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リリカルオペレーションメテオ外伝_中編

Last-modified: 2007-11-15 (木) 23:29:57
 

 時空間のなか、スペースコロニーがヨットに見えてくるような
超巨大宇宙ステーションが時空管理局本局である。
 会議室の大型スクリーンにはルクレシオンが大破する直前までの
ピースミリオンとの戦闘シーンが映写されている。
 リーオーのビームライフルに撃破される魔術師。
 軽量とは言え被弾し核融合炉が暴走中の全長十メートル以上のリーオーに
そのまま轢き潰されて爆発に巻き込まれる魔術師。

 

 魔術師の攻撃魔法がリーオーを射抜くと、敵が化け物でない事に安心した幹部一同の頬が緩んだ。
 スクリーンには幾条ものビームが筋を引き。撃破されたリーオーの爆光が煌めいていた。
 と、マシンガンを乱射するリーオーのアップで映像はストップモーションになった。
「なんだ、今の武器は!?」
 幹部の一人が驚いて言う。
「さぁ……」
 眉を潜めたオブザーバーの技官は、遠い昔に見た資料を思い出してハッとした
「ま、まさか……」
「なんだ?」
「いえ、そんな筈は」
 幹部が口篭った技官を睨み付ける。
「この巨大艦が管理局の存在を知らない世界の代物とでも言うつもりか?」
「まさか連中が……」
「自力で辿り着いたと考えられます」
「バカな!未開の種族が時空航行技術を持っているなどとは信じられん」
「事実です。さすれば先ほどの映像も可能性が出てきます……幻の……」
 驚愕のあまり列席者の声がハモった
「質量兵器か!!!!」
「とにかく、あの船を捕獲して調査する必要がありそうです」

 
 

 鹵獲したルクレシオンを甲板に載せた深宇宙探査船ピースミリオンの通路で
艦隊司令のセプテム大佐が苦虫を噛み潰した顔で唸っていた。
 ―父上、どうすれば……―
 すれちがう兵士達が敬礼するが反応は鈍かった。
 宇宙空母ピースミリオンはフォールドした事により通常空間に戻れなくなってしまったのだ。
 セプテムは神妙な顔をしながら研究室に入った。
 技術長が、正面の大型パネルに向かっている。
 セプテムが歩み寄り彼に声をかける。
「どうだ、フォールドシステムは復旧できそうかね?」
 技術長は振り返ると敬礼しながら立ち上がった
「これをご覧ください」
 パネルに据え付け中のよく分からない機械と動力炉が映し出される。
「これが敵艦の魔力炉で、こちらが敵のフォールドシステムです」
 指を刺して説明を続ける
「この鹵獲品が本当に動くのかね」
「はい、ドクターJによれば試運転には成功したそうです」
「なるほど」
「しかし問題はルクレシオンの航法システムを解析しなければ地球圏に帰還できない事です」
「ウム……どの程度の見積もりなのかね」
 突然モニターが切り替わってドクターJの顔が全面に表示される
「心配要らんぞい。もうできとる、帰還した時の地球圏の安全は保障できんがな」
「構わん。座して死を待つわけにはいかんのだ」

 

 情報が大モニターに表示され通信士官が報告する。
「後方に出現した未確認物体が急速接近中、敵艦隊です!」
 セプテム大佐が厳しいシワを眉間にきざんだ。
「とうとうきたか! ただちに応戦体制だ」
 通信士官は答えてマイクに向かう。
「敵機襲来!リーオー隊、全機スクランブル!
 繰り返す!リーオー隊全機スクランブル!」
 艦内放送がMS格納庫に響く。
 整備員が必死で走り、駆け付けたパイロット達がコックピットに飛び込んでいく
 リーオーはエレベーターで発進口へ、トラゴスは甲板へと押し出されていく。

 

 時空管理局の追撃艦隊は有効射程圏内に突入していた。
 多くの魔術師が発進と言うよりも射出されていく。
 迎え撃つリーオーとの間で激しい戦闘が始まる。
 飛び交うビームは入り乱れながら瞬時にして空間を走り抜ける。
 爆発が点々としみのような光を滲ませる。
 だが時空間での戦いは魔術師側に分があった。
 何しろ地上とは比べ物にならぬほど双方のスピードが速い。
 また彼らは空間戦闘に慣れていた。
 反面リーオー隊はMS隊創設時から主な敵は宇宙機雷と戦車と航空機だけであり、
宇宙での空間戦闘すら想定されていなかった為錬度はかなり低い。
「くそっ!アストロスーツの分際ですごい機動性だ!」
 コロニー制圧作戦に参加したベテランも唇を噛む。
 それでも一人、また一人と打ち抜いていった。

 
 

 追撃艦隊はピースミリオンに向けビームを放射した。
 魔術師群は徐々にリーオー隊を押しやり、今やピースミリオンの鼻先で激しい戦闘が繰り広げられていた。
 ビームは数機のリーオーを粉砕しピースミリオンに迫った。
 砲撃の束は艦体すれすれに走りぬけ、ちょうどピースミリオン真上に居たリーオーが餌食となった。
「いまのは!?」
 セプテムが声を上げる。
「敵の砲撃です!」
 艦長が答え終わったとき、ピースミリオン艦上に降り立った魔術師が攻撃を始めた。
 ピースミリオンのあちこちや運の悪いトラゴスが爆発したが、
旋回を終えた甲板配備のトラゴスの砲撃で魔術師は粉砕された。
「攻撃システムの一部が損傷!しかし誘爆の危険なし!切り抜けられます!」
 通信士官がタメージコントロール室からの通信を報告する。
「頼むぞ!」
 セプテムの声にも力がこもった。
 だが敵艦の攻撃はまだ終わっていなかった。
 突き出された砲身がピースミリオンに向けられていた。
 砲身バレル内で光粒子が渦を巻き始める。
 やがて熟した白色の太いビームが闇を裂いた。
 激震は乗組員に体を支える余裕すら与えない。
「グッ……」
 運悪く立っていたセプテム大佐は司令椅子に体をぶつけて呻いていた。
 ビームは狙い通り完全破壊されない程度に船を掠めたのだ。
 この攻撃で甲板に乗っていたルクレシオンは溶けた金属の何かになって千切れて離れていった。
 椅子から放り出されたオペレーター達が呻きながら持ち場に戻る。
「ドラゴス隊壊滅!主砲の半数が損傷しました!即時修理不可能です!」
 オペレーター達が損傷を早口に言い、
「第四機関区破壊状態!」
 エンジンに損害が及んでいる事まで判明した。

 

「よっ、よし……」
 動揺したセプテム大佐が痛みに呻きながら長官椅子に腰を落とし、
「全乗組員とパイロットに告ぐ!フォールド航行準備!」
 艦長がえっとなってセプテム大佐を見た。さらに続けて
「本艦はこれより地球圏に帰還する!」
 艦長が声を上げ制する。
「落ち着いてください。まだテストもしていない状態ですぞ」
「早くしろ!今度攻撃を受けたら最後だぞ!」
 通信士官はマイクをつかむ。
「全MSに告ぐ!全MSに告ぐ!フォールドシステム起動準備に入ります!」
「フォールド開始三分前!直ちに甲板上に退避して下さい!」
 戦闘を続けていた部隊も通信を聞いて全力でピースミリオンに退避してゆく。
「始動一分前!」
 オペレーターがカウントダウンを続ける中で
セプテムは目に入る範囲で一同にすばやく視線を走らせる。
「各セクション、異常ないか!?」
 オペレーターが振り向き確認を取る。
「残存リーオーは全機甲板に取り付いて防衛戦闘中、なんとかなる筈です」
「よろしい、使用可能な戦略ミサイル発射菅を全て開きたまえ、信管無制限!」
 その間にもピースミリオン前方に回り込んだL級巡洋艦がビームの再チャージを始める。
 セプテム大佐が命令を下す。
「今だ!全反応弾発射!」
 地球圏統一連合のミサイル衛星に装備されているコロニー殲滅用の最終兵器が
白煙を噴きながらピースミリオンを離れ、敵艦に向かってゆく。
「始動5秒前………3,2,1、ゼロ!」
 ピースミリオンが転移した直後にバリアが解除されたビーム発射態勢のL級巡洋艦に
無数の大型ミサイルが向かってゆき次々と着弾する。
 最初の核爆発には耐えたが次々と命中する戦略反応弾には抗えず船体が爆散した。

 

 戦闘によって殆どボロ舟のような有様になったピースミリオンが月の外側に出現する。
「フォールドアウト確認、地球圏に帰還できたのかは調査待ちです。」
 通信士官が不信感を露にしながら警戒している。
 艦橋と言っても異様に広い室内のモニターに見覚えのある宇宙コロニーと地球が映写された。
「地球……帰ってきたんだ!」
 普段は我を出さないオペレーター達も帰還の喜びで絶叫していた。
「地球!地球!地球!」
 コロニーや月生まれも多かったが嬉し過ぎてあまり気にしてはいない。
 セプテム大佐は柄にも無く死にそうな時のために隠し持っていた葉巻に火をつけた。
 暗澹たる先行きに思いを馳せつつ葉巻の濃厚な煙が蒸せる。