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『ONE PIECE』VS『SEED』!! 514氏_第06話

Last-modified: 2013-12-24 (火) 17:32:37

 夜が明け、まだ東に低い太陽からの光が一日の始まりを告げるために優しく地上を照らすなか、そこだけは血の匂いと殺気が充満し、いつもとはまったく異なった光景がひろがっていた。海岸からシロップ村へと続く坂道で繰り広げられている我らが麦わら海賊団プラス1とクロネコ海賊団との死闘である。
 戦闘もいよいよ佳境に入り、両陣営の最強戦力が激突しようとしていた。

「敵わなくたって・・・守るんだ・・・・・・! あいつらは俺が守る!!」

 ジャンゴに追われているカヤたちを助けに行くためウソップも森へ走ろうとしたが、邪魔に入ったニャ-バンブラザーズをシンとゾロが押さえつけたものの、血を流しすぎた彼の体が言うことを聞いてくれなかった。
 地面に無様に倒れこみ、それでもウソップは叫ぶ。

「俺はウソップ海賊団のキャプテンで・・・俺は勇敢なる海の戦士だ! 村のもんには指一本触れさせねェ!」

 その言葉を聞きながらシンは自らが押さえつけているシャムの顔を見た。
 催眠術により理性を押さえ込まれた人間味を失った瞳がどうしても守りたかった少女、ステラのそれとどことなく重なる。
 もちろん、だからと言ってこの男に手加減をしようとも思わない。強いて言えば昔の自分がどれだけ無力だったかが思い起こされるが、それは間違いなく感傷の類であろう。ただ、言ってしまえばウソップに協力しているのも元を正せばそこに行き着いてしまう。
 シュシュのときもそうだったが、大切なものを守りたいが力が無い者の代わりに戦うというのは聞こえはいいが傲慢な偽善、自己満足なのかもしれない。そういった人たちを助けることでかつてのみっともない自分を忘れたいのかもしれないし、そもそも自分は彼らほど純粋な気持ちで戦っていたのかさえ今となっては疑問が残る。
 しかし、

「俺にもあれくらいの根性がはじめっからあればなァ・・・」

 彼は失う痛みと悲しみを知っている。見過ごすことなど出来るはずもない。このような状況に立ち会ってしまったらやはり何度だろうと同じことをするに違いないだろう。それが過去の自分に対する、海賊シン・アスカ(あるいはアスカ・シン)なりのケジメというかふんぎりのつけ方なのである。

「フゥーー!」
「おわッ」

 柄にもないことを考えて生まれた隙をつかれ、シャムが力まかせにシンを振り払って襲い掛かかった。
 突進とともに振り下ろされたカギヅメをかわし、すぐさま放たれた二撃目をかろうじて受け止めると、相手の顔面に空いてるほうの拳を入れようとしたが、今度はこちらがかわされてしまう。
 そのまま打撃の応酬に入るがシャムの猛攻に押され始め、ついに捌ききれなくなった一発がもろに胴体を捉えて反対側の壁まで殴り飛ばされた。
 本来シャムはスピードで相手を翻弄するタイプである。さすがに理性も何もないような今の状態ではお得意の『ネコ○○』といった小細工は使えないようだが、その存在を知らないシンにとってはなんらプラス要素になりえない。
 ふらっと立ち上がると何かがのどをこみ上げるような感じがして少しむせると、口を押さえた手の平に血がついていた。人生初の血ヘドである。
 普通に大ダメージの筈だが、シンはそれを見て怖気つくどころかニヤッと笑い、

「強くなってこの程度かよ」

 あろうことかさらに挑発した。
 外からでもわかるほど怒り心頭になったシャムが先ほど以上の速度で突撃してくる。さすがにこれを食らえばシャレにならないだろう。それでもシンはまだ不敵な笑みを浮かべてやけに余裕がある。

 さて、ここから少し本筋から離れた話を始めるが、まあ聞いていただきたい。
 ご存知の通りシン・アスカが元々いたのは、まぁ言うまでもないが、空を飛ぶMS、宇宙に浮かぶスーペースコロニー、遺伝子操作を受けた人々などが当然のように存在する正に科学万能の世界である。まるで迷い込むようにしてこちらにやって来たのはおよそ一年前。そして現在では、立派に海賊の一員としてかつての常識では考えられないような戦いを繰り広げているわけだ。
 しかし考えてももらいたい。たしかにシンは軍人をやっていたのである程度の訓練も受けてきてはいるのだが、いかんせんMSや戦艦などの兵器を用いた大規模戦闘を前提としている以上、敵拠点への侵入や暗殺を任務とするような特殊部隊を除き、兵士に求められる格闘スキルは護身術の域をそう出るものではない。
 そこから一転、こちらの世界の科学技術はどう見積もっても近代以前であり、もちろん銃器の性能や普及率もそれに順ずるわけだから、戦闘行為となればどうしても素手か刃物を使うかが圧倒的主流となる。
 またもう一つの大きな違いは人間と言う生命体の潜在能力がいくらなんでも高すぎると言うことだ。一般人はあちらもこちらも似たようなものだが、それ以外の連中の身体的素質はもはやコーディネイターを比較対象にする気すらうせる。そこに悪魔の実なんて加わったときには人外魔境も同然だ。シンは最初、ルフィが自分と同じ生き物だとは思えなかった。認めたくもなかったが。
 いずれもシンにとっては不利な条件である。正直なところ彼はどれくらい強いのか。
 身体能力という点では、残念ながらルフィやゾロに比べて明らかに劣っていると言わざるを得ない。こちらに来た影響かシンも飛躍的に身体能力を上昇させはしたが、さすがに子供の時から世界の頂点を目指して訓練を続けてきたルフィとゾロに一日の長があるといえよう。
 その他にも、ルフィには悪魔の実によって手に入れたゴムの体、ゾロには独自かつ他に類を見ない三刀流の剣術、といったようにそれぞれが固有のオリジナリティを持っており、それが戦闘における大きなアドバンテージを作り出している。要は自分の際立った部分をうまく活用できればそれだけ有利に戦うことが出来るということだが、シンにはそれもない。
 以上のことを合わせると、一般的に考えれば十分強いのだが、まだまだ自分なりの戦い方を確立し切れていないというのがシンの現状である。最弱の海と言われるイーストブルーにいる間ならばともかく、世界中の強者が集うグランドラインにおいてそれは間違いなく命取りとなるだろう。
 では、最終的にシンはお荷物になってしまうのだろうか。いやいや、もちろんそんなことはない。
 たとえば、新兵でありながら最新型の万能機のパイロットに選出されただけありシンの器用さや適用能力の高さはコーディネイターのなかでも特に高く、この世界でも十分に通用するレベルである。そうでなければさすがに一年でこれだけ違う環境に馴染めるわけがない。
 そしてなによりシンには『SEED』という悪魔の実や三刀流にも劣らない最大の切り札がある。
 基本的に感情が高ぶらないと発生しない、無理やり発動すると短期間しか持続せず使用後に副作用が現れる、という二つの欠点があるものの、およそ戦闘に必要と思われるすべての能力が一定期間とはいえ大幅に強化できるこの現象は、上手く活用して戦術に取り込むことができればシンの弱点を一気に解消することができるわけだ。

 それではそろそろ話を元に戻そう。
 シンは体中から余分な力を抜いて精神を一点に集中させた。
 猛スピードで迫っている筈の相手の動きが急に遅くなり、視覚と聴覚が鈍ったかのように周りの光景から色彩と音が抜け落ちる。

(一歩・・・二歩・・・三歩・・・)

 歩数をカウントして自分との距離を正確に計る。

(四歩・・・五歩・・・今だ!!)

 シャムが自分の間合いに侵入した、その瞬間、シンの溜め込んでいた気合が爆発し、SEEDが発動する。
 平時をはるかに越える速度で前方に打ち出されたシンの両腕がシャムを真正面から捉えた。
 自分の現状について先に述べた様なことはシンもはっきりと自覚していた。確かに一度発動させればルフィやゾロと比べてもなんら遜色のない戦闘力を得ることが出来るが、欠点のため連発することもなかなかできず、第一たとえ自分の中にあるものとはいえ得体の知れない何かに頼りっぱなしになることを彼自身が許容できなかった。
 SEEDをいかに利用するか。その彼なりの答えがこれである。
 SEEDによって起こる現象の一つとして、発動の瞬間ほんのわずかな時間ではあるが全身が自動的に弛緩するというものがある。なんらかの神経伝達物質が分泌されるためなのか、これによって心身の双方が無理やりリラックスさせられるので反射神経や思考速度が上昇するわけである。
 直前までの脱力に加えこの現象によりシンは筋肉を直立が精一杯というレベルまで弛緩させ、その後一瞬だけSEEDを発動させて全力の打撃を放つ。言ってみればそれだけなのだが、これがなかなか侮れない。瞬発力とはその直前までにどれだけリラックスしていたかが重要であり、弛緩と緊張の振幅の大きさが打力に直結するのだ。
 もちろんSEED発動中であっても脱力することは可能だ。しかし、なまじ感覚が鋭敏になっている分、敵を目前にして必要以上に脱力することは思いのほか難しい。
 極限の弛緩と緊張の合成によって生み出された打撃はただ単にSEEDを使用したものをはるかに超える破壊力を生み出し、必殺の衝撃となって敵を打ち砕く。
 すなわち、

「インパルス!!」

 ドガンッ!!!

 シンのかつての愛機の名を冠した一撃は、しかし、まだまだ改善の余地があり技といえるほど高度なものではない。が、それでもいともたやすく突進してきたシャムを吹き飛ばし反対側の岩肌にめり込ませた。

「ふぅ・・・・・・」

 あちらの世界である格闘技においては脱力を奥義とするというのは聞いていたが、正直予想以上の威力である。頭がクラクラするものの十分許容範囲だし、初めてにしては成功と言えるだろう。シンは大きく息をついた。
 横ではちょうどゾロがブチを一瞬で斬って捨て、残るはキャプテン・クロのみだ。

「ルフィ! 俺とシンでウソップを担いで催眠野郎を追う。問題あるか?」
「ない! 急げ!」
「わ・・・わりいな」
「気にすんなよ。お互い様だろ」
「そういうこった。おまえの案内がなきゃ追いつきようがねェんだからな」

 ウソップを担ぎ上げて走り出したゾロをシンがすこしふらつきながら追いかける。

「おい、貴様ら、誰がこの道を抜けることを許可したんだ?」
「俺だよ!!」

 三人をジャマしようとしたクロにルフィが先手をしかける。
 クロの実力は間違いなくニャーバンブラザーズの二人を遥かに凌駕し、その差は催眠術でもとても埋まらない筈である。ゾロかシンのどちらかが残ってルフィの援護をするのが戦術としては正しいのかもしれないが、やはりそこは海賊同士の一騎打ちである。外からちょっかいをかけるのも野暮というものだ。

「行け! シン!! ゾロ!! ウソップ!!」
「お前も負けるんじゃないぞ!!」
「おう!!」

 そうして三人は森に駆け出した。

「へェ・・・」
「帆船かァ」
「キャラヴェル!」
「うおーっ」

 太陽もすっかり昇ってそろそろ中天に差し掛かろうとしている。いつもと何ら変わらずにおとずれた一日に、村人達は今日も昨日と同じように過ぎ、明日も今日と同じようにやってくると思っているはずだ。ただ、二つある海へと向う一本道を通った幾人かはいつの間にか仕掛けられたトラップや、いくつも入った亀裂に首を傾げたに違いない。またウソップが何かやらかしたのかと思ったかもしれないが、ある意味正解である。
 キャプテン・クロを倒しクロネコ海賊団を追っ払ったルフィ達は少し遅めの朝食をとった後、カヤが用意してくれたと言う船を受け取りにもう一度先ほどの海岸まで来ていた。

「お待ちしてましたよ。少々古い型ですがこれは私がデザインした船で、カーヴェル造り三角帆使用の船尾中央舵方式キャラヴェル『ゴーイング・メリー号』でございます」

 本来ならシンにとって、帆船なんて何百年も前の乗り物なのだが、目を輝かせながら船を眺めている姿は、とてもではないが最新鋭の宇宙船に乗っていたとは思えない。おそらくこの男はミネルヴァに始めて乗ったときよりもワクワクしているのだろう。
 ナミがメリーから船の操作を聞いているので、じゃあついでに自分もとシンが二人に近寄ると、突然、悲鳴が聞こえてきた。

「止めてくれーっ!!」
「ウソップさん!」

 自分の体の何倍もありそうなリュックを背負ったウソップが転がりながらこちらに向っていた。

「何やってんだ、あいつ」
「ずいぶん斬新な登場方法だぞ。あれ」
「とりあえず止めとくか。このコースは船に直撃だ」

 ドスウン!!

「わ・・・・・・わりいな・・・・・・」
「「「おう」」」

 三人がそろって上げた足がウソップの顔面に直撃したのは、まぁ、予想外のハプニングである。悪気はないはずだ。謝る気もないだろうが。
 気を取り直して出航の準備を再開する。ルフィたちがメリー号に乗り込むと、名残惜しいのか、まだウソップとカヤが言葉を交わしていた。

「お前らも元気でな。またどっかで会おう」
「なんで?」
「あ? なんでってお前、愛想のねェ野郎だな。これから同じ海賊やるってんだから、そのうち海で会ったり・・・」
「何言ってんだよ。早く乗れよ」
「え?」
「早くしないと決心が揺らぐって言ったのはお前じゃないか」
「え・・・」
「俺たちもう仲間だろ」
「・・・・・・・・・キャ、キャプテンは俺だろうな!!」
「バカ言え!! 俺がキャプテンだ!」

 計画を立てなさすぎとは船出の直後にシンがルフィに対して言った台詞だが、気がついてみれば行く先々で厄介ごとに巻き込まれ、そのたびに仲間が増えている。
 世の中あんがいこんなものかと思い、シンは大いに笑った。

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