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プロローグ〜我が人生に悔いあり!〜

Last-modified: 2011-12-04 (日) 01:00:51

「アスカ隊、任務を終え帰還しました!」
「おう、ご苦労さん」
テロリストの掃討任務を終えた俺は、バルトフェルド副指令に挨拶した。
彼は40台の半ばの年齢だが、そうと感じさせない気さくさと、同時に年齢以上の重厚さを併せ持っている。
俺はこの人に促されて、今回の戦闘の詳細の説明を開始した。
副指令は時々質問を挟みながら聞き終えると、自ら入れたコーヒーを振舞ってくれる。
そして満足そうに俺の事を褒めてくれた。
「いや、大したもんだ。あの辺りのテロリストには手を焼いていたが、あっさりと片付けるとはな。
 正直もう少し手こずるかと思っていた。流石ネオザフト最強を謳われるアスカ隊だな」
「そんな。ヤマト司令に比べれば」
「アイツは、そう易々と動ける立場では無い。それにこういった任務を安心して任せられるのはアイツ
 より、はお前のとことホーク隊……スマン」
「……いえ」
彼女の名前が出たことにより、場を気まずい雰囲気が流れた。
ホーク隊隊長ルナマリア・ホーク、
戸籍の上ではルナマリア・アスカは、イザーク・ジュールが後方任務に
ディアッカ・エルスマンがネオザフトのアカデミー校長に就任して以来、
俺のアスカ隊に次ぐ功績を誇る実戦部隊の隊長になっていた。
「なあ、思い切って聞くが、よりを戻そうとは思わんのか?」
副指令は気まずい沈黙を破って、切り込んでくる。しかし。
「戻すも何も、俺には何で彼女が出て行ったか……」
「まだ原因が分からんのか?」
俺は首を縦に振ると、3年前に出て行った彼女との思い出を振り返る。
レクイエムの攻防戦に敗れた後、ラクス・クラインが新たなプラントの支配者になった。
俺は敵対者の上、当事のザフト軍のエースパイロット。
はっきり言って彼女の側に付いて戦った兵士を数えるのもバカらしいほど殺害していた。
それどころか俺は彼女の恋人であるキラ・ヤマトを後一歩のところで殺していたのだ。
戦場でのこととは言え関係無かった。戦後の裁判など戦勝国の公開リンチみたいなものだ。
だから俺は処刑されるのを覚悟していた。
しかし、現実は処刑どころか優秀な戦士として迎えられ優遇された。
キラさんには友人として扱ってもらい、すぐに一隊を任せられる事になった。
正直、ラクス・クラインよりギルバート・デュランダルを支持する俺としては複雑な気持だったが、
付き合っていた彼女、ルナが妊娠した事で、そんな事を考える事も無くなっていた。
コーディネーター同士の恋人で子供が出来るのは奇跡に近い。
これはキラさんでも成していない偉業で、多くの人から祝福と同等の嫉妬を浴びた。
そして俺達は結婚し、やがてルナは女の子を出産した。
コーディネーター同士の子供は親に似ていないケースがある。
俺と両親もそうだったし、そして俺達の子供もそうだった。
産まれた娘は淡い金髪をしていた。
だから俺は娘に『ステラ』と名付けた。
それからは幸せな日々が続いた。
外ではネオザフト屈指の軍人と称えられ、内では温かい家庭の父親。
最初の頃は俺なんかが、こんなに幸せで良いのかと疑問にも感じたが、ステラが成長するにつれて、
今の幸せに浸っていった。
それからの俺は、家に帰ると
ステラにただいまのキスをして、
ステラと風呂に入り、
ステラと添い寝して、
ステラにいってらっしゃいのキスをしてもらって任務に向かう。
そんな日々を過していた。
そして月日は流れていき、そろそろ胸が膨らみだす頃かなと楽しみにしていた矢先だった。
『貴方の娘を見る目は普通じゃ無い!』
そんな謎の言葉を残して、ルナはステラを連れて家出した。
訳が分からない俺は、ルナに何とか戻ってくるように頼んだが聞き入れてもらえず。
諦めかけた俺は最後の頼みをした。
『なあ、ルナはいいけど、ステラは返してくれない?』
返事は無言でビンタだった。
怒りと悲しみが極限まで達したかのような表情に俺は恐れ、それ以来彼女とたまたま軍で会っても無視されるに至っている。
俺は溜息を吐きつつ副指令に質問した。
「何がいけなかったんでしょう?」
「気付けよ」
「え?」
「いや……なんでもない」
何故か副指令は溜息を吐いて頭を抱えていた。
しばらくすると副指令は顔を上げ、いくつかの伝達事項を伝えてきた。
「……まあ、要するにしばらくは何も無い。休暇だと思え」
「はい。それでは部隊に戻り、部下に伝え解散します」
「うむ」
そして、お互いに立ち上がり、右腕を斜め45度に真っ直ぐ伸ばし……
「ラクス様のために!」
「ラクス様のために!」
お互いにネオザフト式の敬礼をすると、俺は副指令の元を辞した。
……それにしても、副指令の考えたこの敬礼ってどうよ?

プロローグ~~我が人生に悔いあり!

俺は自分の部隊に指示を伝えると、街へ出るべく軍内部の廊下を歩いていた。
1人でいると色んなことを考えてしまう。
俺もすでに30歳を過ぎた。俺は今何をしてるんだろう。
戦って帰ってきても誰も出迎えてくれる人はいない。
そんな空しい生活。そう言えば昔言われたっけ?
『お前の望みはそんなものなのか?』
あの時は鬱陶しいだけだったが、今ならはっきりと言える。
『違う。俺の望みは今みたいな生活じゃない』
何処で間違えたんだろうか……そう考えると、視界に見知った人物が入ってきた。
「キラさん……じゃ無く、ヤマト司令」
「ん?……シン」
死んだ魚みたいな目で俺を見てくる人物。
ネオザフト軍総司令官キラ・ヤマトだった。
俺は、その表情で察した。
彼がこれから戦いに赴く事に。
すでに時間は殆どの公務が終わり、後は夜勤の連中の警戒任務等の時間だ。
しかし彼の戦いは終わらない。
つーか、ぶっちゃげ司令と言っても、この人昼間は何もやってないし。
「ハハハ……久しぶりだね」
「はい、先程戻ったところです」
「そう、無事に戻ってこれて良かった……それと堅苦しい言い方は必要無いよ」
「でも、ここは軍内ですから」
目の下にクマを作り、死にそうな目で俺を気遣ってくれる優しさに感謝しながら、彼のこれからを確認
する。
「あの……これから?」
「……君は良いよね。どうせ、これから若い女の子を引っ掛けてよろしくするんだろうね。その点、僕
 なんか…!」
「ダメだ!」
俺は咄嗟にキラさんの口を片手で塞ぎ、その先を言わせなかった。
万が一聞かれでもしたら、キラさんはただでは済まないだろう。
「ゴ、ゴメン……それと有難う」
「気にしないでいいさ。俺に出来るのはこれくらいしか……」
別にラクスさんは自分の悪口を言われたからって、その人物をどうにかするほど狭量な人では無い。
キラさんだけが色んな意味で別格だった。良くも悪くも愛されている。
まあ、俺だったらゴメンだが。
「それじゃ……行ってくるよ。ラクスを待たせると不味いし」
三十路を過ぎ、ますますお盛んな女帝の相手を務めるため、ザフト最強の戦士は売られた小牛のように
弱い足取りで歩み去っていった。

俺はキラさんの姿が見えなくなるまで見送ると、再び歩き始めた。
そして、歩きながら今夜の食事を何処でするかを考え始める。
手っ取り早いのは軍の内部にある食堂だが、俺みたいな上の立場に立つ者が行くと、他の連中が気楽に食事が出来なくなってしまうのが欠点だ。
あそこは給料の安い若い軍人にこそ優先権があるべきだろう。
という訳で、俺は適当な店を探そうと街を彷徨い始めた。
給料はそこそこ貰ってるから別にケチるつもりは無いが、最大の問題は一人では入れる店が限られてしまう事だった。
「……結局ここか」
そして、散々迷った挙句辿り着いたのは、普段から愛用している店だった。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
実は後から連れが来るなんて見栄を張りたい気持を我慢して正直に頷く。
「それではカウンターになりますが、よろしいでしょうか?」
席に向かう途中、4人グループの若者がいた。
雰囲気から軍人だと察し、右手をポケットから出し、彼等の動きに備える。
「……あ!」
そして思ったとおり、1人が俺に気付き、周りの仲間に伝え立ち上がろうとするが、俺は素早く右手を
前に差し出す。
いわゆる「マテ!」のポーズだ。
「ラク……」
そして、ネオザフト式の敬礼をする前に止める事に成功する。
「いい、プライベートの時間だ」
「はい!」
これで、何とか周りの注目を浴びるのを防げた。やっぱり、あの敬礼は何とかしてほしい。
そして、カウンター席に到着する。
カウンターには長い黒髪の女性の1人客だけで、他には居なかった。
適当な席を決め、座ろうと椅子を引いた時、隣に座る女性が俺の顔に気付いた。
「え!?……ラクス様のために!」
「ラクス様のために!……」
迂闊だった。後ろから見た限りでは全然軍人らしくなかったんだが……
「ん? 君は……」
「ハイ! リセリア・ストーンです!」
通りで軍人らしく無いはずだ。
表情に幼さを残す少女は先日アカデミーを卒業したばかりで、先の戦闘の前に俺の隊に配属されたばかりの新米兵士だった。
「まあ、座ってくれないか。周りが注目している」
「え? も、申し訳ありません!」
彼女は周囲の視線に気付くと慌てて席に着く。
その緊張した初々しい姿に俺は自然に笑みが零れた。
やはり若い子はいい。

こうして出会った以上、無視するわけにもいかないので彼女と会話する事にする。
「初めての実戦がアレでは、大変だったろう?」
「いえ! そんな事は……と、言いたいところですが、付いて行くので精一杯で、一機も……」
今回の任務は、副指令が言ったようにハードな相手だった。
正直、そんな場所にルーキーを連れて行く事自体に抵抗を感じたくらいだ。
しかし、彼女は活躍できなかった事を恥じてる様子だった。
彼女は俺の部隊に配属されるだけあって、赤服、所謂エリートだった。
おそらくプライドもあったはず。
だからこそ、こんな場所で1人食事を突っつきながら落ち込んでいるのだろう。
ここは先輩として慰めることにする。
「気にする事は無い。初陣では何より生き残る事が大切だ。こう言う俺だって初陣では一機も落とせは
 しなかった」
「隊長がですか!?」
「ああ、やっと落せたのは戦場に出て3回目だったかな」
嘘は吐いていないはずだ。何と言っても初陣の相手がステラ(娘じゃ無い方な)達だったからな。
思えばよく生きて戻れたもんだ。
その後、彼女との会話は弾み、やがて家庭の話しになっていった。
彼女の父親はザフトの軍人だったそうで、彼女が生まれて間も無く、レクイエム攻防戦の時に戦死したらしい。
どちらに付いたかを言わなかった事から、多分俺と同様デュランダル議長の元で戦ったのだろう。
もしラクス側だったら、もっと誇らしげに語るのが今のザフトだった。
まあ、それはある意味正しい姿なのだろう。
ラクス・クラインの治世が安定している証なのだから。
しかし、やりきれない気持になる事もある。特にこんな出会いをしたら。
「すまなかったな。もう少しあの時の俺に力があれば、君のお父さんを死なせずに済んだのかもしれない」
「そ、そんな! それより隊長の家族は…も、申し訳ありません!」
慌てて言い繕う彼女の態度に苦笑してしまう。
そう。俺の家庭の話などザフトの軍人は殆ど知っている。
「気にする事は無い。戦う事しか知らんから女房にも逃げられる。それが俺という男さ」
「隊長……」
「俺みたいな人間は世の中に居てはいけないのかもしれんな」
「そ、そんな事ありません!」
「いや、そうなんだろうさ。だから君は俺みたいにはならないでほしい」
決まった。
元々ルナに逃げられた後、キラさんが呆れながら呟いた台詞。
『戦争の事しか考えないから女心が……て、いうより一般常識が欠けてるんだよ。君みたいな人間は
 世間が許さないと思うよ』
それを改変しただけなんだが、何故か格好良くなる。
ごめんキラさん。
キラさんは今頃、女帝のお相手で大変だろうけど、俺は上手く若い娘さんをゲット出来そうです。

ラクスが、ようやく満足して眠った事を確認すると、僕は力尽きて横になった。
ラクスは外では公明正大な政治家として評価されているけど、僕に対しては……
バルトフェルドさんは、それがお前の仕事だと言うけどさ、僕の存在って何なんだろう?
疲れた……もう疲れたよ……何でこんな事になったんだろう? 
おかしいよ。今頃シンは若い女の子と上手くやってるはずだ。
何故か彼はルナマリアに逃げられてから逆に女の子が寄ってくるようになった。
シンはロリコンなのに何で誰も気付かないんだろう? 
いっそ、これ以上若い女の子が犠牲にならない内に、ルナマリアに逃げられた理由をばらしてしまった方が良いんじゃないかな。
でもルナマリア本人が口止めしてるし……正式に離婚もしてないとこを見ると未練があるのかな?
優しい奥さんに未練を持たれて、さらに若い女の子と上手くやってて……
「ズルイや……代わりたいよ」
僕だってたまには若い女の子とイチャイチャしたいよ。
まあ、シンほどストライクゾーンが低めに広くは無いけど……
実際、僕たちの歳でアカデミーを卒業したばかりの15歳程度の女の子を喰うのは不味くない? 
と、そこまで考えたときラクスが動き出す気配がした。
「ん~~~♪」
「ひっ!…………ふぅ~」
良かった……ただの寝返りだった。
「……もうヤダ」
何で隣で寝てる女の子の動きにビクビクしなきゃいけないのさ!
僕は何処で間違ったんだろう? 人生のやり直しが出来ないのは分かってるけど……
もう一度やり直しがしたいよ。
もしくはシンと入れ替わりたい……
「神様……助けて……」
そう呟いて僕は目蓋を閉じ、眠りに付いた。

あの後、アルコールがメインの店に場所を代え、彼女との会話を楽しんだ。
やがて酔った彼女は心の中に溜め込んでいたものを少しずつ吐き出していった。
物心が付く前に父親を失なった少女は父親の事を知りたがるが、得られる回答は母から聞かされる優しく勇敢だった立派な男性と、母以外の人が語るラクス様に逆らった愚か者。
よって死んで当然の人物という正反対の回答。
「お父さん……」
リセリアが俺の腕を枕に寝言を呟く。彼女は父親を求めていた。
酔った彼女は俺に父親を重ねて甘えてきた。
行為の最中にお父さんと呼ばれるのが、コレほど興奮するとは……癖になりそうで怖い。
まあ、それは置いといて、やはり今の状況にやりきれない気持が強くなる。
「まるで傷の舐めあいだな……俺が弱かった報いか?」
もし、あの時の俺にキラさん程の力があれば、彼女の父親は死なずに済んだかもしれない。
俺は、あの人の絶対的な力に憧れる。そうすれば大切なものを失わずに済んだと今でも考える。
そして、俺は彼女の寝顔に娘の姿を重ねた。
今年12歳を過ぎたばかりで、まだ甘えたい盛りだろう。
ステラは俺が居なくて寂しい思いをしていないだろうか?
「ステラ……」
そう呟いた。
それがどちらのステラなのか自分でも判断が付かなかったが、どちらも会えない事実には変わりなかった。
こうしていると、俺は今まで何をしてきたのかと考えてしまう。
未だに争いは無くならない。
今の俺はラクス・クラインを守る兵士だが、本音では未だにデュランダル議長を尊敬していた。
ラクスさんのやり方では、どうしても手緩いのだ。
大きな戦争は無くなったが、テロの規模は拡大している。
先日のブルーコスモスのテロなどコロニーが丸ごと無くなった。
その前のパトリック信者は、事前に防げたとは言え、地球に隕石を落そうと目論んでいた。
ギルバート・デュランダルが最後に何故ああも急いだのか未だに分からないが、彼なら今よりマシな
世界を築いていたのではないかと真剣に考えてしまう。
「あの時に今の力があれば……」
昔の俺は弱かった。何も考えずに闇雲に暴れていただけだが、今なら少しは成長している。
今の俺ならマユもステラも、それ以外の大切な人も守れたはずだ。
「あるいはキラさんみたいな……」
そう、それ以上の力の持ち主。
そんなありえない事を考えながら俺は眠りに付いた。
せめて、夢の中では大切な人たちに出会えるように願いながら。

「お兄ちゃん朝だよ。もう起きてってば!」
僕の身体を揺さぶり起こそうとする声…………お兄ちゃん? 
確かに若い女の子と仲良くしたいとか思ってたけどさ、よりによって兄妹プレイ?
「ほら、早く起きるの!」
お腹の上に圧迫感を感じる。どうやら腹の上に乗っかったようだ。
そして何より、この甘ったるい声。 
ちょっと勘弁してよラクス。目尻にシワのある三十路の女が出す声じゃ無いって! 
この声から察するに格好も若作りしているはず、多分小学生くらいかな?…………
嫌だ! 絶対に見たくない! 
ランドセルを背負ったラクスを想像して、鳥肌が立ってしまった。
「ちょっと、お兄ちゃん! ぜったい起きてるでしょ!」
僕が目を開けまいと力を入れてるのが分かったらしく、ラクスは更に大声を出し、身体を揺さぶる。
いや、声は本当に可愛いんだよ。
でもね世の中には見ない方がいいものってあるよね? 
朝から絞られるのは我慢するからさ、お願いだから目を瞑ったまましようよ。
「もう、こうなったら!」
そう宣言すると、なんと指で強引に僕の目を開こうとしてる。
ちょっ! 痛い! 痛いってば!
さすがに抵抗も空しく僕は目を開けてしまった。痛々しいラクスの姿を見る覚悟を決めていたが、
そこに映ったのは……
「あれ?……」
「もう!やっと起きた。お父さんもお母さんも、お仕事に行っちゃったからね。
 マユ、御飯の準備する から二度寝しちゃ駄目だよ」
そう言うと、絞る事も無く僕から離れていく姿は、どっから見ても小学生………
凄い! これがザフトの脅威の科学力か!
で、でもねラクス、いくらなんでもやりすぎだよ。そこまで年齢を下げたら流石に無理! 
シンなら喜んでくれるだろうけど、僕には……
「って、ゴメン!」
そこまで考えたとき、シンと目が合い、あわてて謝る……え?……シン?
「あれ?」
僕がシンだと見間違えたのは……いや、見間違いってわけじゃ無いけど若すぎる。
10台前半だろう。
そして何より、シンが居るのは鏡の中だった。
「何で……シンが……」
そう、鏡に映る僕の姿は、紛れも無く少年の頃のシン・アスカだった。

「……起きなさい! 朝ですよ」
優しい声が、俺に覚醒を促す。
「ん……ん?」
そして、隣で寝ている少女の姿が消えている事に気付く。
「あれ?……ここ……何処だよ?」
見渡してみると見知らぬ部屋。それに俺は何時の間にか服を着ていた。
リセリアの仕業か? そう考えながら部屋を出て、見知らぬ家を人の気配がある方向へと進んだ。
「おはよう。やっと起きたわね」
俺を見て、微笑んでくる年配の女性。彼女の母親? 落ち着いた感じの優しそうな女性だ………
って、ちょっと待て………つーと何? 
あの子、事に及んだ後、寝ている俺を自分の家まで連れてきたって事?
……怖っ! 怖すぎる! 俺はどうやらトンでもない地雷女に手を付けてしまったようだ。
「なに、ボーっとしてるの? お父さんに挨拶しなさい」
は? お父さん?……確かにテーブルにはそれらしき男性の姿がある。
「え~と……亡くなられたのでは?」
それを聞いた男性は驚愕の表情……クソッ! 完全に騙された。もう地雷女なんてレベルじゃ無い。
「もう寝ぼけた事言ってないで顔を洗ってらっしゃい!」
何故か怒られてしまった。
まあ、このままでは埒が明かないし、俺としても彼女が何を考えてるか冷静に考える必要がある。
ここは取り敢えず顔を洗うため洗面所を借りる事にしよう。
そもそも彼女は何処に行ったんだ? 
そんな事を考えながら洗面所に辿り着いたとき、鏡に映る自分の姿に思考が停止する。
俺じゃない……でも見たことがある……
いや、俺の記憶にある彼の姿より、かなり若い顔……
「キラさん?」
年齢は15、6歳だろうか……
その姿は間違いなく、キラ・ヤマトだった。

続く

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