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アム種_134_021話

Last-modified: 2007-12-01 (土) 15:40:03

第二十一話 明日は何処へ



「アウルはっ!?アウルのやつは大丈夫なのかよっ!?」

「アウル……ステラ、心配……」

「だーいじょうぶだっ。あいつはそんなヤワなやつじゃない。ちっと強いストレスがあったから最適化やってるだけだ」



 ネオは、『調整室』と表示をされた部屋の前で詰め寄ってくる二人の部下を、必死になだめていた。



「本当なんだろうなっ!?」

「信用してくれよー……。別に怪我とかしてるわけじゃない」

「……」

「ステラも頼むからそんな目で見るのやめてくれ……」



 ほとんどが息子・娘の相手をする父親状態だ。

 そこまで歳をとっているわけでもないのに、非情に不本意ではあるが。



「どけ」

「あっ!?」

「スティング!?」



 スティングが更に問い詰めようとしたその時、彼の襟首が掴まれ、

 そのまま通路のほうへと放り投げられた。

 壁に激突し、息を詰まらせる彼のもとへ心配そうにステラが駆け寄っていく。



「……あんたか、客人」



 彼を放り投げ、ネオの前に立ち塞がったのは長髪の男だった。

 身に着けた連合軍の制服は、その筋肉ではちきれそうになっている。



「聞いたぞ。オーブとかいう国に、強い奴がいるそうだな」

『強イ奴、ケケッ』



 肩に止まった鳥が、見ているだけで鬱陶しい。



「あ?ああ。ディープフォビドゥン隊が全滅だからな……。しかも一機で」

「いくぞ」

「は?」

「そのオーブとかいう国に行くと言っているんだ」

「いや、しかし───」

「俺が倒してやる」

『倒ス、倒ス、ケケッ』



 オーブは今のところ中立、と言い掛けてネオは止めた。

 直属の上司であるジブリールから受けた命令は、絶対。



『彼の言うことに従え。そうすれば厄介な敵は減っていく』



──こちとら、隊長だってのに。

 内心面白くはなかったが、仕方ない。



「わかった。ひとまず補給に戻ってから───というのであれば」

「それでいい」



 男は満足そうに頷くと、彼らにはもう一瞥もくれずにそのまま歩いていった。

 彼の姿が通路の角に消えたところでようやく、スティングは立ち上がることができた。







「呼んでいる?ユウナさんが私達を?」



 瓦礫の山の側。

 VPS装甲の電源が切られ、灰色に変色したセイバーの足元で、マリア……マリューは言った。



「はい。バルドフェルド隊長に、ラクスも。頼みたいことがあるそうです」



 もちろん、キラにもだそうですが──……

 そう説明するのは、戦闘が終わった直後現場に到着し、事情を聞き終えたアスランだった。



 朝日が、昇りかけていた。

 セイバーから幾分離れたところでは、これまた灰色に染まったストライクノワールが肩膝をついて、その機体を休めている。



「ジェナス、それにシンにも話があるそうだ。一緒にきてほしい」

「俺にも?」

「ジェナスにーちゃん、シノビレッド壊れちゃったー」



 彼らに替わって子供達の相手をしてやっていたジェナスが、名前を呼ばれ振り向く。

 と、同時に子供の一人が全身真っ赤なテレビヒーローを模した人形を手に寄ってくる。



「ああ、はいはい。どうした?」

「声、でなくなっちゃった」

「どれどれ?」



 背中の電池ボックスを開くと、電池が片方ずれていた。

 はめなおし、蓋を閉じてから、音声を出すためのボタンを押してみる。



<<忍大将軍がドーン!!>>



 結構なボリュームで録音音声が辺りに響いた。

……なんかどこかで聞いたことあるような声じゃなかったか?今の。



「……いいみたいだな。ほら」

「ありがとー。あ、あとこれもー」

「オーケー、やっちゃる」



 今度は、青い人形に、ライドボードのようなものを模したプラスティック製の玩具。こちらは手足が白い。



「ギガブルー、外れちゃったの」

「ん。……よっと、ほら」



 ボードの凹凸に、クリア素材の銃を持った青い人形をはめこんで渡してやる。

 少し自分達アムドライバーっぽいな、とジェナスは思った。



「さ、カリダさんたちのところへ行ってろ」

「はーい」



 男の子の背中を押してやってから、立ち上がる。

 ラクスやバルドフェルドたちは、アスランと話し込んでいる。



「大丈夫かな、シンのやつ。キラと二人で」



 膝をついて待機している、ストライクノワールのほうに目をやる。

 丁度その足元は瓦礫や岩で視界が遮られ、見ることはできない。

 あの辺りに二人はいるはずだ。



──「少し、キラと二人にしてほしい」。

 一同に告げてあちらへ向かったシンと、黙って頷いて彼についていったキラ。

 あの二人はあの機体の足元で、一体どんなやりとりをしているのだろう。

 アスラン共々止めようとしたところをバルドフェルドに放っておくよう言われた彼としては、いささか気がかりであった。







「ただいまー」



 ヨーロッパのとある国の、とある町。

 ミリアリア・ハウは宿泊先の安ホテルの部屋に入るなり、ベッドへと突っ伏した。



「あー、しんど……」



 二年前、戦場に身を置いた彼女は現在、報道カメラマンとして世界中を飛び回っている。

 オーブに戻ったあととある賞に送った作品が、入賞こそしなかったものの主催する新聞社の目に留まったのが切っ掛けだった。

 あちこちを回っては、スクープとなる素材を探し、ファインダーに収める。

 まだまだ未熟ではあるが、ジャーナリストの卵である。

 一人で世界を旅する生活にも、もう大分慣れた。



「お疲れさま。おかえり」

「あー、セラぁ」



 いや、今は一人ではなかった。

 備え付けのポットのお湯で淹れたインスタントのコーヒーを差し出してくる少女。

 セラ・メイ。旅の途中で出会い、現在は行動を共にする相棒だ。

 知り合ってごく間もないけれど、人当たりのいいミリアリアと無口な彼女は正反対な性格でありながら、妙に気が合った。



「そっちはどうだった?元の世界……だっけ。戻れそう?」

「駄目ね。収穫ゼロ」

「そっかあ……。こっちも取材ドタキャンされちゃうし、最悪」



 何より、彼女の言う素性にミリアリアは興味を惹かれていた。

「ここは、私のいた世界じゃない」「私はどうやら違うところからきたみたい」

 普通の人間が聞けば、んなアホな、と思うようなことでもミリアリアは違った。

 非常識上等、空想夢想上等。既存の価値観にとらわれていてはスクープなんてモノにできはしない。

 だから、彼女のほうからセラに一緒にこないかと誘った。

 行く当てのないセラも、ミリアリアの申し出を断る手はなかった。

 かくして、女二人のコンビが出来たわけである。



「ご飯……どうする?」

「あー……少し寝るわぁ。六時になったら起こして。一緒に食べにいこ」

「わかった」

「ん、おやすみ……」



 無性に、眠かった。昨日徹夜で写真の整理をしていたのに加え、取材の気疲れが溜まっている。頭の固い相手の取材がこのところ多かったせいだ。



「……」



 セラが騒がしくするタイプの人間でなかったおかげで、すぐに眠りに落ちることができた。



 夢の中には、見知らぬ男の人と───、今は亡き、トールが出てきた。



……ああ、またこの夢か。ミリアリアは笑う。

 セラと出会ってから、見るようになった夢だった。

 二人はセラとミリアリアについてなにか、話しているように見えた。

 トールもその見知らぬ彼も、実に楽しそうでひょっとして彼はセラの知り合いなのかな、と思った。

 具体的に何を話しているのか、少し気になったけれど。

 その内容を聞き取るより先に、ミリアリアはノンレム睡眠へと入っていった。



「?」



 着替えもせずうつ伏せになったミリアリアに、セラは毛布をかけてやった。

 彼女の顔が微笑んでいるのを見て、首を傾げた。


 
 

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