Top > スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED_第18話
HTML convert time to 0.012 sec.


スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED_第18話

Last-modified: 2012-08-15 (水) 22:24:01
 

 スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED
 第18話「証拠」

 
 

「あぁ、すばらしい。まさか自分の目でここまで到達出来る日が来るなんて」
「ここがカイパーベルト。太陽系最外縁部のオールトの雲の手前ですよ。お気に召した様で?」
「えぇ、最初に聞いた時は眉唾物の話だと思っていたけど、こうしてこの場に立ってみると、彼女の申し出を受け入れて良かったわ」

 

 彼女は終始ご機嫌だった。
 それは無理も無いことだった。
 このCEという世界に住む人類の中では、彼女がこの領域を通る初めての人間なのだ。
 世が世なら、彼女の一歩は小さくとも、人類にとっては大きな一歩とでも喧伝されるだろう出来事だ。
 しかし、彼女はそう出来ないことを条件にこの場に立っている。

 

 ある日突然仕掛けられた買収工作は、彼女が出社し自分のオフィスでゆっくりと新聞に目を通している間に、それは見事なまでに一瞬と言って良い程あっさり完了していた。
 世界中を駆け巡った投機資金は自身のグループ会社は勿論、世界中の「加われば良い」と考えていた企業や、手を出すには多額の資金が必要と断念していた企業群も含めて、全て「VST」と名乗る企業のもとに集結していたのである。
 そして、彼女が新聞を見終えた所に、オフィスへ何の前触れも無く入ってくる人物達の姿があった。
 先頭を歩く者はサングラスをかけた女性で、両サイドには先住民を思わせるタトゥーをした体格の良い中年男性と、アジア人の男が連ねていた。

 

「あなたがシャノン・オドンネルね。 この会社は私の会社が買収しました」
「……何ですって?」

 

 私は卓上のPCから彼女の言葉の真偽を確かめたが、確かにその通りの現実が表示された。
 それはあまりに突然過ぎて、一瞬頭の中が真っ白だった。
 そんな私に彼女はこんなことを言った。

 

「驚いたわ。データで知ってはいたけど、本当に私にそっくり。
 フフ、こういう偶然は何か運命的なものが糸を引いているのかしら」

 

 彼女はサングラスを外す。
 その顔は鏡でも見ているかの様に確かにそっくりだった。
 いや、顔だけじゃない。声も背格好も同一と言って良い程だ。

 

「私は貴女と取引がしたいの」
「……どんな」
「そうねぇ、確か東洋の歴史では、こういうのを影武者と言ったそうね」
「……それは、貴女の身代わりになれというの?」
「いいえ。その逆よ」
「え」
「……私が、貴女になるのよ」

 

 それが、キャスリーン・ジェインウェイとの出会いだった。

 
 
 

 艦長日誌
 艦隊は月の第八艦隊との合流ポイントへ向けて航行していた。
 新しいエンジン周りをまとった二隻の艦は、現段階では最速であるアークエンジェルの船速に十分に付いてきており、到達予定時間はかなりの短縮が出来るだろう。
 私はこの間で最も丁重に扱うべき客人のもとへ来ていた。
 ドアの前で呼びかける。彼女のきれいな声で入室の許可があった。

 

「お久しぶりね。クラインさん」
「まぁ、ジェインウェイさん。お久しぶりです」
「少し話したいの。良いかしら」
「えぇ、喜んで」

 

 彼女はにっこりと微笑んで私に椅子を勧めた。
 彼女の部屋はあの一件以来、待遇を改善するべく内装を改装し、彼女専用の部屋として二段ベッドを一段に変え、寛げる様に椅子とテーブルも設置。
 部屋のドアには誰が付けたのか「VIP」とプレートが付けられていたが、確かに文字通りのVIPがここにいることには変わりないので不問にした。
 私は彼女の対面に座ると、持って来たお菓子の籠をテーブルに置いた。

 

「まぁ、クッキーですね!手作りですか?」
「えぇ、お茶菓子に食堂の奥様達から頂いたものを持って来たのよ。
 この厚めのホームメイドなクッキーを見ると、私の故郷のブルーミントンを思い出すの」
「ブルーミントンですか。大規模な穀倉地帯として学んだ事がありますわ。
 ジェインウェイさんのお宅では、よくクッキーを焼かれるのですか?」
「えぇ、でも私は残念ながら料理の方は得意じゃないの。
 父の影響もあって、それこそガリ勉の様に勉強して科学者を夢見たものだわ。」
「では、すごくお勉強をされていたんですね」
「そうね。それが今を形作っていると思うわね。何事も無駄な事は無いと感じるわ。
 さて、今日貴女の所に来たのは、ただ世間話をしに来たわけじゃないの。
 貴女の今後を話す為に来たのよ」
「……そうですか」

 

 彼女は私の話を聞いて表情を変える事は無かったが、それまでの受け答えよりは幾分トーンダウンした様に聞こえた。

 
 
 

 その頃、ZAFT軍ヴェサリウス艦橋ではアデスは勿論、そこにはZAFTレッドのメンバー達が話し合いをしていた。

 

「アスラン!お前、勲章貰う暇があったら、その……ラクスちゃん……を、救い出す方法を考えろよな!!!」

 

 初っ端から飛ばすのはイザーク・ジュールだった。
 彼は大のラクスファンだけあり、ラクス救出に燃える炎は尽きる事無い。
 その言葉に半ば頭痛を覚えつつも、アスランは答える。

 

「……何も勲章を貰う為に戦っているわけじゃない。
 あれは本国が勝手にしていることだ。正直うんざりしている。
 君に言われるまでもなく、彼女は許嫁だ。
 救い出すためにどうすれば良いか考えているさ」
「ほぉ、じゃぁ、策はあるのか!」
「……だから、その策をみんなで考えているのだろう。妙案があれば聞くよ。イザーク」
「妙案!?そんなもの、突っ込んで乗り込んで行って、
『ラクス様、お迎えに参りましたぁ!!!』
『キャァ、有り難う!もう大好き!』と熱く抱きしめてだなぁ……」

 

 イザークはもはや自分の世界に入っていた。
 ご丁寧に熱い抱擁シーンまでジェスチャーしてみせる始末だ。

 

「……イザーク。君がラクスに並々ならぬ思いが有る事は分かった。
 その気持ちは胸に仕舞おう。だけど、突っ込んでいってどうやって救出する。
 乗り込んで行くということは、君が白兵戦を仕掛けるのかな」
「おぅよぉ!!!槍でも鉄砲でも、何でも来いだおい!!」

 

 これまたアクション付きで主張する彼を見て、
 アスランは頭痛に続き目眩がしそうな気がしていた。

 

「はぁ……(俺、なんでこんな奴しか周りにいないんだろ)、良いだろう。君が乗り込むと良い。
 でも、足付きに組み付いて中に侵入するとなると、奇襲でもしないかぎり難しいだろう。
 前回の戦闘でミラージュコロイドはバレていた。
 向こうは当然それを想定して対峙してくると見て良い。
 本気で艦を落とさない限り難しいだろうが、そうなればラクスの命は無いだろう」
「ぐぬぬぬぬ……」

 

 そこにニコルが挙手した。

 

「アスラン、良いですか?」
「良いよ。何だい」
「はい、僕は第八艦隊と合流する前に足付きを叩く事を提案します」
「今叩くと?……これからやるとなると、相手との戦闘時間はせいぜい10分有るか無いかになるぞ」
「はい。それでも10分もあるんです。
 何もせず合流されるよりは少しでも削っておいた方が良いはずです」

 

 確かに彼の言う通りだが、戦術も限られ戦力も満足ではない。
 しかも、こちら側の勝利条件はとても制限の多い状況だ。

 

「君も知っての通り、力押しでやれば良い話じゃない」
「はい、確かにクライン嬢を救出する事も大切ですが、我々の最大最重要の任務は足付き艦隊を沈める事です。
 見逃せば、犠牲はクライン嬢だけでは済まされないでしょう」

 

 ニコルから一際鋭い視線が飛ぶ。
 普段の彼からは想像もつかない様な冷たい視線に、アスランは背筋にそら寒いものを感じつつ、彼の提案が「自分の一番言いたいこと」であることに気が付いた。
 いわば彼は憎まれ役を買って出るというのだ。

 

「……君は、俺に彼女を犠牲にしろというのか」
「……いいえ。白馬の王子様ならば、必ずやハッピーエンドに出来ると期待しています」
「……ったく、無茶を言ってくれる。良いだろう。
 仕掛けてみようじゃないか。但し、状況が変われば中止するぞ。
 ディアッカ、君もそれで良いのか」

 

 唐突に振られたディアッカだが、彼は指で鼻をこすると、彼らしい不敵な笑みを浮かべた。

 

「……俺は隊長さんの命令に従うまでだぜ。
 ま、どの道あいつ等とは決着付けなくちゃならないからな」
「……そうか。それを聞いて安心した。
 アデス艦長、聞いての通りです。急な仕事ですが、お願いできますか」

 

 アスランの姿勢はいつも丁寧だ。
 アデスはその低姿勢ながら大胆さも持ち合わせた、このアスラン・ザラという男に期待してみたくなった。

 

「アスラン、君は良くやっている。私もやれる限りをやろう」
「有り難うございます」

 

 アスランは強く拳を握りしめた。
 その目は遠く先を行く足付き艦隊を見据えるかの様に。

 
 

 その頃、アークエンジェルのとある一室ではまだ彼女等が話していた。
 ラクス・クラインはティーカップを口に運びかけた所で、ジェインウェイの言葉に止まっていた。

 

「……仕事……ですか?」
「えぇ。貴女は便宜上は救出したVIPとしても、軍からすれば捕虜なのよ。
 その捕虜を自由に歩かせていたとなると、何かと外聞が悪いのよね。
 だから、貴女を人手不足を理由に労働に駆り立てたとしようと思うの。どうかしら」

 

 ジェインウェイの唐突な提案は意外では有ったが、自身でも望むものだった。
 この場所で監禁生活はさすがに疲れる。
 いつまでここにいるのか分からない以上、出来る事なら自由に行動出来る方が良いに決まっているが、彼女が知っている地球連合という組織は、旧世紀の人道的な配慮とは掛け離れたものと考えていた。
 故に彼女の真意が気になった。

 

「……あの、私が一人で勝手に逃げてしまうかもしれない。もしくは、誰かをそそのかして何かをするかもしれないとは、お考えにならないのですか?」

 

 ジェインウェイは彼女がわざわざ自分の選択肢を提示してみせた事に感心していた。
 彼女の話は普通に有っても不思議じゃないことだ。

 

「……そうねぇ。あなたは随分と真面目ね。
 黙っていれば分からなかったかもしれないのに。
 確かにそんな事もあるかもしれない。でも、それはそこの指揮官が悪いのよ。
 そんな杜撰な管理体制で運用している軍も悪いわね。
 もしそれが成功するのならば、いわば貴女はその隙を突いただけ」
「では、私が逃げてしまっても良いと?」
「フフ、勿論そうなって欲しいとは思っていないわ。でも、この先何が起こるか分からない。
 出来る限り隙を作るつもりはないけど、出来てしまった穴はどうしようもないわね」

 

 彼女はジェインウェイの言葉を聞いて、暗に逃げろ言われている様に感じた。
 しかし、その一方で「捕まえる」とも言っている様に聞こえていた。
 たぶん、彼女の意図している事はその両方だろう。
 逃げる機会が与えられた場合には逃げる自由もあるが、その時ではない場合は、堂々と脱走者として捕まえる大義名分が成り立つ。
 この女性は穏やかな顔で語りかけているが、中身は真逆だと言えた。

 

「……私に何をお求めになられているのですか」

 

 彼女の表情は相変わらずにこやかだが、その言葉には警戒心が伺える。
 ジェインウェイはそんな彼女の緊張を解す様に笑みを浮かべた。

 

「フフ、何も求めていないわ。ただ、そうねぇ、貴女は私と口裏を合わせてくれれば良いのよ。
 そうすればここでの生活も楽になると思うの。ずっとこのままは嫌でしょ?」

 

 ラクスは彼女が如何様にもできると考えているのであれば、その提案に乗る以外に選択肢は無いと感じた。
 実際それで自分に不都合が有るわけでもなく、どちらかと言えばメリットも多い。
 何より監禁生活にはこの場以前から飽きていたのだ。渡りに船だ。

 

「……知りませんよ?何が起こっても。
 私はこう見えて結構お転婆なんですから」
「まぁ、元気が良いのは良い事ね。
 なら、掃除婦から始めて見るかしら?」
「フフ、はい!」

 

 彼女は元気よく返事をした。
 その表情は意外にも生き生きとして嬉しそうだった。
 私はその後もしばし詳しい話等をしながら一時を過ごした。

 

 それから暫く後、私はラミアス大尉からブリッジへ来て欲しいと要請があった。
 私がブリッジに入ると慌ただしく作業する声がするが、私の入室に気が付いて全員が敬礼した。
 私はそれを直させると、大尉より状況報告を聞いた。
 彼女の話によると、CICのセンサー索敵範囲で敵艦隊の動きに変化が有った事が認められた。
 暫く後方からゆっくりと付いて来ていた例の部隊だが、船速を上げて来ていたのだ。
 その時 サイ・アーガイルがバジルールに報告する。

 

「方位、202マーク5、空間グリッド3842195。
 後方航行中のZAFT艦隊からの出撃を確認。」

 

 そこにトノムラの報告が続く。

 

「機体はジン3機並びにバスター、グリーン、ブラック、……それに、イージスです!」
「イージスだと!?」

 

 彼らの報告にバジルールはこれまでの戦闘を思い出していた。
 これまでの戦闘で目立った動きこそして来なかったが、イージスは的確に戦場をコントロールしていた様に見えた。
 イージスが出てくるという事は、敵も本気で落としに来ているのだろう。
 彼らは連合が開発した機体を上手く運用している。
 しかも、これまでの戦闘を見る限り、彼らは深追いはしない慎重さも兼ね備えていた。
 敵の目的がどの程度を目指しているのかは分からないが、このタイミングだ。
 確実にダメージを負わせることに着目していることは明らかだろう。
 余談だが、センサー類はボーグ式の3次元空間グリッド方式が導入された。
 中身はセンサー情報を置き換えているに過ぎないが、敵の詳細な位置表示を可能とし、グリッドセルの拡大縮小を利用する事で、不必要な情報を排除出来るスマートさを持つ。
 ヴォイジャーでは天体測定ラボで利用しているが、メインセンサーの切り換えをしなかったのは、連邦のセンサーでも充分な性能を持っていたからだ。しかし、ここでは違う。
 アークエンジェルのシステム設計は原始的で、シャトルアーチャーのセンサー情報を上手く活用出来る状態になかったため、結局OSレベルで作り替えることとなった。
 そして現在に至る。

 

「大佐、自分は特装砲発射後、出来る限りの弾幕を張り、牽制を掛けながら振り切ることを提案します」

 

 彼女の提案にジェインウェイは顎に手を当てしばし思案すると答える。

 

「……振り切って振り切れるかしら。どう思う?大尉」

 

 振られたラミアス大尉もセンサー情報を見つめながら話す。

 

「向こうも仕掛けてくるには、何かの勝算があると見るべきかもしれません」
「と、言うと?」
「分かりません。ただ、我々が合流される前に攻撃のタイミングを作った事実を考えると、単純にとにかく攻撃してみようとしている……と考えるのは駄目なのでしょうか?」

 

 彼女の答えにバジルール少尉は如何にも不満という顔をしていた。
 その表情のストレートさに彼女らしさを感じて思わず吹き出した私だが、彼女の不満は仕方の無い話かもしれない。

 

「フフ、そうねぇ。まぁ、彼らじゃないものね。分からなくて当然よ。
 ……ただ、言える事は逃げちゃダメよ。
 逃げたら追いたくなるのは犬でも知っている心理ね。
 我々がすべき事は、戦いながら……思い知らせるべきよ」

 

 私の答えに、その場の全員がごくりとつばを飲み込んだ。
 そんな事にはお構いなく私は命令を下す。

 

「ラミアス艦長、バーナード及びローのフライを出撃させて宙域にスタンバイ、私の合図で一斉射撃。MS隊も出撃させて。彼らには別の動きをしてもらいます」
「はい。本艦のメビウスゼロはどうされます?」
「フラガ大尉にはフライ部隊を指揮して貰いますから、MA隊として動いてもらうわ」
「わかりました。僚艦に命令、MA出撃手配をお願い。
 MS隊ストライク、デュエルの出撃急がせ!大尉のゼロはMA隊の指揮を」

 

 ラミアス大尉の号令下、連合艦隊が慌ただしく動き始めた。
 ZAFT側でもその動きが確認されていた。
 ヴェサリウスのブリッジでは、足付き艦隊から5機のMAの出撃が報告される。
 敵側の動きの速さに、アスランはイージスの中で母艦からの情報を見て舌打ちした。

 

「(この距離でこちらの動きが全て補足されている!? ……連合のレーダーは化け物か。これでは奇襲にならないじゃないか)
 全機散開!敵の陽電子砲には注意しろ。あれは触れて良いものじゃない」

 

 各機から了解の通信が入る。
 敵の動きの速さから計算して、もう撃って来てもおかしくない。
 ……と思っている矢先に第一射が二筋の閃光を走らせ宙域を貫く。
 対応に遅れてジンの一機が足を損傷した。

 

「損傷した機体は戻れ!(くそ、まるで見透かされている。)
 敵陽電子砲の射程を定めさせるな。ヴェサリウスは後方待機を維持」

 

 バスターが進行を止めて途中の宙域で回避運動をしながら撃ち始めた。
 バスターの弾幕が宙域に煙幕を張る様に味方の姿を隠す。
 その隙を突く様にイージスを先頭に各機が続く。

 

 アークエンジェルではジェインウェイが号令を出した。

 

「今よ!」

 

 MA隊が一斉に射撃を始めた。
 しかし、その射撃する方角は進行方向正面ではなく、上下で別れていた。
 そして、上層と下層に陣取ったドレイク級からも攻撃が開始される。
 合流間近ということもあり、ミサイル等も惜しげもなく放出した。
 それはまるでバスターによる宙域を水平に隠す弾幕を回避する様に。

 

「何!?(全て予測済みだと!?)くそ、全機撤退!)」

 

 アスランが作戦の中止を叫ぶ。
 敵側はあえて正面を避けて、上層と下層へ飽和攻撃を敷く事で進路を限定したのだ。
 これは如何に強固なPS装甲といえど、集中攻撃を受ければ耐えられない為だ。
 しかもその攻撃の薄い正面を突破しようものなら、陽電子砲の砲火と敵MSとの戦闘が待っている。
 しかし、イザークが1人その命令に背き中央を突進した。

 

「ラクス様は目前なんだぞ!!!
 ここで引いては、イザーク!男が廃れるぜ!」

 

 ゲイツ・アサルトのバックパックから小型ミサイルが射出される。
 それらの射線上を辿る様にゲイツが高速でアークエンジェルへ迫る。
 ローエングリンの砲撃すらも半ば動物的感とでも言うべき機敏さで避けた彼は、愛するラクス様のために猪突猛進だ。

 

「もらったぁ!!!!」

 

 イザークが咆哮する。
 だが、彼の突撃はストライクによって阻まれる事となった。

 

「……アークエンジェルを傷つけるのは、この僕が許さない!!!」
「なにぃぉおおおお!!!」

 

 イザークは相手の技量が高くない事は先の戦いで見抜いていた。
 そんな奴が堂々と自分の前にやって来たことに、安く見られた様で憤慨した。

 

「大した技量も無いくせに!!!」
「ぐぅぅ」

 

 キラは食いしばりながらシュベルトゲベールで受け止める。
 攻撃をしながら片手でキーボードを引き出すと、手打ちで入力を始めた。
 先日のイチェブとの戦闘を思い出し、敵の行動パターンを過去の記憶を元に設定。
 回避パターンをOSに一部サポートさせながら攻撃に集中する。
 ゲイツはストライクに休む隙を与えず、ひたすら間合いを詰めてビームサーベルを振るう。
 接近戦が得意ではないキラからすると、この近接具合がやり難い。
 どうにかして間合いを作りたいが、悔しいことに相手の方が戦い慣れている。

 

「ラクス様を返しやがれ、この卑怯者がぁああ!!!」
「な!?……んだとおお!!!ラクスは渡さない!!!」

 

 それは突然に起こった。
 キラの頭の中で何かが弾けるのを感じたその瞬間、周りに見える全てのものが、ある種当然とも言える程ハッキリ理解出来る様に感じられた。
 彼の前方からは途方も無い闘争本能が感じられる。
 しかし、同時に何故か憎めない暖かいオーラも感じる。
 イメージを言うなら、とっても凶悪そうに眉間に皺を作る努力をして吠えるチワワだ。
 可愛い。なんて可愛いんだ。こんな可愛い奴が僕を傷つける筈は無い。
 なのにも関わらず、それは自分に対し攻撃を仕掛けているのだ。
 が、何故だろう、突然動きが緩慢になった様にも見える。
 しかも、何となく先の行動が予想出来た。
 理由は分からないが、ゆっくり動くのであればこちらも容赦する必要は無い。

 

「(大した技量も無いのは、君の方だ!!)」
「ぐあぁああ!!!!!(キャィィン!!!!!)」
「(あぁ、ごめんよ!ごめんよぉ!!!!)」

 

 シュベルトゲベールがゲイツのコックピット付近を切り裂いた。
 その損傷により内部で誘爆しイザークが負傷する。
 すかさず止めを刺そうと動くストライクだが、そこを強力なビームが走る。
 変形したイージスの放ったスキュラがストライクとゲイツを離すと、そのままイージスはゲイツに組み付いて後方へ撤退していった。

 

「……敵ながら、毎度潔い引き際ね。引くなら追わなくていいわ。
 全機撤収。全艦全速前進」

 

 ジェインウェイが宙域を見つめながら命令を告げる。
 第八艦隊はもうすぐだ。

 

 その頃、デルタフライヤーでは、ハリー・キム少尉がヴォイジャーと通信していた。

 

「キムからヴォイジャー」
「はい、こちらヴォイジャー。なんだいハリー」

 

 彼はデルタフライヤーで「シャノン・オドンネル」を乗せ、オールトの雲を抜けようとしていた。
 本物のシャノンとの影武者契約の交換条件は、彼女の、いや、まだ人類の誰も見た事も無い領域への探査であった。
 とはいえ、この任務自体は米国宇宙軍の最新型宇宙船を使用した試験飛行という名目で、デルタフライヤーがワープドライブを搭載した未来の船だと夢にも思わないだろう。
 彼女は純粋に科学的探究心が旺盛で、自分の目で見たもの以外は信じない。
 ……そうした所はジェインウェイにそっくりだ。

 

「なぁ、トム、こちらで人工的な、亜空…あ、いや、通信をキャッチしたんだが、帯域の問題か上手く調整出来ない。
 そちらに転送するから調べてくれないか」
「良いだろう。ベラナにスタンバイさせておく」
「わかった。転送を始める」

 

 ハリーは航行中、謎の通信をキャッチしたのだ。
 その内容は上の通り、何を発しているのかさっぱりわからず、いくら調整しても自動翻訳機の調整範囲に入る音声通信に変換出来なかったのだ。
 デルタフライヤーのコンピュータは限定的なため、その通信内容をサンプリングしたデータをヴォイジャーで解析すれば、もしかしたら聴けるかもしれないと彼は考えた。
 トレスが機関室から通信を入れる。

 

「こちらベラナ。あなたの通信を解析してみたけど、こちらでもサッパリわからないわ。
 なんか、イルカやクジラの声みたいなものに近い音声データには変換出来たけど」
「イルカやクジラ?他にデータは?」
「音声データの他に幾つか画像データがあるわ。んー、何かの文字みたいなものと、色々な絵があるわねぇ。
 それに、これは……クジラ?……でも、羽かしらねぇ。
 クジラに羽が付いた様な生き物の画像があるわ」

 

 シャノンは彼女のあるワードに引っかかった。

 

「羽!?」
「え、そこに艦長がいるの!?」

 

 シャノンの声に、ベラナはジェインウェイと勘違いして驚いた。
 ハリーは慌てつつ、どう説明して良いか言葉を選ぶ。

 

「あ、いや、その、例の」
「え!?……あ、あぁ。そ、そういえばそんな話だったわね。
 えーと、シャノンさん……よね?」
「えぇ、そうよ。ベラナさん、初めまして。
 その……羽の付いたクジラの画像を、こちらへ送って貰えるかしら?」
「良いわ。どうぞ」

 

 ベラナがフライヤーのモニターに画像を転送する。
 モニター上に映された絵を見て、シャノンは驚愕した。

 

「……エヴィデンス・01」
「え?証拠?」

 

 ハリーは唐突に告げられた単語に首を傾げる。

 

「……エヴィデンス・01よ。知らないかしら?
 初の地球外生命体の証拠として、プラントに化石が残されているわ」
「……どういうことよそれ。化石って、億単位の昔のものってことよね」

 

 通信の向こう側のベラナが不可解とでも言いたげな表情で話す。
 ただ、その顔はボイスオンリーのため相手には伝わらないが、彼女の疑問は当然出てくる疑問であり、矛盾なのだ。
 それに対し彼女は腕組みをし、右手を顎にあててしばし考えると、半ば自分に言い聞かせる様に言う。

 

「……そうかもしれないし、違うかもしれない。
 私達はまだ科学のほんの僅かな際に居る存在よ。
 でも、一つだけ言える事が有るわ。
 彼らは何らかの形で『居た』のよ。……その生死はともかくとしてね」

 

 シャノンはその画像に見入っていた。

 
 

 ―つづく―

 
 

  戻る