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ヤマトを殺せ_第03話_2

Last-modified: 2007-11-17 (土) 18:43:26

「何?!市街地にACが?!」



ザフト軍のお膝元でアーマードコアが出現した、その一事だけでも驚くべき事である。

さらには高速で移動する際に車を破壊しながらあちこちにグレネードを発砲している。

何れも描く軌跡は出鱈目であり、目標が有るのではなく無差別な破壊を楽しんでいるようにすら見えた。

……そういうACが暴れているとなれば、警察などでは手に負えない。

封止線ごと、警察車両を粉砕したと言う報告まで来ている。



「MSを出すんだよ!これ以上暴れられれば、コロニーに穴が開くぞ!」



「コロニー内で戦闘をさせるのかよ?!」



雑音交じりの音声が返って来る、バディを組んでいた同僚の悲鳴めいた声に、同じくらい上ずった声で返す。。



「やるしかないだろうが!相手はテロをやっているんだぞ!戦闘云々以前に、このまま暴れられれば穴が開くと言っているんだ!」



無線機を投げ飛ばし、AKにも似たザフトの制式ライフルを倒れた警察車両を盾にして構えながらACに発砲するが、その勢いは止まらない。



「ひ……ひい?!」



悲鳴を上げて銃を捨て、不様にも逃げ出そうとするが、ACのブースターの巻き起こす風で車両ごと巻き上げられ、彼の意識は途絶えた。









―ヤマトを殺せ 第三話・後編









レイヴン流のやり方で目をひきつけさせてもらう、そう言ってナスルは市街地に突入し、わざとらしく暴れて見せた。

AMBACはコロニー内では必要が無いから、という理由でターンブースターに換装してある。

確かに警察はひきつけられたが、お目当てはザフト軍である。しかし、ザフト軍の歩兵の抵抗のあまりの『ぬるさ』に拍子抜けする思いがした。



「は……ナチュラルに比べて、こいつらは……」



ナスルは銃を捨てて逃げ出した男に悪態をつく。

企業軍や連合軍ならば、ACを確認しても抵抗を止めない、メンタルのトレーニングが疎かになっている所為か?

などと考えるが、答えなど出ない。



「そこのAC!直ちに停止しろ!」



白く塗装された、迷彩効果など考えていないように見えるMS、ジンが前方に降り立ち、ライフルを向けて警告をする。が、

ナスルはブースターの出力をさらに上げ、発砲しようと一瞬ポーズを取ったジンを、レーザーブレードの一刀の元に切り捨てる。



「遅い!」



それを見た複数のジンが空中から射撃を開始する、口々になぜ撃っただのなんだのと眠たい事を言っている、とナスルは思う。



「くそ……!ナチュラルのクセに!何で当たらない!」

「アイツもコーディネーターなのか?!」

「ならなんでアイツを殺したんだよ!」



三機のジンがバラバラの方向から、火線すら集中させずに市街地に発砲している時点で当たるわけが無いだろう。

とナスルは冷静に考えるが、一発脚部の背面装甲に命中する。

バランスを崩しそうになるが、そのまま飛び上がった。

敵を中心としながら、円を描きながらライフルを発砲する、三機のジンうち、機動をやめて発砲を愚かにも続けているジンの頭を吹き飛ばす。

コントロールを失い、市街地に墜落しないように努力をするかと思えば、ブースターを一回もふかそうとせずに、そのままの勢いで家につっこむ。





こいつらは、本当に兵士なのか?という疑問が湧いたと同時にナスルは行動していた。



「来いよ、驕った犬のクソ以下のクズどもめ……教育してやる!」



ナスルは外部スピーカーをオンにし、罵声を浴びせる。真実彼は激怒していた。

訓練も何もしているとは思えない機動、連携、射撃時の無意味なポーズ……殺されたいとしか思えなかったが故の、いやに理不尽な怒りである。





それに反応したのか、ジンは高度を下げつつ銃を捨て、サーベルを引き抜いて接近戦を挑んでくる。

FCSを切り替え、DRAGONにマウントしたグレネードランチャーを発砲する。

衝撃にジンは一瞬仰け反るが、フェイズシフト装甲のお陰で無傷であり、それを嘲笑する声が無線機から流れ込む。

それを無視してナスルはブレードを発振させ、大上段に振りかぶって切りかかってくるジンの腰部をなぎ払った。



「き……貴様ああああ!」



通信機に届くありとあらゆる罵声、同時に上から大量の鉛弾がふりそそぐ、このジンも直線的な機動を描いて突っ込んでくる。

死にたいとしか思えないな、とナスルは思い。



「間抜け」



そう一言呟き、背部のレーザーキャノンを展開。

左右に回避機動を行いつつ、FCSのロックオン範囲中心にジンを捉えて、トリガーを引いた。

そのエネルギーの奔流に耐え切れず、ジンの表面装甲が沸騰して蒸発し、胴体部を消し飛ばした。



「……雑魚め、油断しているから死ぬんだよ」



キャノンを収め、レーダー意識を向けると赤い三角状の敵機の反応が6機編隊で向かってくるのを検知。

キャノンを収めたのは失敗だったか、とナスルは考えるが、暴れ続けていては弾丸も切れる。

こいつらを片付ければ宇宙港に向かって『エターナル』強奪班と合流するか、と考える。



「オペレータ!状況を報告しろ!」



ともかくも、いつまで時間を稼げば良いのか。

その問題がいつまでも横たわった状況下での戦闘はナスルにとっては冗談ではない。

別にMSなどが何機出てきても物の数では無いが、いつまでも戦闘を続けられるほど弾薬が続く訳ではないのだ。

数秒後、相変わらずの苛苛とした声で大沢からの通信が返って来る。

通常は何らかの管制機に乗っているのだが、そのような専用の器材を搬入できなかった為、

小型のインカムに信号増幅器をつけて、強制的にニュートロンジャマーの影響を排除している。

であるが故に、かなりノイズが乗っているのだ。



「そちらに目が向いているお陰で、何とか宇宙港まで到達できました。これから占拠します。……あと少しです、もう少しもたせて下さい」

「了解した、とっとと作戦を完遂しろ、このグズめ、と伝えろ」



くそったれ、と悪態をついて通信を叩き切る。

敵がミサイルを発射したのか、レーダーの反応が急増。それに対して、ナスルは悪態をつきながらブースターを吹かして八の字機動をする。

迎撃も考えたが、しかし弾が勿体無い上にロックオンシステムにミサイルは反応し辛い。

さらにレーザーライフルの発射サイクルが低い為、それを当てることを期待するより回避する事に賭けたのだ。

ミサイルは円軌道を描き、ピックアップが拾った高い風切り音が聴覚神経に響く。

近傍で爆発し、爆炎と破片が装甲を叩くが、そのエネルギーは装甲表面に這ったエネルギースクリーンで中和され、破片はACの装甲を貫通できない。

レーダーにはミサイルの反応は無い、ナスルはにい、と笑って急速上昇しつつ、ロックオンをせずに編隊の右端のジンめがけて発砲。



「こ……この距離で当ててきた?!くそっ離脱します!」



混線した通信から、命中した事が推測できた、戦闘領域で直線飛行などしているからだ、馬鹿め。

と嘲弄して、ブースターを吹かしながら着地。

レーダーからは、その隊のMSが高度を下げつつ、取り囲むように半円の陣形を取っている事が見て取れる。

なるほど、それなりに統制は取れているらしい。確かにMS相手ならば有効な手段だろうが、しかし。



「……ふん、一機ずつ叩き落せば良い話だ」



ACは『そういう戦闘を想定して』設計されている。MSなどとはそもそもコンセプトが違うのだ。

圧倒的多数を蹂躙する死を運ぶ機械。それこそがACの真骨頂である。その意味では、前回の戦いは屈辱そのものだったのだ。



「……あんまり調子に乗ってるとなあああ!」



そう叫んで、ジンと良く似たフォルムの新型機が右方向から襲い掛かってくる、だが。

「……戦闘中にベラベラと!」

ナスルは自分の事を棚に上げつつエクステンションを作動させて急速旋回、右に左に機動しながら、発砲してくるビームの雨を避け、

体当たりをして見せながら左手のブレードで横になぎ払う。

腕を含めた上半身を切断し、脚部を動かして下に蹴落とす。



「クソッ!イザーク隊長、戦闘不能になりました!」

「早く離脱しろ、爆発するぞ!」



あと四機。遠方を監視している肩のレーダーはさらに10機ほどの増援が宇宙港から向かってきているのを検知している。

早く片付けなければ、リンチの様相を呈するな、とナスルは考えた。

装甲の損傷度を数値で評価するAPはおおよそ7000前後、まだまだ戦えるが、しかし無限ではない。

宇宙港にどうにか突入し、占拠班と合流するには時間がかかりすぎている。

空中でキャノンを展開し、旋回してこちらに襲いかかろうとする新型機2機のうち一機に発砲、

肩のアーマーが炸裂し、その衝撃で一機は錐揉み状態に陥って墜落。

そして、連合のものらしい直線的なラインを持つ、重装甲をした機がロックオンをした、という警告をAIがナスルの脳に入力。

エクステンションを慌てて作動させ、ターンをしてライフルのランチャーからグレネードを発砲。

回避をしようとするが、その重量からか妙に動きが鈍く、時限信管で炸裂したグレネードがその機を包む。



「……やったか……いや?!」



その煙の中から、装甲を排除したらしいそれが飛び出し、ライフルを乱射しながら接近をして、ビームサーベルを抜き放つ。



「ち……!そういうことか!」



あくまであれは増加装甲であり、破壊されても問題なく動作できる、と言う代物らしいと判断をつける。



「もらった!」



混線した音声から、勝利の叫びが聞こえる。ナスルは舌打ちしてブレードを作動させ、なぎ払うが相手は上昇して後ろについた。

やられたくない、その一心でライフルを盾にして、どうにか攻撃を防ぐが、それによってライフル下部のグレネードが炸裂してしまう。

その煙を利用して、ロックオンせずに背部のランチャーを発砲した。

敵機ではなく、その進行方向にある、戦闘中の余波で半ば崩れかかったような建築物に。

エネルギーがぶつかり破裂する。数秒後にその連邦機らしきものと、ヴィクセンの上にガラガラと瓦礫が降り注ぐ。

赤外視野に切り替えるが、それでもノイズが除去しきれていない。



「クソッ……」



近すぎた、と舌打ちをするが、もはや言っても後の祭りだ。

だが、瓦礫を弾き飛ばしてやってくるであろう敵が一向に突入してこない。



「……?……なるほど、そういうことか」



瓦礫に埋もれ、灰色に変色したその機体を残弾との兼ね合いから無視して、切りつけて来ようとした新型機を、その場で旋回しながらブレードで破壊した。

スクランブルの際に不良品でも引いたのか、この男は。

と呟き、大沢に通信を入れようとしたとき、音声がヘルメットのインカムのマイクから流れ出た。その大沢だ。







「こちらオペレーター、占拠が完了しました!10分以内に宇宙港に来て下さい!」



珍しく慌てているな、と呟いてナスルはブースターを作動させると、安全に使用できる基準をオーバーする加速度に設定して、宇宙港に向けて一気に加速した。

間に合うかどうかは完全に運次第である。



「どけえええええええ!」



向かってきていたジンを切り払い、襲いかかろうとした新型をキャノンで吹き飛ばして前進する。

ミサイルをかわし、ラジエーターが悲鳴を上げても進む事は止めない。

止めれば、確実に死ぬからだ。

回収が期待できない作戦なんて受けるんじゃなかった、と今更ながらに悪態を吐き続けるが、当然今更遅い。

オーバードブースト搭載機に乗ってこなかったのは失敗だった、だが、後悔しても遅いのは言うまでも無い。

悪態をつき続け、どうにか宇宙港に到達し、発砲してくる歩兵を踏み潰して前進をする。

追っ手を防ぐ為、通路をレーザーキャノンで吹き飛ばした後、歩兵の抵抗を受けつつもどうにか指示されたポイントに到達した。



「こちらレイヴン!目標ポイントに到達した!」







……そうして、ナスルはどうにか生き残った。数日後、彼に耐えがたい屈辱を与えた男との遭遇が待っていたのだが……













―ヤマトを殺せ 第三話後編 了




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