Top > 〜ジオン公国の光芒〜_CSA ◆NXh03Plp3g氏_第09話
HTML convert time to 0.007 sec.


〜ジオン公国の光芒〜_CSA ◆NXh03Plp3g氏_第09話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 18:53:19

「会議中のところ、取り急ぎ失礼いたします」
 会議室に、ジオン側の士官が、慌しく入ってきた。
 オーブ側の列席者が立ち上がりかけるたが、カガリが手で制する。
「キャシー准将、アスカ中佐、これを」
 そう言って、士官シンとキャサリンの間に移動し、パームトップ端末の画面を、2人に覗かせる。
「やっぱり来たか……」
 ギリ、とシンが歯を食いしばる。
「大変な事になりました……」
 キャサリンは困惑の表情を見せる。
 アルテイシアは机に左腕を乗せ、シン達の方に身体を向ける。
「フリーダムですね?」
 アルテイシアが士官に尋ねると、
「っえ、は、はぁ、それはっ」
 ばたばたと慌てたように手足を動かしてから、その場に直立不動の体勢になる。
「その通りです、殿下」
 代弁するように、シンが答えた。

機動戦士ガンダムSEED
 逆襲のシン ~ジオン公国の光芒~

 PHASE-09

「なんだって!?」
 カガリは思わず席を蹴って立ち上がり、驚愕の声を上げた。
 ZAFT武装大統領親衛隊長官様、直々の出撃である。なまじその実力を知っているだけに、オーブ首脳陣からもどよめきが漏れる。
「殿下、自分は出ます!」
 シンは立ち上がりながら、アルテイシアに言う。
 アルテイシアは視線をカガリに向けた。
「閣下、ブライトンより迎撃部隊を出撃させますが、よろしいでしょうか?」
「あ、ああ……」
 反射的に返事をしかけ、カガリは我に返ったように聞き返す。
「撃退できるのか、キラを……ストライクフリーダムを?」
 信じられないと言うような、カガリの表情。
「何もしないわけにはいきませんでしょう?」
 そう言い返すアルテイシアだが、口元には笑みをたたえていた。カガリは、その笑みに薄ら寒い感覚を覚える。
「解った……キサカ! 軍にジオン軍に対する防空識別を解除させろ」
「はっ」
 キサカは立ち上がって敬礼すると、会議室を飛び出していった。
「それから連絡艇を!」
 カガリは続いて命じる。
「アスカ中佐を、母艦にお送り差し上げろ!」

 ブライトンの格納庫でレイが暇を潰していると、ブリーフィング・ルームから、パイロットスーツ姿のクレハが飛び出してくるのが見えた。
 キャットウォークを自機に向かって小走りに急ぐクレハに、レイは声を張り上げる。
「どうしたんだ、クレハ!? 何をする気だ!?」
 クレハは、レイの言葉に気付くと、一瞬立ち止まり、何かを逡巡するような態度を見せた。
 そして、言う。
「来たんです、私の戦う、理由」
 そう言って、クレハは自機の元に駆け寄る。コクピットのハッチを開けると、シートに転がり込んだ。起動スイッチを入れる。

 Generation
 Unsubdued
 Nuclear fusion power source
 Drive
 Assault
 Module
 COMPLEX

 ZGMF-1201F GELGOOG-S

「戦う理由? まさか!?」
 レイが驚愕の声を上げると同時に、ブライトンの艦内に警報が鳴り響く。
『コンディションレッド発令、状況は100のS。繰り返す、コンディションレッド発令、状況は100のS』
 赤い警告灯が点滅し、状況ディスプレィがコンディションレッドを表示する。
 状況コード100番台は敵部隊接近、邀撃体勢準備を示す。そして、補助コードであるSは────

「来たのか、キラ・ヤマト!」
 戦慄するレイを尻目に、コンディションチェック、「Power reactor Condition No problem」の点滅を確認したクレハは、
タラップをゲルググ・ハウント自身に上げさせる。
『脚元退いて下さい!』
 外部スピーカーでクレハが怒鳴る。ゴテゴテしたガンバレルストライカーをつけたゲルググ・ハウントが、左舷カタパルトへと移動する。
 コーディネィター・ナチュラル混成の整備員達は、クレハの操縦を邪魔しないようにしつつ、ゲルググ・ハウントを追いかけ、手を振る。
「頼んだぞー!」
「母艦を守ってくれよー!!」
「キラに一泡吹かせてくれー!!」
 下士官以下の者にはクレハがキラのクローンだという事は知られていない。だが、MS用のガンバレルを扱い、初陣でいきなり
Δフリーダム数十機を20分とかからずに殲滅した事など、すさまじいエリートパイロットだと噂になっている。
「艦長、良いんですか? 行かせちゃって!?」
 副長は驚いたように訊ねたが、初老のナチュラルである艦長は、落ち着いた雰囲気で、ため息をつくように言う。
「構わんよ」
「しかし……」
「どの道、我が軍のモビルスーツの性能を持ってしたところで、現状ストライクフリーダムを、
 いや、キラ・ヤマトを “止められる”のは、彼女しかおらん」
 「止められる」の部分に含みを持たせつつ、艦長はそう言った。
「そ、そうですね」
 副長も納得したような表情で、そう言った。
 左舷カタパルトの扉が開く。マチュア型の舷側カタパルトは露天式で、扉は待機位置のみを覆う。
「IFF作動よし、クレハ・バレル、ゲルググ・ハウント、いっきまーす!!」
 床面のガイドLEDが待機位置から前方に向かって順次点灯し、リニア・カタパルトがゲルググ・ハウントを撃ちだした。
 ちょうど一テンポ送れて、ブライトンの後部着艦デッキに、オーブ政府所有のホバーが、特攻スレスレの勢いで飛び込んできた。
 シンは半ば転げながら降りると、そのままの勢いで、ブリーフィング・ルームに飛び込む。
 ちょうど、ロッカー・ルームからパイロットスーツ姿のレイが飛び出してきた。
「シン!」
 レイがヘルメットを抱えたまま、シンに向かって呼びかける」
「キラ・ヤマトが来た」
「知ってる。だから大急ぎで戻ってきたんだ。……クレハはどうした?」
 シンは言いながら、キョロキョロと見回し、いつもレイのそばにいるクレハの姿が見当たらない事に気が付いた。
「もう出た」
「なんだって!?」
 シンは驚愕の声を上げる。
「無謀だ! いくらなんでも!」
 シンは叫ぶように言う。いくらキラのクローンであり、スーパーコーディネィターだからといって、彼女は一般人なら
まだローティーン程度の成長だったし、第一、実戦経験が足りなさすぎる。他の相手ならまだしも、相手はクレハのオリジナルであるキラなのだ。
 そして、シンはいきなりブリーフィング・ルームから格納庫に出ようとした。
「待て、シン、そのままの格好で出る気か!?」
「クレハを殺させるわけには行かない! いや、クレハだけじゃない、アルテイシアも、レイ、お前もだ!」
 激情したときのシンは、昔のそれと変わっていなかった。我を忘れ、普段人前では『殿下』と呼んでいるアルテイシアのことも、
私的に親しい者の呼び方で呼んでしまう。
「大気圏内での戦闘さ、このままでも大丈夫だ」
「ああ、だが、シン」
 レイは、仕方ないといったように苦笑を浮かべつつ、言う。
「お前も、死ぬなよ!」
「当たり前!」
 そして、2人は格納庫に飛び出していく。

 オーブがジオンと交渉を持つ。
 それ自体、キラには信じられない事だった。
 カガリだってラクスの友人であり、そして何より自分の双子の姉だ。
 ラクスだって、オーブがよりよい環境であるよう、努力している。そのことを、カガリが知らないはずがない。
 そのカガリが、ラクスを困らせるような真似をするなんて、信じられなかった。
 結論はすぐに出た。
 ────また、誰か別の氏族か官僚に、無理やり従わされているに違いない。
 キラはそう確信すると、ラクスには一方的に言伝して、自らアプリリウスを発った。搭乗艦は、ナスカ型『カレノス』。
 
 武装親衛隊の任務は大規模艦隊戦ではないので、大柄な戦艦は必要ない。ナスカ型の設計も年数的にはかなり経過しているが、
ジオンのジュンイチロー・コイズミ型も設計が凡庸で能力的に大差なく、ビーム兵器の火力と装甲でナスカ型を凌ぐが、
トータルでは機動性と総合火力の優れたナスカ型の方が優れていると言えた。
 これは、ジオン側も(もちろん、公式にではないが)認めるところだ。もっとも、ジュンイチロー・コイズミ型は、
建造時の工数がナスカの半分強、総部品点数は7割程度なのだが……
 
 ともあれ、キラはカレノスにストライクフレーダムを搭載させると、直ちに地球へ向かった。途中、ラクスからの帰還指示はなかった。
 シンの予測どおりと言えたが、少しだけ違った。それは、キラの主目的は“カガリを助ける”ことで、
アスランの救出はその結果としてもたらされるものだった。
 もちろん、カガリに無理強いしている人間が諦めなければ、強硬手段でカガリとアスランを“奪還”するつもりだった。
 衛星軌道に到達すると、そこでストライクフリーダムに搭乗し、カレノスを発って太平洋に向かって突入を開始した。
 キラを送り出したカレノスの搭乗員も、何も不安は抱いていなかった。キラは最強だ。

 ────アスランは、卑怯な手で落とされたらしいけど…………
 ジオンの核融合MSに、4機がかりで攻められたという。本当にジオンは、卑劣な戦術を取る。
 インフィニットジャスティスは格闘戦主体の機体だ。ミーティアがない限り、複数に取り囲まれれば不利になる。
 そして大気圏内でのミーティアの運用は難しい。
 ────けれど、ストライクフリーダムは違う!
 格闘戦に優れているといわれる核融合MSでも、ストライクフリーダムの圧倒的火力に太刀打ちできるとは思えない。
 先制攻撃で数を減らす、いつもの必勝パターンだ。
 それに……搭乗者であるキラも、アスランにはない“切り札”を持っている。
 ストライクフリーダムは軌道を微修正しつつ、オーブ、ヤラファス島上空に直接侵入する。
 途端、オーブ軍が、プラントとの共同通信帯に呼びかけてきた。
『ヤラファス上空のプラント機へ、貴方にオーブ領空の進入ならびに通過の許可は申請されていない。
 直ちに領空外に退去されたし』
 定型文の呼びかけに、キラは答える。
「こちらはプラント、ZAFT武装親衛隊々長キラ・ヤマト元帥。火急の用事でアスハ代表と面会がしたい」
 これまでは、キラがそう言えば、事前の申請がなくても、ストライクフリーダムの着陸は許可された。しかし────
『繰り返す、プラント機へ、貴方にオーブ領空の進入ならびに通過の許可は申請されていない。
 直ちに領空外に退去されたし』
 通信からは、歓迎とは程遠い口調で、定型文が繰り返されるだけだった。
「そっちがその気なら」
 キラが、ストライクフリーダムをハイマットモードに移行させた。ドラグーンの射出を準備する。
 だが、その時。
『やめろ、キラ!』
「え…………」
 通信に飛び込んできたのは、カガリの声だった。
『今、お前がやっているのはオーブに対する不法領空侵犯だ! すぐにプラントに引き返せ!』
 カガリの声は、怒鳴るような口調だった。
「か、カガリ、どうしたのさ、なんで────」
 ────なんで、僕を拒絶するの?
『何度でも、言ってやるぞ! お前がやっているのは不法行為だ、すぐに引き返せ!』
「カガリ、そばに誰がいるの!? 無理やり言わされてるんでしょう」
『脅迫も無理強いもされていないし、いたって正気だ!』
 キラが優しく問いかけても、カガリの剣幕は衰えない。それどころか、ますますヒートアップしてくる。
「じゃ、じゃあ、なんで……そうだ、なんでジオンと交渉なんかするんだよ! 彼らはラクスの、プラントの敵だよ!?」
『プラントの敵ではあってもオーブの敵ではない。たった今、オーブはジオンの国家としての承認と、
 食糧支援協定、包括相互防衛協定を締結、即日発効に同意した!』
 戸惑いながら訊ねる弟に、突き返されるは姉の非情な声。
『退避しないと言うんなら、キラ、オーブ軍はジオン軍と協力してお前を迎撃しなければならない!』
「カガリ、どうしてさ、誰に言わされているの!? 誰がカガリにそんなことを言わせているの?」
 キラは哀しそうな表情で、カガリに訊ねる。
『私が主導で決めた事だ! キラ、早く退去しろ! 私もオーブの空でお前を撃墜したくはないんだ!』
 カガリは、そう怒鳴り返してきた。
「カガリ、どうして……どうして……」
 女々しく、泣き声のような声を上げながら、泣き出しそうな表情で呟いていたキラだったが、やがて、その表情は────

「どうして……ラクスを裏切るのさあぁぁぁぁっ!!」

 ────鬼の如き、怒りの形相に変わる。
 ラクスを裏切った極悪人。キラの意識でカガリはそうレッテルを貼られた。双子の姉弟など関係ない。
 ラクスの望む平和と自由の為の敵、カガリ・ユラ・アスハを排除しなければ。

 マルチロックオン。代表官邸、アスハ邸、オノゴロの主要軍事施設に照準────

 カガリは直ちに、スイッチを切り替え、プリセットしておいたオーブ軍とジオン軍で協定した共通チャンネルに切り替える。
「オーブ全軍、ならびに同盟国軍、戦闘行動を許可する」
 カガリがいる、ヤラファス島のオーブ軍総司令部にも、ストライクフリーダムの照準は合わされていた。  キラが、トリガーを引きかけたその時。
「!?」
 近接アラート、ついで、強烈な衝撃。
「うわぁぁぁっ!」
 ストライクフリーダムを、ガンバレルの推力まで乗せた、ゲルググ・ハウントの強烈なシールド・タックルが襲った。
 クレハは、偏頭痛に襲われていた。妙な偏頭痛だった。どんどん酷くなっていくのに、むしろそれが強まるたびに、意識がハッキリとしていく。
 ストライクフリーダムが姿勢を立て直すより早く、ウェポン・ラックからレーザーヒートソードとシールドを抜き、構える。
 頭がパニックになりそうだったが、これだけはハッキリと感じ取れた。
「あなたは、敵! わたしの、レイお兄さんの、アスカ中佐の、アルテイシア殿下の……」
 咆哮のように叫び、ストライクフリーダムに飛び掛る。
「みんなの、敵!!」

】【戻る】【