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sin-kira_SPIRAL_第02話

Last-modified: 2011-12-12 (月) 10:30:02

私は知りたかった。
人が何の為に生まれ、生き、何の為に出会うのか。
ほとんどの生物が別個体と共にあることで初めて一つの生態として完成するように、人類もまた自分以外の誰かを必要としている。
しかし、人類の他者への依存性は他の生物の比ではないと私は考えていた。
人類はこの地球の勝者として今日も地上に君臨している。
だが、人類そのものが持ち合わせていた力は、決して強大なものではなかったはずだ。
個体としてはむしろ、脆弱な部類に入ると言っても過言ではない。
だというのに、人は……

 
 

私が彼という稀有な人材に出会えたのは本当に偶然だった。
軍のメディカルデータに目を通している時、その数値に引っ掛かるものを憶えたからだ。
別段、その道の調整を受けたわけでもないというのに(免疫力を強化しただけと書類にはあった)ある数値が馬鹿みたいに高かったのだ。
私以外の人間は「そう言うこともある」と気にも留めなかったようだが、私だけは何故か気になった。
私は昔から他の人間とはどうも違った見方しか出来ないらしく、多数決を取れば大抵少数派だった。
もっとも、少数派の一人であることに後悔はない。そしてこの時も。
必要なデータをすぐに集めて、様々な観点から私は彼を紐解いていった。そしてすぐに辿り着く。
 私が求めてやまなかった存在―『S.E.E.D』を持つ者に。
なんて呆気なく見つかってしまったんだろうか。
おかしな話だけれどちょっと戸惑った。本当にただの偶然で、私は彼と出会うことが出来たのだから。
それから私は満足な計画も立てずに彼に会いに行った。
さあなんて声を掛ければいいだろうか。
とにかくなんとしてもものにしないと。
「顔立ちはまあ合格か。ともかく、こんな子がS.E.E.Dを持つ者なんてねぇ」
おっと、ついつい彼の目の前で呟いてしまった。なんて迂闊。
まあ実際顔立ちは合格なんだけど。
「失礼。ところで君、ちょっとこれから時間ある?」
……下手なナンパみたいになってしまって、私はちょっと後悔した。

 

というわけで私は上玉、もとい『S.E.E.D』を持つ者ことシン・アスカ君とのファーストコンタクトを果たした。
そして早速後悔する私。
さて、彼を研究室に連れ込んだはいいけれど、これからどうしよう。
こんな時に私の悪いところが遺憾なく発揮された。
目標を決めた上で状況を揃えても、それをどうやって達成するか。
何故か何時も考えていないのだ。
まことに研究者には不向きな性格。
でも仕方ないじゃない、性分なんだもん。
研究は好きなんだもん。……なんだかこんな私に捕まった(語弊あり、と言えないところが悲しいな)シン君が
とても可哀想な子に思えてきた。
「え〜と……」
さてどう説明しようか。とりあえず鍵は閉めたから大丈夫だ。
あれ?これは私にとっては大丈夫だけど、彼にとっては大ピンチになんじゃなかろうか。
あ、後ろ手に鍵閉めた私を見るからに警戒しているし。
「シン君?」
ああ。私は対人恐怖症だったのだろうか。いや、そうではない。ただ純粋に人と話をすることが苦手。違うな。
コミュニケーションというのが嫌いなんだ。
何で嫌いになったかとかはもう忘れてしまったけれど。
「あ、あの……」
うわっ!物凄く不安げにしてる。
こ、ここここは何とか上手いこと乗せないと。
「な、何もないところでゴメンねっ!こ、コーヒー飲む?!」
そう言って私は慌てて冷蔵庫に駆け寄り、ボトルコーヒーを出す。あんまり美味しくないけど、まあいいや。
 さて、どうしようか本当に……。
ここは一気に用件を突きつけるか。

 

僕は物凄くアブナイ状況にいるのかな。
士官学校の食堂をうろうろしていたらちょっと変な人に捕まってしまった。
いや、ちょっとどころじゃないかもしれない。さっきからずっと挙動不審だし。あ、後ろ手に鍵を閉めてる。
これはますます危ない気がするんだけど……。
「あ、あの……」
「な、何もないところでゴメンねっ!こ、コーヒー飲む?!」
あの……なぜ声がひっくり返ってらっしゃるのでしょうか。この人はもしかしたら危ない人かもしれない。
さあどうしようか。
と、僕が多少の武力行使も辞さない構え(まだ短いけれど、学校で習ったこともある。
よくもまああんな拙い知識と技で大戦を生き残れたなあとしみじみ思った)だったところに、
「単刀直入に言うわ。あなたはとっても素敵な星の元に生まれた、選ばれた人間だったのよ」
なんて言われたものだから頭の中が真っ白になった。
とりあえずこう言う時は、
「なっ、なんだってぇ!!?」
とでも言っておくべきなんだろう多分……。
でも僕にはそんな茶目っ気は無かった。

 
 
 
 
 
 

「あの時は驚きましたよ本当に」
そして現在。
二人は協力関係にあった。

 
 

機動戦士 ガンダムSEED DESTINY SPIRAL 〜黄金の輝き〜

 

第二話 『ギルは僕のことが好きなんだよね!』

 
 

 と言ったもの、二人の『S.E.E.D』探究の道のりは実に険しかった。
シンにとってその説明は難解だったし、さらには彼女には名前が無いのだという。呼び方一つからさっそく躓いた。
「私、頭使ってるうちに使わないものがどんどん抜けてく性質なのよ。前に齧ったMSの設計論とか運用論とか、
丸々忘れっちゃったし、使わなくなった名前もとっくに忘却の彼方だわ」
名前を使わないってどういう生活してるんだろうとシンは思ったが、あえて突っ込まなかった。
さらに彼女は続けた。
「まあ私の説明をある程度理解してもらえたのなら分かったと思うけど、あなたの中には人類の夢とか人類の
夢とか、とにかく人類の夢ってのが詰まってるのよ。まだ誰も知らない領域。それがあなた。だから私はそれが
知りたいの。科学者としてとかも含めるけど、主に一個人としてね。別に強制しないから、今日ここで聞いた
こととかもさっさと忘れて、今まで通り士官学校での勉強を続けてもらってもかまわない。それに、もし
私のところに来てくれるようになっても、士官学校は続けることになると思うわ。私の立場って弱いから、
君を引き抜くことなんてできないもの」
最初の挙動不審さは何処へやら。
吹っ切れたのか、妙に饒舌になった彼女。
しかしシンは、そんな彼女の話を一々真面目に聞いていた。
「……僕、やります」
話を持ち出した彼女自身が呆気にとられる程に、シンは真剣な口調で言った。
 この前はスーパーコーディネイター。そして今は『S.E.E.D』。
以前の自分の力は`凶戦士'とも呼ばれ恐れられた。
その力を正しいことに役立てたくて、役立てたつもりだった。
しかしもうそれさえ……。
今の自分に宿っている力が本当に人の夢だというのならば、それを活かしたい。
シンはそう願った。
「じゃあ今日から、あなたのことは先生と呼ばしてもらってもいいですか?」
「はぁ……まあいいけど」
 こうしてシンは、研究と訓練の二面生活を送ることになった。
そこからが本当の試練。『S.E.E.D』の因子を持つ者の研究など、今まで誰も取り組んだことはなかった。
存在すると学会で提唱されても、何故か見向きもされなかったからだ。
そもそも、既に新人類と呼ばれている存在、コーディネイターが存在する
のだから、『S.E.E.D』因子がどうのこうの言っても、取り沙汰されなかった。
そういう意味では、彼女が言った人の夢というのは真っ赤な嘘だった。
しかし、少なくとも彼女自身は人類の夢だと信じて疑わなかったし、シンもそれを真に受けてしまっていた。
厳しい実験、というより厳しい訓練を毎日毎日嫌とも言わずに繰り返す
シンの姿を見るたびに、彼女の胸の中には彼を騙したという罪の意識がちろちろと灯るのだった。

 

「(でも、他の面からのアプローチはほとんど意味が無かったし……)」
最初こそ、適性検査が主だったが、今ではその研究は身体訓練一辺倒になっていた。
 一般人と『S.E.E.D』因子を持つ者の唯一の差は、遺伝子にあるのだという。
『優れた種への進化の要素であることを運命付けられた因子』。
何だかぴんとこない語訳だったが、要は『生まれながらにして進化することが運命付けられている』とでもいうのだろうか。
「(でもねぇ……)」
実際、これを遺伝子の中にこの因子を持つ者はこれまでも存在が確認されていたようだ。
しかし彼らがその
『進化を運命付けられた因子』を眼に見える形で発揮することは無かった。
ナチュラル、コーディネイター問わず、彼らは既定値以上の数値を叩き出すことは決して出来なかったのだ。
これが『S.E.E.D』理論が学会で廃れていった理由の一つだ。
「どうすれば、『進化』なんてするのかな……」
そもそも進化とは何か。
と尋ねられて、明確な答えを返せる人間は存在しない。
進化と言う言葉には色々な意味が込められている。
狭義での進化だけで話をするならば、とっくの昔に人間の進化は止まっている。
与えられたのは意志伝達を容易にする言語とその英知。人は生まれながらにしてインテリアニマルだ。
とは彼女の持論であるが。ではこの場合に提唱された『進化』とはどういう意味なのだろう。
彼女はこう考えた。
『多くの人のことを受け入れることが出来る、他者と理解しあえる存在への消化』
これが彼女が脚色した『S.E.E.D』理論だった。
確かにそれは人の夢だろう。だからこそ遠い。
そんなことが出来る存在がいるならば、今こうして争っている人類は何をしているんだ?こうして争い続けている人類の
中から、理想を体現する者が現れないのは何故だ?いや、もう現れたと言う者もいた。
だが、彼女は認めない。
彼女の理論からすれば、到底その存在は容認されるものではなかった。
「エリカ、マルキオ……。私は認めないわ。彼は……キラ・ヤマトは『S.E.E.D』を顕してなんかいない」
 彼女の前髪に隠れた瞳に、初めて暗い光が差した。

 
 

「調子はどうかね?」
 男は幼い金髪の少年に優しく語りかける。少年は微笑みながら答えた。
「今度ラウにピアノを聴いてもらうんだ。ギルも聴きに来てね」

#br 
「調子はどうかね?」
 男は金髪の青年に静かに語りかける。青年は渇いた笑いを漏らしながら答えた。
「終わりさ私は。そして人も終わる。私が終わらせる」

 

「調子はどうかね?」
 男は銀髪の少年に優しく語りかける。少年は無邪気に笑いながら答えた。
「最高さ。僕は何時だって最高なんだ。僕が一番強いんだから」

 

そうでしょ?と聞き返してくる少年に、男は答えた。
「そうさ。君は一番強いんだよ。何故なら君は、『S.E.E.D』を持つ者なのだから」
男は笑った。
少年は不思議そうに男の顔を見つめた。
そしてすぐに釣られて笑い出す。
「難しい話は分かんないけど、ギルは僕のことが好きなんだよね!」
「あぁ、好きさ。あの子も消えて、彼も消えた。しかし君が来てくれた。
私は嬉しいんだよ。君なら築いてくれる。私が望み、彼も本当は願っていた……新たなる世界を」
優しい手つきで少年の流れるような髪を梳く男。
その瞳に宿っていたのは野心でも何でもなく、ただ息子のことを愛する父の愛情だった。

 
 

 そして時は進み、銀の髪の彼は立つ。
新しいステージへ。新しい時代の拓き手として。
しかしそれはまだ先のこと。
今は彼も、何も知らない。人類の夢を信じて足掻く、あの二人の様に。
だがこの時点で、二人は対極だった。
近い未来、二人は出会う。敵として。違う未来を見る者として。同じ瞳を持つ者として。

 
 
 

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