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『ONE PIECE』VS『SEED』!! 514氏_第04話

Last-modified: 2013-12-24 (火) 17:29:23

 大砲の煙が晴れないうちに四人は移動を開始した。
 ルフィ、シン、ゾロの三人は隣の家の屋根を伝って移動し、数軒先で自分達を追ってくる様子がないことを確認してから地面に降りた。ナミは別のルートをいったらしい。
 二人でルフィが入った檻を引きずりながら歩いているわけだが、どちらも血は出っ放しで、傷の深さではゾロのほうが上だが、シンもSEEDを無理矢理使ったせいか目眩や頭痛が襲ってきている。

「もうだいぶ酒場からは離れた。とりあえずすぐには追っちゃ来ねえだろう。しかし、いったん退いたはいいがこの檻は厄介だな」
「そうなんだよ。これが開かねえいとあいつが来ても何もできねえよ」
「おまえさ、ゴムなんだから引っ張れば間から出てこれるんじゃねえか?」
「じゃあやってみてくれよ」
「いや・・・今は無理・・・」
「ダメだ、血がたりねえ。これ以上歩けん・・・」

 そこで二人は倒れこんでしまった。
 ゾロとルフィが犬がどうしたと騒いでいるが、シンはそれに参加せず道の真ん中にへばりつく。
 今から考えればMSの戦闘なんて楽なものだった。どんなに戦ってもダメージを負うのは機体のほうで、パイロットなんてせいぜい疲れるだけ。少なくとも、こんなに死にそうになった経験なんてない。
 改めてシンは自分の代わりなって傷ついていったインパルスやデスティニーに感謝の念を送る。
 そこに先ほどはぐれたナミがやってきた。

「あんた達いったい何やってんの、三人して。こんな道端で寝てたらバギーに見つかっちゃうわよ」
「「「よお、航海士」」」
「誰がよ!! お礼をしに来ただけよ。助けてもらったからね」
「礼?」

 そう言ってナミは何かを投げた。

「鍵! 檻の鍵取って来てくれたのか!」
「まあね。われながらバカだったと思うわ。他に海図も宝も何一つ盗めなかったもの、そのお陰で」
「はーっ、どうしようかと思ってたんだ、この檻!」
「手間が一つはぶけたよ」
「これで一応逃げた苦労が報われるな」
「あ」
 
 パク・・・ゴクン・・・
 シーーン・・・・・・

 犬が目の前にあった鍵を飲み込んでしまう。

 いくらなんでもベタ過ぎるだろうと思ってみても現実が変わるわけでもなく、シンは今まで何とか座っていたが、気力が尽きたように崩れ落ちた。
 ルフィが犬と喧嘩を始めるが、もちろんそんなことで鍵が出てくるわけがない。

「くら、小童ども! シュシュをいじめるんじゃねっ!!」

 突然、怒鳴り声が響いた。聞こえてきた方に目をやると、武装をした老人がこちらに向ってくる。

「シュシュ?」
「誰だ、おっさん」
「わしか。わしはこの町の長さながらの町長じゃ。おまえたちこそ何者じゃ」

 プードルと名乗ったその老人は、事情を話すとあっさりと警戒心を解いてくれた。バギーの一味ではないと言うことが大きかったようだ。
 怪我人がいるのを見て、プードルは彼らを医者がいる避難所に連れて行こうとしたが、ゾロは寝れば治ると主張し、シンもケガ自体より後遺症のほうが重大であると判断しているため、結局プードルの自宅で休ませてもらうことになった。
 簡単に手当てをした後、特にやることもなく、正確に言えばなにもやる気が起きずにボーっとしていたシンの耳に猛獣の雄叫びが入ってきたのは、それから十分も経たなかった頃である。
 外にいる人間でまともに戦えそうな者がいないことを思い出したシンが重い頭を抱えながら外に出ると、目の前を通り過ぎようとしたナミとプードルに腕をつかまれ、数軒先の曲がり角まで引っ張られた。

「何すんだよ」
「あんた状況わかってないでしょ! やばい奴がこっちに来てんのよ!」
「やばい奴?」
「『猛獣使いのモージ』というバギー一味の副船長じゃ。見つかったら殺されてしまうぞ!」
「猛獣使いねえ」

 どんな奴かと角から顔を出して覗いてみれば、たしかにライオンに乗った男が見える。置いてけぼりにされたルフィの前で止まりなにやら話しかけたが、二三言言葉を交わすとモージは怒り始めてしまった。バギーのときもそうだったが、ルフィは基本的に何も考えていないので、挑発とも取れるような発言を多々行う。今回もそうらしい。

「あいつなんだか挑発してるんじゃないの・・・・・・」
「バカか、あいつは・・・」

 横にいる二人はその様子に驚くが、思い返せば、旅の一番最初でルフィが倒したフーシャ村の近海の主は間違いなくあのライオンの何倍も大きかった。乗っている男の方もそれほど戦闘能力が高いということも無さそうだし問題はないとシンは考えた。
 結局、耐え切れなくなったモージがライオンをけしかけさせ、檻を破壊した後ルフィを吹き飛ばしはしたが、ゴム人間に打撃が通用する筈もなく、逆にこちらの厄介ごとを解決してくれたことになる。
 
「ほら、わかったでしょ! あんな奴に敵う訳ないんだからさっさと逃げるわよ!」
「仲間が殺されて悔しいかもしれんが、お前さんまで死んじゃあどうしようもないわい!」
「でもさ、あいつは俺たちを追ってきたんだろ? だったら早いほうがいい」
「は!? あんた、自分がなに言ってるか分かってる? バカじゃないの!」
「ハハ、昔からよく言われる・・・・・・逃げたくないから海賊になったんだ。敵に背を向けるなんて絶対に嫌だね」
「ちょっと・・・」

 引き止められるのを無視したシンが角を曲がろうとして急に立ち止まった。ナミとプードルもシンと同じ方を見て言葉を失う。

「え・・・」
「シュシュ・・・?」

 その先ではシュシュがペットフード店に入ろうとしているモージとライオンに何度もたち向っていた。もちろんただの犬がライオンに勝てるわけがない。軽く払われるだけで吹き飛ばされ、足にすがり付いても壁や地面にたたきつけられる。しかし、あっという間にボロボロにされながらもシュシュは諦めようとはしない。

「あいつ、なんであんなに・・・」
「あの店は死んだ飼い主の形見、シュシュの宝なんじゃ。でも、あんなになるまで守ろうとするとは・・・」

 自分の大切なもののために戦う姿にシンは昔の自分が思い出す。さっきまで確かにあったはずのそれが突然フッと消えてしまった時の、あの心の中を覆いつくすような苦しみや悲しみ、それらの激情が去った後のどうしようもない無力感。
 もうあんな事は他人が経験するのだって見たくはない。
 第一、ここであの犬の命をかけた心意気に何も応えることが出来ないのであれば、それでは、

(男がすたるだろ!!)

 そう思うや否やシンは走り出した。先ほどとは違い、感情が高ぶっているためSEEDも自然に発動し、怪我をしているなど嘘のようなスピードに達する。
 今まさにライオンの腕がシュシュに振り下ろされようとしている。猛スピードで迫ったシンがスライディングの要領で滑り込むと、シュシュを抱き上げてその一撃をかわした。
 さらに、相手が自分に反応し切れていないとみると、空いているほうの腕を軸に独楽のように一回転し、勢いをつけてライオンの顔面に両脚で二連蹴りを叩き込んだ。
 完全に不意を突かれたライオンは簡単に吹っ飛びダウンし、その背に乗っていたモージも地面に投げ出された。自分とリッチーのコンビに絶対の自信を持っている彼には、そのリッチーがいとも簡単に倒されるなどありえないことだった。
 あまりのことに混乱してしまうが、目の前の男の風貌があらかじめ聞いていたものと一致していることに気づく。

「お、お前!! コソ泥の一味の仲間だな!!」
「それがどうした」
「何しにきたんだ!? 死んだ仲間の復讐か!!」
「復讐? 俺はただこいつの代わりにこいつの宝を守るために来ただけだ。それにルフィなら生きてるぞ」
「なに言ってるんだ。あれで生きてる奴なんているわけ・・・・・・」
「あいつはゴムゴムの実を食べたゴム人間だからな。どんなに強くったって、打撃は全く効かないんだ」
「な! 悪魔の実だと・・・!?」
「まあ、信じる信じないは自由さ。それよりどうする」
「え・・・?」
「言っただろ、俺はこの犬の代わりだって。どうせ、あのライオンがいないんじゃあ何もできないだろうから、お前がこれ以上何もしないって言うなら俺たちも何もしない。さっさとそこのライオンを連れて帰れ」

 シンはそう言うと抱いていたシュシュを地面に下ろした。
 もちろん、その瞬間、シンの視線はモージから外される。
 モージとてこの大海賊時代において野望を持って海に出て、リッチーとともに腕っ節だけで海賊の一団の副船長になった男である。そんな自分になめきった態度をとる目の前の男に猛然と怒りが込み上げてくる。相手がいかに得体の知れないやつだろうと名もないコソ泥から逃げることなど、彼の海賊としてのプライドが許しはしない。
 それに、言われたことも何も出来ずにおめおめと帰ってきたことが知れれば、バギー船長からどんな罰を受けるかもわからない。
 思い知らせてやるとばかりに彼はシンに殴りかかった。
 しかし、次の瞬間、

 バキッ!

 シンが振り向き様に斜め下からアッパー気味に放ったカウンターがモージに命中すると、そのまま彼は空中に放物線を描き、裏の通りへと飛んでいく。
 さらにシンは気を失ったままのライオンに駆け寄り、両足をつかむとジャイアントスイングを行い、モージと同じ方向に放り投げた。

 ドスンという音があたりに響き、シンはSEEDを解除して座り込む。すると、安全を確認したのかナミとプードル、さらに後ろからルフィがこちらにやってきた。

「よう」
「あんた・・・ホントに勝っちゃったのね・・・」
「あたりまえだろ。俺の仲間があの程度に負けるか」
「おぬしが威張ってどうするんじゃ・・・・・・小童、シュシュはどこじゃ?」
「ん? あいつなら、そこさ」

 シンがさした方を見ると、シュシュが先ほどまでと寸分違わぬ様子でペットフード店の前に座っていた。違うのはライオンと戦って増えた傷くらいのものである。あれほどの目にあってもシュシュはこの店から離れようとは思わないようだ。
 その姿にプードルが何も言えないでいると、ルフィが突然店の中に入り商品の一つを持って出てきて、隣に座りそれをシュシュに差し出した。

「腹減っただろ? お前が守ったお前の宝だ。腹いっぱい食え。お前はよくやったよ。よく戦った。まあ、見ちゃいねえけど、大体わかる。そうだろ、シン」
「ああ。お前は自分のできることを精一杯やった。俺たちは今からあいつら全員ぶっ飛ばし行く。そうすれば、一件落着だ。だから後は俺たちに任せて、お前はゆっくり休めばいいさ」

 シュシュはそれでも考え込むように黙っていたが、やがてペットフードの箱をくわえるとスタスタと歩き始め、数歩歩いたところで振り返りこちらに向けて幾度か吼えた。

「おう!! お前も頑張れよ!!」

 何かを感じ取ったのか、ルフィが応える。ついでにシンも言葉は出さなかったが、シュシュに手を振り返事を返した。

 この後、麦わら一味はバギー海賊団に殴り込みをかけることになるのだが、さすがに一日のSEED連続使用がたたったのか、シンは頭痛とめまいでフラフラになってしまう。せめてザコの相手くらいはしようと息巻いたが、ルフィがゴムゴムの風船で特製バギー玉を跳ね返したせいでその役も必要なくなり、結局、シンは一番最初にダウンしてしまうのだった。

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