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クルーゼ生存_第07話

Last-modified: 2013-12-22 (日) 02:12:00

 そのころ宇宙の戦線では、数の地球軍をザフトが何とかせき止めるという戦いが続いて
いた。イザーク・ジュールは生来短気なため、消耗戦に持ち込まれるのは好きではなかっ
たが、いまは地上部隊に元を叩いてもらうしかない。そんなことを考えていたところに、
通信兵が紙にプリントアウトされた電文を彼に手渡した。秘密事項、ということだろう。
それを読んだ彼の顔色は真っ青になった。
「ディアッカ!!」
 信頼の厚い副官を呼ぶ。
 MSデッキにいた彼が艦橋に上がってくるまでしばらく時間があったが、その間、艦橋の
人間は神経質に打ち鳴らされる靴音に悩まされた。
 ディアッカ・エルスマンが来ると小声で告げる。
「母上が逮捕された。ユニウス7の地球落下を企んだ連中にジンや爆薬を渡すのに一役買
ったと」
「おばさんが。ザラ派でも一番の強硬派なのは、以前と変わらずだからな」
「母が関与してなければと祈っていたが、とにかく、俺は接見に行く。その間の司令官代
理は任せた」
 イザークの元々白い顔は、血の気を失って貧血で倒れそうに白い。
「ここは俺たちが食い止める。お前は接見に行って、悔いを残さず戻って来い」

 
 

「さて、ファントムペインコーディネーター部隊も体制が整った。あれが君たちをテスト
するための獲物だ」
 強襲揚陸艦JPジョーンズのブリーフィングルームで、ネオ・ロアノーク大佐がスティー
ブン・アゴスト中尉、タニス・ヴァーチャー少尉、そしてアスラン・ザラ少尉に声を掛けた。
 画面に指し示されたのは、ザフトの戦艦と巡洋艦が一隻ずつ。先のカーペンタリア基地
包囲戦のあと、パトロールを強化しているのだ。
「あれを三人で始末してもらう。艦載モビルスーツは情報によると、戦艦に5機。巡洋艦
に水中用が2機。こちらは空中用だから、水中用はうちもらしてもかまわん。船は必ず始
末すること。お前達で部隊を組むことには内部に反対意見もあった。お前たちに出来るこ
とは、戦果で反対派を黙らせることだけだ」
「イエッサー。青き清浄なる世界のために」
 三人が和して敬礼する。
 作戦開始予定通りに、発進シークエンスが始まった。
「アスラン・ザラ少尉、アシーネイージス、出る!」
 勇躍と空に赤い機体を躍らせた。

 
 

 連合軍の広報は誇らしげに戦果を発表した。
「本日現地時間1400、本軍はザフト軍と交戦、戦艦一隻、巡洋艦一隻、モビルスーツ
7機を撃破。本軍の戦力はモビルスーツ三機、パイロットはスティーブン・アゴスト中尉、
タニス・ヴァーチャー少尉、アスラン・ザラ少尉の三名であります。アスラン・ザラ少尉
は故パトリック・ザラプラント評議会議長の子息であり、このたび大西洋連邦の理念に共
鳴して、永住権を申請し、軍に入隊したものであります。これからの軍功によって、市民
権の授与までの期間が最低限にまで縮まる可能性もあります」

 
 

「アスランが、連邦の軍人になって、ザフトと戦っただと?」
 テレビを見ながら真っ青な顔で呟くカガリに、ユウナが声をかける。
「こっちで学生をしてたんだっけ? 戦士の血が騒いだってことか、父親の贖罪のために
働く気になったのか。でもこれで大西洋連邦のコープランド大統領と会うときの課題がひ
とつ減ったね。これで、アークエンジェルの下士官や兵士にオーブ国籍を与えて連合軍に
引き渡さない理由が強くなったからね」
「そういう問題か!?」
「そういう問題だよ、ボクらにとってはね。結婚式の後、同盟関係を固めるためにワシン
トンに招待されてるんだ。大統領夫妻といる時だけでも、ネコをかぶれるようになってお
くれよ、カガリ」
 子供をあしらうように言われるのは心外だが、正式に外国訪問するなら必要なことだ。
乳母のマーナはカガリに姫らしい礼儀作法や所作を教えようと懸命になったが、果たせな
かった。いま花嫁見習いでセイラン家に来ているのもそのためだ。ウズミの従姉妹に当た
るユウナの母に捕まっては、さすがのカガリも逃げようがない。とはいえ彼女もじゃじゃ
馬馴らしを完璧にするのは無理と見て取ったのか、とにかく正式の場で恥をかかないよう、
国賓のことをかぼちゃと思って天気の話だけするようになどと教えているのだった。
「オーブのためだ。努力はする」
 カガリは前大戦のオーブ戦で家族を失ったザフト兵の真紅の瞳を思い出した。ありった
けの憎しみと侮蔑を込めた視線、国民にあの少年のような目をさせないためなら、公式の
場でだけ淑女ぶってほほと笑い、しとやかにハイヒールで歩くことなど、苦労にもならな
かった。

 

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