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アム種_134_084話

Last-modified: 2007-12-01 (土) 16:03:27

第八十四話 反撃への道





『ラクス様!!どうしてわかっていただけないのです!!我々の行く道こそが……』

「本当に正しいのですか?対話のために集まった者たちを力によって消し去り、奪取した政権の行うことが、本当に?」

「ラクス・クライン……ミーア・キャンベル?」



 エターナルのブリッジへと通されたレイが見たのは、特徴的なピンク色の髪の、二人。

 そして。



「イザーク・ジュール隊長……?」



 ユニウス7において共に轡を並べた、銀髪の青年。

 あのヤキン・ドゥーエの英雄としても知られる彼が、キャプテンシートに納まっている。

 すぐ側のピンク髪のうちのひとり──おそらくラクスだろう──がなにやら通信機越しに、どこかとの問答を行っているようであった。



「来たな。レイ・ザ・バレルだったか。イザーク・ジュールだ」

『仕方のないことなのです!!あなたの、シーゲルさまの理想のためには!!』

「それは父の理想でも、私のものでもありません。あなたがたの単なる我侭でしょう」

『ラクス様!!』

「国民の民意を受けぬ国家の理想に……一体どれほどの価値がありましょうか。国家は、世界は、一部の人間のものではない。まして、不用な流血の上にたつものなど、認められるものではありません」



 レイが入ってきたことに気付くと彼は、わずかに首だけ捻って、不敵に、満足げに笑んでみせた。

 ラクスが頷いたのにあわせ、どこかと繋がりラクスとの会話を行っていた通信を、遮断する。

 通信が切れたのを確認し、ラクスは目を伏せていた。



「艦長さんよ、俺たちも出撃の準備しとく。バイザーバグ共が出てきたらやっかいだ」

「ああ、たのむ」



 ここまでレイを連れてきた二人組がブリッジを辞し、レイは若干、身の置き場がなくなる。



 ぐるりと見回したブリッジは資料でみたことのあるそれと相違ない、「あの」エターナルそのものだった。

 この艦がまだ残されていたとは、驚きだった。

 前大戦後返還されてからは、複雑な事情を嫌った評議員たちの意向により隠匿、破棄されたと聞いていたのだが。



───と、彼の疑問を、顔も見ずして察したように艦長席の白服が口を開く。



「破棄、寸前だったがな。デュランダル議長の命で、それは免れた。

 軍でもごく一部のみ知らされていたことだ。俺も知らなかった」

「艦長!!三時の方向に敵影!!MS、バイザーバグ多数!!及び母艦、8!!」

「各艦に通達!!MS隊発進、迎撃!!ただしまともにやりあうな、振り切るのを最優先に!!」



 そして、敵の来訪を告げるクルーの声。

 それにも、彼はきびきびと対応し、命令を下していく。



「こちらの戦力は?」

「この艦を含めて、三隻。なんとかかき集められるだけ、集めたんだがな」



 まともな戦力は、レクイエムの発射と同時に爆破され。

 残ったものも殆どがクライン派によって取り込まれ、接収されてしまった。



 兵士たちも武器なしには戦えず、プラントそのものが人質にとられていては、従わざるをえない。



「敵は、倍以上ということですか……空いているMSは?自分も出ます」



 戦力を無駄にはできない。ここは、自分も出るべきだろう。

 尋ねたレイに、イザークは前を向いたまま返す。



「デッキだ。行き方はわかるな?空いている機体ならどれを使ってくれてもかまわん」

「了解」

「ミネルバとアークエンジェルに連絡しろ!!歌姫を連れて行くと!!」



 指示を出してしまえばもう、彼の頭にはレイのことはなかった。

 この場を切り抜けること以外は、なにも。







 一方。

 ミネルバとアークエンジェルは、指定された合流ポイントにほぼ近付いていた。

 とりたてて敵影も(また、敵対する勢力そのものも)いないというのに、そこはデブリの密集する暗礁宙域。これはやはり、なにかある。



 正規軍で、しかも名の知れた艦同士が平時に会合する場所として適当な場所ではけっしてない。



「通信?エターナルから?」



 プリントアウトした電文が、アーサーから手渡される。



「ラクス・クラインを奪取、現在この宙域に急行中……?敵の追撃を受けている?」

「どういうことなんでしょう。敵の追撃って、もう連合は敵ではないわけですし」



 月のブルーコスモス一派も壊滅したと聞く。ならば───、



「プラントそのものに追われている、ということかしら?」

「ええっ!?」



 正確には、プラントの現政権から。

 あの巨大なビーム砲で地球を撃ったという衝撃の冷めやらぬ今、議長が自分たちに奇妙な命令を出していたのはこのためかとも、疑いたくなる。

 祖国の政治に疑問を持つのは、愚直に従うことを要求される軍人としては失格ではあるが。



「エターナルの現在位置は?」

「ここです」



 バートの呼び出した座標と図を見て、しばし考え込む。



「……事情はどうあれ、本艦隊に課せられた任務はエターナルとの合流です。

 MS隊を向かわせます、ラミアス艦長にも連絡を。ただし艦隊はこの位置に固定」

「は、はい!!」

「なお、この命令は部隊長である私の独断によるものです。他の人間には一切の責任はないものとします」







 味方のゲイツRが撃ち抜かれ、撃墜される。



「ちいいっ!!数だけは多い!!シホちゃん、そっち行ったぜ!!」

『わかってます!!でもこっちも……!!』



 怒鳴りあいながら、それぞれに敵機を撃ち、切り裂いていく。



 ディアッカのガナーザクファントムに、シホのグフイグナイテッド。

 エース格の彼らがいるとはいえ、倍以上の戦力差は如何ともしがたい。

 機体もこちらがゲイツRを中心とした編成であるのに対し、あちらはグフやザクを惜しげもなく投入してくるというのが腹立たしい。



『ヴォルテール、大破轟沈!!』

『しまった!?』

「おいおい、マジかよ。ありゃあ……」



 沈みゆく僚艦、そのエンジンを撃ち、多くの兵士達の命を奪ったのは。



「オレンジショルダー隊、あんな連中までいやがるってのかよ!!」



 橙に肩を染め上げたザクウォーリアが無数に。

 かつて、あのハイネ・ヴェステンフルスが指揮していた腕利きの部隊。

 やっかいな連中が篭絡されたということになる。



「こーりゃ、きっついんじゃないの?」

『口より手を動かしてくださいよ!!』

「へーいへい。……各機、オレンジの肩のやつには手を出すな!!俺とハーネンフース機で相手をする!!」

『私達だけって……数が多いですよ!?』

「仕方ないだろ!!他に対応できそうなやつが……」



 相手は手練。こちらも相応の実力が要求される。

 赤服レベルの腕がなければ、手玉にとられるだけだろう。



『ディアッカ!!今ミネルバ隊からMS隊の発進を確認した!!もう少し耐えろ!!』

「りょーかい!!たく、簡単に言うけどよっ!!」



 腕のいい敵パイロットに加え、バイザーバグなる小型の機体の数が多く、目障りで仕方がない。



「あーくそ!!手が足りねえ!!」

『心配するな、今発進させる』

「あん?」







「すまないな。なにぶん準備からなにから、目立たないようにする必要があったもんでな。

 廃棄処分寸前の機体をかすめとってくるしかなかったんだ」

「いえ。やれます、十分です」



 紫色の二人組は、それぞれ赤と青の、ジェナスの使っていたライドボードとエッジバイザーを足して二で割ったような機体を駆って一足先に出撃していった。

 少々手間取ったが、自分もいける。



「なんならあっちの機体でも。あれならきちんと正規で……」

「『あれ』は、アスランが乗るべき機体でしょう。合流し次第」

「そうかい?言っておくがあまり稼働時間は長くないぞ?シルエットへの追加エンジンの装備もまだだし」



 そんなことは、百も承知。

 今は少しでも手が必要なとき。

 その意味ではこの艦に、多少なりとも勝手を知っている“この機体”があったのは幸いだった。



「シンほどではありませんが……やってみせます」



 名も知らぬ整備兵の気遣いに頭を下げ、コックピットハッチを閉じる。



「レジェンドがあればとも思ったが……贅沢も言っていられんしな」



 ヘルメットのバイザーを下ろす。

 オペレーターの管制に従い、カタパルトハッチが開いていく。



「レイ・ザ・バレル、デスティニーインパルス、発進する!!」



 機体の色は、青とグレーを基調とした落ち着いた色に染まった。

 戦友のかつての愛機と同じMSは、彼が今駆るMSと同じ翼を持つ。



 光の翼が、鮮やかに輝く。


 
 

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