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〜ジオン公国の光芒〜_CSA ◆NXh03Plp3g氏_第29話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 19:16:41

 あなたはもう泣かないで────

 私の本当の思いが、あなたを守るから────

機動戦士ガンダムSEED
 逆襲のシン ~ジオン公国の光芒~

 PHASE-29

「!?」
 真紅と群青、2機の動きが止まった。高出力のラケルタがジム・クロスウィズのシールドに食い込んでいる。
「何があったの? エターナル、エターナル、応答してっ! っ!」
 僅かな隙に、ジム・クロスウィズはシールドで受け止めていたラケルタを振り払うと、ファルシオンでアンビテンに斬りかかってくる。
 ルナマリアはビームシールドを拡げてそれを受け止めると、エターナルに向かってアンビテンのスラスターを吹かした。
「待て!」
 コニールもそれを追って、ジム・クロスウィズのスラスターを吹かす。だが、アンビテンのほうが速く、引き離される。

 誰もがその目を疑った。
 ラクス・クラインの最強の剣、キラ・ヤマトの“フリーダム”が、そのラクスの乗るエターナルの艦橋を、フルバーストで粉砕した。
 さらにもう一撃。エターナルの艦体にケルビックフリーダムのフルバーストが入る。アポリュオン複相複元砲は、容易くエターナルの装甲を撃ち抜いた。
 エターナルは炎に包まれ、早くも断末魔の様相を呈している。
「うわぁぁぁぁっ」
 ケルビックフリーダムは、己の上方に向かって一気に離れていく。
「!」
 反射的に動いたのは、ただ1機。
「っ、待って下さいっ」
 真っ先に追いかけ始めたエンデューリングジャスティスを、ミーアがさらに追いかけていく。
 砲火を交わす双方の艦隊が、点にしか見えなくなるほどに離れた頃、ケルビックフリーダムはそこで動きを止めた。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
 エンデューリングジャスティスは、その正面に向かい合う。
「シン……僕は……僕は……」
「…………」
 2機は向かい合ったまま動かない。キラは嗚咽を上げるように言い、そして叫ぶ。
「そうだったんだ! 僕は君から全てを奪った!」
「!?」
 シンは険しい表情で、エンデューリングジャスティスからケルビックフリーダムを睨んでいたが、キラの言葉に、眉を少し緩める。
「けれど僕には最初から何もなかった! だから、僕は君の痛みを理解できなかった! 痛みを理解しないまま、僕は奪い続けてきたんだ!」
 ────ラクスの望むままに。キラはそれは口に出さなかった。
「…………違うだろ」
 低い声で、シンははっきりとした言葉で口に出した。
「アンタ、本当は持ってたんだ。1つだけだけど。だけどアンタは最後の最後でそれを守れなかった! だからアンタはあの時、本当は俺にこう言いたかったんだよ! 『苦しんでるのはお前だけじゃない』ってな!!」
 それを突きつけるには、キラは優しすぎた。キラの歪んだ優しさは、シンの憎悪を燃え上がらせただけだった。
「運が悪かったんだね、僕達。あんな出会いじゃなければ、理解しあえたのに」
「お互い未熟だったんだろ。アンタは俺に本当の言葉をかけられなかった。俺はアンタの言いたいことを理解できなかった」
 言いながら、お互い、エンデューリングジャスティスとケルビックフリーダムにラケルタを構えさせる。
「はぁぁぁぁっ!」
「うわぁぁぁっ!」
 2つの刃が、激しく交錯する。

「ごめんなさい……」
 艦砲で撃ちあうほどの光を放ちながらぶつかり合う2機を、マリアの艦橋の窓から見上げながら、アルテイシア──フレイは1人、呟いた。
「私にもっと勇気があれば、キラ、貴方を苦しませないですんだ。私にもっと力があれば、シン、貴方にキラを討たせないですんだ」
 プラント軍は、エターナルと、ラクス・クラインを失い、戦意を喪失しかけていた。
 モビルスーツには戦いを続けている部隊もあったが、完全にジオンのMSに圧倒されている。
 ジオン艦隊も巡洋艦ライゾウ・タナカが姿を消していた。エストは激しく炎上しており、カチュアが接舷して、退艦作業を始めている。
 そのカチュアも艦首部分がずたずたに破壊されていた。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
 一体のパクフアープが、マリアに向かって突進してくる。
「よくもミリィをーッ!!」
 突進を止めるべくニュー・ジンシリーズやジム・クロスウィズの小隊が立ちはだかるが、素早い動きで刻まれ、あるいは振り切ってマリアに迫る。
『エルスマン、止まってーっ!』
 肩に鳳仙花のマークを入れたニュー・ジン・バンシーが、それに追いすがってくる。
「うるさい、俺は、俺はーっ!!」
 マリアの艦橋。アルテイシアはスラスターの輝点に気付き、視線を向ける。パクフアープはビームサーベルを振り上げた。
 次の瞬間、パクフアープの腕が無くなった。レール狙撃砲の弾体がビームサーベルもろとも引きちぎっていった。
「ごめんなさい、エルスマン」
 シホのニュー・ジン・バンシーが、ファルシオンでパクフアープの胴を貫いた。
「────」
 アルテイシアは、仮面を外した素顔のまま、哀しげな瞳で、デブリと化していくパクフアープを見つめていた。

 エンデューリングジャスティスの、連結されたラケルタが、ケルビックフリーダムを横に薙ぐ。ケルビックフリーダムはビームシールドでそれを受け止める。
 そのまま、もう一方の刃で上からクロスするように斬り付ける。ケルビックフリーダムはそれを後ろに下がってかわした。
 ケルビックフリーダムの胸が瞬く。フルバースト。それをエンデューリングジャスティスは捻ってかわす。
「!」
 クリュティエドラグーンが、エンデューリングジャスティスを捉える。
 次の刹那、その半数が破壊された。スタードラグーン。シンはラケルタを分離し、残りを薙ぎ払う。
 ケルビックフリーダムの、二刀流の斬撃が、エンデューリングジャスティスに迫る。シンは正面にシールドを構えさせて、ビームシールドを拡げ、凌ぐ。
 バチバチと激しい火花が、2体を照らす。
「羨ましいね、君にはいつも、仲間がいる」
「アンタにだっているだろ」
「仲間? 僕を利用してただけさ。だって僕は……」
 ケルビックフリーダムが、構えなおそうと引く。
 エンデューリングジャスティスは間合いが広がるのを許さず、詰めると、連結させたラケルタで上段から斬りかかった。
 ケルビックフリーダムは、右に回避する。
 エンデューリングジャスティスは、筆記体の“L”を逆に書くように、さらにケルビックフリーダムを凪ごうとする。ビームシールドに受け止められる。
「僕は、彼らの痛みを知らなかったからね」

『あってはならない存在だと言うのに!』
『解らぬさ、誰にも!』
『知らぬさ! 所詮人は己の知ることしか知らぬ!』

 クルーゼの言葉がキラの脳裏に蘇る。
 キラは知らない。知らなかった。シンの痛みを、フレイの苦しみを────
 多くの人の嫉妬と羨望を。

『それでも、力だけが僕の全てじゃない!』

 ────そう言ったはずなのに……

「アスランはどうしたんだよ!」
 シンは、怒りの形相で問いただす。問いただしながら、正面からケルビックフリーダムを斬りつける。ケルビックフリーダムのビームシールドが、それを受け止める。
「アスランは、敵だよ」
「何、言ってんだ?」
 シンは呆けかけた。ケルビックフリーダムのラケルタが迫り、それを回避する。

「親友だって言うのに、アスランはいつも僕の敵だったよ」
「でも、いつも最後にはアンタの味方をしてたじゃないか、それで営倉にまで放り込まれて!」
 エンデューリングジャスティスが、ケルビックフリーダムを横一文字に薙ぐ。ケルビックフリーダムは自身の上方へ向けてそれを回避する。胸のアポリュオンが瞬く。
「っ、ちぃ!」
 回避がワンテンポ遅れた。エンデューリングジャスティスの左腕は、シールドごと吹き飛んだ。
「アスランだけじゃないよ、誰もそうなんだ、僕に勝てないってわかると、みんな僕の味方になるんだ」
「うあぁぁぁぁっ!!」
 エンデューリングジャスティスが、片腕で迫る。
 ケルビックフリーダムは間合いを取って回避しようとしたが、一瞬早く振り切られたラケルタが、ケルビックフリーダムの左腿を斜めに切り裂き、その脚を切り落とす。
「だから、シン────僕に解る基準点は…………」
 二刀流のケルビックフリーダムが迫る。シールドのないエンデューリングジャスティスには、回避することしかできない。踊らされるシン。
「君だけなんだよ」
 キラとの死闘を乗り越えて尚、キラに刃を上げる者。唯一の存在。
 だから倒さねばならない。この戦いが決まらなければどちらにも未来はない。
 ケルビックフリーダムのバースト。アポリュオンは撃たず、それ以外の火器のみが発射される。アポリュオンの空間コンデンサ動作が無かった。シンの回避が遅れる。
「しまっ……」
 キラはコクピットを狙ってきた。ラケルタの切っ先が、姿勢を崩したエンデューリングジャスティスの胸に向かって突き出されてきた。
「シン! 僕は君を乗り越える!」
 キラが勝利を確信した瞬間────
「やめてぇぇぇぇっ」
 別のモビルスーツが、紅いモビルスーツが、ケルビックフリーダムの前に躍り出た。
「!」
 ラケルタはその喉元を貫き、慣性でコクピットブロックまで引き裂いた。
 紅いモビルスーツ。Gタイプの紅いモビルスーツ。それは味方のシグナルを発していた。
「アス……ラン……!?」
 核融合炉が分解し、高圧のガスがコクピットブロックを粉微塵に砕く。
 その後ろから、エンデューリングジャスティスは飛び出してきた。
 ケルビックフリーダムは────避けない。
 エンデューリングジャスティスの刃は、ケルビックフリーダムを袈裟斬りにした。

「かわいそうな人……」
 ミーアのコクピットから、クレハは残骸へと変わるケルビックフリーダムを見送った。
「傷ついて、傷ついて、傷つくことに耐えかねて、目を閉じて……他人に見ることを任せきりにして……なお傷ついて…………貴方も苦しんだでしょうに。でも、やっと終わったの、貴方の旅も、長く辛い旅も…………」

『おおぃ、シン、無事かぁっ!?』
「コニール……」
 近寄ってきたジム・クロスウィズ。
『あの、赤毛女はどうした?』
「ルナは…………」
 泣きじゃくる事はなかったが、シンは目尻から涙を流す。
「ルナは、俺の盾になって……」
『…………』
 コニールは言葉を失った。彼女にとって、先ほどのルナマリアは敵に過ぎなかったが、シンを庇って倒れた相手を、罵ることも憚られた。
「どうして、俺たちはこんなところまで来てしまったんだろうな……」
『シン!』
 シンの言葉に、コニールは声を荒げた。
『シンは、守りたい物の為に、ここまで来たんだよ』
「…………でも、俺はキラを倒す為に」
『シンは誰かを守らずにはいられないんだよ……仲間の為に、ガルナハンの為に、……あの人の為に』
 哀しげな表情をしつつ、コニールはシンに語りかけた。
「…………」
『アスカ大佐』
 コニールに変わって、クレハが通信用ディスプレィに現れた。
『帰りましょう、アスカ大佐』
 やはり悲痛な面持ちで言うクレハに、シンは嗚咽になってしまいそうな声で言い、そして、頷いた。
「あ、あ…………っ」

『私はジオン公国大公、ジオン・アルテイシア・ダイクン。プラント軍に告ぐ、降伏の意思あるものは救難シグナルを発して停止しなさい』
 マリアから、アルテイシアがプラント軍の全周波数帯に渡って呼びかける。
 救難シグナルを発していたパクフアープの1機が、破損したもう1機を抱えながら、ニュー・ジン・ソルジャーの誘導に従って、ジオンのMS空母『アスベル』に降り立つ。
 破損した機体は、アスベルのクレーンで、格納庫内に運ばれていく。
 もう1機のコクピットから、ZAFT大統領武装親衛隊のパイロットスーツを着た、少女兵が飛び出してきた。運ばれるパクフアープを追っていく。
 ジム・クロスウィズが近寄ってきて、破損したパクフアープのコクピットを、強引にこじ開けた。
「ジーク!」
 コクピットブロックにまで、ビームサーベルによる傷が伸びていた。搭乗者には直接傷はついていなかったが、搭乗者は、パイロットスーツの中までから空気が抜けた状態で、絶命した。
「ジーク、ジーク!! うわぁぁぁぁぁっ!」
 ニーナは、その場でへたり込むような姿勢をとり、泣き崩れてしまった。

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