自分たちの身も危ないと判断したためであり、素早い切り捨てだろう。
 複製技術を利用しようとしていたザフト上層部の目論見を潰したミネルバに対しても、これにより大きなペナルティーは科せられることもなかった。
 こういった科学技術の叛乱は、おそらくどこの世界でも起きることだろう。
 今回は、上手く止めることはできたが、また起きない保証はない。
 ミネルバは今後もこのようなことが起きないよう、世界の平和、未来を守るために動き続ける。
 

 

▲▽▲

 
 

 ミネルバのステラの部屋にある鏡。スイスでの戦いの後、ステラが自分で購入したものである。
 苦しいこと、楽しいことがあったときは、すぐに報告するようにしている。
 答えてくれないけど、でも、きっとそこにいる人は聞いてくれているから。

 

「…ステラ、行くぞ?」

 

 部屋の外からシンの声が聞こえる。
 ステラは、返事をして部屋から出て行く。
 今も、ステラは戦いを続けている。
 先の、苦しいことがあっても
 ルルーシュたちが造り上げて、そして受け継いだ未来を守るという意志
 そして…未来を生きることが出来なかったものたちから託された世界を守るために…。