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スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED_第19話

Last-modified: 2012-08-15 (水) 22:24:33
 

 スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED
 第19話「決意」

 
 

 ZAFT軍ヴェサリウス内アスランの執務室では、応接椅子に座るザフトレッドの面々が居た。
 アスランの対面に座るのはディアッカ・エルスマンとニコル・アマルフィだ。
 彼らメンバーのもう一人の姿はない。3人とも陰鬱とした表情をしていた。

 

「……イザークの負傷具合は幸い軽度だった。
 命令無視の結果とはいえ、無事なことは不幸中の幸いというべきか」

 

 アスランはイザークの処遇に苦慮していた。
 彼は現在、医務室内で集中的に治療を受けている。
 それもこれも作戦中の命令無視による独断行動の結果だ。
 機体の損傷も含めての責任は重い。

 

「イザークの奴、顔の傷は幸い治るらしいが、本国に帰還する必要があるって聞いて拒否ったそうだぜ。
 まぁ、あいつの熱さはいつもあんな感じだ。確かに傷を負いはしたが、本人も機体も直せる範囲だから、隊長権限で不問……ってなわけには行かないのか?」
「ディアッカ、言いたい事は分かるが、あいつの為になるのかわからない。
 ZAFTは自由な規律の軍隊だが、上官命令無視には罰則を科せる権限がある。
 ……とはいえ、正直な話を言えば、今はどちらでも良い。
 戦いたいというなら、それを優先する」
「ほぉ……」

 

 ディアッカはアスランの意外な判断に驚いた。
 この件は以前の彼の真面目さを考えれば、確実に問題にして押さえ込むと考えていたからだ。
 そこにニコルが尋ねる。

 

「どちらでも良い……ということは、イザークはそのまま温存するということですか」

 

 ニコルの質問に、アスランは溜息を吐きつつ答えた。
 その表情からは彼が自分の決断に満足している風には見えない。

 

「……あぁ、そうだ。いずれにせよこちらの戦力は不足している。
 1人でも欠けるのは痛い。失態は功績で挽回してもらうしかないだろう」

 

 本来であれば罰を科さなくてはならない立場にありながら、状況が許さない。
 だからと生真面目に規律を守ったならば、そのせいで共倒れになる危険すらある。
 どっちを活かすにしても、アスランからすれば重い話だった。
 ニコルがそんな彼を察して申し訳無さそうに言った。

 

「そうですか。僕も……提案した張本人です。処罰は覚悟の上でした。
 本当に、申し訳ない。僕がゴリ押した形になりましたが、あなたはそもそもこの戦いを、あまり乗り気ではなかったのではないですか」
「乗り気?………決断した以上、ニコルだけの責任じゃないよ。
 試す価値はあると思っていた。いや、価値は有ったのかもしれない。
 だが、それで分かったのは、……相手の能力が想定より驚く程高いという現実だよ。
 データは冷酷だ。奴らのセンサーレベルは並外れている。こちらの動きは全てお見通し。
 俺達は連合のセンサー範囲ぎりぎり圏外を航行していたはずなんだ。
 ……少なくとも俺はそのつもりだった。なのに、従来のレベルを大幅に越えていた」

 

 アスランの指摘は二人も実際に目にしていた。
 連合艦隊は機敏に対応し、こちら側の攻撃態勢とほぼ同時に行動して戦術を揃えて来ていたのだ。
 しかも、それだけではない。こちら側に合わせて戦術を凌駕してさえみせた。
 それは単にセンサー上で識別していたというよりは、動き自体を把握しているとでも言える程機敏で的確な行動だった。

 

「……もしかしたら、俺達はとんでもない勘違いをしているのかもしれない」
「勘違い?」

 

 ニコルが首を傾げた。
 腕組みしながら二人のやりとりを聞いていたディアッカも、珍しくアスランを真面目な顔で注視している。

 

「あぁ。俺達はモビルスーツが重要だと思っていた。
 だけど、本当はあの足付きが一番重要だったんじゃないのか」
「足付きが……ですか?連合の大鑑巨砲主義の修正としての足付きではなく、飽くまで大鑑巨砲主義version2.0とでも言う代物だと?」

 

 ニコルの話す大鑑巨砲主義は、これまでの連合の艦艇が飽くまで戦艦での砲撃中心であったことによる。
 しかし、Nジャマー散布後は砲撃も目視に頼る事となり効果が減少していた。
 その状況に上手く適応したのがMSによる目視近接戦闘であり、GAT-Xシリーズの開発に繋がったのだと考えていたのだ。
 黙って聞いていたディアッカも、この発言の奥に潜む答えに動揺していた。

 

「おいおい、ちょっと待ってくれよ。鹵獲MSだって十分高性能だぜ?
 ……なのにあの足付きはもっとすげーってのか?」
「……そう想定出来る条件がこれだけ揃っていて、否定する方が難しいとは思わないのか。二人は」

 

 言い終えてアスランが背もたれに深く体を沈め、目を閉じた。
 注視する二人の顔には、うっすら汗がしたたっていた。
 彼の滲み出る苦悩の姿が、この時ハッキリと彼らにも共有出来るものとなったのだった。

 
 

 その頃、アークエンジェルの食堂では、加藤ゼミの面々が第八艦隊と合流するとあって最後の会食と洒落込んでいた。

 

「一時はどうなる事かと思ったけど、さっきの戦闘も無難にこなして何とか無事にこれたな」

 

 サイ・アーガイルは感傷に浸る様にこれまでのことを思い出していた。
 カズイがそれに続く。

 

「そうだね。でも、フレイはどうするのかな」
「フレイは……わからねぇ」
「え、サイ、最近フレイと話して無いの?」

 

 カズイの質問はサイにとってはとても痛い問いであった。
 出来るなら暫く黙っていたい事だったが、腹をくくる。

 

「……俺達、別れたんだ」
「えぇ?!」

 

 その場の全員が驚く。
 あまりの反応に彼自身も驚くが、気まずいながらも続ける。

 

「フレイはこの前のパイロットの件と良い、かなり本気でトレーニングを受けているだろ?
 ……でも、俺達は元々は民間人で、一時的に入隊している扱いだ。
 だから、第八艦隊との合流でオーブに一緒に帰るもんだと思っていたんだ。
 だけどさ、あいつ、残るって言ったんだ」
「残るってことは、……正式に入隊するってことでしょ?
 それとサイと別れるのはどう繋がるのよ。つまり、一人で帰れって言われたから?
 でも、それならサイは残る気無かったの?」
「ミリアリア、俺がそんな冷たい男だと思ったか?勿論、一緒に残ると言ったさ。
 俺としてはフレイには帰って欲しかったけど、自分は残るつもりだった」
「じゃぁ、別れる理由無いじゃない。なのにどうして?」

 

 確かにこの中には全く別れる要素は無い。
 フレイは除隊しないことにも同意し、彼自身も残るというのだ。
 一緒に戦って行こう!……で万事安泰であるはずだった。
 しかし、サイにとってはまさかの答えが待っていたのだ。

 

「振られたんだよ。そもそも俺達の関係は親同士が決めた物だ。
 あいつは、俺の事を頼りにしてたし、大きな不満も無かったんだとよ。
 でも、それがいけなかった。あいつ、変わっただろ?
 ……おじさんが亡くなってから自立し始めたんだ。
 つまりはさ、俺は単なるお守り役だったってことさ」

 

 しみじみと語る彼の話に、一同は何も口を挟めそうになかった。
 しばし辺りに静けさが降りる。
 カズイが話題を変えようと口を開いた。

 

「あ、あのさ、キラはどうするのかな。
 凄く辛そうだったし、除隊…するよね?」

 

 この会食にキラの姿はなかった。
 彼はいつもの通りMSのメンテで出払っている。
 しかし、この場で一番帰りたいと感じているのは彼だろうことは、一同の共通認識だった。

 

「うーん、だけどよぉ、俺、この前こっそり見ちゃったんだけどさぁ、あのピンクの御姫様とキラがラウンジで抱き合っていたんだぜ?」
「えぇええ!?」

 

 トールの発言にこれまた一同は驚きを隠せなかった。
 彼は頭をぽりぽり掻きながら自分の発言に自重しつつ続ける。

 

「あ、いや、俺が見たってことは内緒だからな!……ここだけの話、あいつ、お姫様のことを人質にした事を凄く恥じていて、堪え切れず泣いていたみたいなんだ。そこをお姫様が慰めた……と。
 どうも、あのお姫様とキラ、……出来ているんじゃないかな」
「……あ…それ、わかるわ。この前の戦闘でも、キラ、彼女の事凄く気にしてた。
 うん、だったら、彼女の為に残るかもしれないわね」

 

 ミリアリアも戦闘中のストライクの情報を見て知っていた。
 彼女に対する執着とも言える必死さをみれば納得の行く話だった。
 そんな話を聞いてこの場で一番面白くないのはカズイだった。

 

「っちぇ、いいよなキラは。何でも出来て、ルックスも悪くないし。
 あんな綺麗な子と付き合って…リア充爆ぜろ」
「……わかるぜ、兄弟」

 

 カズイの最後の呟きに、普段なら引いているはずのサイが同意した。
 そう、彼ら二人はゼミの男達の中では、彼女のいない不遇者同士となっていたのだ。
 まさに兄弟。

 

「あ、そうそう、俺も残るが、お前達は無理しなくて良いからな」

 

 サイの言葉にトールが首を横に振る。

 

「いやいや、サイが残るなら俺も残る!
 乗りかけた船だ!最後まで乗ってやるさ!!!」

 

 彼は力強く拳を握り宣言する。

 

「トールが残るなら、私も残る!」

 

 その彼の話にミリアリアも意志を固めた。
 だが、彼女の決意に一番驚いたのは隣に座るトールだった。

 

「ぇえ!?!ちょ、ミリィは戻れよ。無理すんなって!」

 

 彼は慌てて彼女の説得に入る。しかし、彼女の意志は固い。

 

「ちょっと、私を女だからって差別しないで!
 それにトールと離れるなんて、嫌!」
「ミリィ…」

 

 感動のあまり、彼は思わず彼女に抱きついた。
 彼女はそれに応えるようにひしと自らも彼を抱しめると、もはやそこは二人のラブプレイスだ。
 それをこのバカップルだめだとばかりにジト目で見る二人。

 

「……はぁ。みんなが残るなら、僕も残るよ。怖いけど最近トレーニング楽しいし」
「良いのか?」

 

 サイはカズイが無理していないか心配して声をかけた。
 だが、彼は首を横に振って答える。

 

「僕もアークエンジェルのクルーだよ。仲間はずれにしないで欲しいな」
「はは、そうか。そうだよな」

 

 一同の決意が固まった。

 
 

 艦長日誌
 我々は連合軍第八艦隊と合流した。
 旗艦メネラオスとの通信チャネルも開き、この艦もようやく連合軍の正式な一員として迎え入れられることになった。
 そして、この軍を指揮する最高指揮官デュエイン・ハルバートン准将が、自らアークエンジェルを訪れた。
 私は彼らを作戦室へ招き、そこで会談する事とした。

 

「いやぁ、よく守ってくれました。ラミアス君の話から聴きましたが、ジェインウェイさんの采配だったと知り驚きましたよ。この場を借りて改めて礼を言いたい」

 

 ハルバートンは帽子を脱ぎ、深々と私に向かって礼をした。
 私はそれを直す様促して応じる。

 

「いいえ、礼には及びませんわ、閣下。私も犬死には御免です。
 生き残る為に協力するのは当たり前ですわ。それに、それ相応の報酬を頂きますし」
「ははは、相変わらずだ。しかし、あなたの功績は大きい。
 この艦は勿論、試作の2機を持ち帰れることは、今後の連合とZAFTの戦況を大きく変えることになるでしょう。
 しかも、それが可能となったのは貴女の存在が大きい。
 どうです、正式に復隊されるおつもりはありませんか」

 

 来た。この質問は想定内の言葉だ。

 

「私が復隊したとして、どのような扱いになるのかしら。
 今は飽くまで臨時で暫定の大佐でしたけど、正直私もブランクがあります」
「何をおっしゃるか。この件については、既に上層部側も了承していてねぇ。
 貴女が良ければ正式に連合軍第八艦隊所属の大佐として復帰することになる。
 まぁ、私の部下扱いではあるが、不自由は無い様に努力する。どうですかな?」
「……准将閣下、勿体ないお言葉ですわ。
 ただ、正式に軍属となると、経営上に不都合が出ますわ」
「ふむ、確かに兼業軍人はあなたの経営は勿論、我々としても問題だ。
 だがねぇ、あなたはこれだけ秘密を知ってしまっている立場だ。
 それほど選択肢が無いことは承知してくださるものだと思うが」

 

 ハルバートンは私の目を凝視した。
 彼としてもこの案件は最重要の課題とでも言った所だろうか。

 

「では、条件を提示したら、そちらは飲んでくださるかしら?」
「条件?……内容次第ですな」
「私が責任を持つのはアラスカまで。
 それ以降は民間企業として戻る事を許可して頂けますかしら?
 ……この艦を無事に送り届ければ軍部としては十分じゃなくて?」

 

 彼はしばし沈黙した。彼女の提案を受け入れるのは正直難しい。
 軍と言う組織はそんなに簡単に抜けたり入ったり出来る組織ではない。
 それを虚偽で答えれば彼女は確実に拒絶するだろう。

 

「……惜しいな。私としては貴女と共に戦いたいものだが」
「准将閣下……私は何も軍から全て手を引くわけでは有りません。
 状況次第では継続もあり得るでしょう。
 しかし、私が軍属として残らなかった理由もお察し下さい」

 

 彼女の言う「残らなかった理由」とは、過去の事件と関係していた。
 彼女の業績で最大の作戦となった火星コロニー建設計画時代に起きた事件で、軍部は全ての責を彼女になすり付けたのだ。彼女はその後軍を離れた。

 

「火星での記録は目を通した。当時の軍部が君に対して辛く当たったことは承知している。
 うむ、これまでの貢献を考えれば、我々が譲歩しない方がおかしいというべきか。
 わかった。私が君の希望を保証しよう」
「閣下、有り難うございます」

 

 この後の交渉で、私は正式に第八軌道艦隊所属大佐として着任した。
 所属艦隊はこれまで通りアークエンジェル及びバーナードとローを指揮下に置くが、ハルバートン准将は月のプトレマイオス基地への移動ではなく、大西洋連合司令部のあるアラスカへの降下を求めてきた。
 これには私も異を唱えたが、准将は一刻も早く地球に持ち帰り、GAT-Xシリーズの量産化をはかり、失われ続ける若者の命を減らしたいと望んでいた。
 彼の言葉は我々の連邦にも通じる人道が宿っている。
 少なくとも彼の様な指揮官が連合にいることは救いと言えた。
 指揮系統については、所属艦隊の指揮権は私にあるものとし、第八艦隊旗下では旗艦メネラオスの命令に従うものとした。
 だが、私は肝心な事は彼らに伏せる事にした。それはラクス・クラインについてだ。
 もし彼らにこの情報を伝えればどうなるかわからない。
 彼女は我々を連合とプラントに結ぶ切り札だ。カードを切るにはまだ早い。
 この事は事前にクルー達にもキツく言い含めた。
 実際問題、彼女の情報はここのクルーにとっても厄介なものだ。
 彼女が居ることが連合上層に知れれば、間違いなく連合司令部は我々を重要視するだろう。
 だがそれは我々が亡き者にされる可能性をもはらむ。彼らの過去のやり口を考えれば、人道から外れた行動をしないとも限らないのだ。そう、艦諸共破壊するという手段を。
 敵軍の将を脅す材料として使えるものならば、連合もまた手段を選ばないということを彼らにはキツく言い含めた。そのお陰もあり彼らはこの情報を一切漏らさなかった。

 

「え、わ、私が中佐ですか!?」

 

 私の言葉に一番驚いたのはラミアス大尉だ。
 准将との会談後に作戦室に集まった上級士官との会議の席で、私は彼女に昇進の話を振った。
 彼女からしてみれば雲の上の話が唐突に自分に振りかけられ、どう反応して良いのか頭が真っ白という様子だ。

 

「貴女にはこれからもアークエンジェルの艦長で居てもらいます。
 これまでの働きは十分な力を発揮していたと評価しているの。どうかしら?」
「……私に務まるのでしょうか。中佐だなんて」
「この度、私が正式に着任する以上、この作戦室の面々は、私の軍の参謀として機能してもらう必要があります。
 その為に一定の権限を持ってもらわないと、これからの任務に差し支えると判断したの。
 昇進の承認は既にハルバートン氏から取っています。貴方に拒否権はないわよ。
 それに、私が指揮するのはアラスカまで。それまでにここにいる皆さんには、私が居なくても機能するだけの技量を学んでもらいます。
 いわば、ここは学校だと思ってくれて良いわ」

 

 この後ラミアス大尉は同意し彼女は中佐に、バジルール少尉は大尉に、フラガ大尉は少佐に昇進させた。
 二隻の艦長のグライン/ブライトマンの両名は少佐のまま留任し、トゥヴォックを中佐に昇進させ腹心とした。
 その他、全クルーの階級が一つ上がることとなった。これは准将からの計らいだ。
 他の処置はほぼそのままで、人員については降下するアークエンジェルへバーナード及びローから補充すると共に、現在クルーとして共に働く民間人については、そのままアークエンジェルが降下してアラスカ経由で本国へ送り届ける事となった。
 これは現状で秘密を知り過ぎていることと、アークエンジェルが彼らの支援無しに運用出来ない程度に彼らと一体化していることが言える。
 操艦についてはこれまで通りとし、トゥヴォックの所属をバーナード及びローの指揮官として配置し、宇宙へ残すこととした。
これは宇宙軍との関係を維持する事で、今後の軍部をコントロールするためだ。

 

 方針が決まると話は早い。
 艦隊からは地上用戦闘機であるスカイグラスパー2機が補充された。
 また、不足していた必要物資も滞り無く積み込まれ、これまでガラクタの山を再生して利用していた整備陣も色めき立っていた。

 

「これ、こんなに急いで整備する必要有るんですか?」

 

 キラはハンガーでフラガのメビウス・ゼロの整備を手伝っていた。
 地球降下も視野に入った事から、セブンの発案でメビウスに翼を付ける作業をしていたのだ。
 大気圏内でのガンバレルの使用は無理だが、前回の戦闘後にフライと同じ装甲に切り替えたこともあり、耐久性も上がっている。
 機体のボディカラーはゼロ同様だが、PS装甲ONで緑になる。
 ただ、普段は省電力モードで動作しPS装甲は動作させない設定になっている。
これは機体のバッテリー電源容量上仕方ない処置だ。

 

「アニカちゃんは仕事が早いからな。……そのために出撃出来ないのはまずいだろ?」
「それは、そうですが」 #br
 実際セブンの働きの早さのお陰で様々な物が高性能になってはいるのだが、そのお陰で様々な物が唐突に一時的であれ使えない状況もしばしばある。
 先日はアークエンジェル自体のOSのアップデートの為に機関が完全停止し、クルー達は真っ暗な時間を3時間過ごすなど、トラブルとも言える事態も経験していた。
 もしあの状況で襲われていたら、真っ暗な中マニュアルで出撃する戦闘となっていたのだろう。
 ただ、そのアップデートのお陰でセンサーが強化されて、先の戦闘では完全に上手を取り、ZAFTを難なく撃退出来たのは功績と言える為、甲乙付け難いどころか有り難いことだが。
 フラガは不意にキラの仕事の方が気になった。

 

「それよりお前の方は良いのか?」
「はい。ハンセンさんがOSの調整をしてくれています。
 今度積み込まれたスカイグラスパーはストライクと互換があるそうで、武装が使えるそうです」
「へぇー、そりゃまた凄いな。こいつにもそんな機能有れば良いのになぁ。
 ま、このゼロの大気圏内改造は簡易だ。突入は無理だが、翼を持たせることで、重力下の操縦性能を上げているそうだ。
 詳しい事は分からないが、アニカちゃんの話によれば、摩擦熱にも簡易ラミネートのお陰で数分は頑張れるそうだぜ。保険ってやつだな」

 

 実際に使うか分からないが、低軌道上で戦闘となれば間違いなく重力に掴まる可能性がある。
 彼女の対応の凄さは既にフライで実験して性能を確認しているということだ。
 ゼロで実験せずにフライにしたのは、ゼロが主戦部隊で使えなくなるのを危惧しジェインウェイが許可しなかった為だが、大佐の危惧は杞憂に終わり問題無く動作して戦闘を終えた。

 

「イチェブくんの方は新しい装備が完成したそうですね」
「あぁ、今作業してるあれ、あいつが自分で設計して作ったそうだぞ。凄いねぇ。
 お前もだがあいつも天才だよ。俺みたいなMA屋はお呼びでないって感じだ。
 嫌だねぇ、年の差ってのは」

 

 フラガの言う通り、新型武装はイチェブによって設計され開発された。
 彼は敵ブルーを参考に小型ミサイルポッドをデュエルに搭載させた。
 この武装については彼がコツコツと自分で設計した案があり、それをそのまま採用した格好だ。
 武装自体は連合のMA用小型ミサイルを第八艦隊から大量に調達出来た事で完成したが、この武装は着脱可能で、デュエルにストライクと同じコネクタを取り付け、ストライカーパック的に利用出来る様、新型試作カーボン素材で軽量化している他、増設コネクタを用意し、デイジーチェーン接続でアークエンジェルからエネルギー供給を受けながら戦闘する事も出来る。
 また、盾をストライクと共通運用に変えて部品点数を削減するなど、今後の運用効率向上のための武装共通化を進めている。
 こうした仕事の支援は勿論セブンが関わっており、彼女はこなすべき仕事が沢山あることは勿論、大幅に制約の有る中での開発というこの状況を楽しんでいる様だ。
 無い素材は自分で作るをモットーに、ハンガー付近の部屋は殆どが彼女の工場施設と化しており、新しい材料を製造するための装置が所狭しと開発され稼働している。
 この装置類があるお陰で彼女の開発は軌道に乗っているとも言え、ジェインウェイもあまり強くは言えなかった。
 なぜなら、彼女は確かに連合の技術水準で出来る範囲の開発方法を生み出しているからだ。
 オーバーテクノロジーであったなら、強制してでも彼女を止めただろう。
 彼女もそれを理解している犯行だから始末におけないともいる。
 ちなみにラボの開発メンバーは民間クルーのコーディネイターが多い。
 元々産業機械装置等を開発または管理する技術者がコロニーでは多く働いているため、そうした技術者がここに居るのは必然でもあった。

 

「そんな、僕は彼と違って何も出来ないですよ」
「そうかぁ?前の戦闘じゃ、俺にはそう見えなかったけどね」

 

 フラガは先の戦闘データを見て驚いたうちの1人だ。
 キラがこれまで少々苦戦しながらも頑張ってきていたのは分かっていたが、前回の戦闘は頑張っているなんていうレベルではなく、人間を超えた制御を見せていた。
 これがコーディネイターの為せる技なのかと思うと癪に障るが、イチェブの事を考えると新世代と旧世代の違いという思いも浮かび、自分の仕事の出来に内心悩んでいないと言えば嘘になる話だった。
 それでも彼は民間人の素人で、自分は訓練も受けた軍人なのだから笑ってしまう。
 少なくとも年齢分は仕事が出来ると思わせたいと思うのは、虚栄心だろうか。
 しかし虚栄心と言われても、強く有りたいと彼は感じていた。

 
 

 その頃ZAFT側ではアスランがアデスと共に作戦を練っていた。
 執務室の応接椅子に対面で座りながら、連合の動きをもとに相談が続く。

 

「足付きは一度プトレマイオスへ行くものと思っていたが、どうやらそのまま降下する気の様だね」

 

 アデスは連合側の動きを見て推測を語る。
 それを聞くアスランは、しばし顎に手を当てて考える仕草を見せた。
 連合側の配置は遠くではあるが、ある程度把握は出来ていた。
 普通に考えれば彼らの方が余裕はあるのだ。急ぐ必要もないと考えられるが。

 

「……それだけ連合も焦っているんでしょう。あれは確実に戦局を左右する。
 それは俺達自身が使っていて痛い程理解していますが」
「そうだね。叩きますかな?」
「……勿論です。刺し違える覚悟が要るでしょう」
「しかし、我が方はジン5、ゲイツ2、それにバスターとイージス。
 MSの戦力数は確かにこちらが上だと思うが、向こう側には密集した艦隊が待っているのに対し、我々はヴェサリウスとツィーグラーの2隻。かなり分が悪い。増援も間に合わないこの状況では…」
「艦長、増援は、……端から期待していません。
 そもそも、優れた種だなんて嘘ばかりだ。批判しているナチュラルと何が違うんだ」
「……アスラン」

 

 デスク上のパッドに映る星図を見てアスランは表情を歪め、これまで押し殺していた思いを吐いた。
 突然の独白にアデスも彼の気持ちを察する他になかった。彼はまだ少年なのだ。
 暫くの沈黙のあと、姿勢を正したアスランは表情を引き締めて指示を出す。

 

「艦長、ツィーグラーの人員はヴェサリウスに移します。全MS部隊は出撃。
 ヴェサリウスは後方待機。ツィーグラーには……私が乗ります」
「それは!?」
「……それ以上は言わないでください。そもそもその覚悟なくして戦えますか。
 恐怖に打ちのめされていたら、勝てるものも勝てない」

 

 アスランの表情からは固い決意が伺える。
 だが、それをそのまま受け取る様では副官は務まらない。
 何より、そんな覚悟を少年に強いている自分が情けないとも感じていた。

 

「いや、しかし、それならば私が!」
「艦長…いや、アデスさん。この戦いで無闇に将兵を失うのは勿体ない。
 この戦場から逃れられる船速を維持出来るのはヴェサリウスだけだ。
 艦長が居なくなっては船に申し訳ないです」
「………我々にもその覚悟が無いと思っているのかね。
 これでも私は君より年も上だ。
 なのに年端も行かない君にそんな覚悟を迫っている私は何だろうか」
「指揮官が範を見せずして、部下が努力するわけではないですよ。
 それに勘違いしないでください。私も死にたくはない。勝ちに行きます」
「……」

 

 彼の決意は簡単に変わる様な物ではなかった。
 もう彼の中ではプランが固まっていた。これ以外に足付きを止める方法は無い……と。
 そう考えている彼に何を告げたとしても、彼を傷つけることにしかならないだろう。
 アデスはその後何も反論はせずに大人しく彼の意志に従った。

 
 

 アークエンジェルの通路を一人の少女が食事の乗ったトレーを持って進む。
 彼女の向かう先は、この船の中で最もVIPなお客様の部屋だ。
 尤も、本日はVIPの看板は外され「ゴミ置き場(有毒危険!)」とあるが。
 いや、気を利かせたのだろう。上層部命令の箝口令に従ったとはいえ、
クルー達の中にも客人を何としても守りたいという気持ちがそうさせたのだろう。

 

「……ここに置くわよ。
 あんた、また戦闘になったらどうするの?」

 

 フレイは食事の載ったトレイをテーブルに置くと、彼女に話しかけた。
 話しかけられた方は、微笑んで応じた。

 

「フレイ、あなたはどう為さるの?」
「私?本当は戦いたいわ。みんなギッタギタのバッコバコにしてやるんだから!
 でも、使える機体も無いし、体も出来てないって言われているのよ」
「そうですか。私は……無用な戦いが一つでも減らせるのでしたら、出来ることをします。……あの、トレーニングはお辛くないですか?」

 

 彼女が心配そうにフレイの顔を覗くのを見て、フレイは頭が沸く様なものを感じた。
 そして、そのざわつきに耐えられず、思わず頭を掻きまくる。

 

「あぁ~もぉ~!何それ!そのしゃべりどうにかならないの?
 もっとフレンドリーにならないのかしら?」

 

 突然つんけんとした態度で早口で言われ、今度はラクスが目をパチクリとして驚いた。
 彼女からすれば責められる様なことはした覚えが無い。

 

「フレンドリー…のつもりでしたが、お気に触りましたら改めてみたいのですが、その、どうお話したら?」

 

 彼女のこのまったりとした反応に、自分の頭を掻きむしりたくなる衝動を抑えて言う。
 いや、既に頭は先程掻きむしってはいたが。

 

「私は同じ女の子同士、普通にため口聞いて欲しいのよ。
 よそよそしいのは無し。良い?!」
「その…同じ年頃の女の子とお話することが無くて、よく分からないんです。
 えーと、フレイ、私もトレーニングを一緒に受けるのは、……ダメですか?」
「え?何言ってんのよ。あんた一応捕虜よ。
 今は『お客様』扱いしているけど、自由に動いていい軍隊がどこにある?
 ZAFTだって勝手に出歩いて良いわけじゃないでしょ?」
「……あ、それでしたら、先日ジェインウェイさんに許可を頂きました!
 艦内のお仕事を手伝うなら動いても良いそうです」
「へ?」

 

 フレイは鳩が豆鉄砲を食らった様に、一瞬思考が停止した。
 あの厳しい大佐が、まさか彼女を自由に歩かせるのを許可しただなんて、さすがの彼女もにわかには信じられない。

 

「……私を騙そうとしてない?」

 

 如何にも怪しいという目つきで彼女の顔を見る。
 ラクスはその反応に困りつつも、信じてもらう他に無い。

 

「はい。私がもし嘘をついているとしたら、すぐにわかることですわ?
 少し外に出ただけでも大騒ぎになってしまいますもの。でも、許可があるから、昨日はトイレのお掃除をして来たんですよ?トイレのお掃除って大変ですね。
 でも、磨いて行くとピカピカになって、それが凄く嬉しくって。
 そうしたら面白くなっちゃいまして、色々と工夫していましたら、いつの間にか全部のおトイレを綺麗に掃除してしまいましたの。
 作業に集中すると、時間が過ぎるのってあっという間ですわね。フフ」

 

 フレイはこれまた唖然として聞いている他無かった。
 ただ、確かに昨日のトイレは異様に綺麗になっていたのは気付いていた。
 しかも、ポプリが置かれていて、香りも普段よりずっと品の良い空間に。
 あまり深く考えていなかったが、あれが彼女の仕業なら…確かに頷ける。
 だが、それ以前にZAFTのお姫様がトイレ掃除だ。
 ……大佐は本当に恐ろしい人だ。

 

「はぁ、あんた凄いわね。正直驚いたわ。トイレ、とても気持ち良かったわよ。
 あのポプリの趣味は、あなたの仕業なんでしょ?」
「まぁ、お使い下さったんですか!気持ちよく使って下さったなんて、私、嬉しいです。
 えぇ。あのポプリは私が作らせて頂きました!」

 

 彼女はとても嬉しそうに微笑んだ。実際嬉しかったのだろう。
 自分の仕事を褒められて嫌がる人もそう居まい。しかも、彼女はこれが初体験なのだ。
 その仕事を褒められたなら、その喜びは相当のものだろう。
 ……そんなことを考えていると、フレイは色々と考えるのが馬鹿らしくなった。

 

「もう、調子狂うわねぇ。あんた、ホントにトレーニングしたいの?」
「はい!」
「……私のトレーニングに付き合うより、あんたの好きなことをした方が楽しいと思わない?」
「それは…そうかもしれませんが、私は一人より皆さんと何かご一緒できる事が有ればと……」
「……はぁ。もう、謙虚なんだか腹黒いのか。まったく。
 良いわ。この件、一応大佐に確認とってからになるけど、そんなに一緒に居たいなら私は構わないわ。
 あんたみたいなコーディネイターばかりなら、世の中もっと脳天気なのにね」
「……そう、なのですか?そうでしたら、私も嬉しいですわ」
「やだ、もう!なにその答え。笑っちゃうじゃないのよもぉ!」

 

 フレイが声を出して笑う。
 それをジッと見ている彼女の視線を感じて、笑うのを止めそちらを見た。
 その時視線が合ってしまい、それがまた面白く感じて二人は同時に思わず笑った。

 
 

 メネラオス艦橋では、センサーに異常を感知し緊急警戒態勢に入っていた。
 ハルバートンが艦長席で隣に立つ副官のホフマン大佐から報告を聞く。

 

「前方より接近する機影を確認。ZAFTです。
 こちらへ向かっています。邂逅時間は15分程度と思われます。いかが為さいますか」
「くぅ、この大事な時に」

 

 ハルバートンは敵の絶妙なタイミングに苦った。
 ようやく合流したのもつかの間、ZAFTが攻撃してくるのは想定内としてもこの動きは早過ぎる。
 しかし、その時自陣営から通信が入った。

 

『オドンネルです。ZAFTの進軍はそちらでもキャッチされていると思います。
 我々はこれより迎撃態勢に入りますが、宜しいですか』
「いかん、アークエンジェルは即刻降下を。奴らの目的はそちらだ」
『はい、それは承知しています。しかし、降下までに数分の猶予があります。
 我々は彼らをよく知っています。未経験のそちらより私の方が、この戦い有利に運べる自信がありますが、それでも強行為さると言うのですか。
 勿論、私は貴方の指揮下にあることは了承しました。
 ご命令とあればそれ以上は申しませんが、下策であると進言しておきますわ』
「………10分だ。10分でどうにか出来ぬなら、君等は降下してもらう」
『……充分ですわ。有り難うございます』

 

 ハルバートンは部下であるはずの彼女に圧倒された。
 彼女には彼にも理解出来ない何か得体の知れない威圧が感じられた。
 この圧力を感じる相手は、彼の記憶にある相手の中ではアズラエル理事くらいだろう。

 
 

 ―つづく―

 
 

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