ルナマリア◆yb4dHGjFao 03
Last-modified: 2017-02-22 (水) 02:43:16
ルナマリア爆走記_第3話 「この世界は間違っていると思わないか?」 仮面で顔の上半分を覆った男は答えない。 「共に世界を変えないか?」 仮面男の肩が小刻みに震えている。 「ルナねーちゃん!!これはどー言う事だよ!?つーかこの部屋はなんなんだよ!?」 黒猫のぬいぐるみを机に置いてルナマリアが立ち上がり、照明を点ける。 「雰囲気作りって・・・ここは格納庫だよな?」 机やソファーセット、奥に扉が見えるが・・・まさかベッドルームか? 「最近格納庫にいる時間が長いじゃない?一々居住区に帰るのが面倒で・・・」 最近この人に振り回されっぱなしだ。ここらで自分の立場をはっきりさせなくては・・・ 「ねー・・・」 一睨みで黙らされた・・・勝てないのを本能で感じたのだろう。 「戦闘員1号2号、資料を持ってきて」 戦闘員1号2号?悪の秘密結社じゃあるまいし・・・どこの馬鹿だ? 「って・・・ロココにナイン!?お前ら何やってんだ!!」 二人の脳内ではキッドとルナマリアはセットらしい。実際はジュースとおまけのボトルキャップ位の関係なのだが。 「どうやって調べたんだ・・・?これ?」 ますます秘密結社じみてきた。キッドは加速度的に増してくる頭痛を堪えるので精一杯だった。 「まずは副長のアーサー・トラインですが・・・」 「アーサーは×・・・次はジュール隊のディアッカ・エルスマンです」 「続いてジュール隊隊長のイザーク・ジュールです」 「整備班のヨウランとヴィーノですが・・・」 「最後になりますが・・・フェイスのハイネ・ヴェステンフルスです」 「あ〜でも最近オペレーターのアビー・ウィンザーといい感じらしいですよ?」 召集からわずか5分、キッドの目の前には演台とたくさんの漢達がいた。 演台のルナマリアが話し始める。 「諸君!これは聖戦である!真実の愛を見つける為、幸せを見つける為に立ち上がる時が来たのだ!」 「美しき、清浄なる恋の為に!」 しかし、キッドの疑問に答えてくれそうな人物は存在しなかった・・・ ルナマリア率いるラブ・コスモス(仮)総勢100名がミネルバに雪崩れ込む。 「リーダー!ターゲットは自室で待機中だそうです!」 重い荷物を背負いながらこっそりため息をつくキッドにルナマリアの檄が飛ぶ。 「こら参謀長!気合が足りないわよ!」 知らぬ間に参謀長になっていたようだ・・・ 「なあ、ね「リーダーと呼ぶ!」リーダー、ハイネを捕まえてどうするんだ?」 ついに言動だけでなく行動までもがラクス化して来た・・・ 「当然洗脳装置はあんたが作るんだから・・・っと、ここね!」 悪事に加担する事が確定している己の不幸を呪っている内にハイネの部屋の前まで来ていたようだ。 「相手はフェイスよ!油断せずに行きなさい!1班、突撃開始!」 100名の信者・・・ではなく戦闘員は10名ずつの10班に分かれているらしい。10名の漢が扉を破って突入していく。 「「「「「うわー!!」」」」」 直後、1班の悲鳴が響き渡った。 「何が起こったの!?」 1班と室内にいたらしい銀髪男(囮か?)が応急修理用トリモチに絡め取られて哀れな姿になっている。 「なんですって!?まさか情報が漏れている?いったい何処へ行ったの・・・?」 後方の隔壁が閉まっている。後続の8班、9班、10班と分断されたようだ。 「ちぃ!ブリッジ方面へ走りなさい!急いで!」 走っている間にも隔壁はゆっくりと閉まって行き、体力不足の戦闘員から順に脱落していく。 (なぜ一気に閉じないんだ?) ブリッジまでは非常階段を上って2ブロック、数分で着くはずだがなぜか胸騒ぎがする・・・ 階段にたどり着いた先発部隊がトリモチまみれになって倒れ伏した。 「上からの攻撃!?いったい誰「グゥレイト!!」・・・わかったわ」 階段の上で緑の服を着た男が両脇に持ったランチャーからトリモチを発射している。 「高所からの狙撃は戦術の基本・・・うかつに飛び出せないわね」 (うん、定番のかっこいいセリフだね。でも目的が拉致じゃ寒いだけだね) ルナマリアの前を走る戦闘員が次々と倒れていく。だが集団の足は止まらない。 「数だけは・・・多すぎるっつーの!ぐえ」 遂に階段上にたどり着いたルナマリアのボディへのヘッドバットで炒飯男は沈黙した。 「突撃続行!」 近くのスピーカーから女性の声が聞こえた。 「何者!?」 そう言いつつキッドが背負った荷物を奪い取り、取り出した携帯用オルトロスを構えて隔壁目掛けて撃つ。 「どーよ!愛の力は無限なのよ!」 無常にも隔壁が閉まる。 「汚いわよ!キッド!もう一発撃てないの!?」 『任務完了。ハイネに近づく害虫は駆除されました』 ノーマルスーツを着て宇宙空間に出る。隣のルナマリアが何か言っているようだが、通信を切っている為聞こえない。 回収され、意識を取り戻した後、最初に見たのは憤怒の表情の艦長だった。 (あの様子じゃ諦めてないな・・・) 走り出したら止まらない、恋に恋する、とっても迂闊で残念な暴走少女。 (でもまあ、そこがいいとこなのかもしれない) 元の世界に戻っても、彼女の事、振り回された日々は忘れる事がないだろう。 |