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アム種_134_085話

Last-modified: 2007-12-01 (土) 16:03:46

第八十五話 ignited



 背中のラックにマウントされた、二振りのエクスカリバーを引き抜く。

 ビーム刃は出力させない。ただでさえエネルギーを食う機体なのだ、PS装甲を相手にしないならば、実剣のままで節約したほうがい。



「なるほど、これは……!!」



 疾い。

 ザクなどとは比較にもならない。

 刺突が、横一閃が、次々に敵MSを撃墜していく。

 火線が追いすがろうとも、敵は反応そのものが追いついていない。



「いける……う!?」



 だが、彼の快進撃はそこで一旦中止。

 敵機の群れを駆け抜けた先に見慣れぬ機体を見つけ、レイは機体を停止させる。



「黄金の……MSだと?」



 二機のMSの装甲は、金色に光っていた。



 ほぼ同じ外見、背中に背負ったバックパック以外、差異の見られない機体が、二機。



 ザクやグフといった量産機の群れの奥に、ならんでいて。



「!!……ドラグーン!?」



 そのうちの一機が、背中の突起状のパーツを射出する。



 小型のそれらは五機、目にもとまらぬスピードでデスティニーインパルスをとりかこみ。

 放射されるビームの驟雨の中を、レイは駆け巡る。



「ちいいぃっ!!」



 更にはもう一機が双刀状のビームサーベルを引き抜き、接近戦を仕掛けてくる。



「同士討ちでもする気か!?このドラグーンの中を!!自滅するぞ!!」



 ビームシールドで防ぎ、背後から放たれるドラグーンのビームをかわす。

 デスティニーインパルスの機動性と、空間認識力に長けたレイの組み合わせだからかわせているのだ。



 そこに飛び込んできても、味方から撃たれるのがおちだ。



 斬りかかってきた機体のコックピットと思しき場所へとビームが吸い込まれていくのを、レイは確信する。

 だが。



「何!?」



 胸部へと直撃を受けた機体は、貫かれることも、爆散することもなく。

 あろうことか、そのビームを、



「反射した!?」



 その射角のままに跳ね返し、虚空の宇宙へと弾き飛ばしていく。

 陽電子リフレクター、いや違う。そのような素振りは見えなかった。

 ならば、おそらくは。



「ビームを反射する装甲、というわけか……!!」



 弾くだけならまだしも、下手をうてば角度によっては自分に攻撃が跳ね返ってくるなど。

 やっかいな敵だ。

 こちらのカードは対艦刀とバルカン、通用するかはわからないがビームブーメランだけということになる。



「───だが」



 センサーが、新たな機影を告げる。



「どうやら、間に合ったらしいな」



 認識のシグナルは、戦友たちのもの。

 ミネルバとアークエンジェルの、MS隊。そしてアムドライバーたち。







『こちらミネルバ隊アークエンジェル所属・ムラサメ、アスラン・ザラだ。エターナル、応答を……』

『遅いわ、馬鹿者!!来るならもっとはやく来い!!』

『……イザーク?』

『そんな機体よりも、貴様には乗るべきものがある!!さっさと着艦しろ!!』



 通信の向こうで、なにやらアスランたちがもめている。



 だが、ジェナスにとって重要なのは、それではない。

 聴覚よりも、視覚の捉える情報のほうが、彼にとって、また共に戦場に駆けつけたセラにとって、重要なことであった。



「……ダークさん、タフトさん」



 本来なら、懐かしい。喜ぶべきである合流・再会も、素直に喜べない。



『ジェナス……セラ』



 自分たちは、彼らのやったことを知っているから。

 向こうの声のトーンから、彼らも自身のやった行為を憶えているのだろう。



 紫のアムジャケットの二人との間に、緊張が流れる。



『……お前らには……色々と言わなきゃならないことが、あるんだろうな』

「……」

『この戦闘が終わったら……少し、いいか?』

「……ええ」



 今は、その暇はない。

 シンや、アスランや。合流せねばならないエターナルが、戦っている。

 すべては、それからだ。戦いながら解決するには、彼らの間に流れるものは重すぎる。



「終わったら……必ず」



 けじめを、つけなくてはならない。







 地球を発つ前、ステラの病室に、一度だけ一人で会いにいったことがある。



『ルナ……シン、お願い……』



 小康状態なら、ともかく。

 薬物の禁断症状に苦しむ彼女は、ベッドに縛られた絶え絶えの声で、ルナマリアに願った。



 シンが「死なない」ように、と。守ってほしい、と。



 ルナマリアは、引き攣り、血管の浮かんだ彼女の掌を握った。

 そして、強く頷いた。シンは死なせない、ステラの元に、なにがあっても帰すから。

 彼女の目を見て。たしかに、約束したのだ。

 

 

──なのに。自分はなにもできず今こうして、ミネルバに残っている。



 パイロット待機室で、ぼんやりとルナマリアは星の海を見つめていた。

 あれから、機体の補充はなく。

 搭乗機のないルナマリアは、艦隊の護衛に残ったキラとともに、出撃していくシンたちを見送った。



 今ミネルバ艦隊に残されたMSは、キラのストライクフリーダムだけ。

 インパルスのチェスト、レッグの両フライヤーはあるが、肝心のコアスプレンダーがない。

 故に、ルナマリアが出撃することは適わない。



(任せろって言っておいて……情けないもんね、まったく)



 自分に出来る事に、地球のステラと何の違いがある?

 無事を祈るくらいなら、彼女だってやっているに決まっている。



「どうしたの?元気ないけど」

「あっ……キラ」



 パイロットスーツに身を包んだキラが、隣にきていた。

 赤の軍服姿のままとの対比が、一層強調される。



 シンがステラを助け出してからだろうか、キラは穏やかだったその雰囲気を、

 さらになだらかなものとしていた。呼び方もアスラン共々、さん付けはいらないと言って。



「あたし……あの子に頼まれたんです。シンをお願い、って。なのに」



 機体がない。なにもできない。頼まれたことなのに。



「心配?」

「……はい」



 それは無論だ。だけどそれ以上に、



「歯痒いよね」

「え?」

「なにかしたいとき、しなきゃならないときにできないっていうのは」



 キラは、微笑んでいた。ルナマリアを元気づけるように。



「でも、今は代わりにそれをやってくれる人がいるでしょ?あの子がきみにシンのことを任せたように」

「アスランや、ジェナスたち……ですか?」



 頷く。彼らの力を、信じてみてはどうか。彼は、そう言っていた。



「それでも落ち着かないなら、今自分にできることを精一杯やればいい」

「自分に、できること……」



 まだやれることがあるのに、それを見逃してなにかを望むのは不相応だ。

 ルナマリアは考える。そして。



「あたし、整備班手伝ってきます!!やれること、やっとかないと!!」



 駆け出す。正確には、無重力の床を蹴って、跳躍する。

 明るさを取り戻した表情で、弾かれたように。



 自動ドアを開いて、格納庫へ急ぐ。

 こんなところで物思いに耽っているよりは、整備を手伝ったほうが有益だ。



 ドアをくぐり一度身体を反転させ、キラに頭を下げて。ルナマリアは通路に消えていった。



「……頑張って」



 自分も、今自分がせねばならぬこと、やれることをするしかない。



(みんな、ラクスを……お願い)



 ストライクフリーダムなら、多数の敵を一度に相手に出来る。

 彼が艦隊に残るのは、ある意味では当然であった。



 たとえ、ラクスのことが心配であっても。

 先程ルナマリアに言ったことは、自分自身に対しての戒めでもある。

 自分の役目は、この艦隊を守ることだ。



「!!」



 敵襲を告げる警報が、鳴った。



 くるかもしれないという予想は、多少なりともあった。

 こちらが救援のMS隊を向かわせれば、それによりこちらの位置もある程度特定される。

 合流場所が暗礁宙域という穏やかでない場所、そして合流すべきエターナルが追われている事からも、こちらにも矛先が向けられることは考えられていた。



「よし」



 ヘルメットを手にする。

 二年前と同じだ。あの頃もMSはたった一機で、アークエンジェルを守らなければならなかった。

 エレベーターに乗り込み、機体へと向かう。



 そんな彼が相対するのは二年前、共に同じ艦を守り、戦った相手──……


 
 

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