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クロスSEED第03話

Last-modified: 2007-11-09 (金) 23:14:44

第三話「胎動」

「どういうことなんだ!」
 怒声が、広い部屋の中に響いた。
 部屋の中央に、ウナト、ユウナ、それに金髪の少女が立っていた。
「しかしカガリ様」
 ウナトが一つため息をつき、一枚の紙を見せる。
 "オーブ首長国及び地球連合各国による軍事同盟締結書"
 連合参加各国の長のサインがしてあるその紙切れは、後はオーブ首長、すなわちカガリのサインを待つのみとなっている。
「私を乗せたザフト艦に戦闘を仕掛けたのは連合軍の可能性が高いんだぞ!ましてオーブの領海での見え見えの挑発行為!そんな連合と」
「それはどうかな」
 反論を、ユウナが制する。遮られたカガリはきっ、とユウナを睨み、
「誰が見たって犯人の可能性が高いところは明らかだろう!前回の大戦で、連合が作ったブリッツに搭載されていたミラージュコロイド!それに……」
 そこまで言って、己の愛しき人の顔を思い出す。かつての自分の愛機によく似た機体を見た時、驚愕の表情を浮かべていたあの人を。
「しかし、我々はあの状況からしてザフトの自作自演の可能性は高いと判断したのですよ」
 カガリの言わんとすることを察したのだろう。ウナトが口を挟んでくる。
「ウナト!お前はお父様の遺志を無視する気か!」
 言われ、カガリは再びウナトを睨み、叫ぶ。
 オーブの理念。自ら争わず、また、他国の争いに介入しない。
 永世中立国たらんとするその理念は、前首長のウズミ・ナラ・アスハが国家滅亡に瀕してなお守り続けたものである。
「しかしだな、カガリ。政治は理念だけではやっていけないよ」
 現実とは非情である。ご大層な国家理念だけでは緊迫する国際情勢に対応することはできない。
「調印式は……そうだね僕と君の結婚式の翌日なんてどうだろう」
 にこやかに言うユウナの声は、カガリの耳に届いていなかった。

「ふむ」
 長髪の男は、顎に手をあてて少し考えこんでいるようだった。
 ザフトの最新鋭艦・ミネルバの一室。"本来ならばここにいなかったはずの男"ギルバート・デュランダルは彼女らの奇妙な言動に、興味を抱いていた。
「つまり、君たちは"連邦軍"のお尋ね者であり、"木星帝国"と戦う"宇宙海賊"であると」
 ベラと名乗った女性に問いかける。
 言うならば、不審者に対する尋問であるかもしれない。
 奇妙なドクロMSと戦闘した直後、ミネルバはオーブ領海の孤島で奇妙な遭難者を拾った。
 パイロットスーツを着た一人の少年と、一人の少女、一人の女性。そして胸部にあの黒いMSと似たようなドクロを抱く青いMSと、X字のスラスターを持つ戦闘機。
「そしてこの機体も、君たちに関係あるものだと」
 言って、格納庫を映したモニタに目をやる。そこには、三体のMSが映っていた。
 ドクロを胸に抱く青いMS、ベラに言わせればクロスボーンガンダムX3なる機体。
 そして両脇を固める二機のMS。地球降下直後、別の小島で拿捕した機体だ。
 X3の左側に位置するのは、フリントと言う名らしい。
 そして右側には、X3やフリントと比べて、いくらか華奢なMSが立っていた。
 腰部にインパルスのケルベロスを小型化したような砲を持つその機体は、どこか物悲しい表情をしているように見える。
 ベラ曰く、その名をF91と言うらしかった。

 オーブの海は静かだった。ついこの間、戦闘があったとは思えないほどに。
「キラ」
 水平線の向こうを見つめるキラに、いつの間にここへ来たのか、ラクスが声をかける。
「ああ……わかってるよ、風邪をひくからそろそろ……だろ」
 ここ最近口癖になっていたラクス・クラインの言葉を先読みし、キラが微笑する。つれて、ラクスもくすくすと笑った。
「今夜の食事はマリューさんからいただいたシチューですわ。あと……」
 一旦言葉を切って、
「彼らが……ギリさんたちが目を覚ましましたわ」
 そう続けて満面の笑みを浮かべた。

 オーブの海は静かだった。それは、次の嵐を予感させる静けさだった。