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◆BiueBUQBNg氏_GジェネDS Appendix・序_01

Last-modified: 2014-03-10 (月) 16:18:59
 

        SD Gundam G-Generation DS Appendix Session:序(ついで)

 

   ―Prologue―

 

 サイド3に土を納入した業者は良心的だったらしい。
 元エゥーゴ所属連邦軍中尉、現ジオニック社民生MS開発部実地試用課サイド3主任コウ・ウラキが、見ず知らずの民間人に殴られて倒れたときにまず思ったのはそのことだった。地球の連邦軍士官学校校庭の土の感触を、彼はラグビーをやっていたためよく覚えていた。コロニーでその懐かしい感触を思い出すとは予想外だ。お陰で、路地裏で突然殴られたという状況を一瞬忘れた。

 

「連邦の蛆虫!!」

 

 そう喚く痩せぎすの中年男の顔色は、明らかに泥酔している。黙って殴られておこうと思ったとき、その男の姿が視界から消えた。大きな音が同時にしたことに気付くのが、遅れた。

 

「貴様もジオン国民なら、もっとマシな屈辱の雪ぎ方を見つけられる筈だ」

 

 男性的な声の模範とすべき冷静な叱咤が街路に響く。それだけでアナベル・ガトーだと気付く。
 不揃いな足音が闇の奥へ消えていった。中年男の背中に泥で形作られた足跡が見える。

 

「武器を捨てる、という覚悟はいいが、心配する者もいるぞ」

 

 二つの影。一つが飛び出して、倒れているコウの脇に膝をつき、軽い痣の付いた顔を覗き込む。

 

「……ったく、この娘が大慌てで飛び込んできたと思ったら、黙って殴られてるなんて、タマ付いてんのか!」

 

 路地の入り口に佇んでいる女性――シーマ・ガラハウの声がする。

 

「助けられたんだから有難うぐらい言ったらどうだい!」

 

 そういうと彼女のカツーンとしたハイヒールの音が響き、遠くなっていった。
 少女の目は幽かに歪み、赤い瞳はじっとコウを見ている。そんな心配そうな顔をするなよ、声をかけようとしたが、口の中が切れて、言葉にならない。

 
 

   ―1st scene―

 

 木星帝国のクラックス・ドゥガチ総帥が大気圏で燃え尽きた一ヵ月後、コウ・ウラキ中尉はロンド・ベル臨時司令ブライト・ノアに辞表を提出した。引き止められる謂れはない。連邦・ジオン・アクシズ・ブルーコスモス・ザフト・OZ・ネオジオン・ムーンレイス等等、誰も名前を覚え尽くしてはいない程多くの勢力が入り乱れた戦いは急激に終息していた。残党狩りも、ほぼ締めの段階に入りつつある。彼は自分がそれなり以上の腕前を持っていると自負してはいた。しかし同時に『ニュータイプ』と呼ばれる人種には勝てないとも認めていた。
 真空を伝う脳波を察知し、生身の肉体以上にモビルスーツを操る新人類。だが、彼らの多くはモビルスーツ操縦以外の分野では驚くほど能力が低い場合が多かった。MSの整備・開発にもタッチした事がある自分が席を空けるべきだと、決意したのである。理由はもう一つ有る。

 

「少し羨ましくもあるな、正直な話」

 

 ロンドベルの背骨は意外なことを言う。

 

「俺は、ハロを作った時以上に楽しいと思ったことは無い。そんな風にモビルスーツを開発したかったんだがな」

 

 というと、アムロ・レイ大尉はコウと共通の故郷のサケを口の中に放り込み、飲み下した。
 昔読んだアングラ文書とは違うな。コウは大尉の成長を実感した。コウの実力が、必要欠くべからざるという
程のものではない、と分かっていても、色にも出さず、おだててさえいる。

 

「自分はもう、これ以上モビルスーツを嫌いにはなりたくないのです」

 

 一升瓶からぐい飲みに注ぎ、一口だけ飲んでから、応えた。

 

「小官にとっての人生最大の感激は、士官学校を出た直後、パイロット過程で始めてザクのシートに座ったときです。しかし、本来モビルスーツは宇宙開発の道具であって、兵器では有りません。これ以上軍でパイロットを続けていたら、その感動ですら、忌まわしい物になりそうな気がして」
「それで、民間に行きたいなんて言い出したのか」
「勝手な申し出であることは承知していますが……」
「いいさ。そういう気持ちは俺にも分かる。長いことパイロットをやっているとな、潰れるのも多いのさ」

 

 酷く重大で痛いことを努めて淡々という口調が、人気の少ない士官クラブに響く。

 

「どんなことをやりたいんだ?」
「実地でモビルスーツを扱いつつ、それを研究開発にフィードバックさせるような作業が出来たら、と考えてます」
「確かに君には向いているな。知り合いで機械工学に詳しいパイロットを探しているのがいるから、連絡する」
「是非お願いします」

 

 辞表を出した3日後に戦闘部長に誘われて以上のような会話を交わし、さらに2週間後、彼はサイド3――ジオン共和国にいた。
 アムロ大尉とも繋がりの深いアナハイム社に入るものと思ってはいたが、まさに復興の途上であると、詮索はしなかった。

 

 とはいえ、もう一つ与えられた仕事については納得しきれなかったのだが。

 
 

   ―2nd scene―

 

 出発の3日前に、再びアムロから呼び出された。午後というのに士官クラブは閑散としている。
 皆が自分の場所へと戻ったのか、と強く思った。

 

「ディー・トリエルだが、彼女をサイド3に帰す事にしたから連れてってやってくれ」
「いいですよ」
「それと、向こうで生活の面倒も見てやって欲しい。身寄りもいないし、ニタ研も予算が削られて苦しいらしい」
「は?」

 

 何を言ってるのか分からない。

 

「ええっと……彼女は女ですが」
「女だから『彼女』なんだ。男だったら『彼』とよんでいる」
「誤魔化さないでください、異性に面倒見させるなんて何考えてるんですか! あっちにはシーマさんとか女もいるでしょ!」
「彼女はジオン共和国軍艦隊勤務だ。そんな仕事は頼めない」
「ライデンさんとかマツナガさんとか、家にメイドがいそうな人もいるじゃないですか」
「駄目だ。あのラインだと、情報が漏れる可能性がある」
「どんな情報が誰に漏れるんですか」

 

 するとアムロは一瞬黙り、全人類の苦悩を背負った上に原液の青汁を一息に飲み下したような表情でカウンターを睨み、吐き捨てるように答えた。

 

「……シャアが生きているらしいんだ」
「そりゃそうでしょ。大尉が生きているぐらいなんですし」

 

 コウがいっているのは、「シャアの叛乱」――ギレン・ザビ近衛レギオン部隊との戦いの直後、ロンド・ベルの前身であるエゥーゴから姿を眩ましたクワトロ・バジーナことシャア・アズナブルが地球全体に対して挑んだ戦いの、末尾を飾る一つの奇跡的な出来事である。
 シャア率いるネオ・ジオン軍団は壊滅するも、アースノイド全てに対する死刑執行である「アクシズ落とし」は成功したかに見えた。しかし、土壇場になって超自然的現象によりアクシズは地球から離れていったのだ。愛機νガンダムでアクシズを押し返そうとしたアムロは救出された。が、愛機サザビーを破壊され脱出ポットをアムロに捕獲されていたシャアは、騒ぎが落ち着いて彼を探そうとする暇人が現れたとき、初めていないと分かったのであった。死体も見つからなかった。

 

「あっさりと言うなあ」
「超常現象の類にはもう慣れました。で、それと僕が彼女のお守りをするのと何の関係が?」
「あいつはロリコンだ」
「常識です」
「一々混ぜっ返すな。ともかくヤツの毒牙から彼女を守るためだ。マツナガ氏かライデン氏の邸宅に預けるというのも考えたが、何しろシャアの戦友だ。結託するか幻惑するかして彼女を……。そんな訳だ、責任重大だぞ」
「はぁ」
「それに、彼女は君に懐いてもいるしな。君は迷惑か?必要な手当ては用意させるぞ」
「別に、迷惑なんて事はないですよ。妹、とまでは思っていませんが」
「そのうち思うようになるさ」

 
 

   ―3rd scene―

 

 不慣れな仕事を一つ抱えることになった。コウの脳内でシャアに対する格付けが4ランクほど下がり、軍法会議で彼に有罪判決を下した法務士官以下となる。
 ふと、トリエルとであったときの事を思い出した。

 

 人類が宇宙で生活することで、新たな可能性が拓けるのではないか、という憶測は長年細々と息づいてきた。それがオカルトの殻を破ったのが、一年戦争においてである。しかしニュータイプの登場は、強化人間という副産物を産んだ。
 シャアの叛乱当時は技術も進みそのようなことは無くなったが、グリプス戦役においては極度の情緒不安・記憶の錯乱を被強化者に強いたのである。
 そういった不幸な革新の一つに、マシンチャイルドがある。古くは中世期海軍のデータリンク――各艦艇のマザー・コンピュータを緊密にリンク・同期させることで、艦隊をあたかも一つの艦であるかのように統一的かつ自在に操る――にまで遡る発想を基にした物だ。時間軸歪曲転移によって黒歴史の回避を図らんとしたムーンレイスの先遣隊がギレン・ザビ指揮下の部隊に捕まった。そこから得られた技術を応用して作られている。
 このシステムはマシンチャイルドとセンチュリオ・シリーズと呼ばれるMSからなる。前者はナノマシンによって高速に培養された、MSの運用に特化し、護身程度の戦闘能力を付与されたサイボーグ肉体を持ったパイロットである。
 最大の特徴は「自我」というものを持たないことだ。それにより各個体が一体となり、極めて効率的な集団戦闘を実現した。後者は彼女達の搭乗機だ。月光蝶を応用した技術によって、マシンチャイルド――ギレンの兵団では「レギオン」と呼ばれていた――の呼びかけに応じ、周囲にある物質から数分で構成され、姿を現すという信じられない機能を実装している。

 

 ディー・トリエルは、レギオンの開発過程で生み出されたプロトタイプである。当時は「試作D号」、或いは「Dトライアル」と呼ばれていた。要求性能を満たせず破棄されかかっていたところを、彼女に自我が芽生えているのに気付いた研究員に「戦い続けて自分の人生を見出せ」とプログラムされた上で逃亡させられたのである。研究員は彼女の預け先にエゥーゴを選び、勤務先であるサイド2の最寄のエゥーゴのアジトの近くで彼女を放した。その意図は成功したが、研究員のその後は杳として知れない。
 トリエルを最初に発見・保護したのはコウだった。当時彼はMS整備工場に勤務し、エゥーゴから勧誘を受けていたところだった。彼のパイロットとしての経験、『星の屑』作戦における抗命により1年の懲役を宣告され、数ヶ月で罪状消失で釈放・除隊、という経歴に期する事あってのリクルートである。彼自身は軍隊にも戦闘にもうんざりしていたところだったが、偶然がそれを許さなかった。

 
 

   ―4th scene―

 

 その日の夕方、例の如く手早くノルマを片付けた彼は、日課のジム通いの後、気分を変えて隣町の酒場に行こうと3276通りを歩いていた。それが運命の分かれ目であった。彼自身としても、すぐ側の見知らぬ少女を銃弾が掠めるのを眼にして、軍隊時代に植えつけられた本能によって即座に彼女の手を引いて路地に連れ込んだときには、流石にそうと気付かなかったのだが。

 

「警察に電話を……ってえぇ!?」

 

 路地の入り口から踏み込んできたのは警官だったが、彼らの構えたライフルから伸びるレーザーポインターは
ウラキ自身の胸に集中していた。またもや本能的に身をかがめるや、脇にあった丸い金属製のゴミ箱を転がした。
 金属音と銃声が飛び交うのを尻目に雑居ビルの裏口に転がり込む。自分でも後で考えてなぜそんなことが出来たのか分からないが、咄嗟に地下(コロニー外殻部)に通じるライフライン・パイプへの鍵を持っていた工具でこじ開けて潜り込んでいた。
 消されかねない人物であるとは自認していたが、抵抗もせず死ぬのは納得できない。

 

「追ってるのは僕らしい。君は今来た道をもどるといいよ」
「……?……!!……」

 

 彼女は口をつぐんだまま、ウラキの袖を掴んでいた。表情からは拒否の意思らしいものが読み取れる。

 

「……物騒なご時世だからね、そういうこともあるか」

 

 彼はそういって今までの平穏な生活に別れを告げると、エゥーゴのリクルーターに指定された専用回線で連絡をとり始めた。やや興奮気味な相手に緊急事態であることを告げ、指示を仰ぐ。すぐさま行き先を指定された。
 これも運命か、などと呟きつつガス・電気・通信等のパイプの隙間を匍匐前進し、アジトへと向かう。
 携帯ライトを付けて前方を観察した後、彼はその少女の顔をよく見ていないことに気付き、後にライトを向けて見た。
 驚くほど幼い面立ちの上に淡くブルーに輝く髪と、意外に太い眉。そして赤い瞳。

 
 

   ―5th scene―

 

 全身を埃まみれにした二人を迎えたのは、意外にもかつてのウラキの上官であるサウス・バニングであった。

 

「良く来たなウラキ、では逃げるぞ」
「……すいません、この機体は動かせません」
「俺もだ」

 

 エゥーゴのアジトはコロニーに無数に開けられた外部への穴の一つに隣接して設置されていた。MSを直接エントリーさせ、整備・保管する小さなポートである。間の悪い事に、その時本部から送られていたのは、いかなる手違いによるものか、最新型――つまり多くのパイロットにとって馴染みの無い――の黄金の機体、MSN-00100こと『百式』であったのだ。
 やっとの思いで出港したものの、設計思想が斬新すぎたため、神ならぬ二人の操作は稚拙だった。今にも追ってきた2機のハイザックの射程に捕らえられかかった時

 

「……!……」

 

 ああでもないこうでもないと怒鳴りあっていた二人からトリエルが操縦桿を奪い取るや否や、近い方の敵機に
ビームライフルを命中させ、そのスキに近接してヒートホークを横から薙ぎ払おうとしたもう一機にバルカンを
浴びせてバラバラに引き裂いた。

 

「……誰だ?いやそもそも何だ?それ以前に一体どういう理由で?」
「自分の方が教えてもらいたいぐらいです!」

 

 二人とも進展の速さに激しく混乱していた。只一人冷静そうにしていた奴はというと

 

「君、名前は?」
「……?」
「首から名札が下げてあるぞ、ウラキ」
「幼稚園児?見たところ中学生っぽいですけど」

 

 喋らなかった。

 

 そして3人はバニングの操縦でエゥーゴ・サイド2本部がある11バンチに入港した。そこの責任者もウラキのかつての上官だった。
 エイパー・シナプス大佐。ティターンズ内部に自らを消そうとする動きがあることに気付き、バニングをはじめとする同調者とかたらって乗艦アルビオンごとエゥーゴに参加したのだった。もう一つコウとの再会を待って
いたのが、シナプスの脱出時にたまたまアルビオンと接続されていた、デラーズフリートとの戦いの後半での搭乗機、RX-78GP03D『デンドロビウム』である。
 それからコウとトリエルは流されるようにしてエゥーゴへ参加し、それぞれに慣れている物を、とコウには
デンドロビウムが、トリエルには百式が専有として与えられた。一ヶ月の訓練後、コウ・トリエル・バニングは急遽アルビオン隊に編入され、アーガマを中核とする友軍と合流すべく、月面都市アンマンへの途に就いた。

 
 

 ――そして、全地球圏を巻き込む半年間の戦いが始まる――

 
 

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