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アム種_134_091話

Last-modified: 2007-12-01 (土) 16:09:04

アム種 第九十一話 求む力の先



アムジャケットに包まれたジェナスの肉体、その周囲をビームの雨が掠めていく。

いくらゼアムの力があるとはいえ、全開でない今直撃を受ければたまったものではない。

もちろん、己が手に余る最大出力を発揮する気もない。



MSすら撃ち抜く光の弾丸は当たりさえすれば、いとも容易くジェナスの身体を飲み込み、燃やし尽くしていくことだろう。



「やめろ、ディグラーズ!!戦ってる場合じゃないだろ!!」

「知るか!!俺は貴様に勝ぁつ!!ただそれだけだ!!……ぬ!?」



その標的は無論、ジェナスだけに限定されない。

彼に攻撃を加えるディグラーズをもが、その対象。



そんな一騎打ちなど望むべくもない状況にありながら、ディグラーズはなおもジェナスに固執する。



『ほらほら、逝っちまいな!!我々の正しい世界のために!!』

「くそ……!!こいつら!!」



大人と子供……いや、象と鼠の喧嘩である。MSとではサイズが違う。

しかもこちらは一人、あちらは多数。バイザーも生憎と持ってきていない。

そこにディグラーズの攻撃が加わっては、たまったものではない。



「くそ……!!」

『ジェナス!!』



ディグラーズ共々、ザクに囲まれる。

彼らの周囲を包囲した機体の頭が、胴体が、四肢が撃ち抜かれ、

仲間の声がヘルメットのスピーカーに拾われる。



「シン!!みんな!!」



シンのデスティニーと、二機のデスティニーインパルス。ルナとレイの機体が、

ビームライフルで次々とザクを無力化、もしくは撃墜していく。



『はやく交戦禁止宙域まで戻れ!!ここじゃあ……!!』

「ダメだ!!MS隊はともかく……ディグラーズのやつはそんなこと気にしやしない!!そのまま戦闘を持ち込むだけだ!!」



ディグラーズの左鉄拳をかわすジェナス。

デスティニーが放った長射程ビーム砲が、ザクを遠距離から撃ち貫く。



『だったらどうすりゃいいんだよっ!?』

「MSの相手を頼む!!奴とは俺が!!」

『わかった!!……レイ!!』

『ああ、使え、ジェナス!!』



シンの合図に合わせ、レイのデスティニーインパルスが後ろ腰からマウントされていた流線型の機体を切り離す。

本来のライフル用マウントに無理矢理備え付けていたのだろう、機体と機体を繋げていたワイヤーが棚引く。



「助かる!!……やっちゃるぜ!!」



ネオボードバイザー・ソードダンサー。

分離後加速した機体は変形し、ジェナスはそれを身に纏う。



装甲に覆われた四肢と、蒼い切っ先の大剣が直射する太陽の光に輝いた。



 ****



『ルナマリア、無駄弾を撃つなよ。我々の機体は燃費が悪いんだ』

「わかってるわよ!!あたしだって「赤」なんだから!!」



デスティニーインパルスは本来欠陥品だ。

あまりにその装備であるデスティニーシルエットがバッテリーを食うが故、

とても実戦に耐え得る代物ではなかったのである。

故にデュートリオンと核動力のハイブリッドエンジンを搭載することでようやく、

デスティニーという完成形が生まれたわけだ。



そのことは運用上の留意点という形で、ルナマリアも機体を運んできたエターナルの整備スタッフたちから聞いていた。



「母艦、一隻確認!!」



今彼女とレイの乗っている機体は、そんな廃棄寸前の扱いを受けていた機体を回収し、

ミラージュコロイド発生装置を本来搭載していた部分に大容量のバッテリーとエンジンを追加で積み込んで

無理やりに燃費を稼いでいるという強引なものである。

それでも大型高出力の推進器と、高エネルギーを必要とする武装群のためにお世辞にも稼働時間は長いとはいえないが。



「このずんぐりむっくり!!どきなさいよ!!」



月の影から姿を見せた母艦を護るように、三機の見慣れぬMS──恐らく新型だろう──が、

こちらに矛先を変え向かってくる。



三機纏まってつっこんでくる一つ目のMSたちに、ルナマリアはビームライフルを向けた。



「!?ビームをはじく!?防ぐんじゃなくて!?」



だが、正確に中心を狙ったそれは、MSたちを包む朱のヴェールのようなものに阻まれ拡散する。



「デストロイじゃあるまいし、MSになんてものをっ……!!」

『ルナ!!接近戦だ!!二機で同時につっこむぞ!!』

「了解!!」



アロンダイトを抜いたデスティニーが先行し、ルナマリアもまた右のエクスカリバーを手にシンのあとを追う。

レイが墜としたザクに代わり、母艦から新たに二機発進してきていた。



 ****



「何故そんなに力を求める!!力だけあって一体、何になる!?」



ソードダンサーの出力が加わってなお、鍔迫り合いは互角。



「アムドライバーの力は、みんなを守るためのものだろう!!目的あっての力じゃないか!!」

「力こそ俺の目的よ!!頂点に立つ、それ以外の目的が生きる上であるものか!!」

「ぐ……ディグラーズ!!」



大剣は、威力は高いものの大振りにならざるをえない。

横一文字に振り抜いた一撃は、ディグラーズに易々とかわされる。



「強い者に勝ち、高みに上る!!それ以上に力を求めるための理由が人間に、生物にあるか!!」

「ふざけるな!!人間は他の目的のためにだって強くなれる!!お前の尺度は本能だけしか見ていない!!」

「本能に従ってこその動物というものだろうがぁっ!!」

「動物と人間はぁ……っ、違うっ!!人は本能を抑えられる!!」



本能を抑えられるから、人間というものは文化を、社会というものを創り出しその中に生きることができる。

理性という共存を育む要素があるからこそ。



肩の小型ソードを兼ねたシールドで、鉄拳を受け止める。

胸元に叩きつけかけたエクスカリバーの柄もまた、相手の掌に阻まれる。



「頂点は常にひとつ!!そこに上るための本能を縛る理性など、糞の役にも立たんわっ!!」

「勝手を言うなっ!!頂点に立って、それから一体どうなるってんだ!!」

「そんな先のことなど知るか!!言っただろうが、頂点、それこそが目的なのだと!!」



鳩尾に、ディグラーズの蹴りが吸い込まれる。

激痛と嘔吐感を堪え、ジェナスはその蹴り足を掴み回転、放り投げた。



慣性にしたがって遠ざかる姿は近くのデブリをハンマーで殴打し、その勢いを殺す。



「俺は全てを超える……そして最強を証明する……!!」

「まだそんなことを……っ」

「貴様の、ゼアム!!アムエネルギーも超えてやるわあっ!!」

「!?」



ゼアムを、超える?



一瞬の疑問が、反応を間に合わなくする。

猛然と突進するディグラーズの鉄拳がヘルメットへと叩き込まれ、脳天に星が舞った。



『ジェナス!!』



シンの叫びが、遠い。

ふらつく頭で見据えた黒いアムジャケットが二重に分身しているように、ぶれて見えた。



「ジェナス・ディラ!!貴様や俺をこの世界に飛ばしたアムエネルギー……その最高の力、ゼアムの持ち主たる

 貴様こそ、最強を決める相手に相応しい!!」

「っ……ぐ……」



世界までもが、ミックスされていく。

がんがんと頭が痛み、朦朧とする視界の中にジェナスはディグラーズの声を聞く。



ゼアムを超える。何を言っている。

ただのエネルギーではないか、アムエネルギーも、ゼアムも。

そんなものを超えるなんて論理、どうかしている。



自分自身、自分の考えが纏まらないことを自覚しつつ、

とめどなくディグラーズへの反論がジェナスの中で浮かんでは消えていく。



「ゼアムも!!貴様も!!俺が倒して最強を証明するのだぁっ!!」










 
 

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