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〜ジオン公国の光芒〜_CSA ◆NXh03Plp3g氏_第03話

Last-modified: 2008-04-19 (土) 05:30:10

Jan・27・C.E.79
 トーマス9。
 大型艦建造ドッグの設置されたこのコロニーで、今、戦闘艦『ミシェイル』の就役式がしめやかに行われていた。
 もっとも、すでに戦時中の事ゆえ、かつての『ミネルバ』のそれと異なり、静かで大人しいものだったが。
 ミシェイルは改ミネルバ型2番艦、すなわち『マリア』の同型艦と位置付けられていたが、
外観からもぱっと見に解るほどの設計変更が加えられていた。
 『D兵器』と、ジオン公国軍内部で呼称されているそれを搭載する為、ミネルバ型にあった中央発艦デッキが
潰されているわけだが、マリアはその跡に、のっぺりとした筒型の
カバーがにょっきり生えていて、流線で構成されるミネルバ型の構造物の中にあって異彩を放っていた。
 しかし、ミシェイルは同様の装備を持っているが、このカバーの意匠が変わり、違和感のない、
大気圏内航空機の機首のような形状に変更されている。
 どちらがかっこいいかといえば、ゲテモノマニア以外の一般人は十中八九、ミシェイルの方を選ぶだろう。
「貴様が、こちらに乗るべきではないのか?」
 イザークが苦笑気味に、傍らのシンに対して言った。
 シンはイザークを一瞥してから、ミシェイルの姿を見て、う~ん、と考え込むようなしぐさをする。
が、すぐにイザークの方を向きなおした。
「いや、やっぱり俺はマリアで行かせてもらいますよ」
「やはりそう言うか」
 シンの答えに、イザークは一瞬、面白くなさそうな顔をした。
「それに、イザークから新型艦を掻っ攫ってばかりいると、後が怖い」
「お、最近は言うようになったな。コイツ」
 軽く驚いたように目を円くするイザーク。そして、2人して笑いながら、手に持っていたシャンパングラスで乾杯した。
 

機動戦士ガンダムSEED
 逆襲のシン ~ジオン公国の光芒~
 
 PHASE-03
 

「崇高なるジオンの同志諸君! 我々は今、新たに正義の鉄槌を手に入れた!」
 仮面姿に、男装姿、マントを翻して言う、ジオン・アルテイシア・ダイクン、ジオン公国大公。
 その傍ら、やや後ろに、ジオン本国であるトーマス・シティの行政責任者、エザリア・ジュールも、
直立不動で控えている。
 そしてその背後に、ミシェイルの3Dホログラムが映し出されている。
「思えば地球圏では、常に戦いが起こってきた。そしてその度、我々は戦火からほうぼうの体で
逃げざるを得なくなり、弱者として切り捨てられてきた!」
 会場の、いや、これを中継しているテレビの向こう側でさえ、テンションが上がっていく。
「一部の傲慢なイデオロギストの為に、諸君ら、大多数の人間が家を焼かれ家族を失い、
 自らの命さえ危険にさらされた! これが同じ人間のとるべき行動か!? コーディネィターとナチュラル、などという
 くだらない垣根の為に、基本的な人類普遍の道徳さえ人類は捨てなければならないというのか!?」
 群衆の中から、声が発せられる。「Noだ!!」。
「最大多数の最大幸福こそが、この地球の最良の理論ではなかったのか!?」
 「そうだ!」群衆の声は、ますます上がってくる。
「今一度聞く、諸君らの望むものはなんだ?
 地球の為と言いながら核を行使する本末転倒のブルーコスモスの偽善か!?」
 「No!」群集のボルテージも、クライマックスに達しようとしている。
「では、遺伝子によってヒトの可能性を縛ろうとした、デュランダルの独善か!?」
 「No!」
「ならば、全てを力で抑え込み、偽りの平和で糊塗せんとするクラインの傲慢か!?」
 「No!」
 「No!」
 「断じてNo!」
「ならば共に闘おう、諸君! 青き地球の、全ての人類の為に! ジーク・ジオン!」
 「ジーク・ジオン!」
 「ジーク・ジオン!」
 「ジーク・ジオン!」…………
 シュプレヒコールは、トーマス9はおろか、トーマス・シティ全域に拡大し、熱気がコロニーを満たした。
 

「彼らを政治的に分断するという試みですが、残念ですが成功率は低いと思われます」
 所変わってプラント、アプリリウス1
 プラントはメサイア戦役後、ラクス・クラインがその実権を握ると、直ちに白紙からとも言える構造改革に着手した。
 まず、非効率極まりない評議制を廃し、トップダウン・ボトムアップのスムースな大統領制を導入した。
 そして、その初代終身大統領に、最後の評議会議長であり、2度の大戦を終結に導いた、
“平和の歌姫”こと、ラクス・クラインが就任。
 一方、軍事組織も、個人主義に走りやすく“軍隊ゴッコ”とまで揶揄された、指揮命令系統の曖昧な
ZAFT軍組織に代わり、階級制度のはっきりしたプラント国防軍を創設。それまでのZAFT軍組織は大幅縮小した
(ただし、人材のほとんどはプラント国防軍に移動)上で、やはりこちらも階級制とし、大統領武装親衛隊に再編された。
 ────閑話休題。
 プラント政府が最初に調べ上げた情報では、ジオン公国は旧連合(つまり、ブルーコスモス、ロゴスの残党)、
ザラ派、デュランダル派を政治的構成員に据えていた。
 特に軍内部では、無関心層、所謂ノンポリと言える人材はいないに等しい。
 つまり、主義思想はてんでバラバラで、しかもお互い相容れない、烏合の衆である、とプラント首脳陣は判断した。
 これが当初の楽観論に繋がり、結果としてジオン建国宣言を許し、L1会戦での大敗につながったのである。
 その結果を踏まえて、ジオンの内情をもう一度調べなおすことになったのである。
「それは、いったいどういうことですの?」
 ラクス・クライン大統領は、報告に来た大統領補佐官ハインリッヒ・ラインハルトに聞き返す。
「ジオン公国政府中枢部の、主要なメンバーです」
 そう言って、補佐官は、プリントアウトされた用紙をラクスに渡す。
「その中でも特にお互い懇意にしているのが、ジオン・アルテイシア大公、エザリア・ジュール市長、
 その息子のイザーク・ジュールMS隊総長、そして直属特務隊司令代理のシン・アスカです」
 4人目の名前を聞いた時、ラクスの眉間が一瞬、歪んだ。
「エザリア女史は言うまでもなく、以前からのザラ派の重鎮。シン・アスカは、デュランダル派では
 英雄視されているMSパイロット」
「なるほど、ザラ派とデュランダル派が一枚岩になる理由は解りましたわ。けれど、旧連合は?」
「ジオン・アルテイシア大公、本人ですよ」
 補佐官の言葉に、ラクスは一瞬、驚いたように目を見開いた。
「それでは、アルテイシア公はコーディネィターでは……?」
「ナチュラルです。しかも、かつてロゴスとはかなり深い関わりを持っていたことがあるようです」
「そのような方が、どうしてプラントのコロニーで、反乱を起こすことができたのでしょう?」
 ラクスの質問は、コーディネィターとナチュラルの確執の歴史を知っていれば、誰もが抱くであろうものだった。
「ジオン公国内での反応は、エザリア女史が担ぎ上げたというものですね。ただ、もともとトーマス・シティは、
 ナチュラル難民を労働者として多く移住させていましたから」
「なるほど、これで3者がそろったというわけですね」
 ラクスはそう言った。しかし、まだどうしても納得のいかないこともあった。
「ですが、そうなると、アルテイシア公とシン・アスカが利害を一致させている、という事態が理解できませんわ。
 デュランダル派とロゴスとは、本来相容れないはず」
「情報分析室の予測では、すでにロゴスは、所謂死の商人という性格は失ってしまっていますから、
 あえて対立する必要はない、ということではないかと言われていますが」
 単純に考えればそうなるのだろう。それに、別の理由だったとして、それを知ったところで特に事態の打開に役立つとは思えない。
 だが、なぜか、ラクスにはそれが大きく気にかかった。
「引き続き、デュランダル派と旧連合系のつながりを調べてください。特に、アルテイシア公とシン・アスカの
 周辺について、詳しく、私的な面まで含めて」
「了解しました」
 補佐官はそう言って深く頭を垂れ、大統領執務室を出て行った。
 世界は順調に動いている。連合は解体され、民族を虐げる大国主義を廃し、プラントも地上も、
自由と平和を謳歌していた。今になっても時折、戦争を仕掛ける愚かな国家も存在したが、
圧倒的なプラント国防軍地上軍が直ちに制圧した。今回のジオン公国の反乱も、躓きは少し大きかったが、
すぐに解決されるだろう。ラクスはそう信じていた。
 なのに、アルテイシアとシンの関係は、酷く彼女の胸に引っかかった。
 

ミシェイルの就役式の翌日。
 シンは、連絡艇で、巡洋艦『J・コイズミ』を訪れていた。
 ジュンイチロー・コイズミ型MS搭載巡洋艦の1番艦で、どちらかというと連合寄りの、バーナード型を
シンプルにしたようなスタイルをしていて、ナスカ型やローラシア型とは一線を画している。
生産性を考慮した構造だ。
 これまでジオン公国軍MS隊総長、イザーク・ジュールの乗艦として働いてきたが、それも明後日には
ミシェイルに譲ることになっていた。
 そしてシンを呼び出したのは、当のイザークだった。
「なんですか? イザーク、急ぎの用って」
 連絡艇から降りるなり、シンは挨拶もなく、イザークに問いかける。
「ああ、シンドバッド作戦の開始前に、ぜひ貴様に会わせて置きたい人物がいてな」
 険しい表情のイザークも、しかしシンを責めるわけでもなく、そう言った。
「俺に……ですか?」
「ブリーフィングルームに」
 言うと、イザークはシンをつれて、MS隊用のブリーフィング・ルームに入る。
 そして、連れられてきたシンは、言葉を失い、目を円く見開いて、立ち尽くした。
 優に、10秒はその状態が続いただろうか。ようやくにして、シンは声を出す。
「────生きていたのか…………レイ!!」
 シンの目前にいる人物は、メサイア戦役でMIAとなった親友、レイ・ザ・バレルだった。
「ああ……」
 レイはシンを正面から見据え、短く返事をした。
「残念ながら、俺1人だけだがな」
 一緒にメサイアでMIAとなった、タリア・グラディスと、デュランダル議長のことを言っているのだろう。
この言い回しは、つまり、2人は助からなかったことを意味している。
 だが、シンは表情を輝かせて、レイに歩み寄った。
「いや、お前が生きていただけでも、俺は……俺は……っ!」
 後はもう、言葉にならない。シンは熱く、両手でレイの手を握る。
 

『せっかく自分という存在に気付いたのに、ここで死んではいけないよ、レイ』
『下層にまだ、MSが何機か残っている。ジンあたりの旧式だが、まだ動く機体もあるはずだ』
『レイ、お願いだから生き延びてくれ。そして、私に代わって……この世界が何処へ行くのか…………』
 

「結局俺は、いつでも、ギルに助けられっぱなしだった。だから、最期の言葉ぐらい、実現しないとな」
「そうか…………」
 

 レイの言葉に、シンも少し切なく言葉を発する。
 そこでようやく、シンは、レイの他にもう1人、いることに気がついた。そしてその顔を見るなり、
反射的に、護身用のオートマチック拳銃を抜きかける。
「キラ・ヤマ……ト…………?」
 銃は握ったが、銃口をそちらに向ける前に、その違和感に気付いた。
 キラは自分より2歳年上のはずだ。だが、目の前の人物は、明らかにシンよりはるかに年下。
しかも、それ以上に何か、妙な違和感がある。
「シン、銃を戻せ。敵ではない」
 イザークの、叱り付ける怒声が聞こえる。シンは少し慌てて、銃をホルスターに戻した。
「紹介が遅れたな。彼女はクレハ・バレル。もっとも、俺が便宜的につけた名前だがな」
 レイが、手振りで指し示しながら、その人物を示す。
「そ、そうだったのか、すまん」
 シンは、自らの行為に恥じ、クレハと呼ばれた少女に向かって、頭を下げた。
「大丈夫です、レイお兄さんから、もしかしたらそうなるかも、って言われてましたから」
 発されるのは、鈴の音のような、どう聞いても女性の声。
「て、え? そう言えば彼女、って言っていたし」
 シンは頭を上げつつ、少し混乱したように、レイとクレハの顔を交互に見る。
「それに、便宜的につけた名前、って」
「彼女は俺と同じだ」
 シンの問いかけに、レイはまず、短くそう答えた。
「彼女は、キラ・ヤマトの、性位相クローンだ」
「!」
 世界で唯一の、完成されたスーパーコーディネィター、キラ・ヤマト。
 そのクローン。
「この5年間、俺は俺を生み出した連中が、その後、何をやっていたのか調べて回っていた」
「コロニー・メンデルの崩壊後、彼らは何処へ行ったのか。何をしていたのか」
「ヒビキ博士は、それより前に、テロで亡くなったって話じゃなかったのか?」
 シンはレイに1歩進みより、聞き返す。
「ああ、だが、その意思を継ごうとする者がいた筈だ。完成されたスーパーコーディネィターの技術を惜しんだ者がな」
「…………何か、わかったのか?」
 淡々と言うレイに、シンの方が哀しげな目をしながら、続きを促した。
「彼らを受け入れたのは、連合だ」
「なっ!?」
「なんだと!?」
 シン、それにイザークも驚愕の声を上げる。
 

「彼らはスーパーコーディネィターによる、ソキウス、生体CPUの製造に興味があったらしいな」
「…………」
 絶句し、俯きがちになるシン。
 しかし、ソキウス計画はナチュラルでも操縦可能なMS、GATシリーズの登場により、放棄されている。
「だが、スーパーコーディネィター自体の研究は続けられていた。らしい」
「ブルーコスモス、がか?」
 怪訝そうな声を出したのは、イザークだった。
「彼らとて、好奇心には勝てなかったということだろうな」
「けど、レイ。今、“らしい”って、言わなかったか?」
 シンは、レイの言葉尻を捉えて、そう指摘した。
「ああ、ラボらしき建造物を、南米のマナオスの近くで発見した」
「南米? けど、あのあたりは南アメリカ合衆国じゃないのか?」
 シンが再度聞き返す。
「確かに大西洋連邦からは独立したが、国防力は地球連合に頼っていたからな。別に連合の施設が
 あったとしても不思議じゃない」
「それで?」
 一度言葉を区切ったレイに、シンは続きを促す。
「だが、すでに施設は稼動を停止していた。そして、データは持ち出されていた。残っていたのは、
 その建物で生活していた、彼女だけだ」
 レイはクレハを指し、そう言った。
「連合が?」
「いえ、違います」
 シンの問いに、そう答えたのは、クレハの方だった。
「連合の方は、もう何日も前からいなくなってしまっていて。私だけが、その建物の留守番のようなものだったんです。
 ところが、たまたま街に買出しに出て、帰ってきた時に、荒らされていたんです。それで私が途方にくれているところに、
 レイお兄さんがやってきて」
「誰かが、その子の存在を知らなかったか、あるいは知っていたとしても価値を見出さなかったか、
 いずれかの理由で、データだけ持ち去った、という事だな」
 イザークが、レイとシンのほうに1歩歩み寄り、結論付けるように言った。
「ああ……だが、そこでデッドエンドだ。データを持ち去ったのが何者なのか、推測はできるが……
 それ以上のことはできない」
「そうか……」
 レイの言葉に、むしろシンの方が落胆したように、肩を落とした。
「それで、レイ。貴様はこれから、どうするつもりなのだ?」
 イザークが訊ねる。シンがハッ、と顔を上げた。
 

「そうだ、レイ。MSの方はもう乗らないのか」
「腕は衰えているだろうが、その気になれば数日で回復してみせる」
 レイはそう言って、薄く微笑んだ。
「イザーク、レイなら以前のZAFTでの経験もあります、味方になってくれれば頼もしいと思う!」
 シンはイザークに、まくし立てるように言う。
「ハッ、俺がそこで、反対するリクツを捏ねたら、悪役だろうが」
 苦笑交じりに、イザークは言った。
「それとイザーク、良ければ彼女も」
 レイは、そう言って、クレハを推した。
「しかし、彼女はMS搭乗経験を受けていないのだろう?」
 イザークは、むしろクレハを気遣うように言ったが、レイは首を軽く横に振った。
「彼女はキラ・ヤマトのクローン、つまり、スーパーコーディネィターなのですよ」
「そうか、数日あれば充分という事だな」
「それで足りなければ、後は俺が、フォローします」
 イザークの言葉に、レイが続けた。
 当のクレハは、あまり自信がないのか、少し困ったようにしつつ、どもりながら言う。
「えっ、いや、あの……ご期待に沿えるか、わかりませんがっ……レイお兄さんのお役に立つためっ、
 がんばらせていただきます!」
「…………キラのクローンとは思えんな」
 イザークの言葉に、シンは腹を抱えて爆笑し、レイもクックッと無理に抑えているような笑い声を上げた。
 

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