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スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED_第24話

Last-modified: 2012-09-03 (月) 00:18:46

 スタートレックヴォイジャー in Gundam SEED

 第24話「狂人」

 
 

 デトロイト、アズラエル社本社屋、社長兼最高経営責任者執務室。
 ここは連合の盟主である工業王アズラエルの中枢であると同時に、この世界の最高指導者の執務室であると言える。

 

「…理事、今期の我が社の純利益は前期比293%、総売上も前期比140%以上の増加となっております。
 これは当社が経験する売り上げとしては社の歴史上初の快挙です。
 株価も前期比で70%以上の上昇を見せています。
 上手くすれば、我々で他を圧倒する時価総額を目指すのも難しくないかもしれません。お見事です」

 

 本社上級副社長が報告する業務報告をアズラエルは満足げに聞いていた。
 この成績の内訳は、単純にコストダウンした事による経費が浮いた事と、人気が出た事にある。
 VSTとの提携でシステムが最適化されたシリーズは、そのものの性能自体は全く弄っていないのにも関わらず、単純性能が7割以上、ものによっては2倍以上の性能向上を果たしたのだ。
 アズラエル社はそれらを新しいパッケージとして販売すると共に、旧来製品にもアップグレードパスを用意し、アップグレード版の性能を若干下げる様VSTに調整を依頼して販売したのだ。
 結果は性能で競合他社製品を圧倒した他、旧製品が新製品並になった事から買い控えも起こらず、旧製品の在庫一掃と新製品の完売達成を実現した。実際に彼らの社史ではここ暫く見た事が無い状況であった。

 

「ライバルの動向は?ジブリールやモルゲンレーテに技術で負けている我々が勝つには、VSTを取り込む必要がありそうですが、その首尾はどうなっています?」
「はい、両社とも現状は売り上げを微減させた程度、株価もあまり変化はありません。
 彼らは他のロゴスが支援していることもありますから、そう変化は無いと思われます。
 VSTの件については、同社は本社株の非公開化に踏み切り、システム大手のオラクレの買収を成功させ、業界ではパイナップル、ゴーグル、ミラクルソフトのビッグスリーを抜きました。
 現在のVSTはミラクル株を30%保有、パイナップル株を21%、ゴーグル株も21%保有しています。
 予想時価総額だけを考えても、同社を単純買収するのは不可能な段階に入りました」
「…そうですか。わかりました。買収の線は消えましたね。業務提携を中心にお願いします」
「はい、では、失礼します」

 

 副社長が恭しく一礼して部屋を出て行く。
 一人になった彼は溜息をついた。

 

「はぁ、さすがに気付きますか。優秀ですねぇ」

 

 チャコティはアズラエルの動きを既に察知していた。
 VSTグループ企業への株取得攻勢が出たと同時に自社株買いと非公開化を進め、資金調達方法を収益と内部留保に切り替えた。
 既にアズラエル社や他のロゴス系企業との提携業務で相当の資金が調達出来ており、彼らがこちらを必要としている以上、切られて干上がる心配もないことから、本社非公開後は積極的にグループの議決権保有51%取得に切り替えた。
 VSTグループは更に業界システム王手の一角であるオラクレを買収し、システム業界の地図を塗り替える。
 この買収劇でシステム業界のトップに躍り出たVSTは、そのまま競合3社の議決権制限株を保有。
単独で巨大企業に対抗出来る程度には資金的余裕ができていた。
 現在はその資金を素材開発等の機械産業向けに重点投資を始めている。
 その矛先はIDEX、アドヴァンスト・スペース・ダイナミック、PMP、フジヤマの4社だ。
 これら4社は連合で計画されていたコスモグラスパーを共同開発しているが、現在の連合は新型MSであるダガーの開発に舵を切る決断をしており、コスモグラスパー開発計画はほぼ消滅に等しい状況に置かれ、株価は暴落していた。
 VSTはこれら企業の買収工作を進め、既に議決権ベースで51%以上の株式を取得し傘下に収めている。
 勿論、この動きはアズラエルの知る所となっている。

 

「…彼も食えない人だ。こんな死に損ないを集めて何をする気なのか」

 

 アズラエルはチャコティ率いるVSTが、破竹の勢いでロゴス内部で頭角を現していることを苦笑しつつ見ていた。
 実際の所は彼に損になる事は全く無い。VST側はアズラエルと共同歩調をとり、ロゴス内部ではアズラエル側についている。
 現在はアズラエルの権勢はかつて無い勢いで拡大しており、彼に出来ない事等無いに等しい。
 このままの勢いで一族とも対等に張り合える程度には権力を盤石にしているともいえる。
 彼の立場からすれば、VSTは天使や妖精とでも言うべきだろうか。
 唐突に現れ、彼に大権をもたらしたのだから。

 
 

 アラート音が鳴り響く。
 デュエルのセンサーは10時の方角からミサイルの接近を知らせていた。
 時を同じくしてアークエンジェル艦橋でもCICが攻撃を察知していた。

 

「総員、第一戦闘配備。パイロットの皆さんは至急出撃用意を。
 非戦闘員の皆さんは戦闘態勢へ移行。
 各自避難エリアに退避し衝撃に備えて下さい。繰り返します……」

 

 ミリアリアの声が艦内に響き渡る。

 

「……ラクスさん、僕、行ってくるよ」
「……はい。キラ様。ご無事で」

 

 二人は夕食後暫く話していた。
 話していた内容は他愛も無いものだが、最近の彼にとっては一番の楽しみだ。
 しかし、楽しい時間は続かない。
 この部屋にも伝わった放送の声を聴き、キラの表情が引き締まる。
 どんな事があっても彼女を守る。
 ……彼の中ではこれまでも友人や仲間を守るという意識はあったが、彼女との関わりの中で自分の中に新たな感情が芽生えている事に気が付いていた。
 それは彼自身の一方的な想いでしかないが、現在の彼にとってはそんなことはどうでも良かった。
 何より守る事。そして、無事に帰還して一緒に話す貴重な時間を大事にしたいのだ。

 

 更衣室でパイロットスーツに着替えた彼は、ハンガーへ向かう途中にフラガと出会った。
 通路を走りながら語りかける。

 

「フラガ少佐、外の状況は分かりますか?」
「お、坊主。っつか少佐とか堅苦しいよな。よし、俺の事はムウで良いからな。キラ!」
「ぇえ!?あ、…はい。ムウ…さん…で良いですか?」
「あー、まぁ…いっか?さてと、敵のことなんてわからないっしょ。
とりあえず自分の機体に乗って指示を待つまでさ」

 

 その時、艦内を激しい衝撃が伝わる。二人は突然の衝撃によろめいて壁に激突した。
 近くに第一波が着弾したのだろう。

 

「っつー、人が急いでいる時に。行くぞ、キラ!」
「あ、はい!ムウさん!」

 

 二人はハンガーへと駆けて行った。

 
 

 その頃、ZAFT側では双眼鏡を両手で持って眺める男の姿があった。
 彼の目にも第一波が着弾したのが確認出来た。しかし、敵側に動きはない。

 

「……初動が遅いねぇ。
 それとも、この程度じゃびくともしないと侮られているかな?」

 

 事前に聞いていた情報では「まるで先に知っている」かの様な対応能力という触込みだっただけに、この動きの遅さには肩すかしを食らった様な感覚すら有った。とはいえ、まだ始まったばかり。
 事前の情報が真実を語っているとは限らないとしても、そうした備えがあることはずっと重要だ。
 戦争は情報力の差が戦力の差を覆す事もある。実際、宇宙で彼らは勝ち残ってきたのだ。
 この程度で修正する程には甘い考えを持ち合わせていない。

 

「お、出てきたな」

 

 アークエンジェルからスカイグラスパーが飛び出した。
 その後をエールストライクが出撃する。
 先行したスカイグラスパーがアークエンジェルへと迫る敵MAの群れを確認した。
 彼は搭載しているビームライフルで牽制射撃を放つ。
しかし、思っていたより着地点が逸れていた。

 

「……なんだこりゃ。って、言っても合わせるしか無いか。
 どうやって的を絞ろうかねぇ」

 

 無闇に撃ってはエネルギーの無駄だが、そうも言っていられない。
 彼のMA乗りの感とでも言うべきか、経験を元にしたいわば目見当で的を絞る。
 二射目は一機のバクゥの脚部に直撃した。

 

「おっし!さすが、しょ・う・さ♪」

 

 フラガ少佐からの情報はアークエンジェルにも届いていた。
 緊迫する艦橋の中へジェインウェイが入って行く。

 

「状況は?」

 

 彼女の呼びかけにラミアスは軽く敬礼をして答えた。

 

「大佐、はい、現在、フラガ少佐が先行して敵の配置状況の確認が取れました。
 敵は獣型のMSバクゥでこちら側へ向けて走行中です。少佐が一機仕留めました」

 

 ラミアスさんの話を聞いた私は、CICに入り情報を自分の目でも調べた。
 彼女の話した通りにこちら側へ向かってくる機影。
 機体数はバクゥと呼ばれる機体が6機。
 その内一機は少佐が撃墜し5機ということだった。
 距離を考えると、最初の射撃は攻撃というには手緩いものだ。
 牽制射撃というべきだが、この状況で牽制をする意味がわからない。
 敵の指揮官はわざわざ我々に攻撃の存在を知らせたのだ。
 これをどう見るべきか……?シャトルが無いため、簡易システムでのセンサーエリアは狭く、しかも分析能力も高くないため初動の反応には遅れたが、彼らの武装ではアークエンジェルは貫けない。
 敵の目的は別のところに有ると見るべきか。

 

「ラミアスさん、私達も舐められたものね。
 彼らの武装では我々を貫けないわ。
 攻撃部隊が劣勢の様なら、躊躇わず艦を動かせる様にしておいて。
 彼らが引かない場合はこちらから攻撃に向かいます」
「はい」
「では、私は作戦室に居ます。何か有ったら言って頂戴。
 この場はあなた達に任せるわ。焦らずに、じっくり敵を観察するのよ。じゃ」

 

 私は艦橋を出た。

 
 

 ストライクはエールで出撃したものの、砂漠へ着地したはずがバランスを崩しかけていた。
 砂の接地圧が流動的過ぎて、機体が十分なバランスを維持出来ないでいるのだ。
 しかし、現在のストライクはこれまでのものとは違った。

 

「ガンダム、ファイティング、デザートモードにチェンジ。
 ナイトコンディションでターゲティングサポートをオン」
『命令、を、受け付けました。
 GUNDAM、は、デザートモード、ナイトコンディションサポート、に、入ります』

 

 セブンが調整した新しいOSは、キラの声で命令を出せるボイスコントロールに対応し、様々なモードオプションによりパイロットの操縦をサポートする。
 ファイティングは格闘等の近接戦闘サポートで、より機敏に動く様に格闘支援する。
 デザートモードは砂漠等の砂地に適した設置圧に修正し戦闘をサポートするモードで、攻撃モーション時のズレの自動補正の他、環境効果の補正も自動で計算しフィットさせる。
 ナイトコンディションは地球上の夜間戦闘モードで、昼間の様に情報を処理する暗視スコープや、パイロットがターゲットを固定せずとも、自動で近い機体を中心に狙いを定めるターゲティングサポート、更に必要に応じて自動で射撃するオートカウンターモードも利用出来る。
 サポートがオンになった途端、ストライクのバランスは調整された。
 今度は踏み込んでも問題無く接地されている。
 ……システムが如何に重要かということを思い知らされる場面である。
 だが、これで考える事無く戦える。
 センサーが表示する機影は5機。
 そのうち先行する2機がアークエンジェルに近づきつつあった。
 周囲の情報ではデュエルがアークエンジェル前に陣取っている。
 少佐からのメッセージではイチェブが守りに入り、自分が前に出るとなっていた。
 そうと決まればキラの覚悟は決まった。
 すると、頭の中で何かが弾ける様な衝撃が走る。
 焦りや恐れが消え、視界も頭も嘘の様に静かでクリアな気分に没入した。

 

 ストライクが跳躍する。
 エールのエンジンを最大限に出力して上空に飛び立つと、そのままの勢いで瞬時に狙いを定め、先行する一機へ下降する重力に、更にエンジンの加速を加えてシュベルトゲベールを構える。
 鈍い衝撃がコックピットに走る。
 バクゥの胴体に深々と突き刺さった剣を瞬時に抜き放ち飛び立つ。

 

「……まずは一機。ガンダム、シューティングもオン」
『シューティングサポート、オンライン』
「アーマーシュナイダーにターゲティングサポート」

 

 爆発が上がる。
 味方の機体がやられたのを見て、後方からやってきた3機が上空へ向けて射撃する。
しかし、それらは全て絶妙なタイミングで吹かして避け、右膝からアーマーシュナイダーを出すと、後方の3機の内の中央の機体目掛けて投げはなった。
 投げ放たれたアーマーシュナイダーはシステムの自動補正で寸分違わぬ照準で飛び、敵の頭に深々と突き刺さり爆発した。

 

「……2機。ガンダム、フライトサポートオン」
『フライトサポート、オンライン』

 

 フライトサポートがオンラインになり、跳躍時のバランスの自動補正が入る。
 キラの視線の向こうには既に次の獲物の姿があった。
 後方の味方がやられたのを見て驚いていた先行2機の片割れのパイロットは、他人の心配をしているうちに爆散した。
 彼が仮に注意を払っていたとしても、砂漠を這う様に進むバクゥと、上空から飛来するストライクでは勝負にならなかっただろう。
 そして、一矢報いることなく散った彼の機体は踏み台となった。

 

「3機目。あと2機」
『警告、エネルギー残量、が、残り僅か、です』
「くそ、さすがにフルブースト状態は辛いか。踏ん張れ!ガンダム!」

 

 遠くから覗く側からすれば、当初予想とは大きく外した結果になっていた。
 いや、事前の情報からすれば、これくらいの損害は出ても不思議ではないのだが、それでもやりたい放題にやられるのは面白くない。

 

「……踏み込みが修正されてから、何があった?まだ出て来て数分。
 こりゃ、とんだバーサーカーだ」

 

 跳躍したストライクは上空で残りの二機のうちの一機に定めて滑空姿勢をとると、左膝からもう一本のアーマーシュナイダーを投げ放つ。
 そして、そのまま落下スピードに加速を加え、シュベルトゲベールを構えて突っ込んだ。

 

「……全機、クリア」

 

 ストライクが深く突き刺さったシュベルトゲベールを手放して後方へ着地する。
 着地と同時に2機のバクゥが爆発し炎上した。

 

『エネルギー、が、0、になりました。フェイズシフト、オフライン』

 

 エネルギー残量がゼロになり、フェイズシフトが解除された。
 しかし、その時上空を何かが走った。
 それは瞬く間にアークエンジェル周辺に着弾した。敵の第二波が有ったのだ。
 そこにスカイグラスパーからのメッセージが入る。

 

「受け取れ?……!ナイス、タイミング!!ガンダム、ゲット!」

 

 スカイグラスパーからパージされたビームライフルが飛来する。
 キラはそれをセンサーで確認し、システムをゲットにセットした。
 ゲット命令はストライクのオプション装備を自動で追尾するプログラムだ。
 ストライクが走り跳躍する。
 右腕を大きく伸ばして飛来するビームライフルを手にした途端、ストライクのフェイズシフトがオンになった。

 

『フェイズシフト、オンライン』
「ムウさん、ありがとう……って、え”、こんだけ?」

 

 残量メーターを見て思わず目を疑った。
 そこにはフェイズシフトダウンに二目盛り手前という量が表示されていたのだ。
 しかも、彼からご丁寧にテキストメッセージが入っていた。

 

『キラ、スマン。スグモドレ』
「……はぁ、勘弁してくださいよ。何の冗談ですか」

 

 ストライクは仕方なくアークエンジェルへ移動を開始した。
 その間もミサイルが飛来する。敵の第二波の詳細な情報はまだ無い。
 肝心のムウもビームライフルを手放してしまい、攻撃オプションが無く引き返しているのだ。

 

「さて、どう出るかなぁ。ここで潰れてくれるなら嬉しいがねぇ」

 

 砂漠の向こうでは相変わらず監視する姿があった。

 

 アークエンジェル艦橋でも状況の変化を察知していた。
 バジルールがコリントスを装填し迎撃へ向かわせる。
 いかにアークエンジェルの装甲が硬かろうと、ミサイルを何発も同時に受ければ問題が出る。
 それをそのまま受け取る程に彼女はお人好しではない。
 ラミアスは敵側の第二波の動きを考えていた。
 第一波が陽動だとすれば、これまでの攻撃は全てこちら側の攻撃を見る為のもの。
 第二波が本命であると考えれば、こちらの消耗した状況はまずい。
 ジェインウェイがじっくり観察しなさいと言っていたのは、この為か。

 

「……アークエンジェル、上昇用意。総員、離陸に備えよ」

 

 ラミアスの命令下、アークエンジェルの上昇が始まろうとしていた。

 

 その頃、外に出ていたセブンはメビウス・ゼロのコックピットにいた。
 システムの最終チェックは終わり、設定も問題無く動く事がわかった。
 メビウスは空へ向けた形で固定されている。

 

「セブンから社長。準備が整った。何時でも打ち上げ開始できる」
「作戦室からセブン。良いわ。やって頂戴」
「了解した。通信終了」

 

 メビウスのエンジンを起動させる。
 打ち上げの為に予備のメビウスのブースターノズルを付けた多段式に改造されている。

 

「第一ブースター、正常稼働を確認。出力、60…70…80…90…」

 

 同化のために事前に準備した様々な構成物が正常に起動を開始している。
 その時、アラート音が鳴り響く。敵機が接近していた。
 距離が近い。しかし、エンジンは上昇に必要な満足なレベルに達していない。
 一体のバクゥがメビウスをその視界に捉え襲いかかる。
 だが、それは横からタックルをぶちかましたデュエルによって防がれた。

 

「発進」

 

 メビウスが急発進し上昇する。

 

「ん、なんだ?」

 

 遠くで双眼鏡を覗いていた男も異変に気付いた。
 足付きから何かが打ち上げられている。こんな所からロケットを打ち上げるというのか?

 

「フェイザーバンク、エネルギー充填。
 同化許容エネルギーリミットへ最大出力。AI起動」
『AIが起動されました。初めまして、セブン。
 現在、システムは正常に稼働しています』

 

 コックピットに強烈なGが掛かるが、そんな中でも焦る事無くセブンはコンソールを操作する。
 機体の上昇高度は一万mまで上がる必要があるが、細工をして推力を上げたと言っても、この時代の宇宙用のエンジンの出力レベルは厳しいものがある様だ。
 高い高度が必要なのは、同化時にエンジン等の機関が一時的に停止するため、操作不能な時間をある程度滑空によって凌ぐ必要があるためだ。
 低軌道上での戦闘用に付加した翼によってある程度の滞空時間を稼げる計算だが、予定通りでないということは不確定要素があるということだ。

 

「……コンピューター、ボーグ、同化アルゴリズム同期先行プログラム、セブン1を実行せよ」
『セブン1開始します』

 

 セブンは高度が8000mを超えた段階で、予め調整したナノプローブを注入した。
 同化が始まる。

 

 地上ではデュエルが先程の襲いかかっていたバクゥを仕留めたところだった。
 スカイグラスパーがその間に帰還し、補給を終えて再び出撃する。
 空からの監視により新たな敵の数が判明した。

 

「敵の数はバクゥが5機。それにジン・オーカーか?が3機。
 イチェブが仕留めたのも含めれば9機か。こりゃまた大軍勢だぜ?」
「少佐は監視に留めて警戒してください」

 

 バジルールの言葉に了解と答えて通信が切られた。
 砂漠用機体のジン・オーカーはこちらの陣容からすれば充分に戦えるはずだが、ストライクはエネルギー残量が切れる寸前でこちらに向かっている状況では、戦えるのはデュエル一機である。援護してどうこうという話ではないが……。

 

 イチェブは戦場へ向けて突進する。
 ジャンプしながら確実に敵の攻撃を手に持ったシュベルトゲベールでなぎ払う。
 視界前方近傍にいるのは足の速いバクゥが5機。
 バクゥは先程の部隊同様に3機編隊となっている様だ。
 既に一機失った小隊の方目掛けて狙いを定める。
 キラがしていた様に、跳躍しながら獲物へ向かって突進する様に吹かして降下し止めを刺す。
 まず一機が胴を深く貫かれた。
 そのまま躊躇わず次の獲物へ向けて跳躍し様、アーマーシュナイダーを投げ込んでもう一つの小隊側のバクゥを頭部から貫き、小型ミサイルを飛ばしながら急降下し、最初の小隊の最後の機体の胴に突き刺した。

 

 小型ミサイルが残りの二機に襲いかかる。
 所々被弾した2機は果敢にもデュエルへ挟み込む様に攻撃を仕掛けるが、デュエルはそれを跳躍して躱すと、片方へ馬乗りになりアーマーシュナイダーを片手で突き刺し、主要構造部へ向けて叩き込み終えると、跳び箱を跳ぶ要領でその背から飛び降りる。
 爆発が上がり、その炎に照らされて最後の一機へ向けてゆっくりと歩く。

 

 最後のバクゥのパイロットは、夜の闇の中を炎に照らされて近づくその姿に死神のイメージを重ねていた。
 その時、その前方の死神が突如激しい衝撃音と共に煙に包まれた。
 デュエルは砲弾の直撃で左腕が吹っ飛び機体が衝撃で飛ばされたのだ

 

「!?」
『……バーサーカー諸君、好き放題にやられ放題は気に入らないんでねぇ。
 そこの君、撤収だ』
「は、はい!」

 

 ジン・オーカーに乗った彼らの隊長は、無反動砲を手に持ち狙撃した。
 その正確な射撃はデュエルを損傷させ、バクゥのパイロットに動く時間を与えたのだ。
 デュエルに乗るイチェブはエネルギー残量が残り僅かなことに気が付いた。
 砲弾の直撃で激しくPS装甲のエネルギーを消耗したのだ。
 いくら省エネルギーに努めてもバッテリーの限界に阻まれるのでは効率が悪い。
 潮時だが、敵側は無反動砲の雨を降らせる気だ。
 先程の射線上から熱源反応が多数近づくのが分かるが、左腕の損傷で思う様な出力が得られない。
 システム側で左腕へのエネルギー供給は停止したが、状況は芳しくない。

 

『援護が必要の様だな』

 

 通信が入る。識別信号には無い機体だ。
 だが、彼にはそれが友軍だと分かった。

 

「頼む」
『よろしい。了解した』

 

 機体のセンサーにはエリア内の全ての機影が確認されていた。

 

『空間グリッド、402、274052、対象を確認。命令を待機する』
「我々は個人だ。そして、我々が付属するのはヴォイジャーだ。
 対象は我々に属する付属物だ。グラップラーを用意して対象を確保しろ」
『……損傷している。テクノロジーレベルが我々の必要とするレベルに適合しない。
パージと判断する』
「駄目だ。私はヴォイジャーのユニマトリクス01の第三付属物だ。
その私から生じたお前は私の付属物だ。……命令に従え」
『……命令を確認。グラップラー、対象接近と同時に確保する』

 

 同化され豹変したメビウス・ゼロは、低軌道会戦前に組み込んだフェイザーをベースにコアを形成し、意志を持った機体としてボーグとなった。
 上空を滑空していたメビウスは可動翼が形成されて揚力を確保出来る様になり、ガンバレルは物を掴む有線式グラップラーとしての機能を獲得している。

 

「…なんだあれは?連合の新型?」

 

 上空から飛来したそれは、グラップラーを出してデュエルの肩を掴んだ。
 セブンのコックピットにはデュエルからの通信が入っていた。

 

「……セブン、助かった」
『礼には及ばない。我々は仲間だ。当然の事をしたまでだ』
「……ありがとう」
『……イチェブ?……どうした?』
「……」
『おい、イチェブ!聴こえているか!? 私の声に答えろ!イチェブ!!』

 

 セブンはメビウスに撤退命令を出す。 しかし、それをそのまま許す程に敵も甘くない。
 無反動砲が火を噴く。その砲弾は上空を飛ぶメビウスに対し、針の穴を通す程の正確な射線を描いて直撃した。

 

「犠牲は大きいが……一矢報いたかな。全軍後退!」

 

 爆風の後は何も存在せず、それを確認したZAFT側は撤退していった。

 

「……セブン……イチェブ」

 

 私は作戦室のモニターの前で暫く動く事が出来なかった。
 全てが凍り付いた瞬間だった。

 
 

 ―つづく―

 
 

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