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sin-kira_シンinキラ_第12話

Last-modified: 2011-12-10 (土) 23:33:17

◇◇◇

 
 

もうここで粘るのも限界だった。本艦は一刻も早く味方の勢力地へと入り、アラスカ本部と連絡を付けなければいけない。予想外に補給も出来たことだし……

 

「この辺りは、廃坑の空洞だらけだ。こっちには俺達が仕掛けた地雷原がある。戦場にしようってんならこの辺だろう。向こうもそう考えてくるだろうし。せっかく仕掛けた地雷を使わねぇって手はねぇ」
「本当にそれでいいのか?俺達はともかく、あんたらの装備じゃぁ被害はかなり出るぞ」
「虎に従い、奴の下で、奴等のために働けば、確かに俺達にも平穏な暮らしは約束されるんだろうよ。バナディーヤのようにな」
「女達からはそうしようって声も聞こえる。だが、支配者の手はきまぐれだ。何百年、俺達の一族がそれに泣いてきたと思う?」
「ぅ……」
「支配はされない、そしてしない。俺達が望むのはそれだけだ。虎に押さえられた東の鉱区を取り戻せば、とりあえずそれも叶うだろう。へぇ…。こっちはあんたらの力を借りようってんだ。それでいいだろう、変な気遣いは無用だ」
「おーけー、分かった。艦長?」
「…分かりました。では、レセップス突破作戦へのご協力、喜んでお請け致します」
「ああ」

 

「そういや、あの坊主はどうした? ご大層な物を注文した奴は」
「おかげさまで。キラ君なら、今頃は嬉々としてモビルスーツに補給した部品を取り付けていますよ」

 

本当に、あの子の考えには驚かされる。確かに攻撃、防御ともにパワーパックに頼ると言うのは、危険だったかもしれない。それを素人のキラ君に指摘されるとは……もし、Gの量産型にフィードバックできるなら、必ず生かそう。

 
 

◇◇◇

 
 

食堂に入ったら、フラガ少佐がいた。

 

「なんだ遅いなぁ。早く食えよ。ほら、これも」
「ああ、ありがとうございます。ここ数日モビルスーツとプログラムに掛かりっきりで」
「ん〜。やっぱ、現地調達のもんは旨いねぇ。で、どうなの? 使い物になりそうかね?」
「ええ、移動砲台代わり程度にはなれそうですよ。ザフトのミサイルポッドも付けましたしね。まだまだ改良の余地があるし、そうすれば、もっと……」
「そうか。そりゃよかった」
「いずれ、フラガ少佐も乗りたいって言わせて見せますよ」
「はは、頼むよ」

 

昼食はドネルケバブだった。あの日を思い出すなぁ。

 

「フラガ少佐……まだ食べるんですか? 腹撃たれたら腹膜炎起こしますよ」
「俺達はこれから戦いに行くんだぜ?食っとかなきゃ、力でないでしょ。拳銃で撃ち合うんじゃないんだ。戦闘機やられるような弾ぶち込まれたら終わりさ。ほら、ソースはヨーグルトのが旨いぞぉ」
「通が多いなぁ」
「ん?」
「いえ……俺の親友もヨーグルトソースが好きで。それからバルトフェルドもそう言ってたんですよ。ヨーグルトのが旨いって」
「ぁ…んー!味の分かる男だな。ハムゥ。けど、敵のことなんか知らない方がいいんだ。早く忘れちまえ。これから、命のやり取りをしようって相手のことなんか、知ってたってやりにくいだけだろ」
「まぁ、知ってるから余計にやりやすいって事も時にはありますけどね」
「怖い事言うな、坊主。お!」
「あ!」

 

爆音と衝撃が響いた。

 

フラガ少佐が艦内通話機に走る。

 

「ブリッジ! どうした!?」
『レジスタンスの地雷原がやられました!』
『総員、第一戦闘配備! 繰り返す! 総員、第一戦闘配備!』

 

俺とフラガ少佐は更衣室に走った!

 

「あ、ハルトマン大尉、イェーガー少尉」
「よう、お先。頑張ろうぜ。ここを切り抜けたら地中海だ!」
「はい!」

 
 
 

『スカイグラスパー1号、フラガ機、発進位置へ。進路クリアー、フラガ機、どうぞ! APU起動。カタパルト、接続。ストライカーパックはランチャーを装備します。ランチャーストライカー、スタンバイ』

 

レジスタンスは当てにならない。アークエンジェルも全戦力を出す。

 

「これから派手なパーティが始まるのですね」
「ミリアリア、こんなパーティ俺は始めてだよ」
「私もこんなパーティは始めてです、キラ」
「じゃあ、キラ・ヤマト、ストライク、レッツパアァァリィィイイイイイ!!!」

 

よし、脚のミサイルポッドもさほどの障害にはなっていないな。
くっ、いきなり目の前に戦闘ヘリが! とっさに盾でかばい、イーゲルシュテルンで反撃する!
一杯居やがる!
お? 周りの戦闘ヘリもやられる! これは!

 

「よう、俺達も出撃だ! 歩いてだけどな」
「戦闘ヘリ程度は俺達に任せな! 頑張れよ!」
「サイ、トール……」
「俺らが頑張ってプログラムいじった成果見せてやろうぜ!」
「ああ! 無理はするなよ!」
「ああ、アークエンジェルからは滑り落ちないように気をつけるよ。砂漠は怖いからな」
「はは」

 

サイはバスターダガー、トールはデュエルダガーで出撃だ。ちょっとだけ、心強くなった。

 

――!本命のバクゥだ! 何機? 5機か!

 

「バクゥが出てきたぞ! 対空援護はしっかりしてやる! 坊主、思いっきりやってやれ! いつも通りやれば大丈夫だ!」
「はい!」

 

 
 
 

「地獄の底へようこそ、アリンコ! 穴あきチーズにしてやるぜ!!!」

 

わははは! 補給のおかげで重突撃銃の弾幕も遠慮なく張れる。今回のバクゥは口にビームサーベルのようなものがある。やはり、バナディーヤで見たとおり、改造されていたか! 近寄らせないぜぇ!

 

「いただきー!」

 

弾幕で動きを止めたバクゥに上空から、ハルトマン大尉達が襲い掛かる! バクゥ一機、撃破!

 

「ありがとさん、ヤマト少尉!」
「どういたしまして!」

 

気がついたら、戦闘ヘリは全滅していた。さっすが!

 

お、向こうでフラガ少佐がレセップスにアグニを撃ってる。
――! しまった一機のバクゥが弾幕を抜けて来た! 相手の頭をシールドではたくと、首筋に重突撃銃をぶち込む!
ガガガガガ!
バクゥは動きを止めた。ふぅ、びっくりした。
また! こちらへ向かってバクゥが高くジャンプする。脚のミサイルポッドからミサイル射出! 相手は空中で勢いが止まる。
そこ! 下腹をビームライフルで貫く!
今度はこちらが! レジスタンスのバギーを狙うバクゥを、右肩の120mm対艦バルカン砲から雨霰と打ちまくり、飛び上がって空中からアグニを二発!
気が付いたらバクゥは全滅していた。

 

え!? アークエンジェルが思ってもいない方向から攻撃を受けた。伏兵か!? 俺がそれに気を取られた時、バクゥとは違う、獣のようなモビルスーツが俺の横に駆け抜けて来た!
とっさに飛び退く!
これは……ラゴゥか!
ジャンプ! だめだ!ラゴゥも同じくらいに飛びやがる! ラゴゥの背中には2連装ビームキャノン。シールドで受けるしかない!
俺は牽制に重突撃銃とミサイルを放ちながら、逃げ回る。

 

「フフフファハハハハハハァ・・・やぁキラ、相変わらず弾をばら撒くのを楽しんでいるようだな」
「大丈夫か、坊主! 敵の戦艦はあらかた片が付いた! 応援に来たぜ!」
「ありがたい!」

 

3機のスカイグラスパーが上空からラゴゥを牽制する!
ミサイル残弾発射! いらなくなったミサイルポッドを廃棄! 弾切れの重突撃銃を投げ捨てる! 着弾の煙にまぎれてジャンプ!

 

「キラ、無茶よ! ランチャーストライカーでは!」
「無茶じゃない、なぜなら俺は、このモビルスーツのパイロットだからだ!!!」

 

こちらを見上げるラゴゥの首筋にアグニを当て! ごとり。ラゴゥのヘッドが落ちる。
ラゴゥの背中を踏みつけ! M68キャットゥス500mm無反動砲を2本! ドゥ!ドゥ! 弾をぶち込む!
ラゴゥは動きを止めた!

 
 

「Yeahhhhhhhhhhhhh!!!」
「見事だ、少年! 止めを刺せ!」
「……爆発しなかったようだな。運がいい。議長に、デュランダルの言っている事に疑問が出てきたから、今は見逃してやる。次は無いぞ。だが、俺の言った事を忘れるな! ラクスに惑わされるな!」

 

自分でも矛盾した事を言っているな、と感じながら俺は落ちたラゴゥのヘッドを手に取り、アークエンジェルへと帰還した。

 
 

◇◇◇

 
 

「やれやれ、どうやら命だけは助かっちまったみたいだな」
「そうね。悔しい?」
「ああ、悔しいね。しかし、やはり不思議な少年だな。議長ね……彼はずいぶん『議長』に捕われているみたいだな。果たしてそれがシーゲルなのか? 別人なのか? シーゲル議長とラクスの関係は? デュランダルとは何
者か? 遺伝子学者のデュランダルか? 色々興味深い事が山盛りだよ」
「知りたいわね」
「ああ、知りたい困ったな。簡単に死ねなくなったぞ」
「夜になったら、抜け出しましょう」
「ああ」

 

俺達は夜が来るのを待って、放棄されたレセップスへと移った。

 
 

◇◇◇

 
 
 

「明けの砂漠の勝利を祝って! かんぱ〜い!」

 

明けの砂漠のテントでは、酒盛りが始まっていた。

 

「あたし達もちょっぴり飲んじゃおうか、お・さ・け」
「え。ミリィ……」
「だってぇ、せっかくトールが無事に初陣済ませたんだもの。お祝いしたっていいじゃない?」
「おお! 飲め飲め!」
「気が利くな、アフメド」
「へへ、ここらじゃ、昔からあまり酒は飲まなかったんだけどな。サイーブ先生が酒好きだから」
「じゃ、あらためて、サイとトールの初陣に、みんなの無事にかんぱーい!」
「「かんぱ−い」」
「で、どうだった、サイ、トール。みんなの考えを元にプログラムぶっこんでみたけどさ」
「射撃システムは大体あんなもんだろ」
「うん、それほど苦労せずにすんだ。結構戦闘ヘリも落としたぜ! でも、格闘となると、まだ無理だな」
「ああ、当分キラの後ろから撃たせてもらうよ」
「お前らが切りあいなんてしないように頑張るよ。射撃で方が付きゃそれが一番だからな」
「「キラー!」」
「……男に抱き付かれても、嬉しくない」
「しょうがないな、キラ。今だけよ。ぎゅ。」
「わ、私だって! ぎゅ」
「両手に花だ、いいなーキラ」
「ぐ・る・し・い」

 

「あ、そうだ、これやるよ、カガリ」
「なんだ? アフメド」
「マラカイト――孔雀石だ。加工してからやろうと思ってたんだけどな。時間無いから。邪眼をはね返す石だ。邪眼というのは、魔や他人の悪意のことで、幸福を奪い、不運をもたらす物だ」
「いいのか?」
「ああ、カガリに持ってもらいたい……俺はもう、ついていけないから」
「……ありがとう」
「キラ。カガリを守ってやってくれよ」
「……ああ!」

 
 

……

 
 

「へー、これが海かー?」

 

アークエンジェルは無事、地中海に脱出した。 交代でデッキに出ていい事になったが……

 

「 あーーー! 気持ちいいぃ!」
「地球の海ぃ! すんげー久しぶりー!」
「最近モビルスーツとプログラムに掛かりきりだったもんなぁ」
「でもやっぱ、なんか変な感じ」
「そっか、カズイは海初めてか」
「うん」
「ヘリオポリス生まれだったもんなぁ」
「砂漠にも驚いたけどさぁ、何かこっちのが怖いなぁ。深いとこは凄く深いんだろ?」
「ああ」
「怪獣が居るかもよぉ?」
「ええ!」
「何言ってんだよ、ミリィ」
「「あっはっはっは」」

 

「なに一人だけ灰になってるんだ、キラ? 青菜に塩って感じだぞ」
「ああ、カガリ……そういや俺何にも考えて無かったよ。 紅海抜けてオーブ経由でアラスカ行く途中でラクスから適当に接触が来る物とばかり思ってて……でも史実と違って地中海じゃん? どうすんだよ? もう……」
「ラクスって……そうか、キラはあんなのが好みか。しょぼーん」
「えっ!? っておい待てよ! ラクスなんてどうにも思ってないって」

 

あわててとぼとぼ歩いてくカガリを追いかける!
ああ、誰かにぶつかってしまった!

 

「あ、ナタルさん、すみません」
「痴話喧嘩か? ふふ。頑張れよ、ヤマト少尉」
「あ、いやぁ、ははは」

 

目指すは、ヨーロッパとアジアにまたがる都市、イスタンブール!

 
 

◇◇◇

 
 

ダーダネルス海峡を抜けイスタンブールに入港する。私はマリュー艦長と現地司令部へ赴いた。

 

「ずいぶんな数の将兵がいるわね。バジルール中尉」
「それはそうです。スエズからの撤退兵が集まっているのですから」

 

街にはスエズでの敗残兵が、あふれていた。
だが、私達の姿を見る彼らの目は死んではいない。そう思えた。

 

「ムスタファ司令がお会いになるそうです。どうぞ」
「ありがとう」

 

案内されて、マリュー艦長とともに司令官室へ赴く。

 

「ようこそ、トルコへ! 司令官のムスタファ・ケマルです」
「第8艦隊、アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスであります」
「同じく、副長のナタル・バジルールであります!」
「君達の活躍は聞いている。緒戦を負け続けの我等にとって何よりの知らせだ! ぜひこれからの反撃の端緒としたい物だ!」
「ありがとうございます」
「アラスカへ連絡を取りたいとの事だが、あちらからも、君達とすぐ話したいとの事でね。案内しよう」

 

そう言うと司令官は歩き出してしまった。なんと、司令官自ら案内されるとは!

 

「あ、ありがとうございます!」

 

私達は、通信機の前に立つ。

 
 
 

「もしもし、こちらマリュー・ラミアスです」

 

……もしもしはないだろう! 私はあやうく艦長に突っ込みを入れる所だった!
画面の向こうからはクスリ、と笑った声がかすかに聞こえた。

 

『アラスカ基地のウィリアム・サザーランド大佐だ。君達の活躍は良く聞いている』
「ありがとうございます!」
「で、だ。アラスカ基地へ来る必要は無い」
「なんですって!?」
「すでに地球軍の大部分ではモビルスーツの有用性は理解されている。コーディネイターだというではないか、アークエンジェルのモビルスーツのパイロットは」
「はぁ。しかし……」
「コーディネイター同士が戦っての戦果だ。我々のモビルスーツの基本的設計は優れていると言う事がわかった。それで十分だ。パイロットに対しての叙勲も予定されている」
「は、はい」
「これからが本題だ。ナチュラルのパイロットも初陣を飾ったそうだな。すぐにプログラムのデータを送ってくれ。 こちらからも改良されれば可及的速やかに渡そう」
「はい、了解しました」
「それでこれからの貴艦の行動だが……」

 

スエズ基地奪還。それが、アークエンジェルに下された命令だった。

 
 

◇◇◇

 
 
 

もう何日だろう。俺達は寝る時と食べる時以外はプログラムの修正、モビルスーツの訓練にかかりっきりだ。
ミリィとデートも出来やしない。いや、せめて二人きりに……

 

「ええー休み無しかよ! 他の人は交代で街に出てるのに!」
「ごめんなさいね。キラ君。本部から一時間単位でデータを送って来いって言ってるのよ。欲しい物があったら買ってこさせるから」
「選ぶ楽しみってもんもあるんですよ。まぁ、しょうがないですけどね」
「助かるわ。サイ君。特別手当も出るから。ね? キラ君」
「ちっしょうがねえな」
「サイ君とトール君は、操縦訓練もね。頼むわよ」
「りょうかーい」

 

イスタンブ−ルで休めるかと思ったのに、俺らに休みは無かった。くすん。
サイと目が合う。

 

「しょうがないさ。自分達のためだもんな」
「そうだな。ダガーの動きが良くなれば、それだけ助かるからな」

 
 
 

そうだ。アラスカからデータが送られて来る。それを実際に試して修正点を出す。それを元に修正したデータがアラスカから送られて来る。
その繰り返しで初陣の時とは比べ物にならないくらい、動きが良くなっている。さすがにキラのようには動けないけどさ。

 

「そうよー。トールが無事でありますようにって願いこめながらプログラムしてるんだからね」

 

黙々とデータを打ち込んでいたミリィが突然言った。その顔は真剣だった。

 

「ありがとう……ミリィ」

 

「あー熱いなぁ、お二人さん」
「――カガリ! ……ちゃかすなよぉ」
「今更ちゃかさないって。差し入れだぞー。トルコのアイス、ドンドルマ、買ってきた!」
「「おー!」」
「じゃ、休憩にすっか!」
「おー」

 

「のびーるー」
「もちもちだー」
「ねるねるねるね」
「あ、キラにお土産」
「お、なんだ?」
「ほら」
「ターバン!? こんな物一体どうしろと」
「かぶってみろよ……ほら、なかなか格好いいぞ」

 

「ふふ、あの二人、仲良いね」
「ああ。俺とミリィみたいになるかもな」
「やだぁ。ふふふ」

 

絶対、守ろう、その笑顔を。そう思った。

 
 

◇◇◇

 
 
 

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