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クロスSEED第15話

Last-modified: 2007-11-09 (金) 23:22:33

「こいつは……あの時の?」

 衝撃で気絶したステラを抱えて、尻餅をついたシンが、眼前のMSを目にして呟く。
 赤いMSが、F91やフリントのそれとよく似たビームシールドを展開して彼らの前に立っている。
 地球降下直後のミネルバに攻撃を仕掛けてきた赤いMS。
 "イージス"と呼ばれる機体は、今はどことなくアスラン・ザラのセイバーに似ているように見える。

「っ!こいつ!」

 ふと、"イージス"がこちらにビームライフルを向けた。
 生身とMSとの対峙である。抗ったとして、なんの意味もないだろう。
 それでも、シンは"イージス"を睨みつけた。一人と一機の間に静寂が流れる。
 かちゃ、と音がして、"イージス"の指が僅かに動いた。

「え……?」

 撃たれるのを覚悟したシンの目の前で、ビームライフルが軽く上に振られる。
 行け、ということか。

「……わかったよ!」

 叫ぶと、シンは再びマザーバンガードへと走り出した。

「嘘!?効いてないじゃない!」

 何発目かのカリドゥスを打ち出したところで、ルナマリアは絶叫していた。
 ダガーLを何機か撃墜したところで連合艦から発進してきた新型のMA。
 楽に撃墜できると思ったそれは、正体不明のバリアでカリドゥスを防ぎきっている。

『ザフトのMSなど、このザムザザーの前ではヤワなお人形でしかないわ!』
『ルナマリア!左へ避けろ!』

 MA――ザムザザーのパイロットが勝ち誇ると同時に、アビスの背後から声。
 左へと跳んだアビスの横を、ザクファントムから放たれたミサイルが飛んでゆく。

「速い!?」

 これは防げないのだろうか。巨体に似合わぬ機動で不意打ちのミサイルをかわし、こちらにビームを放ってくる。

「それなら!」

 ビームをかわし、アビスが一気に距離を詰める。
 わざわざミサイルを避けたということは、実弾兵器は有効なのだろう。
 だが、魚雷で浮遊している目標に攻撃するのは論外。
 両肩の連装を失っているアビスは、胸部のカリドゥスに右手に持ったビーム突撃銃しか射撃武器がない。

「そんな図体じゃ格闘戦はこなせないでしょう!」

 ビームランスを抜き、そのままザムザザーへと突撃する。
 ビームは展開していない。
 敵はこのMAだけではないのだ。
 余計なエネルギーを消費するより、バリアの内側でビームランスを展開してやればいい。
 それを阻止せんとダガーLが突っ込んでくるが、ザクファントムの撒いた弾幕の前にその足を止める。
 迎撃をかわし、また一歩。ランスがザムザザーに突き刺さるまであと少し。
 この厄介なMAを沈められれば、戦いは楽になる。

「墜ちなさぁぁぁぁぁぁい!」

 ランスがバリアの内側に潜る、その刹那。

「なっ!?」

 衝撃がアビスを襲い、ランスが虚しく空を斬った。
 慌てて衝撃の発生源を見る。

「こんなっ……!」

 アビスの右足を掴む巨大なクローを見て、しまった、という表情を浮かべるルナマリア。
 ザムザザーのカメラアイが怪しく光る。銃口がアビスを捉え――

『ルナマリアっ!』

 トビアの声。そして同時に光が迸る。

『そんなものは効か……なにっ!?』

 ザムザザーを襲った小さな衝撃に、パイロットの男は声を上げた。

「的がでかいぶん、防御は完璧か」

 弾を撃ち尽くしたバスターランチャーを放り出しながら、ザビーネは舌打ちした。
 デストロイ。補給のために襲撃した連合基地にデータのあった巨大MS。
 スーパースキュラによる圧倒的な火力と、陽電子リフレクターが生み出す、ビーム兵器に対しての鉄壁の防御力。
 ショットランサーさえあれば楽だったろうが、無いものねだりをしても仕方ない。
 どちらにしてもザビーネは、この化け物を破壊する必要はないのだ。

「あとは任せたぞ、トール」

 眼下に映るセイバーの姿を確認すると、ザビーネはホンコンの空へと消えた。

「カガリをどこにやった、貴様らぁぁぁぁぁ!」

 見知った黒いMSと、赤いMS。
 最初にその姿を確認した瞬間、アスランの頭の中は真っ白になっていた。
 連合部隊に向けられるはずだったアスランの"剣"が赤いMSへと向かう。
 巨大な黒いMSと対峙したそれに、ビームを撃ち込む。

『そんなにカガリ・ユラ・アスハが恋しいか!アスラン・ザラ!』

 ひょい、とビームを避け、F91に似たビーム砲を撒き餌にしながら、"イージス"がビームライフルを連射する。
 カガリを救うには、情報を得ねばならない。
 このMSは連れて帰らねばならないのだ。
 アスランの中で"なにか"が割れた。
 視界がクリアになり、"イージス"の動きがスロー再生のように見える。
 セイバーをMA形態へと変形させ、一気に距離を詰める。
 加速しながらアムフォルテスを放つが、さすがにこれは当たらない。

『この程度でっ!』

 腰部の砲をオフ状態にし、"イージス"がサーベルを構える。
 アスランの、そしてトールの狙いは接近戦。
 共に強力な火砲を持つゆえに、下手に距離をとればそれを恐れて決定打を失う恐れがあるのだ。
 サーベルを振り上げる"イージス"に対してライフルを発射。
 "イージス"は避けるが、これは牽制。ライフルを捨てビームサーベルで突っ込み、サーベルを持った左腕を狙う。

『そんな見え見えの攻撃で!』

 "イージス"が急速上昇し、バランスを崩しながらもそれをかわす。

「それを待っていた!」

 アスランは、バランスを崩した"イージス"に、右腕を振った。
 本命の攻撃、セイバーの盾が"イージス"のコックピットに向けて飛んでゆく。
 盾によりコックピットに衝撃を与え、パイロットが気絶したところで捕獲。
 これがアスランの狙いだった。
 そして狙いは的中したはずだった。

『二度も同じ手を喰うかぁぁぁぁ!』
「なんだと!?」

 二度目。初めて見せたはずの攻撃を、二度目と言って、"イージス"が滑り込むように盾をかわす。そして、間髪入れずに、"イージス"の後方から、ビームが飛んでくる。

「くっ!」

 なんとか避け、全包囲に意識を向ける。

「貴様!逃げるのか!」

 アスランの視界に入ったのは、離脱を図る"イージス"の姿。

『貴様の相手が到着したからな。カガリ・ユラ・アスハがな』
「…………なんだと?」

 その言葉に呆然とするアスランの目に、薄紅のMSが映った。

「どいてください!僕は戦いを止めたいだけなんだ!」

 "戦地"へと向かい、ホンコン上空を飛ぶフリーダムの前で、ラクスを襲撃したジンがビームカービンを構えて交戦の意思を示している。

「こんな戦いは早く止めなきゃいけないのに!」

 腹を括ったキラが叫び、ビームカービンと、腰の斬機刀へ向けて突撃する。

『いいでしょう!道を空けますよ!あなたに力があるのなら!』
「なにを……なにを言ってるんだあなたは!」

 ビームカービンを狙い、サーベルを一閃。ジンHM二型の持つ唯一の飛び道具さえ奪ってしまえば、機動力を生かしてこの場を離脱できる。
 ジンのパイロットもそれをわかっているのか、サーベルをかわして斬機刀の一振りをフリーダムの脚部へ。

「そんなもの!」

 叫んで、キラはこれをかわす。
 PS装甲を以てすれば実体剣である斬機刀の一撃など恐れるものではないが、このパイロット相手にバランスを崩すのは避けたかった。

『ははははは!なかなかやりますね!』

 なにが楽しいのか、ジンのパイロットが距離をとって哄笑する。

『よろしい!目的さえ達成したあかつきには、あなたを私の生徒にしてさしあげましょう!ただし!生き延びられればですがね!』
「なにを言って……」

 無茶苦茶な言葉に、呆然としてフリーダムの動きが止まる。

『生き延びてくださいよ!あなたは、ラクス・クライン排除した後、貴重な戦力にもなる!』

 その言葉と同時に、ジンはフリーダムに背を向けた。

「ラクスを排除……?一体どうい……うわっ!?」

 ジンを追いにかかったその瞬間、キラはフリーダムのシールドをとっさに掲げていた。
 一瞬遅れて"光"がシールドへと吸い込まれ、殺しきれなかった衝撃がキラを襲う。

『カラス!おしゃべりが過ぎるぞ!』

 態勢を立て直したキラの目に映ったのは、急速に接近してくる赤いMA。
 部分部分が改造されているが、それはカガリを誘拐した"イージス"タイプに見えた。

「ビームシールドを切ってメインメガ粒子砲スタンバイ!マザーバンガードはいつでも浮上できるようにしてください!」
「了解しました!ビームシールド発生装置オフ。メインメガ粒子砲スタンバイ!」

 悲鳴にも似たベラの指令が、ブリッジの中に飛ぶ。
 トビアたちは前方の連合部隊に苦戦をしているし、後方からは巨大MSが接近してきている。
 時間はあまりに無いが、シンを置いて行くわけにはいかない。

「マストのメガ粒子砲でMS部隊を援……きゃっ!?」

 指令を出し終えようとしたベラを突如振動が襲った。

「じょ、状況は!?」
「後方の巨大MSより砲撃!艦に被害は出てませんがドックが大破……か、艦長!」

 絶望が迫っていることを告げるメイリンの声。それが、最後の最後に希望の色を混ぜ合わせて発される。

「メイリン、状況報告の続きを!」
「はい!格納庫から通信!モニターに出します!」

 メイリンが告げ、モニターに格納庫の様子が映る。そこには、見知らぬ少女と見知った少年が立っていた。

「シン!」
『報告は全部後でします。ベラ艦長、インパルスとソードシルエットの準備を!』