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デカルト漂流記 in Cosmic Era 71_9話

Last-modified: 2013-04-18 (木) 19:58:05
 

『後ろだ、ライトニングボルト1!エスコートする!』
『済まない、ドゥリンダナ2』
『こちらライトニング2、敵機撃墜。ディンタイプ残り3!』
『ライトニングゼロより全機、突撃型の到着前にこいつらを片付けろ!』
―戦闘開始から12秒、MS隊は既に敵の第一陣を畳み掛けていた。
ディンはこちらを見るなり一直線に突っ込んできた。どうやら自分達が目標だったらしい。おかげでこちらの全火力を投射することが出来、初撃で二機を撃墜出来た。
残存した機体は直後に散開したが、同時に上げられた対空砲火にさらに二機が墜ちた。チェスター中将は全て先読みしていたらしく、「バカめ」と微笑を浮かべている。
「…いい連携だ、艦長!…っと!」
水面ギリギリの所を飛行してきたらしい一機が急速変形しつつ飛び蹴りを浴びせてきた。直後に散弾銃、胸部ロケットのコンビネーション。
「…ふっ…!」
驚きつつもシールドで蹴りと散弾を防ぎ、ロケットをバルカンで迎撃しつつビームライフルで仕返ししてやる。
ディンは慌てて回避するものの、二発目が右腕へ直撃、直撃に上からもう一本のビームが胴体に直撃し爆散する。
『スコア一つ貰ったぞ、デカルト』
着地音とともにハイネマンの声が飛び込んできた。敵機がデカルトに気を取られた隙を突きブースターで跳躍、トップアタックをかけたらしい。
「横取りされるのは癪だが…生憎こっちがスコア一つ抜いてるぞ、今の分はな」
『そうかい。…遠方に突撃型を視認、全機スタンバイ!』
見たところ、対艦ミサイルのような外観だ。だが、MS以上に大きい。あれを食らえばかなりの損害の筈だ。
「随分数が多いな…Nジャマーで誘導兵器はいかれたんじゃないのか?」
『あいつは一種のミステルだ。有人の親機が混ざってて、他のを有線コントロールしてる。親機を先にやれ!』
「了解」
狙撃用スコープを引き出し、狙いを絞る。相対速度はM4、猶予は数十秒しかない。

 

(…どれだ…指揮機…!)
どうもさっきからは脳量子波の調子が悪い。変なノイズが交じっていて人の気配を感じ取れない。
狙いに迷っている間にハイネマンが先に射撃していた。目標に命中すると、付近の数機の動きが急におかしくなり明後日の方向に飛んでいく。どうやら撃墜したのは有人機らしい。
『何してる大尉!?撃て!時間が無い!!』
「くっ…!!」
半ばやけくそに、適当な目標にライフルを三点バーストで撃つ。
だが、ビームは目標の少しばかり上を通り過ぎていった。それでもビームの飛沫がケーブルを灼いたらしく、一機が海面に墜ちていく。
「…外した!?何故?」
周辺の熱対流にライフルの設定は合わせある。腕部に異常はない。照準も正確だった。ならば…
「…俺のミスか、くそっ!!」
早い話、OS設定時のデカルトのヒューマンエラーだった。
デカルトの前の乗機、MAガデラーザ。その機体は武装の全てが固定兵装だ。オプションは幾つかあるが、「腕で保持する」という携行方式は採っていない。腕のGNバルカンも同軸装備だ。
デカルトのミスは、ライフルの銃口の軸と腕の軸の差を忘れていた事だった。近距離ではさして問題にならない誤差だが、狙撃距離となればそれはかなりの誤差となる。その結果が先程の成績だった。
幸い先程の射撃が牽制になったようで、殆どの機体が機首を上げて上昇に移っていく。だが…
『3発来るぞ!撃ち落とせ!!』
3発の突撃型が突っ込んで来る。間違いなく狙いはUS。
ディンを退けた僚機も戦列に加わり、全力で迎撃に入る。既に低空突入態勢に入られており、僚艦の艦砲による援護は期待できない。自分達でやるしかない。
『落ちろ!落ちろぉ!!』
『来るな…来るな!来るなぁ!!』
一機、また一機落とした。だが、最後の一機が落とせない。
既に距離は10kmを切っている。もう撃墜はほぼ無理だった。
ふと、ドゥリンダナ2が走り出した。すぐ前は海面。すぐ突撃型も突っ込んで来る。
『やめろドゥリンダナ2!アベーレ!!』
ドゥリンダナ1が制止するが、間に合わない。シールドを構え、スラスターを全開にし、USと突撃型の間に割って入る。
直後、突撃型がドゥリンダナ2に突っ込み、爆ぜた。

 

『応答しろドゥリンダナ2!アベーレ!!応答だ!アベーレ少尉!!アベーレェ!!』
スピーカーを通じてドゥリンダナ1の悲痛な叫びが響く。
この規模の爆発とスピードだ、機体が無事だったとしてもパイロットは無事では済まないだろう。そして、この状況に至った遠因は…
「…くそぉっ!!」
コンソールを渾身の力でもって叩く。コンソールに変化は無く、拳に痛みだけが残った。
(あの時…俺が外しさえしなければっ…!!)
自分を殴り倒したい気持ちになる。僚機にも動揺が広がっていた。
だが、状況はそれを許さなかった。
『ライトニングゼロより全機、切り替えろ!!ドゥリンダナ2が死んだと決まった訳ではない!!距離1200に敵第3陣!迎撃だ!!それを成し遂げてから好きに泣け!!俺が許可する!!』
ハイネマンの叱咤が各機のスピーカーを通して全員の耳を叩く。その声にいつもの彼らしさは無かったが、そんな事を気にさせないくらいの威厳はあった。
そうだ、自分達に与えられた任務。それは敵の迎撃。そして、敵は目の前にいる。
「…こ…の…野郎があぁぁ!!」
一瞬置いて、デュエルのスラスターのスロットルを一杯に押し込む。それに応え、デュエルが目の前の敵、MS支援機・グゥルに乗ったMS・ジン高機動型に向かって急加速する。
ジンは動かないこちらを見て油断していたようで、狙いも定まらない機関銃でこちらを撃ってきた。
「動きが…甘いんだよぉ!!」
左腕にシールドをマウントしたままビームサーベルを抜き、すれ違いざまにジンの右腕をライフル諸共斬り飛ばす。
裏に回ったこちらに重斬刀を振ってくるが、もう遅い。それを振り切る前にジンの胴体は返したビームサーベルで凪払われていた。
「…一つ!」
凪払った胴体を蹴り落とし、後ろから斬り掛かろうとしている次の獲物をシールドで抑えこみスラスターを切る。
全体重を掛けてグゥル諸共体勢を崩し、上下逆さまになった瞬間にスラスター点火。両膝を斬り伏せ、ジンを海面に叩き落とす。その反動でUSに飛び移り、振り向きざまにライフルでもう一機を撃ち抜いた。

 

『踏み込み過ぎだドゥリンダナ1!戻れ!!』
ふと見ると、ドゥリンダナ1がフォルツァートユニットをパージして敵機に斬り掛かっていた。
だがギリギリの所で重斬刀で防がれ、鍔迫り合いの状況に陥っている。スラスターも全開にし過ぎたか、赤熱化して異常燃焼の兆しすら見え始めている。背後は隙だらけ、しかも身に纏っていた装甲はパージしている。非常に危険な状態だ。
ライフルで援護してやろうとしたが、警告音と共に射撃不能の文字がモニターに表示される。
「…エネルギーエンプティ?もうエネルギー切れだと!?」
機体本体バッテリーの容量を確認する。グリーンゾーン。ということは…
「…内部電源式か…くそっ!!」
今デカルトのデュエルが装備しているのは初期試作品の一つだ。
このライフルは開発初期の少容量バッテリー搭載機の装備を想定していた品で、銃本体の大型化を代償にサブバッテリーを搭載している。しかし、本体からの電源供給を想定していなかった為継戦能力に問題を持っていた。
ライフルを投げ捨てサーベルでの格闘戦に移行しようとするが、直後に背後から衝撃が走った。
「…くっ!…直撃…?メインブースターがイカれただと!?」
どうやら後ろから狙われたらしい。PS装甲を持った2号機なら耐えられたかも知れないが、この1号機には致命的だった。
『くっ!駄目だ!雷電1番、支援不能!』
『ライトニング2、ネガティヴ!』
『デカルト!こっちも無理だ!3機に絡まれた!』
機外スピーカーで各機が状況を報告する。全機ネガティヴ。
「…くっ…やるしかないか!」
サーベルを逆手に持ち替える。投擲だ。今ドゥリンダナ1を支援出来る方法はこれしかない。隙だらけのドゥリンダナ1を見つけたのか、ジンが一機背後から近づいていく。もう猶予は無い。
「…こ…っのぉっ!!」
狙いを定めるのも程ほどに、サーベルを力一杯に投擲する。回転をつけられたサーベルは、ドゥリンダナ1の左腕を軽く掠りながらジンの右腕を正確に切り裂いていった。
抗う力を失ったジンを斬り伏せ、ドゥリンダナ1が背後から迫るジンに対峙する。
お互いに斬撃兵装、これならいける。そう思い、他の目標に目を配る。だが…

 

『くっ…こいつ、まだ動いて…!!』
斬り伏せた筈のジンが、まだ動いていた。切り口からは、炎を上げるコックピットが見える。ぎこちない動きではあったが、その腕は寸分の狂いもなくドゥリンダナ1の右腕を捕らえていた。
『…は…離せ!離せよぉ!!』
ドゥリンダナ1が必死に振り解こうとするが、解けない。相手は文字通り「必死の」行動だ、腕を掴んで離さない。その間にも、重斬刀を構えたジンはぐんぐんスピードを上げていく。
「…駄目だ!間に合わん…!」
デカルトは二本目のサーベルを抜こうとするが、他のジンからの射撃が激しく思うようにいかない。その間にもジンはドゥリンダナ1に近づいていく。
そして、その刃がドゥリンダナ1を捉えようとした時―
『…リ…ナ2…アクティブ…』
デカルトのすぐ下から機関銃の閃光が現れ、そのジンを撃ち抜いた。それと同時にドゥリンダナ1が腕を解き放ち、背後のジンに今度こそトドメを刺す。
『…こ…らドゥリン…ナ2、アベーレ少尉。まだ生きてます』
先程突撃型が突入しようとした地点に開いた穴。そこから、ボロボロになりながらも右腕にライフルを携えたドゥリンダナがヨロヨロと現れた。左肩に描かれたエンブレムは確かにドゥリンダナ2のものだ。
『…っ!このっ馬鹿者が!応答は即座にしろドゥリンダナ2!心配させやがって!!』
『済みませんドゥリンダナ1、ちょっと気を失ってまして。ですが、自分は無事です。フォルツァートが無ければ即死でしたけどね…』
軽口を叩きながら、ドゥリンダナ1を援護する。お陰で、ドゥリンダナ1はスラスターの爆発寸前の所でUSに戻ることが出来た。
突如、視界が明るくなる。信号弾だ、敵の隊長機らしきジンとは違うタイプの機体が、ジェスチャーとモノアイの発光を合わせて周りに指示を出している。
それから間もなく、周囲の敵機が撤退を始めた。何故かは判らないが、これ以上は無理と判断したらしい。

 

『ご苦労様だった。諸君らの働きもあって、USの被害は最小限に留められた。』
ドゥリンダナ2を甲板上に引き上げてすぐ、艦長から通信が入った。どうやら、流れ弾以外の被害はドゥリンダナ2が出てきた穴だけらしい。浸水は9500トン程あったらしいが…
『恐縮です、司令。僚艦の被害は?』
『駆逐艦涼月が艦首大破、巡洋艦アトランタが左舷損傷、他数隻が被弾といった所だ。幸いどの艦も死者は確認されていない。ともかく、御苦労だった』
短い慰労の言葉と共に、通信が切られた。僚艦の被害はそれほどではないらしい。
「…40機以上のMS相手にあれだけの被害で抑えるのか…すごい艦隊だな…」
『今回は俺達が目標だったみたいだ。部隊の大半がこっちに向かったせいであっちは特攻紛いの状態だったんだろう。』
確かに、この数の艦隊にあの数で挑むのは自殺行為に近い。それでも、この結果は奇跡と呼べるものだ。
『…ドゥリンダナ2、本当に貴様何でもないのか?』
ドゥリンダナ1がドゥリンダナ2を小突く。何やら彼に良い予定があるらしい。
『本当に何もありませんよ、俺。鞭打ちとかはあるでしょうけど、機体のお陰で助かりました!』
「デュエルよりドゥリンダナ2。お前、何か予定でもあるのか?何か嬉しそうだが…」
『へへへ…俺、帰ったらプロポーズするんですよ!彼女が好きな菊の花束も買ってあるんです!さっきはマジ死ぬかと思いましたけど、これでもう心配はありませんよ!』
「…先にこの話をしていたら間違いなく死んでいただろうな…」
こんな話をしていると、何だかとても嬉しい気分になってくる。自分の事でもないのに…
しかし、悪くない。こんな事があっても、たまにはいいだろう。日常の中の笑いだけでなく、一生に一度のイベントを共に楽しむのも…
(あいつらと…こんな体験もしてみたかったな…)
ふと、最後まで打ち解けられなかった仲間達のことを思い出す。自分が未熟だったばかりに散らせてしまった仲間達を―

 

突如、CICからの切羽詰まった通信が耳を叩いた。
『緊急通達!緊急通達!MS隊全機に通達!至急、上空警戒を厳にせよ!繰り返す!MS隊全機に通達!至急、上空警戒を厳にせよ!大至急!!』
『こちらライトニングゼロ、上空に敵機は見当たらない。どういうことか?』
『数分前、上空軌道上を警護していた連合宇宙軍第4機動艦隊とのレーザービーコン常設通信が途絶えた!ザフトの奇襲作戦とも考えられる!』
「…レーザー発振器の故障等ではないのか?」
『艦隊全124隻全てとのビーコン相交信を試みたが、その全艦と通信が途絶している!これは只事ではない!全機、警戒態勢を維持!』
そう言って、通信が切れた。雑音のように人の声が混ざっている事から察するに、CICも相当混乱しているようだ。
「……何だ…この感じは…」
デカルトは、微かに違和感を感じていた。
気配だ。それもただ者の気配ではない。
狂気、殺意、興奮、快楽、背徳、憎悪、愛情、興味…様々な感情が混ざった、恐ろしく不気味な気配。こんなものは感じた事は無い。
『何か感じるのか?大尉』
ハイネマンが、青い顔をしてそうな声で、語りかけてくる。
その声に答えるのも、無視するのも、今の気配の下では難しかった。
「…何かが…来る…!!」
そう呟き、デュエルに直上を見上げさせる。

 

――1分後―それは―来た。

 

『何だありゃ?』『MS…ではないぞ?』『船…にしては小さいな…』『…な…なんか…気味悪い…な…』
『…あれ…は…!』
「…宇宙軍の…メビウス?…赤い…いや、あれは―」
そう。あれはメビウス。宇宙軍の制式MA。それによく似た機体。

 

―だが―おかしい。

 

メビウスは宇宙用の機体だ。大気圏突入能力も持たない。第一―

 

―あんな赤い―血のように赤い機体は―存在しない。

 

その姿が望遠モードではっきり見えるようになった時、それは動いた。

 

先端のリニアカノンである筈のモノが、ブースターである筈のモノが、胴体が、スタビライザーが、その姿を刻一刻と変えていく。
『―あの機体…まさか…まさか!?』
あるものは脚に、あるものは腕に、あるものはサイドアーマーに、あるものはバックパックに、そして―頭に。
―そうして現れた機体は
―血のような赤と宇宙の深淵のような黒の
―悪魔のように禍々しいヒトから離れた体躯を持ち
―その心臓には狂気を
―その二重重ねの双眸には炎のような光を宿す
―悪魔。

 

「…ガン…ダム…!!」

 
 

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