Top > ΖキャラがIN種死(仮) ◆x > lz6TqR1w 氏_第05話
HTML convert time to 0.013 sec.


ΖキャラがIN種死(仮) ◆x/lz6TqR1w 氏_第05話

Last-modified: 2008-05-25 (日) 10:04:26

『ユニウスを見つめて』

 
 

「本艦はこれより、降下しながらの艦主砲による直接砲撃によってユニウスを砕きます。議長はボルテークにお移り下さい」
「直接砕くのか?それはいくらなんでも無理だろう」
「ミネルバは議長のご自慢ではなくて?」
「それはそうだが…」
「やって見せます。これを落としたら、地球側から何を言われるか分かりませんよ」

 

 アーモリー・ワンにて強奪された三機の新型MS、ガイア、アビス、カオスを追って出たミネルバだったが、そこで謎の艦の部隊による妨害を受け、追撃を阻止されてしまった。
落胆する一行だったが、立て続けに今度は衛星軌道上に安置されていたユニウス・セブンが地球に向かっているとの報を受けた。
 ユニウス・セブンは、前大戦の引き金になった血のバレンタイン事件の舞台である。元々唯の農業プラントだったのだが、連合の核攻撃によって多くのコーディネイターの命が消えた悲劇の場所でもある。
それ故、プラントに住むコーディネイターにとってユニウス・セブンは特別な意味を持つ。
 それが、本来なら衛星軌道上で百年単位での安定をしているはずだったのだが、何故か地球への落下軌道を取っているという。ミネルバは、その落下阻止と原因究明の為、現場へ急行した。
 しかし、ミネルバが現場に辿り着いた時には既に友軍艦が破砕作業を始めていた。最早落下を阻止する事が出来ないほど地球に接近しており、少しでも被害を少なくするためにユニウス・セブンを砕くという。
いくらユニウス・セブンがコーディネイターにとって忘れられない場所でも、その為に地球に住む多くの人間の命を危険に晒すわけには行かない。勿論ミネルバもそれに参加する。

 

「確かに君の言うとおりだが、ミネルバだけにそれをやらせるのは…」
「そのおつもりでいらしたのではないのですか?」

 

 ユニウス・セブンの加速はかなり速く、とても自然に起こった現象とは思えない。破砕作業を行っていると、そんな考えを裏付けるかのようにMSが襲ってきた。それは、ザフトの旧式MSであるジンだった。
ユニウス・セブンの落下が、コーディネイターの仕業なのかもしれないという懸念が生まれる。
 もし、これが世間に公表され、ユニウス・セブンの破砕作業も十分に行えなかった場合、地球側の各国はプラントに嫌疑を掛けてくるのは目に見えている。

 

「謎の武装勢力と聞いていたのだがね、これでは我々がやったと見なされるか」
「そうです。やるしかありません。ですから、議長は早くボルテークにお移り下さい」

 

 それでも何とか破砕作業を続けていたが、更に強奪された三機の新型MSも紛れ込んできて、現場は混迷を極めていた。時間的な余裕もなくなり、最早MSでの作業は限界に達しようとしている。そこでミネルバの艦長タリアは、主砲で直接岩を砕く事にしたのだ。

 

「アスハ代表も」

 

 振り返り、もう一つのゲストシートに腰掛けるカガリに告げる。
 彼女は、アーモリー・ワンでの襲撃事件に巻き込まれ、シェルターへ避難するはずだったが途中で怪我を負い、アレックスに連れられてドサクサ紛れにミネルバへ逃げ込んでいた。下手にシェルターに駆け込むより、戦艦へ逃げ込んだ方が安心だと彼が判断したからだった。
 そのアレックスは、MS操縦の心得があるとして、自ら志願して破砕作業に加わっている。最初は難航を示していたタリアであったが、人手は少しでも要るだろうとのデュランダルの判断で止む無く格納庫に余っていたMSを貸与した。

 

「私は残ります。こうしてあなた方が頑張っているのに、私だけ逃げるわけには行きません」
「では、代表が残ると仰るのなら、私も残りましょう」
「議長!?」

 

 このまま危険な作業に彼等を巻き込まぬよう、タリアは他の艦へ移乗を勧めたが、二人の返事はNOだった。そんな二人の決断にタリアは困惑する。

 

「為政者の方々がこんな事にお付き合いなさる事はありません!どうか、お考え直し下さい」
「為政者だからこそだよ。このままではミネルバは地球に降りるだろう?」
「それが――」
「その後は代表をオーブへお送りするのだ。ならば、私も共に行くべきだろう。代表とお約束を交わしているのでね」

 

 確かに、デュランダルはカガリとアーモリー・ワンでの会談の件で約束をしている。しかし、わざわざこんな無茶をしてまですることか。タリアは、デュランダルの行動に疑問符を浮かべる。

 

「お気遣い感謝しますが、お話ならその後でも出来ます。議長は艦長の言うとおり、お戻り下さい」
「いえ、代表にはわざわざアーモリー・ワンまでお越しいただいたのです。今度は私がそちらに伺うのが筋というものでありましょう」
「しかし――」
「何、彼女がうまくやってくれます。なぁ、艦長?」

 

 デュランダルの問い掛けに、タリアは何も応えなかった。どうあってもデュランダルはミネルバを降りる気は無いらしい。そんなにカガリと話をしたいのだろうか。
それ程にまで彼が急ぐ理由がタリアには見つからなかったが、ここまで言われれば彼の同行を拒否する事は出来ない。ここは、やるしかない。

 

「頼めるか?」
「…了解です。ユニウスを砕き、無事に地球へ降下して見せます」

 

 カガリの質問に、無機質に応える。我侭な二人に多少頭にきていた。

 

「済まないな、タリア」
「議長閣下のご命令であれば、従うまでです」

 

 デュランダルが話しかけているのにも関らず、不貞腐れたように視線を外して応えるタリア。それにデュランダルは笑みを浮かべてゲストシートに身を埋める。

 

(どうやら、怒らせてしまったようだな。私のいけないところだ)

 

 こんな状況でも、デュランダルは子供のようなことを考える。危険な状態だというのにこれだけ余裕があるのは、彼がタリアを信用しているからだ。二人は、過去に関係を持っていたことがあった。

 

 ミネルバは降下を続けながらユニウス・セブンの岩塊を砕いていく。メテオブレイカーによって大分小さくなったものの、まだ十分な質量を保ったままだ。

 

「降下シークエンスはそのまま。MS隊の帰還、遅いぞ」
「それが、敵との交戦で中々動けないようです」

 

 ブリッジオペレーターのメイリン=ホークが応える。赤毛をツインテールで纏めた可愛らしい少女だ。しかし、彼女も若干14歳ながら、ザフトの士官学校であるアカデミーを卒業したエリートの一人だ。

 

「大気圏突入で迷子になりたくないのなら、戻ってきなさいと伝えなさい」
「了解です」

 

 ザフトでは形式上15歳で成人とはいえ、MS隊のパイロットは三人とも齢16である。成人を迎えて一年を過ぎていようとも、経験が伴っているというわけではない。コーディネイターとて、経験を積まねば一人前になれない。
 コーディネイターだからといって、ナチュラルよりも時間が多いというわけではないのだ。タリアは、そう考えている。MS隊のシン=アスカ、レイ=ザ=バレル、ルナマリア=ホークはまだ子供だ。自分が手綱を握っていなければ、彼等は早死にする事になる。

 

「ルナマリア機、バレル機帰還しました」
「シンとアレックス君は?」
「まだジンと交戦中の模様です」
「バート、他の敵は?」
「敵の数が不明だったので分かりませんが、出てきた分はジュール隊との共同戦線により全て撃破しています」
「奪取された三機は?」
「ボギー・ワン共々、既にこの宙域を離脱しています。捕獲は失敗に終わりました」
「失態ね…シンとアレックス君に早急に戻るように伝えなさい」
「了解」
「このような状況では、仕方ないのではないかね?」

 

 指示を出し終えると、デュランダルが話しかけてくる。呑気な御方だ、とタリアは内心で溜息をつく。

 

「奪われたままでよろしいのならば」
「そうは言っていない」
「なら、せっかく彼らの方から出てきてくれたのです。破砕作業と平行で作戦を実行するのが一番だと判断しましたが」
「若いのだろう、ミネルバのMSパイロット達は?なら、あまり若者に無理を言わないでもいいだろう」
「彼等もアカデミーを卒業した赤服です。実力を考慮したうえで、艦長である私が命令を下しました。それに、ボギー・ワンはミラージュコロイドを搭載していました。もしあれが連合の艦だとすれば、お困りになりますでしょう?」
「そうか、艦長の考えは理解した」

 

(確かに、あれが連合の艦であるのならば、ジンを見られたのは面白くない事態だな。これを知れば、連中が動き出すかも知れん)

 

 シン達を擁護するデュランダルに対し、一歩も引く様子の無いタリア。それにデュランダルの方が折れた。いくら相手がプラントの最高責任者であっても、ミネルバの艦長はタリアである。敵も襲ってきている現状で、素人の意見など聞いてはいられない。

 

「艦長、このままではユニウスは大きな質量を保ったまま地球に落ちます!」
「シンとアレックス君は?」
「敵は撃破しましたが、まだ破砕作業を続けていると…」
「何をしているのよ、あの子達は?時間が無いというのに!」

 

 タリアは最後の手段として、ミネルバに搭載された陽電子砲、タンホイザーを使うつもりで居た。しかしユニウス・セブンにはまだ、シンやオーブの人間であるアレックスも残っている。これでは迂闊にタンホイザーを撃つ事は出来ない。
 反面、時間ももう限界に差し掛かっているのも事実だ。タリアは決意を固めるしかない。

 

「…タンホイザー照準、右舷構造体」
「えぇっ!?」

 

 タリアの号令に、副長のアーサー=トラインが驚嘆する。

 

「宜しいですね、代表?」
「このまま地球に落とすわけには行かない。いい、やってくれ」

 

 カガリに許可を求める。彼女も覚悟を決めているのか、硬い表情でGOサインをだす。

 

「承知しました。チェン、後はあなたの腕に掛っているわ」
「プレッシャーですね。就役早々、こんな大役が回ってくるなんて思いませんでしたよ」
「成功すれば、収益アップよ。なんせ、議長閣下が見ていらっしゃるのですからね」

 

 視線を後ろのゲストシートに向ける。その席で、デュランダルは微笑んでいた。

 

「約束しよう。君に期待している」
「はっ!」

 

 チェンの気合に火が灯る。ここ一番の見せ場である。自分の一撃に地球の命運が掛っていると考えると、心臓が喉から飛び出しそうになる。しかし、少しでもその緊張をほぐす為に、タリアもデュランダルも気を遣ってくれていた。それを受けて、チェンは集中を始める。
 一方、ユニウス・セブンから離脱し損ねてしまったシンとアレックスは、このまま単身で大気圏に突入するしかなくなっていた。破砕作業を焦ったのと、ジンの襲撃による妨害のせいでだ。

 

「何でもっと早く離脱しなかったんです!?これじゃあ迷子になっちまう!」
『君の方こそ何故残った?ここは俺に任せろといったじゃないか』
「あなただけ残して行けるわけ無いでしょう!」
『しかし――』

 

 と、その時強烈な光と衝撃波が二人を襲った。ミネルバから放たれたタンホイザーがユニウス・セブンを砕いたのだ。

 

「くぅぅぅ!」
「なぁぁぁ!?」

 

 タンホイザーの一撃は、上手く二人の居場所を避け、ユニウス・セブンをバラバラに砕く。チェンの放った一撃は、現時点で考えられる最上の成果を見せたのだった。

 

 バランスを崩したインパルス――シンは、機体が重力に引かれているのを感じた。即座に大気圏突入プログラムを起動させ、インパルスを安定させる。

 

「機体チェック、排熱システム・オールグリーン…あの人は?」

 

 プログラムが正常に作動しているのを確認し、すぐさまザク・ウォーリア――アレックスの機体を捜した。すると、自分の位置よりも下のほうで機体制御に四苦八苦しているのを発見した。

 

「くそっ!何やってんだ、あの人は!」

 

 軽く舌打ちをし、シンはインパルスをザク・ウォーリアに向かわせる。

 

 アレックスは、コックピットの中で大気圏突入による摩擦熱を感じていた。かなり熱い。自分がコーディネイターでなければ即座に気を失っていただろう。

 

「損傷した右脚の温度上昇が止まらない…このままでは――!」

 

 ジンとの戦闘で、アレックスのザク・ウォーリアは損傷していた。それが原因で、機体の温度が急激に上がっていた。このままでは降下中に摩擦熱で機体が爆散してしまうだろう。

 

「何とかならないか…」

 

 半ば諦める。しかし、その時コックピットの中を振動が襲った。何事かと思い、モニターに映る影を見る。

 

「インパルス!」
『あなただけを死なせるわけには行かないでしょうが!』

 

 耳に生意気な士官の声が聞こえてきた。シンといったか、その士官は。カガリに因縁を吹っかけてきた元オーブに在住していた少年だ。

 

「無茶だ!いくらインパルスのスラスターでも、二機分の重量は支えられない!」
『やってみなくちゃ、分からないでしょうが!』

 

 必死な声が耳に響く。彼も懸命な証拠だ。機体の制御が効かない現状では、彼に全てを託すしかない。後は運を天に任せ、無事に降下できるのを祈るだけだ。

 

「く…情け無い――!」

 

 久しぶりとはいえ、アレックスにとってはMSの操縦は得意分野だった。それが、離脱をし損ねて無謀にも大気圏に突入し、それを助けられて自分は祈るしかないのを歯痒く思っていた。無様だと思う。

 

(だが――)

 

 自分はまだこのようなところで死ぬわけには行かない。先の大戦から二年が経過しようとしていて、カガリも大分、国の首長として板についてきた。しかし、未だ世界情勢は不安定な中にある。実際、大西洋連邦は言い掛かりにも等しい圧力をかけてきた。
裏には、恐らくブルーコスモスの影が潜んでいるだろう。

 

(カガリには、俺がついていなければ――!)

 

 使命というものだろうか。アレックス――アスラン=ザラは、カガリに希望を託している。戦争中にひょんなことから彼女と出会い、心を通わせた。その時、彼はナチュラルもコーディネイターも同じ人間なのだと悟った。
お互いがナチュラルとコーディネイターであり、それがこうして信頼し合える立場にまで関係を発展させた。それは同時に、ナチュラルを信じ切れなかった父、パトリックとの決別であり、自らの足で歩き始めた証拠でもある。
 その築き上げてきた自分の希望を、様々な脅威から守る為、彼はカガリの側に居る。

 

《パトリック=ザラの執った道こそが、我等コーディネイターにとって唯一正しき道であったことが、何故分からん!》

 

 ブルーコスモスやテロリストの言うことなどに、カガリの目指す希望を渡してやるわけにはいかない。

 

《青き清浄なる世界の為に!》

 

 父が何だと言うのか。巨大ガンマ線砲・ジェネシスを地球に向け、そこに住む人々を根絶やしにしようとした彼の何処が正しいというのか。罪も無い人々を討つことに何の躊躇いも見せなかった彼は、プラントに向けて核を撃ってきたブルーコスモスと同じだ。

 

(母上、二コル――!)

 

 憎しみの炎は消さねばならない。彼も二年前に多くの大切な人たちを失った。

 

《殺したから殺されて…殺されたから殺して…それで最後は本当に幸せになるのかよ!えぇ!?》 

 

 しかし、それを持ち続けてはいけないのだ。それは自らも焼く事になる。かつて自らの隊長であったラウ=ル=クルーゼもそうだった。
 気付かせてくれたカガリ。それを守るのは、自分だ。

 

「…頼む」
『は?』

 

 アスランは、搾り出すように微かに声を出した。

 

「何とか無事に降下してくれ…」
『そりゃあ――こんな所で俺も死にたくないですから。やるに決まっているじゃないですか。伊達に赤を着ているわけじゃないんです』
「頼もしいな」

 

 若いな、と思う。自分とさして歳が違うわけでもないのに、自分より遥かに若く、情熱を持っている。

 

(いや、老け込んだのは自分か)

 

 経験が、自分に歳をとらせた。そう考えていいだろう。彼のような情熱を持った少年を見て、自分もああでありたかったと考える。そうすれば、あれ程にまで苦しまずに済んだだろう。しかし、彼は彼、自分は自分。誰もが同じ人間でない事は承知の上だ。
性分であると認めるしかない。

 

(熱いな……)

 

 モニターに映る紅い大地を見つめ、アスランは不思議な安堵感に包まれたまま瞳を閉じた。

 
 

「大丈夫かな?」
「でっけぇ隕石が落ちて来んだろ?大丈夫なわけないじゃない」
「でも、ここなら…」
「ばか!隕石が外れても津波とか色々あるんだよ!」
「それって、あたし達も死んじゃうってこと?パパやママみたいに死んじゃうってこと?」
「そ、それは――」

 

 薄暗いシェルターの中、子供たちがそれぞれに不安を口にし、身を寄せ合っている。それを見つめ、バルトフェルドは腕を組んで溜息をつく。
 ユニウス・セブンが地球に落下しようとしていると発表された。その報を受け、各政府からも避難勧告が出されていた。マルキオ邸に身を寄せていた面々は、そこに設置されていたシェルターに非難していた。

 

「皆、不安がっているな」
「それはそうよ。こんな状況では仕方ないわ」

 

 当たり前の事を口にするバルトフェルドに、マリアが絡んでくる。独り言のつもりだったので、その後は会話が続かなかった。

 

「う…うぅ……!」
「カミーユ、苦しがっている?」

 

 カツと並んで座り込んでいるカミーユが苦しそうにしているのに気付く。頭を抱え、うめき声を発している。

 

「どうしたの、カツ?」
「カミーユが苦しんでいるんです。さっきから――」
「苦しんでいる?」
「はい」

 

 眉を顰め、カミーユの様子に視線を移す。目を見開き、頭と脚を抱え込んで小さくなって震えている。身を守ろうとしているのか。

 

「カミーユ、ユニウスの事を分かっているんだわ」
「こんな状態で?」
「疲れているのよ。神経が過敏になり過ぎているわ」

 

 エマは身を屈め、そっとカミーユの肩を抱いた。そうする事で、カミーユの震えが少しだけ収まった。
 エマがカミーユを見つけた時、彼は精神に異常をきたしていた。自分で立って歩けない位、消耗していたのだ。
 エマは、カミーユがグリプス戦役の頃から少しずつ異変を抱え込んでいっていた事を知っていた。尤も、それに気付いたのは戦争も終盤に入った時期で、その頃には既に彼の精神は崩壊しかけていた。
それを顕著に感じたのは、ヘンケンを失い、呆けている自分に正気を戻させた出来事である。

 

《ヘンケン艦長やカツを殺した連中をこのままにしてはおきませんよ。そうでしょ?そうでなければこの宇宙(そら)だって息苦しくて――》

 

 その後カミーユが何を言っていたのかは分からない。彼は何かを言いかけてヘルメットのバイザーを上げたのだ。宇宙空間でである。普通の感覚を持っていれば、そんなことは絶対にしない。その時、エマはカミーユが少しおかしくなっていることを感じた。

 

(カミーユ、あの時何を言おうとしたの?)

 

 心で語りかけてみたが、案の定返事は聞こえない。哀しい事だと思う。自分が希望を託したカミーユ=ビダンは全てに疲れ果て、壊れてしまったのだから。

 

「あの…カミーユさんは大丈夫ですか?」

 

 カミーユを抱きしめていると、キラが心配そうに話しかけてきた。この少年もそうだ。カミーユと同じく、疲れている。二人の少年を見比べてみて、エマにはそれが良く分かった。

 

「大丈夫よ。少し怖がっているだけだから。それよりも、子供たちのほうが心配だわ。こんな狭い所に押し込まれ、怖い思いをしている」
「そうですね…僕、少し外の様子を見てきます」

 

 立ち上がり、シェルターの出口に向かう。しかし、それにバルトフェルドが待ったを掛けた。

 

「駄目だ。外は危険だ」
「音もあまり聞こえないですし、いつまでもこのままでは――」
「なら、俺が見に行ってくる。お前はここで待っていろ」
「でも――」

 

 その時、キラの服の裾を誰かが掴んだ。何事かと思い、その感覚の方を見やる。

 

「あ……」
「そら…が…落ちる……」

 

 すがり付いていたのはカミーユだった。這いずる様に自分にしがみ付き、顔を見上げている。その瞳に、キラは吸い込まれそうになった。

 

「カミーユ!」

 

 カツが慌ててカミーユを引き離しに掛る。しかし、それに抵抗するようにカミーユは掴んだ裾を離そうとはしない。

 

「どうしたんだカミーユ。迷惑を掛けちゃ駄目じゃないか」

 

 必死に引き離そうとするカツだが、何処にそんな力を隠していたのか、カミーユはキラから離れようとしない。

 

「彼も…連れて行きます」
「キラさん?」

 

 突然のキラの発言に、カツは驚く。

 

「連れてくって、何でです?」
「多分、この人も行きたがっているんじゃないかな?だったら――」

 

 カミーユを見つめ、キラは言う。縋るようでも頼むようでもない、何とも言えない表情に何故かそう思えた。

 

「病人を外に出すんですか?」
「そういうつもりじゃないけど、カミーユさんは出たがっていると思うんだ」
「キラさんにそんな事分かるわけ無いじゃないですか」

 

「いいえ、カツ。もしかしたらキラ君の言う通りかもしれないわ」
「エマさん?」

 

 キラに抗するカツを遮るように、エマが口を差し込んでくる。

 

「私も行くわ。カミーユが何を感じているのか、それを確かめたいの」
「なら、僕も行きます。エマさんやキラさんの言っていることが本当かどうか――」

 

 自分の意見を否定され、多少不貞腐れた様子のカツ。本当にエマやキラの言っていることが真実なのか、カミーユの反応を見て確かめてやろうと思っていた。

 

「俺だけで十分なんだけどねぇ。じゃあ、俺とエマとキラとカツ。それとカミーユの五人で外の様子を見てくる。導師、カリダさん、マリア、ラクスは子供たちの事を頼みます」
「分かりました。しかし、お気をつけ下さい」
「承知しております」

 

 マルキオの警告にバルトフェルドが応える。

 

「彼は僕が連れて行こう」
「すみません」
「お構いなく。この四人なら、僕が適任でしょう」

 

 バルトフェルドはカミーユを背負うと、お礼を述べるエマに軽く微笑んだ。五人は連れ立って、シェルターの外へ出て行く。
 外へ出ると、最初に目に飛び込んできたのは、重く圧し掛かるような灰色の雲だった。雨の気配がする。そのまま一行は、海の見える高台の上に出た。

 

「これは…!」

 

 雲の隙間から、赤い火の玉が次々と降り注いでいるのが見える。あるものは途中で燃え尽き、あるものは水平線の彼方に消えた。砕けたユニウス・セブンの破片が地表に降り注いでいるのだ。
 キラの目に飛び込んできたその光景は、終末を予感させる地獄絵図のように見えた。

 

「海が時化始めている。これは大きな波が来るぞ」

 

 荒波うねる海を見て、バルトフェルドは呟く。

 

「隕石の落下はオーブには――」
「来ないだろうが、導師宅のシェルターでは安心できんな。海に近すぎる」

 

 カツの質問に、バルトフェルドは険しい顔つきで応えた。

 

「では…」
「見に来てよかったな。あのままあそこに居たんじゃ、危なかった」

 

 マルキオの屋敷は海に近い。そのまま待ち続けていたら、津波に飲み込まれ、全滅していただろう。

 

「カミーユ、何を見てるんだ?」

 

 カミーユの様子に目を配るカツが気付く。バルトフェルドに背負われたカミーユは、その光景に吸い込まれるように見つめている。

 

「ユニウスの意味を感じ取っているのよ。カミーユはそういう子ですもの」
「あれに眠っている人達の悲鳴を聞いているのか…」

 

 エマの言葉に、カツは目線を地獄絵図に戻した。

 

「カミーユさんって、どういう人なんです?」

 

 二人の会話を聞いていたのか、キラが訊ねてきた。興味を持ったのかもしれない。

 

「そういう神経を持った子よ。ユニウスのようなモノが落ちてくるとなれば、それを一番敏感に察知するような」
「優しい方なんですね」
「そのせいで、少し疲れてしまったけどね」

 

 あなたもそうなんでしょ、と言おうとしてエマは止めた。それを言えば、彼の負担になるような気がしたからだ。彼本人も分かっているが故に、他人から自覚させられた時の脆さは意外かもしれない。キラの繊細そうな顔立ちは、エマにそう思わせた。

 

「さて、いつまでもここでこうしている訳にもいくまい。もどって高台への避難を誘導しよう。時間は待っちゃくれない」

 

 バルトフェルドが告げ、一同は踵を返してシェルターへの帰途へつく。

 

 荒廃する大地。ユニウス・セブンの落下は、ミネルバの頑張りを余所にナチュラル対コーディネイターの第二ラウンドを告げるゴングとなってしまう。ザフトの新型を強奪した謎の部隊が、連合軍の特殊部隊であるファントムペインだったからだ。
 奪取したMSと共に持ち帰ったユニウス・セブンでの記録は、ブルーコスモスの面々を動かすのには十分だった。映っていたジン。それがコーディネイターの仕業であると連合各国を誘導し始める。

 

 そして、地球へと降下し、カガリを送り届ける為にオーブ連合首長国へ向かうミネルバ。出会いの時が迫っていた。