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ザ・グレイトバトルDESTINY_第0話

Last-modified: 2014-01-09 (木) 18:09:06

(………)

 

少年、シン=アスカはココ最近同じ夢ばかり見る。

 

(………また、アンタか………アンタは一体誰なんだ………?)

 

その人物はまるで物語に出てくる魔術師のような出で立ちをしており、更に深くフードを被っており顔は良く見えない。

 

「…………」

 

何か言っていたように思えたが、シンは今まで聞き取る事が出来なかった。

 

(………なんで………俺の夢の中に出てくるんだ………?)

 

「………甦る時………目覚め………」

 

その時、シンは初めてコレが今まで見てきた夢と違う事が理解できた。
今まで目の前の人物の声を聞くことすらかなわなかった。
だが今回は断片的に聞き取る事が出来た。
しかしようやく聞き取る事が出来ても、シンにはその意味が全く理解できなかった。

 

(意味………わからないよ………アンタは、一体何なんだ………?)

 

そこで目の前の暗闇が薄れていき、フードを被った人物もまたいつものように姿を消した。
真っ先に見えるのは、いつもよく見ている自分の部屋の天井………
真っ先に聞こえるのは、いつもよく聞く母親が自分を起こす声………
そしてシンは夢の中の出来事を忘れ、いつものように朝食を食べにリビングへと向かう。
コレがオーブに住む少年、シン=アスカが最近よく見る夢の内容と見た後の結末である。
だが夢の内容と同じように、今回の結末もいつもと違っていた。
今日、今朝になってオーブの前代表(誰も頭に前なんてつける者はいないが)・ウズミ=ナラ=アスハの演説がテレビのどのチャンネルでも流れていた。
曰く、大西洋連合が攻めてくる。オーブの理念が破られようとしている。だからオーブは絶対に屈しない。

 

『今、オーブは最大の危機に迫られている!! アラスカにてサイクロプスを起動させた大西洋連合は、矛先を我が国に向けた!! オーブの理念が黙って踏みにじられようとしているのを黙って見ていてもいいのか? 否!! 断じて許される事ではない!!』

 

ウズミ=ナラ=アスハの声が響き、シンは呆然としていた。

 

「父さん、コレって………」

 

そして父……… アルフ=アスカの表情を見ると、彼の表情は怒りに震えていた。
父は地球出身のコーディネーターだが、オーブの出身ではない。母の話では元々ある研究所にいたみたいだが、そこの所長と意見が食い違ってオーブへ逃走したらしい。

 

「………ミサキ、シン、マユ。今すぐココから逃げるぞ」

 

いつもの温厚らしかぬ父の態度にシンとマユは呆然となった。一方でミサキは意を決したのか頷きを返した。
荷物を纏めるのも後回しにし、父は自分の後について来いとばかりに声を張り上げた。

 
 

『国民よ!! オーブの理念を護るため、今こそキミ達の力を貸してくれないだろうか!? この戦いに例え破れようとも、理念を護る事が出来たら我らの勝ちである!! 今こそ崇高な理念を護るため、我らと共に戦おう!! オーブの理念に栄光あれ!!』

 
 

「何がオーブの理念だ………私が戦うのは、そんなもののためではない………」

 

父の声を最後に、自分たちは住み慣れた家に別れを告げることになった。

 
 

CE(コズミック・イラ)71年6月………
大西洋連合、否、事実上ブルーコスモスの過激派とオーブ首長国連邦との戦い………
大西洋連合との国力の差は明らかだった。
しかしオーブ首長国連邦は自国の理念を、『他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない』と言うオーブの理念を護るためにあえて徹底抗戦の道を選んだ。

 

『国民よ!! オーブの理念を護るため、今こそキミ達の力を貸してくれないだろうか!? この戦いに例え破れようとも、理念を護る事が出来たら我らの勝ちである!! 今こそ崇高な理念を護るため、我らと共に戦おう!! オーブの理念に栄光あれ!!』

 

コレはこの戦争が終わった後のオーブでベストセラーになっている『獅子の魂』と言う書物に書かれた一文である。そして、それはウズミ=ナラ=アスハ最後の演説、その最後を締めくくる言葉である。
それはそんな『世界と理念を護るための崇高な戦い』の裏側で起こった事………

 

「はあ……… はあ……… はあ………」
「マユ、頑張れ!!」

 

シンは大声を張り上げて妹の手を引っ張っていた。当然先にいる両親の後を追うことを忘れずにだ。

 

「………シン、マユ、大丈夫か?」
「うん………」

 

マユは少し元気が出たのか、小さく頷く。一方シンは息を切らせながら父に向かって言った。

 

「父さん、達は、大丈夫?」
「………ああ。今は私がロンド様から預かった別荘の所へ向かう。あそこなら態々市街地を通ってシェルターへ向かったり、軍の拠点へ向かうより安心だ―――」

 

その時、強い風がシンたちを襲う。上空では、二機のMSが戦っていた。
黒い鳥に乗った青か緑に見えるMSと、白い体と青い翼を持ったMS………

 

「………マユの為に休んでいたいが、ココも危険だ。急ぐぞ、皆!!」

 

父の号令を合図にシン達も急いでその場を離れようとした。
その時、振動が自分たちの足元を襲い―――

 

「あ!! マユの携帯!!」

 

その拍子にマユのポケットから、ピンク色の携帯電話が転げ落ちた。急いでマユが拾おうとしたが、母がそれを制する。

 

「そんなのいいから早く!!」
「いや!!」

 

マユが泣き喚き、その場から離れようとしない。父もどうしようか決めあぐねていた。

 

「………父さん!! 母さん!! 先に行ってて!!」

 

そう言ってシンは携帯を探しに斜面を滑るかのように降りていく。

 

「マユの携帯………あった!!」

 

シンは笑みを浮かべて木に引っかかっていた携帯に手を伸ばす。早く上ろう、早く―――
そう言って崖から上った際………

 

「見つけたぞ!! オーブの理念を護ろうともせずに逃げようとする売国奴め!!」
「え?」

 

シンが崖から上った際に見たもの………それは手に銃を持ったオーブの市民だった。彼らは自分たちの後を追ってきたのだろうか?
父は銃に撃たれたのか血を流しており、マユは怯えきって母の影に隠れている。

 

「アルフ=アスカ!! 貴様、オーブの理念が破られようとしているのに何故逃げようとする!!」

 

先頭にいる男が父に向かって怒りの声を上げた。

 

「………私は元々オーブの人間ではない。それに私にとって妻や子供たちが理念よりも大事なんだ。理念を護るからと言って、三人を勝てない戦いに巻き込ませたくない!!」
「ヘリオポリスが何故破壊されたのかわかっているのか!? サハクがオーブの理念を破り、連合に与してMSを造ったからだ!!」

 

市民は目を血走らせ、声高らかに叫ぶ。父の反応も見もせずに彼は次々と声を上げた。

 

「この戦いに重要なのは勝ち負けではない!! オーブの理念を護れるか否かなのだ!!」
「そんな事すら忘れたあなたには、オーブの民を名乗る資格なんて無いわ!!」
「オーブの理念を仇なす者には!!」

 

その声を合図に一体のMSが姿を現した。その手にはライフルが握られている。

 

「天誅をくだ―――」

 

その時、上空から光の柱が何本か降り注がれるのを見た。

 

「え?」

 

それによって起きた爆風に呑まれそうになったシンが思わず真上を見据えると、そこにいたのは青い翼を持ったMSが攻撃を構えようとした光景………

 

「シン!! マユ!!」

 

母はとっさに自分たちを突き飛ばし、爆風に呑まれ消えていった。
最後に見たのは母の笑顔………

 

「パパ!! ママ!!」

 

マユが泣き叫び、シンはそんなマユを抱きしめる。

 

「父さん!! 母さん!!」

 

シンが声を張り上げ、マユを庇いながら斜面を転がっていく。
しかし、今度は今度で進行方向に巨大な石が転がっていた。避ける事は出来るが、そうしたら今度は今度でマユが頭に石をぶつけてしまう。

 

「クッ!!」

 

シンはとっさにマユを庇い、代わりに自分が石に頭をぶつけ、意識を失った。
「ここは………?」

 

シンが目覚めた時、そこはいつもの夢の中だった。そして眼前にはいつものフードを被った人物も見える。

 

「………………」
「また、アンタか………」

 

だが、今回は色彩がはっきりとわかる。
あからさま過ぎる赤いフードにマント。フードの額に近い部分や肩当などは黄色で、額の黄色い部分の中央には青い水晶みたいなものがはめ込まれている。

 

「………甦る時………目覚め………」

 

それは今朝見た夢の中で聞いた言葉だった。しかし、今のシンにはそれを聞いている暇は無い。

 

「今はアンタの戯言に付き合ってる場合じゃない!! 俺は………俺は、マユを………」

 

夢から目覚めようとするシンだったが、目の前の男はそれを遮るかのように声を紡いだ。

 

「お前のその想いが、私を呼び寄せた………」
「な、何を………!?」
「私とお前が一つになれば………お前は炎の戦士となる」

 

その言葉にシンは息を呑んだ。何かの事件に巻き込まれ、夢の中で力を得る……… まるで自分が子供の頃見ていたアニメのストーリーみたいな展開にシンは目の前の男であろう人物が言った言葉を返した。

 

「炎の戦士!? あ、アンタは一体………」
「我が名はロア………戦士ロア………」

 

目の前の魔術師に見える男………戦士ロアはそう名乗った。

 

「ロ、ロア………!」
「我らの敵はゲートを開き………秩序を乱さんとする者………」

 

その言葉にシンは息を呑んだ。彼の言う事が事実なら………

 

「秩序を乱す者だって!? それは一体………」
「………シン=アスカ。お前の身体を私に貸してくれ………さすれば、我らと戦う力を………我が魂と鎧を授けよう………」

 

ロアの言葉にシンはしばらく考える。今の自分に必要なのは父と母の代わりにマユを護れる力なのだ。
ならば彼の真意が何処にあろうとも、自分がなすべき事は一つ………

 

「アンタの言うとおりに動けば、マユを助けられるっていうのか………?」
「それには、お前の真意が必要だ………」
「………」

 

この時、既にシンの答えは決まっていた。

 

「よし………判った。アンタの言う事を聞いてやる………! その代わり、妹を………マユを助けられる力を………俺に………!!」

 

その答えと同時に、いつものように夢は覚めたのだった―――
シンが目覚めると、マユが傍らにいた。

 

「マユ………!!」
「………」

 

気絶はしているものの呼吸はしており、命に別状は無い。

 

「良かった………」

 

安堵したのもつかの間、今度は先程のMS(かも知れないし、同じ形のMSかもしれない)がこちらに迫ってきた。

 

「………!!」

 

そしてMSはビームライフルを構える。その瞬間―――

 

『シン………我が魂と鎧、お前に預けるぞ』

 

ロアの声が響く。シンはその声に驚いたが直ぐにそんな場合ではないとばかりに頷きを返した。

 

「………あ、ああ!!」

 

頷きを返すと同時にロアの声が再び響いた。知り合って間もないが、何故か知らないが背中を合わせて共闘するのが当たり前だと思わせる、信頼するに足り得る者の様な声だった。

 

『唱えよ。バーナウ………レッジー・バトー………!!』

 

その声を合図にシンはとっさに腕を上空に交差させ、声を張り上げた。

 
 

「バーナウ!! レッジー・バトー!!」

 
 

『ファイター・ロア!!』

 
 

そして今度は空手家が気合を入れるかのように、上空で交差させた腕を腰に引き寄せ、再び声を張り上げた。

 
 

「ファイタアァァァァァァァッ!! ロアァァァァァァァァッ!!」

 
 

その声を合図にシンの身体が紅く輝きだした。
今まで着ていた服が瞬く間に消え、その上から身体にフィットした黒いスーツがその身を覆う。
その上から紅い光がシンの身体を包み込み、輝きが消えると代わりとばかりに黄色で縁取られた紅い鎧が顕現化される。
口元は肌色のアーマー、目元は極薄の透明なシールドに覆われ、髪は逆立ち色が青に染まった。
そして最後に額から紅いイヤーガードで覆われていき、額に青い水晶がはめ込まれる。

 
 

今ココに、数多の世界を駆け抜けるタイムダイバーの一人がこの世界で復活した。
数多の世界を救い、そして駆け抜けてきた戦士、ファイター・ロア。
そしてそんなファイター・ロアに選ばれた少年、シン=アスカ。
彼らの戦いは、コレより始まる―――

 
 

ザ・グレイトバトルDESTINY
第0話
蘇る炎、紅い瞳

 
 

変身が終わったシンは、マユを抱き寄せバックステップを行う。

 

『身体が軽い。まるで羽根のようだ』

 

そんな使い古されたフレーズが、今のシンにはしっくり来た。

 

「ココまで飛べるのか………? コレが………ファイター・ロア………?」
「な!? 誰だキミは!!」

 

マユをつれて安全な場所まで飛ぶ。偶然居合わせた軍人が呆然とした様子で自分を見たが、そんな事を気にする暇も無い。

 

「アンタ、オーブの理念を護るためなら何してもいいって思ってるのか!?」
「いや………私は何故M1アストレイがここにあるのか調べに来ただけで………それに私は軍人だ。軍人は民を護るためにある!! あのような暴挙を止めたいのは私も同じだ!!」
「だったらちょうどいい!! この子をお願いします!!」

 

そう言って自分は軍人にマユを渡し、先程のMS………『M1アストレイ』に向かって向き直る。
そして軍人とマユから離れるように一瞬で移動すると、それにつられてM1もこちらに向かってきた。

 

「そうだ!! こっちに来い!!」

 

シンは背を海に向け、M1アストレイと対峙した。
とは言うものの………

 

「どうやって戦えばいいんだ………」

 

未だに戦い方が判らない。武器は何か、ほかに何か力があるのか、それすらもわからない状態である。

 

『シン、俺が指示を出す。あのガンダムと戦うのだ』

 

脳裏にロアの声が響く。シンはその声に対して周囲を見渡した。

 

「ちょっと待て!! アンタは何処にいるんだ!? それに、ガンダムって!?」
『俺の魂はお前が身につけている<ロア・アーマー>………そのクリスタルに宿っている』
「え!? 魂って………」

 

その言葉にシンは呆然となる。じゃあ、今のロアは身体が無い状態なのだろうか?

 

『そうだ。俺の身体は、ある者との戦いで失われた。俺の大切なものと共に………』
「………!!」

 

シンが息を呑む。どうやらロアは自分が思っている以上の敵と戦い、そして倒していったのかもしれない。

 

『戦うのだ、シン。お前の大切なものを守る為に。お前になら………出来る』

 

しかし、当のシンは乗り気ではない。自分を戦わせ、当人は高みの見物。少し嫌味を返してやることにした。

 

「気楽に言うよな。要はアンタ、見てるだけだって言うのかよ?」
『………そうだ』

 

言い訳もせずに自分の嫌味を受け取ったロアにシンは拍子抜けした。ロアも何処か申し訳なさそうな声で答える。

 

「………」

 

そしてシンは溜息を吐いた。

 

「しょうがない。言う事を聞くって言ったのは俺だからな」

 

そう言ってシンはM1を見上げる。

 

『我らの敵は連合でもザフトでもない!! 理念を汚す者、その全てが我らの敵なのだ!!』

 

見上げたとき、M1のパイロットが狂気の声をあげた。

 

『シン、クリスタルに意識を集中させるんだ。お前の意思と俺の力が一つになった時………炎の力が呼び覚まされる』

 

ロアが自分の中でそう言うと、シンは意を決したのか声を張り上げて叫んだ。

 

「よし!! やってやる!!」

 

そう言ってシンはM1に向かって走り出す。敵はビームライフルを放ち続けるが、シンは避け続けた。

 

「当たらない!! 今度はこっちから行くぞ!!」

 

そう言って飛び上がり、一気に敵の頭の位置まで飛び上がった。

 

「デヤアァァァァァァッ!!」

 

そして目の位置についたところで拳を突き出し破壊する。

 

『なっ!? なにぃ!?』

 

ロア・アーマーで強化されているのかいともたやすく貫き、貫かれたであろう目元の部分が放電している。しかし、当のシンは呆然とするばかり。

 

『理念を汚す者め!! 抵抗するな!!』

 

その時、先程のM1の背後から新たなM1アストレイが出てきた。先程の機体をあわせると、全部で三体。

 

「ロア、何か遠距離攻撃は無いのか!?」
『………ビームガンがある。それを使え』

 

ロアがそう言うと同時にシンの手元に銃らしきものが握られる。シンはそれを撃ち続け、敵の装甲を射抜き続けた。
敵が怯んだその隙に―――

 

「おおおおおおっ!!」

 

シンは走り出して最初に戦った敵の頭部を蹴り上げ、吹き飛ばした。
続けて右にいた敵に飛び掛り、頭部を殴りつけてへこませる。
シンの身体能力がロア・アーマーで強化されたのもあるが、M1もまた機動性と引き換えに装甲をもろくした存在だった。
だからこそ、初陣であるシンでも簡単に吹き飛ばせるのだ。
だが、シンの攻撃によって簡単に吹き飛ばされるM1の装甲に愕然となった人物が声を上げた。

 

『このガンダム………装甲がもろいのか?』

 

その人物はロアであり、呆然とした声を出した。シンはそんな様子に気にした雰囲気も無くビームガンで最後の一体の頭部に狙いを定める。

 

「ファイター・ビームガン、シュート!!」

 

そう言ってシンはビームガンを連射させる。そして最後の一体が持っていた頭部が吹き飛ばされ、シンは声を張り上げた。

 

「俺の勝ちだ!!」

 

シンがそう言うと新たなM1アストレイが続けて姿を現す。

 

「また敵かよ!?」
『待てシン、様子が変だ』

 

シンがそう叫ぶと、M1アストレイが頭部を失った他の機体を抑えにかかる。頭部を失ったM1アストレイは三機とも瞬く間に抑えられた。

 

『トダカ二佐!! 逃亡者を捕らえました!!』
『よし、直ぐに戻ってくれ。それとキミのおかげでM1を回収する事が出来た。礼を言おう』

 

その声は先程自分がマユを預けた軍人の声だった。

 

「いえ………自分は向かうところがあります!!」
『待ってくれ!! 君の名は!? 所属は何処なんだ!?』
「………ファイター・ロアと言います。所属はありません」

 

そう言うとシンは直ぐに飛び上がり、急いで父と母の元へ向かっていた。
次々と降り注がれる光の柱。青い翼を持つMSは周囲を気にしておらず光の柱を次々に放っていった。

 

「………!!」
『コレは………!!』

 

ようやくたどり着いた時、シンは愕然となった。
そこは地獄絵図だった。
焼き焦げた死体に上半身と下半身が分断された死体、中には百舌の餌の様に突き刺さった死体もあった。
幸いだったのは、その死体の中に母の死体が無かったと言う事だけだ。それにそんな光景をマユに見せられるはずも無い。

 

「う………ぐ………」

 

聞きなれた声が響くとシンはその声がした方向に振り向く。

 

「!! 父さん!?」

 

父の方を見たとき、シンは目を見開いた。
両足は無く、腹部から血が吹き出ている。顔色も悪く、今にも死にそうなほどだった。

 

「し、ん………なのか?」
「そうだよ!! こんな姿だけど僕だよ、シンだよ!!」
「マユは………無事なのか?」
「うん………無事だよ………」

 

シンは泣き喚くと父は呆然とした様子で自分の姿を見ていた。そして、目を細めた。

 

「そうか………ロアは、お前を、選んだのか………」
「ロアを知ってるの!?」
「シン………マユと一緒に、アメノミハシラへ逃げろ………そこに………力がある………」

 

父は血を口と腹から噴き出しながらそう答える。もう父は助からないのだと、シンでもわかった。

 

「父さん………」
「シン………コレからお前に多くの危機が迫る………『世界のために戦え』、とは言わん………お前が護る物の為に戦え………ロアが求めるのは、故郷を、家族を護りたい………そう言う力だ………」

 

父の言葉を涙を流しながら頷く。それを見た父は、最期に涙を流して言った。

 

「すまん………シン、マユ………全てを知らせぬまま………巻き込んで………しまって………」

 

その言葉を最後に、父・アルフ=アスカは息を引き取った。

 

「父さん? 父さん!!」

 

シンは父の身体を揺さぶる。それでも父は反応を示さない。

 

「う………うぅ………」

 

そして上空を見つめる。そこには青い翼を持ったMSがその姿を見せびらかすように存在しているのが見える。
シンはその姿を見据え、怒りに震えて叫び声を上げた。

 

「うああああああああああああああっ!!!」

 

シンは変身を解き(と言うか叫ぶだけ叫んでいたらいつの間にか変身が解けていた)、マユを預けていた軍人に所へ向かう。
ロアに変身していた影響か、何処か息が荒い。油断したら気絶しそうなほど意識が朦朧としてきた。
ようやく軍の駐留している場所を探しだし、トダカの名を聞きまわっていた。

 

「キミは………?」
「シン=アスカです………妹がトダカ二佐って言う人に保護されてココにいるって聞いて………」

 

そう言うとシンはマユを預けた軍人………トダカ二佐と言う人に向かって声を上げた。

 

「妹………? 誰から聞いたんだね?」

 

シンはとっさに嘘をつくことにした。まあ、おおむね事実だから嘘と言えるかどうか疑問だが。

 

「ファイター・ロアと言う人です。自分も彼に助けられて………」
「そうか………」

 

トダカはそう言うとシンに向かって声を上げた。

 

「シン君、悪い事は言わない。直ぐに逃げるんだ」
「また、連合が攻めてくるんですか?」

 

シンが抑揚の無い声でそう言う。一方でトダカは表情を変えないで頷きをするのみ。

 

「そうだ。おそらくオーブも最後まで………」
「そんな………また人が死ぬんですか!? 父さんや母さんのように!?」

 

シンはその答えに対して立ち上がった。一方でトダカも申し訳なさそうに頷く。

 

「そうだ、最後まで理念を護る為に………」
「ふざけるな!! 何が理念を護る、だ!! 自分たちの、ウズミ=ナラ=アスハの我侭や自己満足につき合わせるだけじゃないか!!」

 

シンが叫び声を上げる。ロアもシンに対して何も言う事が出来なかった。

 

「シン君、プラントに亡命する事を私はお勧めする。あそこならコーディネーターでも不自由なく暮らせる」
「父は………サハクの別荘にあったシャトルを使ってアメノミハシラへ行けって言ってました………」

 

トダカの言葉はうれしかったが自分は父の遺言を叶えなければならない。
それに、アメノミハシラに自分の力があると言う。その力が何なのか、シンにも興味があった。

 

「そうか。今日はもう早く休みなさい」

 

トダカがそう言うと、シンは小さく頷いた。

 

「………判りました」

 

そしてシンはマユのいる部屋に入り、彼女の様子を見ることにした。
マユは今も眠っており、時折魘された様子で呻く。
おそらく彼女は夢の中で父や母を喪う光景を見ているのだろう。
そんな中―――

 

「お兄ちゃん………」
「マユ………」

 

マユが目覚め、目に涙を溜めてシンに向かってか細い声で問いただした。

 

「パパとママは………?」

 

シンは言葉に悩み、首を僅かに逸らす。その事で何かを感じたのか、マユは再び顔を背けて泣きそうな声で呻いた。

 

「やっぱり………死んじゃったんだ………アレは夢じゃ………」
「………」

 

シンもまた言葉を発する事が出来なかった。彼の中にいるロアもまた同じだ。

 

「パパもママもオーブの理念のせいで死んじゃったんだ………殺されたんだ………」

 

そんな中、マユがポツリと呪詛をもらした。流石のシンも………それには目を見開かずにいる事が出来なかった。

 

「マユ………?」
「嫌いだ………オーブなんか………オーブの理念なんか………アスハなんか………」
「マユ!!」

 

目の光を無くして呪詛を紡いでいくマユ。それをシンは黙って見ることが出来なかった。
シンは呪詛を払うようにマユを力強く抱きしめた。

 

「父さんも母さんもマユがそんな風になるのを望むわけないだろ!!」
「でも………」
「俺がいる。それじゃ不満なのか?」

 

その声に対してマユは呪詛を紡ぐのを止めた。

 

「おにい、ちゃん………?」
「この国を脱出したら何処に行こうか? 父さんが言うアメノミハシラに行こうか? 最近、あそこに温泉施設が出来たって言うらしいからさ」
「………」
「なんだったらプラントに行って海鮮ジョンゴル鍋でも食べようか? マユが好きな方を選んでいいよ」

 

そう言ったのが聞こえたのか、マユはポツリと呟いた。

 

「駄目だよ………お鍋も温泉も高いよ………」
「むぅ………」

 

シンは呻きながらも笑っていた。いつの間にかマユからオーブを憎む呪詛が消え去っていたのだ。

 

シンはそれからマユと共にしゃべりあい、マユが喋り疲れて眠るまで続いていた。
そして翌日、オーブ首長国連合は大西洋連合に破れた。連合の狙いだったモルゲンレーテとマスドライバーを道連れにして。
五大氏族もまた“名誉ある自決”によって果て、最後まで連合に屈しなかったのである。
オーブの民の一部は………狂信的なアスハ派はオーブの獅子・ウズミの死を嘆き、悲観した。
しかし、何人かの民はオーブを離れる事を選んだ。
プラントに渡る者、連合の指揮下に加わる者、そして………五大氏族が一人・サハク家が造った衛星“アメノミハシラ”へ行く者。
シンとマユは地球に残らず、プラントにも渡らず、アメノミハシラへと向かった。
今まで住んでいた地上に別れを告げ、宇宙へと向かって行った。

 
 

オーブ所有宇宙ステーション・アメノミハシラ………

 

190以上の身長を持つ長髪の美女はオーブでの死者を纏めた書類をパラパラと捲っていた。

 

「………ウズミめ、アレだけの大口を叩いてオーブの陥落を許したのか………多数もの死者を出しおって………」

 

怒りに震えた声。そして彼女はその書類で自分の側近であった男・アルフ=アスカの死を嘆いた。

 

「姉上?」

 

そう言って姿を現したのは一人の男―――美女と瓜二つの顔立ちと美貌を持った男だった。

 

「ギナか。アルフが死んだ」

 

美女・ロンド=サハク………フルネーム・ロンド=ミナ=サハクは弟に向かって己の側近の死を知らせた。

 

「アルフ………ああ、あの機体と技術を持って我が国へ亡命してきた男か」
「そうだ」

 

そう言って彼女は書類を見て溜息を再び吐いた。

 

「姉上。もうあの男の技術は既にアストレイの礎になった。本命は流石に無理だったが大半の技術は既にコピーを完了している。そして我ら独自の技術“マガクイノタチ”の力を得たP01………否、“天(アマツ)”に敵はいない」
「………」
「つまり、あの男はもう用済みだった………それだけの話だ」

 

ギナは自分たちの側近の死をあざ笑うような発言を言うが、当のミナはギナに向かって怒りの目を向けた。

 

「………その発言、あやつの子供たちを前にしても言えるのか? この地に亡命してくるそうだぞ?」
「万人は一握りの価値ある者に、その生命を捧げるためだけに存在している。それだけですよ」

 

そう言って弟はこの場を後にし、姉は書類を手に物思いにふけた。

 

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