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アム種_134_067話

Last-modified: 2007-12-01 (土) 15:55:55

第六十七話 戦士達の困惑





「ぐ……うっ!!」



 ハイネの形見たるビームソードが、跳ね上げられるように斬り落とされ宙を舞った。それを保持した、セイバーの深紅の右腕ごと。



「まだ、だっ!!」



 シールドを投げ捨て、エネルギー供給を絶たれビームの刃を消失した刀身を左手に掴む。間髪いれずジャスティスに投げつけると同時に肩のサーベルを引き抜き、頭部に突き立てる。

 ビームソードは弾いたジャスティスであったが続く頭部への攻撃は完全には避けきれず、メインカメラのある頭が、左半分ごっそりと失われた。



 四肢のひとつと、視界。

 ともに失ったものは大きく、痛みわけといっていいだろう。



 セイバーのアムフォルタスとジャスティスのフォルティス、双方のビーム砲が激突し、スパークを起こす。



 まだまだ、やれる。こっちだって、その機体のことは十二分に知っているんだ。



 そのことがなんのアドバンテージにならないことは、重々承知。

 再度せりあげたビーム砲を片方、連結された相手のサーベルに切り落とされながらも肩部装甲を吹き飛ばすことに成功する。



 連結サーベルのビーム発振口も片方、潰した。



 互角の状況は、未だ続く。







 少女が被ったのは、見慣れた形状のヘルメット。

 鋭角的なデザインが純白に染められた、特徴的なそれは間違いなく彼女自身のもの。



「シャシャ……」

「敵、ダメ……倒ス……」



 とうに腹に一撃食らったダメージなど、抜けているはずなのに。

 ジェナスは立ち上がれなかった。

 その気力がなかった。



 想像だにしないことであったから。

 あまりに、ショックが大きくて。



 ダークやタフトが敵にまわったかもしれないと思ったときよりも、それは遥かに大きかった。



「終わりかい?案外不甲斐ないねぇ」



 仮面を被った士官が、嘲るように言っても、

 ジェナスはそのようなこと、どうでもよかった。



「ジェナス……っぐ」

「おーっと、動くなよ?砂漠の虎さんよ?」



 呻くバルドフェルドに、士官の自動拳銃が向けられる。

 銃口を睨みつけるも、身動きのとれないバルドフェルド。



「させんっ!!」



 だがそこに、闖入者が現れた。



 ルビーの赤に似た色の装甲を纏ったニルギースが剣を振り上げ、

 白の少女と打ち合わせる。

 同時に、拳銃を片手にしたレイが、駆け込んでくる。



「ジェナス!!バルドフェルド隊長!!無事ですか!!」

「……レイ!!ニルギース!!」

「ニルギース!!やめろっ!!」



 安堵するバルドフェルドとは対照的に、ジェナスは叫んでいた。



 剣と剣をぶつけあう二人に向かい。



 ニルギースとシャシャが戦うなんて、いけない。

 兄妹も同然であった二人が戦うなど、絶対に。



「シャシャと戦っちゃ、ダメだっ!!」







「シャシャ……だと……?」



 記憶にない、名前だった。

 自分が忘れた、失ってしまった記憶の中に、きっとその名はある。



 ニルギースは鍔迫り合いの中、思わず相手の白い姿をじっと見つめる。



(シャ……シャ……?)



 ぞくり、と全身に鳥肌が立った。

 その名前を、自分は傷つけてはいけない。そんな気がして。

 剣を持つ手に、力が入らない。



(これは、一体……?)



 思い出せそうで、思い出せないのがもどかしい。

 その間にも、均衡は破れ手の内から剣が弾き飛ばされる。



 横っ面に、蹴りを一撃。

 受けたニルギースは、派手にジェナスのすぐ横の壁へと吹き飛ばされた。







 一方、アークエンジェルのブリッジ。



「ストライクノワール、被弾!!ランチャーストライカーを失った模様!!」



 ミリアリアの報告にも、ブリッジの一同は騒然となることはない。



 数の利があったとはいえ、あのハイネやシンを破った二機が相手なのだ。

 そう容易く倒せる相手ではない。



「調整のほうは?」

「完了しています。いつでも射出できるそうです」



 なにより彼らは、二人の腕を信じている。

 だから自分達のやるべきことに専念できる。



「タイミングを……誤らないようにね」

「はい」







「く……貴様っ!!」



 レイが向けた拳銃にも、士官は全く動じない。

 バルドフェルドへと銃をつきつけたまま、撃てるものなら撃ってみろ、と言わんばかりの態度だ。



「ほう……この感覚。どうやらきみが例の白い坊主くんらしいね?」

「何を……?」

「レイ、撃て!!俺にかまうな!!」



 右肩から血を流しながら、バルドフェルドが叫ぶ。

 左腕に仕込んだショットガンは使えない。ノーマルスーツが邪魔だ。



 だが。



 ちらとレイが向けてきた目線に、無言で頷く。

 大丈夫だ、と。



 痛みで動かぬ右腕を、そっと先程の白衣へ伸ばす。

 ゆっくりと、気付かれぬように。



「うおりゃあっ!!」

「ぬっ!?」



 銃撃を受け脳漿を浴び、穴の空いた白衣を士官めがけ投げつける。

 酷使と銃創に傷ついた身体は、それだけで悲鳴をあげる。



 ばさばさと広がったそれは、相手の視界を一瞬にして覆う。

 苦し紛れの発砲が床を撃った。



「今だ!!やれ!!」

「うおおっ!!」



 視界を遮る白衣にもがく敵士官へと、レイは発砲した。

 しかし白衣に吸い込まれたのは一発だけで、あとは

 無茶苦茶に暴れながらも相手はかわしていく。



 白衣を跳ね除け、仮面の士官は飛びのいた。



「な!?」

「……う!?」



 そして、その顔には……灰色の硬質な仮面はなかった。



 白衣が床に落ちると同時に、重厚なごつごつとした音が部屋に響き。

 仮面が銃撃を避けたはずみではずれたのだと知らせる。

 露わになった顔と、つややかな金髪がこぼれ出る。



 自分達の目撃したその顔に、レイとバルドフェルドは驚きを隠すことができなかった。



「馬鹿な……お前?そんな?」

「何故……生きているんだ……そんなはずは」

「あーあー……やってくれたな。今のは少しびびった」



 驚きはつまり、隙へと繋がる。

 ニルギースを壁に叩きつけた白いスーツの女が、あっという間にレイの眼前へと迫り、彼の喉元を掴み壁へと放り投げ。



「死ねよ」

「どうしてだ……マリューはお前を……」



 気を失ったレイを、気遣う間もなく。

 金髪の男の放った銃弾がバルドフェルドの胸へと、吸い込まれていった───……。


 
 

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