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デカルト漂流記 in Cosmic Era 71_5話

Last-modified: 2013-04-18 (木) 19:49:45
 

先ほどから森の中で奇妙な戦闘が行われている。
三機のMSがとある敵に対して攻撃をしている。それはいい。だが、その『敵』のほうは何だというのか。
「こっのバカが!鬱陶しいんだよ、雑魚!!」
そう叫びながらオルガは胸部のビーム砲『スキュラ』をその敵に叩き込む。だが放たれたビームは一本の木を焼いただけで終わった。
その木は射線上にあったものではない。放たれる直前のスキュラの射線を塞ぐように『放り込まれて』きたものだ。
オルガ達が倒そうとしている敵、デカルトが駆るGAT-01は、先ほどから妙な行動をとっている。
近接戦を挑む訳でもなく、機関銃で数射しただけで後ろに下がっては木をアーマーシュナイダーで切り倒している。そしてそれをこちらの射撃に合わせるように放り投げてくる。
そんな行動が、オルガ達にとってはこちらを舐めているとしか捉えられず、苛立ちがどんどんエスカレートしていっている。
『…あんまし長引かせるとキツいかもよ…』
緑のMS、フォビドゥンが青いMS、カラミティに肘で小突くように接触回線でごちる。
「うるせぇシャニ!一人で先走って片腕斬り飛ばされたてめぇに言われたくねぇ!」
『うっ…』
痛い所を突かれ、シャニが沈黙する。
数分前、膠着状態の戦況を打破しようと大鎌『ニースヘグ』で斬り掛かりにいったシャニは、カウンター気味に左肘の間接部をアーマーシュナイダーで斬り落とされていた。
それに続こうとしたMA形態で突撃したクロトは、乗機のレイダーの第二の両腕とも言えるアフラマズダを両方斬り飛ばされていた。
しかし、アーマーシュナイダーにしては切れ味が良すぎる。だがクロトは心当たりがあるらしい。
『あいつ、サーベル用のバイパス使ってやがる…PS部以外狙えばビームサーベル並みに切れ味は出る筈だぜ…?』

 

アーマーシュナイダーは内部のバッテリーを動力源とする高周波ブレードの一種だ。
だが肝心バッテリー容量が少なく、単体では待機可能時間ですら1分に過ぎず攻撃状態は2回発動がやっとという有り様だ。それ故、バッテリー再チャージ用にサーベルと同規格のエネルギーバイパスが設けられている。
その為MS本体のバッテリーで通常時より7倍近い高出力ダイレクトドライブも可能なのだが、高負荷によりシュナイダー本体が数分で使用不能となる等問題も多い、両刃の剣と言える機能だ。
「…チッ…あっちの札が切れるまで待つか、先に仕掛けるか…っ!?」
あれこれ思考していると、不意に今まで肩等を狙っていた機関銃が頭部を狙い始めた。これまでより長い連射だった。
シミュレーション上でも実戦と環境は変わらない。ザフトが仕掛けたNジャマー効果下。つまりレーダーは使い物にならない。赤外線センサーも同様だ。通信も接触回線程度しか不可能。
つまり、カメラ破損は致命的な損傷だった。何発か食らったが、片目がやられた程度であまり問題はない。
「チッ…やっぱ面倒くせぇ!!クロト!シャニ!やっぱ速攻で決めっぞ!下手に遊んでたらこっちの手が読まれっかもしんねぇ!先突っ込む、畳み掛け任せんぞ!」
『速攻で瞬殺してやるぜ!!』
『…はいはい…』
応答を確認し、カラミティを疾らせる。二人共何時も通り、『あの日』以前から何も変わらない。
小さい頃からあまり落ち着きの無い二人と過ごしているオルガは、何時の間にか二人の手綱を牽く役割になっていた。本人はその気は無かったのだが…
(…何でこんなんやってんだか、俺は…。…それよりもっと…)
奴の左のブツが気になる。しかし、オルガの意識はそれよりも敵そのものに向かっていた。
彼らはこの施設に入ってから、シミュレーションで身内かCPU相手にしか強い敵とは殺り合っていない。だが、目の前に新顔の手練れがいる。それだけで、オルガのテンションは上がりに上がっていた。
(本っ当に面白れぇ…新しい奴と殺り合うのは…)
「最っ高に!面白れぇよなぁッ!!!」
オルガの殺気に応えるように、カラミティが一気に加速した。

 

「…やっと突撃か、遅いんだよガキ共が!」
呟きながら、消耗したアーマーシュナイダーを切り倒した木に突き刺す。木は42本目、アーマーシュナイダーは6本目だ。
さっきから左腕は攻撃していない。マウント機構を持たない『ジョーカー』は離す訳にはいかない。
だがそれもお終いだ、一気に叩き潰すお膳立ては全て済んだ。
先ほどから切り倒して投げていた木は、様子見の為の身代わりだった。
おかげで反応速度、射撃の癖、挙動、それに、連中の弱み。全て脳量子波無しで把握出来た。流石に常時脳量子波を使うのは辛い部分がある。
あの三人の技量は、そこまで大したものではない。ただ、連携が異様なまでに綿密なだけだ。
これまでの攻めは主にカラミティが先陣を切ってのものが主であり、それが脅威だった。
カラミティが隙を作り、フォビドゥンが一撃を浴びせ、レイダーが畳み掛ける。
これらの連携が全て成功すると彼らはかなりの脅威となり得る。一方、一つでも欠けると隙が多く出来てしまうのが彼らの弱みだった。
「…PS装甲…どれだけの物か見せて貰う!」
左トリガーに指を掛ける。引くのは只の一度。それで勝ち負けが決まる。
01を走らせる。ブースターも過負荷運転。見る見るうちに三機が近づいて来る。
カラミティの各砲が光を帯びる。あちらも一発で決める気らしい。
「いい度胸だ。…だが!」
アーマーシュナイダーごと、木を投げつける。相手も反応し、木の葉越しに光が広がっていく。
全ては計画通り、あとは叩き込むだけ。
01を屈ませる、シールドも掲げた状態でパージ。
ほぼ同時に、ビームが頭上を通り過ぎていった。木は一瞬で燃え尽き、シールドは見る見るうちに溶け、ビームの末端が装甲を焼いていく。
だが、致命傷ではない。そして目標は有効範囲直前。
大きく左腕を引く。まるでストレートパンチだ。反応良くカラミティがシールドを掲げるが、もう遅い。
「貰ったァッ!!」
左腕を勢い良く伸ばす。
左腕に保持された『それ』の先端がカラミティのシールドに接触した瞬間、轟音と閃光が周りを一瞬で包み込んだ。

 

―YOU DIED―
轟音と閃光が一瞬で途絶えたと思った矢先、こんな表示がオルガの目の前に出た。
「…は…?…な…何だ?…何なんだよ?…何なんだよこれは!?」
何が起こったのか判らなかった。いきなり過ぎて理解すら出来なかった。
だが、モニターの片隅に移っているものが、何が起こったのかを示していた。
シールド、左腕、胴体にかけて、つまり『それ』の一直線上に位置していた部分全てが悉く赤くなっている警告表示が。

 
 

「…こんなものか…」
『それ』を放った張本人は、既にフォビドゥンにトドメを刺そうとしていた。
デカルトが造ったモノ、それは単純に言えば、HEAT弾を連続作動させる『杭』のようなものだった。
その昔、第二次世界大戦の最中に、大英帝国が『PIAT』という対戦車兵器を開発した。
アメリカの『バズーカ』やドイツの『パンツァーファウスト』のような火薬で打ち出す対戦車兵器ではなく、バネの力でHEAT弾を打ち出す兵器だ。
デカルトが造ったものは、HEAT弾を打ち出すのではなく、HEAT弾そのものを装置に付けたまま叩き付けその場で作動させるもの。
それも単発式ではなく、HEAT弾作動の反動で作動部を後退させ同時に次弾を装填、さらにバネで作動部を跳ね返し、また相手に叩き付ける、連発式のものだった。
デカルトが造ったHEAT弾はかなり大ざっぱに造った間に合わせのもので、口径あたりの威力は正規品と比べれば霞程度のものだ。
だが、その不足を187cmという大口径と14発フルオート連発という数で強引に補った結果、シールド、PS装甲、内装を悉く貫通した上に胴体そのものを吹き飛ばすという大威力を実現することになった。
但し、こちらも無傷ではない。間接全てをロックしていた左腕は完全に粉砕され、頭部も左が完全に機能を失っていた。胸部も左側が黄色に染まっている。
だがデカルトにとって不満なのはそこではない。
「…大層な御託を並べておいてこの程度で突貫とはな…」
要は、PS装甲が予想より脆かったという所に不満を抱いているらしい。自分で壊しておいてこれである。無茶苦茶としかいいようがない。
尤も、残り二人に対する心理的ダメージは想像を絶するものがあったようで、ピクリとも動かない。四肢をアーマーシュナイダーで切り刻まれてさえ。
「ゲームは終わりだ。次は楽しい説教の時間が待ってるぞ、良かったな。3馬鹿」
接触回線でイヤミを吐き捨てながら、レイダーのコックピットの装甲の隙間に、限界出力のアーマーシュナイダーをゆっくり突き刺してやった。

 
 

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