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sin-kira_SEED_in_Sin_第03話

Last-modified: 2008-05-12 (月) 03:16:08

「へぇ、コイツは驚いたなぁ」
 緊張した空気を破るように、ゆったりとした口調で自己紹介を始める男。
 紫色のパイロットスーツを着ている。
「地球軍第七軌道艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉。よろしく」
 そう言って敬礼をする。
 それを受けて、マリューと周りにいた士官達が返礼を返す。
「第二宙域第五特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」
「乗艦許可を貰いたいんだがね、この艦の艦長は?」
「……艦長以下、主立った士官は皆、戦死されました。よって今はラミアス大尉がその任にあるかと」
「えっ? 艦長が……そんなっ」
 ナタルの言葉に驚きを隠せないマリュー。
「生き残ったのは艦にいた下士官十数名のみです。私はシャフトの中で運良く難を逃れた次第です」
「やれやれ、なんてこった……あぁ、ともかく許可をくれよ、ラミアス大尉。
 俺の乗ってきた艦も撃沈されちまってねぇ」
「あぁ、はい。許可いたします」
「俺は、アレのパイロットになるひよっこ達の護衛できたんだがねぇ……連中は?」
「彼らは艦長とともに……」
 そこへ、フックを使ってシンがストライクのコクピットから降りてくる。
「えっ!?」
「おいおい、なんだってんだぁ!?」
「おい、ありゃ、ザフトのパイロットだぞ!」
 アークエンジェルに着艦したシンを迎えたのは、そんな敵意を含んだ喧噪だった。
 ナタルがその喧噪を手で制し、腰の銃を抜いてシンに向ける。
 それを見たカガリがシンに駆け寄り、トールたち学生がそれに続いた。
「ラミアス大尉、アレは……」
 ムウはシンを振り返りながら、マリューに問いかける。
「……あぁ」
 マリューが言いよむ。
「ごらんの通り、ザフトのパイロットです。襲撃を受けたとき、成り行きで
 こうなってしまって……シン・アスカといいます」
 マリューの言葉に後ろにいた下士官達がサブマシンガンを構え、その銃口をシンへと定める。
「艦長達の仇だ、ここでやっちまっえ」
「ああ、ヘタに艦内で暴れられても面倒だ」
「そうだな、ザフトのパイロットならこいつもコーディネーターだ」
「バケモンが」
 口々にわめき出すクルー達。
 これまでさんざんザフト相手に負け戦を繰り返してきたのだ、過剰な反応とも言えない。
 何せ、戦力、国力、生産能力など、その殆どにおいて圧倒的優位にいながら、負けているのだ。
 コーディネーターそのものの能力に対してのコンプレックスが吹き出しても当然だった。
「なんなんだよ、それは! さっきの見てなかったのか?」
「トール」
 自分をかばう少年にシンは複雑なモノを感じ目を伏せる。

 

「みんな黙って」
 クルー達を一括して黙らせるマリュー。
「彼のおかげで、先にもジン一機を撃破しストライクだけは守ることが出来ました」
「へ〜ぇ」
「ザフトのパイロットがジンを?」
 ナタルが驚きを隠せず、疑問を口にする。その後ろでは下士官やメカマン達がざわめいている。
「……そうか」
 ムウはつぶやくとゆっくりとシンへと向き直ると歩み寄っていく。
「なんだよ?」
 ムウに見つめられて、居心地悪そうにするシン。
「なぜ、ザフトを裏切って、こちらに協力を?」
――裏切り……
「俺は、民間の被害を無視したやり方が許せなかっただけだ。だから、戦闘をやめさせようとしただけで……」
「お前、軍の作戦に口出しできるほどの立場なのか、そういや、所属は?」
「ああ、特務部隊フェイスだとか」
 マリューが口を挟む。
「FAITHってどんな権限だ? ザフトって階級がないからいまいち分かりにくいんだよな〜」
「プラント国防委員会直属の特務隊だよ。部隊指揮官より上位の指揮権がある。
 作戦の立案および実行の命令権限なんかもな」
 もっともここは過去である。今のザフトにシンの軍籍は無い。したがってそのような権限もあるわけがなかった。しかし、地球までの足と何よりも力を手に入れなければならない。
 この偽証が何らかのきっかけになるかもしれない。
「佐官、いや場合によっちゃ将官クラスか……捕虜にするにも、それなりの待遇が
 必要だろうなぁ。どうする、ラミアス大尉?」
「は、はぁ、どうすると言っても」
 マリューはまさか若年のシンがそんな高官だったとは思いもよらなかったため言葉に詰まる。
「ザフトは民兵組織ですよ!? テロリストと変わりありません!」
 そういって銃口をシンに向けるナタル。
「ちょっと待てよ。国際条約に則れば民兵は準軍事組織になるだぞ、となれば国際条約に則った捕虜の扱いもしなくちゃならんだろう」
「大尉、ここは戦場ですよ、それに彼はこちらに投降していません、敵です」
「あぁ、ちょっと」
 ナタルの言葉にマリューが何か言おうとしたが、ムウに遮られる。
「そうだな。シン・アスカだったな、で、どうするの?」
 腰から銃を抜いたムウがシンに問いかける。
「どうするって」
「降伏勧告だよ、投降するの? しないの?」
「……」
 ――さっきそこの大尉殿に降伏したはずなんだけどな
「ちょっとまて!」
 シンが絶句していると傍らにいたカガリが声を上げた。
「こいつは……その、亡命、亡命しに来たんだ!」
「亡命ですって? 連合に?」
「あ、いや、オ、オーブ、オーブ首長国連邦にだ」
「えぇっ!!!!????」

 

 突然の流れにマリュー以下クルー達がお互い顔を見合わせる。
「で、オーブの誰がこいつの亡命を受け入れたんだい?」
「うぅ、その……お、お父様だ!」
「誰?」
「オーブ首長、ウズミ・ナラ・アスハは私の父だ!」
「何ですって!?」
「って、じゃあ君はオーブのお姫様ってわけか? なんだってまたこんなところに……」
「たまたまモルゲンレーテの視察に来てたんだ」
「じゃあ、シン・アスカの亡命ってのは?」
「それは、その……!! テストパイロットだ」
「オーブは中立国で今もプラントとも国交があります、戦争を嫌ったコーディネーターがその優れた技術と引き替えに多数亡命している事実はあります」
 ナタルが要領を得ないカガリの説明を補足する。
「なるほど、そういうことか」
「そ、そうだ。シンはモルゲンレーテのテストパイロットになる条件と引き替えに、
 オーブへの亡命をお父様に許されているんだ」
「じゃあ、コイツはお客さんってわけだ、姫様同様、丁重におもてなししないとな」
「しかし!」
「しかしも何もないよ、それに上手くすれば、ザフトの情報が手に入る」
「あっ」
「それに、こっちもいろいろ助けられたみたいだからな。さっきの戦闘は見てたぜ。
 あのクルーゼを不意打ちとはいえ、中破させるなんてな」
「クルーゼ!?」
「ああ、言ってなかったな。外にいる連中、ありゃぁ、クルーゼ隊だ。奴はしつっこいぞぉ〜。
 とにかく、こんなことしてる時間はないな、機体の整備、急いでくれよ!」

 

「ん?」
 シンはあてがわれた個室でうつらうつらとしていたが、人の気配に目を開けると目の前にカガリがいた。器用に両の手の上にトレイを乗せている。
「シン、これ」
 トレイの片方をシンに突き出すカガリ。
「食事、食べるだろ?」
「あ、あぁ」
 考えてみればメサイア戦からヘリオポリスで目覚めてこっち、睡眠も食事も全く取っていなかった。その間に2回の戦闘を行っている。疲れているはずだ。
 カガリに対して複雑な感情を持ってはいたが、体の欲求には勝てずトレイを受け取る。
 ビスケットと牛乳、ゼリー状の高カロリー栄養剤、具の少ないスープという内容だった。
 ベットに腰掛け、食事を取る。隣では、カガリが同様に食事を取っている。
 スープは懐かしい味がした。食べながらこのスープはインスタントではないなと感じるシン。
「これ、どうしたんだ?」
 スープの入った椀をスプーンで指しながらたずねるシン。
「モルゲンレーテから物資を搬入してたからな、その中にあった材料で作ったんだよ。
 もっとも、たいした食材がなかったから、こんなのしかできなかったけどな」
「へぇ、あんた、料理なんてできんの?」
「あぁ、少しはな……っておまえも馬鹿にしてるだろ」
 正直以外だった。オーブのお姫様であるカガリに料理が出来るとは思わなかった。
 しかも、作ったのがオーブ本土でも一般的な家庭料理とは意表を突かれた。
「さっき、ミリアリア達にもそう言われた」
 ふて腐れて唇を尖らせるカガリ。
 その様子に亡き妹の姿が重なる。
 苦笑するシン。
「……スープ、見た目はともかく、美味かったよ」
 椀を飲み干しトレイに戻すと、ゼリーのチューブの口を切る。
「そ、そうか? ならよかった。これはマーナから習ったスープで、オーブじゃ一般的な家庭料理なんだ」
「知ってる」
「え、マーナを!?」
「違うって、スープだよ。俺はオーブ育ちなんだ」
「え、そ、そうなのか!? だから、私のことも知っていたんだな」
「あぁ、まぁな」
 うなずくと、チューブの中のゼリーを一気に吸い込み、ごろんと横になる。
「さっきは、助かった」
「え、あぁ、でも、元々オーブ出身なのにオーブに亡命って、変なことになっちゃったな」
「いいさ、どうせ俺の戸籍なんて、今のオーブにはないしな」
「えっ?」
「とにかく、あんたのおかげで、地球軍の捕虜にならずにすんだ、礼を言うよ」
「おい、いい加減『あんた』はないだろ! 私の名前はカガリだ! 礼を言うなら、人の名前ぐらいちゃんと呼べ!」
「……ありがとう、カガリさん」
「ん、さんは余計だ。呼び捨てでいい」
「……はぁ」
 ため息をつくシン。

 

「どうするんです、あの二人」
「どうもこうもないだろう、さっき言ったとおりだよ」
「しかし、身元の照合は出来ないんですよ、彼女が本当にオーブの姫かも」
「でも、否定する材料もない。それよりも今はどうこの状況を乗り切るかだ」
 ムウとナタルが言い合っている横で、インターホンでコロニーと連絡を取っていたマリューが椅子ごと二人に向き直る。
「コロニー内の避難はほぼ完了したそうだけど、さっきの戦闘で警報レベルは9に上がったわ」
「おい、じゃあ、あのガキどもはどうするんだ?」
 コロニーは警報レベルが9を超えるとシェルターは全て自動ロックされ、救命艇として待機するため、外からアクセスすることが出来なくなる。
 今からでは、ヘリオポリスの学生達をシェルターに押し込むことは不可能なのだ。
「彼らは、軍の機密を見たため、ラミアス大尉が拘束されたのです。
 このまま解放するわけには……」
「じゃあ、あいつらを乗せたまま戦闘をすって言うのか?」
「ストライクの力も必要になると思うのですけど」
 マリューが遠慮がちに発言する。
「あれをまた、実戦で使われると!?」
 目をむいて問い詰めるナタル。
「使わなければ、脱出は難しいでしょう」
「あのボーズを乗せるのか?」
「冗談じゃありません! ザフトのパイロットを乗せるなんて、容認できませんよ!
 フラガ大尉が乗られれば……!」
「おい、無茶言わないでくれよ、MSなんて俺に扱えるわけないだろう」
「しかし、いつ寝返るかもしれない者に任せるわけにはっ!」
「まともに動かせない機体で出て行って、俺に的になれっての?」
「っう」
「はぁ」
 ため息をつく三人。

 

「俺にアレのパイロットやれってだって?」
 サイ、トール達ヘリオポリスの学生達と談話しているところへ、マリューがやってきて、突然そんなことを言い出したのだ。
「ええ、そうよ」
「何でまた」
「他に動かせる人間がいないからよ」
「俺が寝返る可能性は考えないのか?」
「もちろん、それも考えているわ」
「で?」
「彼らはもうこの船から下りられないわ。さっき警報レベルが9に上がった所為でね」
「また、人質か」
「そうとって貰ってかまわないわ」
「ちょっと待て、勝手に話を進めるな!」
 カガリが割ってはいる。
「シンはオーブへの亡命者なんだぞ、勝手に戦争に持って行かれては」
「姫、非常事態故、ご協力願えませんでしょうか。この状況を乗り切った後に、オーブ政府に正式に通達を行い、彼らとあなた方二人の保護を求めます」
「うっ」
「俺は、別にかまいませんよ。元々そのつもりだったし、いざとなれば奪ってでも出るつもりだったからな。オーブに着くまでは降りかかる火の粉ぐらいは払ってやるさ」
 カガリがシンの腕をとって無言でシンを見上げる。
 と、けたたましい警報音が鳴り響く。
 マリューが部屋のインターホンでブリッジへと回線を開く。
「どうしたの!?」
『MSが来るぞ、早くブリッジに上がって指揮を執れ!』
 スピーカーからムウのせっぱ詰まった声が聞こえてくる。
『ラミアス大尉、君か艦長だ』
「! 私が!?」
『先任は俺だが、この艦のことは分からん、よって君が指揮を執れ』
「分かりました。では、アークエンジェル発信準備、総員第一戦闘配備、大尉のMAは?」
『ダメだ、修理が間に合わん』
「では、フラガ大尉にはCICをお願いします」
 通信を切り、振り返るマリュー。
「聞いての通りよ、」
「俺はストライクで待機する」
「頼むわね」
 シンはヘルメットを取ると、カガリの手を振り払い無言で走り出す。
 その背に向かって学生達が声を掛ける。
「シン!」
「シン、がんばれよ」
「死ぬんじゃねーぞ」
 シンは背中越しに親指を上げてみせると、そのまま振り向きもせずに格納庫へと走っていった。
「シン……」

 

「3番コンテナ開けー! ソードストライカー装備だ!!」
 アークエンジェルの発進カタパルトでストライクの装備換装が行われていた。
「ソードストライカー? 要はソードインパルスと同じだな。俺向きだ!」
 気合いを入れると、フェイズシフトの稼働スイッチを押す。
「こちらシン・アスカ、いつでも出られるぞ!」
『コリントス発射準備、レーザー誘導厳に!』
『主砲レーザー連動、焦点拡散! シン・アスカ、主砲斉射と同時に発艦せよ』
「了解」
『主砲一斉射!』
「シン・アスカ、ストライク行きます!」

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