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子連れダイノガイスト_第9話

Last-modified: 2008-10-10 (金) 14:03:48

子連れダイノガイスト 第九話 あれが噂のマイトガイン

 
 

 どこまでも広がる大宇宙。億万のきらめきを散りばめた漆黒のビロードのように広がる世界に、ぽつんと青く輝く小さな星があった。
 人間と呼ばれる生き物だけでも幾十億もの数が生きるその『地球』という星に、かつて人間が作り出し、人間が破壊した悲劇の墓標が落ち行かんとしていた。
 ユニウスセブン。かつて血のバレンタインと呼ばれた事件によって二十万を超す人々の命が散る場所となった人造の大地。地球に比べればあまりにもちっぽけな、最大幅八キロメートル程度の質量である。
 だが、たったそれっぽっちの作り物の世界が落ちるだけで、奇跡の如く生まれた青き星に住む者達の世界は地獄へと変わる。
 数十億年の歴史の積み重ねによって構築された地球の生態系を滅ぼすのは、人間の生み出した小さな箱庭の世界のなれの果てと、ほんの数十人の人間達の憎しみと怒り、そして悲しみ。
 太陽風を受ける事によって作動するフレアモーターで、安定軌道から外れたユニウスセブンの外壁の上で、この大惨事を起こさんと画策した元ザフト兵のコーディネイター達が駆るジンハイマニューバー2型と、たった二機の兵器が戦闘を繰り広げていた。
 はるか彼方に見下ろす大地から、母なる星を守らんと馳せ参じた人造の戦士と、一人の少年――勇者特急隊の超AI搭載型ロボット“ガイン”と旋風寺コンツェルン社長“旋風寺舞人”。
 三年前のヤキン・ドゥーエ戦役末期にロールアウトしたジンHM2型に比べ、一回り小型ではあるものの、ガインは最新の技術と信頼性の高い既存の技術、惜しみない開発資金に最高のスタッフ達と理想に燃える清廉な志の末に生み出されたロボットだ。
 ガインは元から戦闘用兵器であるMSと違い、その用途が将来訪れるであろう地球人類の外宇宙への進出の補助を行う事を旨とする為に、多様性が求められ戦闘に必要のない機能や戦闘時には無駄となるであろうプログラムや機能もある。
 だが、それでもなおガイン単体のスペックはジンHM2を上回り、現行の地球連合とザフトの最新鋭機ザクやウィンダムと比較しても遜色はない。
 いや、むしろ旋風寺コンツェルンをバックボーンに持ち、潤沢な資金と優秀な技術陣によって、量産を前提としていないスペシャル仕様のワン・オフ機とした完成されたガインの性能は、エースクラスが搭乗した最新鋭のMSの戦闘能力にも匹敵しよう。
 既に収納部から抜き放った拳銃サイズのビームガン“ガインショット”を右手に、ガインとジンHM2を駆るテロリスト達との戦闘は、開始から十分が経過していた。
 ガインと共にユニウスセブンに馳せ参じた舞人が載っているのは、マイトウィングと呼ばれる戦闘機としての機能も兼ね備えた列車だ。
 その本来の目的が戦闘用ではないために、MS相手では心もとない小型のミサイルランチャーを機首に備えているばかりで、あくまでガインの援護に徹している。舞人らの目的が、テロリストの殲滅ではない以上妥当な手段だろう。
 舞人らの戦闘が確認されることで、ユニウスセブンに向かっているザフトの破砕作業部隊も、護衛のMSを再編成して送り込んでくるだろうから、それまでの間にできるだけテロリスト達の数を減らし、後の作業が円滑に進むようサポートする事が目的なのだ。
 本来、勇者特急隊の全隊員が存在していれば彼らだけでもこの、墜ち行く哀れな大地を破砕することも可能ではあったろう。
 だが現状日の目を見ているのがガインとマイトウィング、ロコモライザーのみである以上、彼ら独力ではユニウスセブンを破砕する事も落下を阻止する事も出来ないのが、厳しいながらも現実であった。

 

『とう!』
「な、速い!? パイロットはコーディネイターかっ」

 

 三機のジンHM2が放ったビームカービンの三条の光を、軽やかな跳躍でかわしたガインの滑らかな動きに、テロリストの一人がそう口走った。
 よもやあのロボットそのものが意思を持ち、自分自身で自分の体を操縦しているなどと想像し得ようか?
 彫の深い目鼻顔立ちに加えて舌や歯らしきものさえ確認できたものの、人面を模した奇妙な意匠のMS、という認識以上のものを抱けと言う方が無理だろう。
 宇宙の無重力に身を躍らせたガインが、かすかに足裏のスラスターを点火させて反動を相殺しながら、三発のガインショットを放った。照準から発射までの間隔が極めて短い速射であると同時に連射だ。
 ルーキー程度では成す術もなく撃ち抜かれてしまうだろうガインショットのビーム弾であったが、今彼らが敵にしているのは前大戦を生き抜いた生え抜きの熟練兵たちだ。 
 練達の技量とあまたの戦闘経験に裏打ちされた実力が、コーディネイターの身体能力とあいまって旧式機に搭乗している事の不利を感じさせることはない。
 それを証明するかのように、ガインの放った三発のビームは一機のジンHM2の左肩を吹き飛ばしただけに終わった。

 

「気をつけろ、ガイン。こいつらはプロの、しかもベテランの兵士達だ。今までおれ達が相手にしてきた犯罪者達とは別ものだぞ」
『分かっている。だが、それに加えて彼らの気迫! 命を捨ててかかってきている!!』

 

 シミュレーターなどを用いぬ、実際に命をかけた血肉を削り合う実戦での戦闘経験という点において、舞人とガインがテロリスト達に数歩譲るのは紛れもない事実だ。
 スペックだけでいえば勝るガインも、数の不利に加えて経験値の絶対的な差があり容易にはジンHM2の数を減らす事は出来ない。
 加えて慣れぬ宇宙空間での初の戦闘に、トリガーを舞人に預けぬ限り、人間を殺さぬようプログラミングされているガインにとって命を捨ててかかってくるテロリスト達の相手は極めて厳しいものだ。
 舞人達がこれまでヌーベルトキオシティで相対してきた犯罪者達と、ユニウスセブンを落とさんとするテロリスト達にも明確な違いが一つあった。
 前者は犯罪とは手段であり、金、権力、自己顕示、技術など様々な目的を果たす為のものだ。
 それは言い方を変えれば未来に目指すもの、手に入れたいものがあるとも言える。
 だから、ソレを手にするまでは死ぬわけには行かぬ、と目的の“何か”を前にしても自己の命を優先する。
 だが、ここにいるテロリスト達はどうだ? 彼らが守りたかったもの、彼らの幸福の一部だった者――たとえば恋人、親、兄弟、友人、永遠に戻らぬそれらを失った彼らにとって、この場で命を散らす事に何の躊躇いがあるのだろう。
 心が挙げる悲鳴に耳を塞ぎ、瞳から零れる血の涙を流れていないものと見ず、自分達の生活を奪ったナチュラル達と馴れ合う今のプラントと、自分達の幸福を奪ったナチュラル共すべてに罰を下す。
 ただそれだけが彼らを今日までの日々を突き動かしてきた。
 憎悪と悲しみの源であるユニウスセブンという墓標を、母なる青き星の大気で焼いて浄化し、降り注ぐ墓標の欠片で大罪人であるナチュラル達に我らの無念を、憎悪を、悲しみを、余す事無く何もかもを教えてやらねばならぬ。

 

――その為にならこの命など惜しくはない! このユニウスセブンが焼かれたあの日より我らすべて尋常な生を捨てた復讐の鬼、人外の死人よ!!

 

 テロリスト達の誰もが共有する戦う前から命を捨てたいわば“死人”の精神が、ガインと舞人――人々の未来と命を守ろうとする二人にかつてない強敵となっていた。

 

「ぬおおおっ!!」
『くっ』
「ガイン!」

 

 左右から突っ込んでくるジンHM2の脚部と腕をガインショットで撃ち抜いたガインの真正面から、被弾した二機の挙げた爆煙を目隠しに刀を振り上げたジンHM2が猛然と迫っていた。
 さしものガインも、真っ向から全速力で迫りくるジンHM2の気迫と相討ちも辞さぬ、いやそれさえも本望と迸るパイロットの狂気にわずかに息を呑むように反応が遅れた。
 三機のジンHM2に追いかけ回されていた舞人が、とっさにミサイルでガインに迫るジンHM2の足を止めようと牽制するも、パイロットはそれを一顧だにせずにガインめがけて刃を振り下ろした。
 振り下ろされる白銀の縦一文字をかろうじて受け止めたのは、とっさに両手で掲げたガインショットの銃身だ。その銃身に50センチほど刃が食い込みかろうじて斬断を阻んでいた。
 ジンHM2がバックパックのバーニアを全開にして、ガインショットへじりじりとその手に持った死神の刃を斬りこませてゆく。

 

「我らの想い、貴様らの如き軟弱共に止められると思うなあ!!」

 
 

 時を刻むド・マリニーの時計の針を、数時間ほど巻き戻そう。
 明かりが天井からの照明だけの、薄暗い四方を金属に覆い尽くされた広大な部屋の一室であった。
 広大な空間は、半数以上が灯されずにいる照明のせいで、濃い闇を四方に蟠らせていたが、それでもMSが数十機は格納できる巨大なスペースがある事は見て取れた。
 百メートル近く頭上にある天井から降り注ぐ白い光を浴びて、一人の男がそこに足を踏み入れる。
 逆立てた濃緑の髪。切れ長の瞳には抜き放った刃に似た鋭さと、冷徹さが浮かんでいた。右の眼もとに稲妻のような傷跡があった。
 まだ二十に届くかどうかという若い顔立ちは端正と呼んで差し支えなかったが、その男の心の内にある暗い感情と厳しさが、他者がすり寄ってくる事を言外に拒絶していた。
 背にJのロゴと広げられた翼があしらわれたジャケットを着込み、格納庫の中央で男を待つ一人の老人のもとへと足を進める。コツコツと規則正しい足音が、物言わぬ巨人の静謐に満ちた格納庫に反響していた。
 コツ、と最後の一音を刻み、足音が止む。男と老人が互いを見つめ合い、値踏み合うように数秒の沈黙を共有した。沈黙の協定を破ったのは老人の方であった。
 がっしりと幅の広い肩に軍服に似た衣服の上にマントをはおっている。
 妙に長い耳を垂らしていおり、こんもりと盛り上がった鷲鼻と眼鏡そのものが瞳みたいな丸い目。髪はややくすんだ灰色に近い白髪だ。足の爪先から頭のてっぺんまで年不相応な活気に満ちた印象が強い。
 アニメや漫画に出てくるような怪しい風体のマッド・サイエンティストというのがまさしく答えだろうか。初見なら百人中百人が敬遠しそうな老人の声はまだまだ衰えを知らぬ活力に満ち、後二十年は現役だろうと思わせる。

 

「よく来てくれたの。アズラエルから連絡は受け取る。一応挨拶しとくか、わしはウォルフガングじゃ」
「……ジョーだ」
「知っておる。軍関係者や軍事企業、有人ロボットの開発や製作に関わっておる者の間ではお前さんは有名人の部類に入るからな。元東アジア共和国のウルトラエース“エースのジョー”」
「おれの過去を検索するのが依頼内容か? ならば断わらせてもらう」

 

 かつてMSが登場する以前、MAメビウスを駆り新星(ボアズの原型となった東アジア共和国の衛星)攻防戦で、ジン4機、シグー1機、ローラシア級1隻を撃破という“エンデュミオンの鷹”に並ぶ戦果を打ち上げたエースは、くるりと踵を返しこの場を後にしようとした。

 

「こら、待たんか。人の話は最後まで聞いて行かんか! まったく若い連中はせっかちでいかん。もうアズラエルから話は聞いとるじゃろうが、今地球に向けてユニウスセブンが落下しようとしておる。お前さんにはその落下阻止の助っ人になってもらおう」
「前金は受け取ったからな。仕事は果たす。だが、あのウォルフガング博士がアズラエルの子飼いとはな、ユーラシアの連中が聞いたらなんというかな?」
「はん、アズラエルはあくまでスポンサーよ。今やっとる仕事が終わったらわしはわしの道を行く。……まあいい。お互い痛くもない腹を探っても仕方なかろ。お前さんには今回の以来の報酬として好きな機体を持って行かせてやれ、という話じゃ」

 

 そういって、元ユーラシア連邦最高の頭脳と称されたロボット工学者の老人は、右手を掲げてフィンガースナップを一つ鳴らす。
 それを合図に一斉に灯された照明の白い光が、頭を垂れる様に蟠っていた闇達を払拭し、秘していた鋼の戦神達の勇姿を露わにした。
 機動兵器のパイロットとしての血が騒いだのか、これまで冷笑的だったジョーの目元がぴくりと動いた。
 左右に並べられた複数の機動兵器達は、いずれもジョーが軍に所属していた時には見た事もない独創的なものばかりだったからだ。
 MSとは全く異なるベクトルで開発されたと思しい巨人達の列を、ジョーはゆっくりと見渡した。

 

(希代の天才科学者と謳われたマッド・サイエンティスト、ウォルフガング。軍の命令を半ば無視し、巨額の費用を私的なロボット開発に投じ、ユーラシア連邦を追われた男。
自分の制作したロボットへ常軌を逸した愛情を注ぎ、人格的にも危険人物とされた、と言われていたが……。少なくとも能力は噂以上かもしれん)

 

 ジョーの内心の評価を知らず、ウォルフガングは嬉々として左右に並び立つ自分の作品達を紹介し始めた。

 

「まずはこいつじゃ! 美しい白銀の装甲に、まるで中世の騎士の如く気品溢れる姿、おとぎの国の騎士の如く華麗なソイバスター1992。
続いてソイバスター1992と対をなす漆黒の鎧騎士、シュロウタ2008。どちらとも自律誘導兵器や実体剣に、強力な広範囲先制攻撃兵器に加えて可変機構搭載の一押しじゃ。
 まだあるぞ。速きこと影さえも断つ超機動性と加速、旋回性能を誇るわしが手掛けたロボットの中でも奇作の断影2001。特殊な形状記憶合金を使用した鞭上の刃と蛇の如き下半身に四本の腕と、既存のMS戦術に捉われぬトリッキーな戦い方もできる。
 続いて四機目じゃ! その目玉を見開いて網膜に焼き付けい! 背より伸びる六枚の翅はさながら天使の如きフォルムを維持しながらも、このわし謹製の対ビームコーティングによって宇宙空間でさえも戦艦の主砲を防ぐ防御能力。
更に、超弩級の出力を誇るジェネレーターと直結によって放たれる二門のバスターライフルを装備(まだ調整中じゃがの)! 
超出力のツインバスターライフルはジェネレーターが落ちん限りは無制限に撃ち放題な上に、近接戦闘用にビーサーベルと胸部にマシンキャノンも装備したウイングゼロ1997。
 まだまだ続くぞい。乙女の血で染めたような鮮烈な赤に染められた装甲。これまでわしが手掛けたロボットたちとも異なる風貌の、さながら翼を広げた魔王の如き巨躯。絶望の果てに君臨する魔神、リベル・レギズ2003。
ニュートロンジャマーの電波妨害さえも無効化する特殊小型誘導弾頭ン・カイに加え、超射程超出力ビームサーベル“罪人の十字剣”と“天狼星(シリウス)の弓”などを装備し、攻撃に特化したスペッシャルな機体じゃぞ」

 

 ほとんどがMSを一回りもふたまわりも上回る巨大なロボットだ。
 どれ一つをとっても共通の規格を見つける事の出来ないワン・オフ機なのだろう。強いて言えばソイバスターとシュロウタが兄弟機らしい事くらいか。
 ウイングゼロだけはジョーも見慣れたMSに最も近い機体の様に思える。
 後々の補給の事なども考えればウイングゼロあたりが妥当だろうか?
 ふとめぐらした視線に、奥に単座するもう一機のロボットが映った。25メートルほどの、平均的なMSより7、8メートルほど大きい巨躯を持った赤い機体だ。
 ウォルフガングの説明から省かれた、という事はいまだ完成していないか、あるいはその逆。他人に譲るには惜しい機体という事だろう。
 目敏くジョーが見つけたロボットに気づき、ウォルフガングは、むしろ嬉しそうににやりと唇を釣り上げた。どこからどうみても悪人の笑みそのものだが、本人的にはむしろ好意的な笑みを浮かべたつもりである。

 

「あのロボットは?」
「名をソニック。『今の所』わしの最高傑作よ。お前さんの興味を引くところでもあったか?」
「さて……あえていえば勘だ」
「勘? シックスセンスか?」
「パイロットとしての勘だ。アレを貰おう」
「くく、いいじゃろう。じゃが時間がない。二時間で操縦を覚えるんじゃな」
「必要ない。一時間で十分だ。それと」
「うん?」
「アイツの名前はソニックではない。『飛龍』だ」

 
 

 ――キリリと音を立ててド・マリニーの時計の針が巻き進められる。

 

 レアメタル製の斬機刀を真っ向からガインに振り下ろしたのとは別のジンHM2が背後からガインへ迫る、それに気づいた舞人が警戒の声を上げるよりも速く、青き星から上って来た流星の放ったビームが、そのジンHM2の胸に大穴を空けていた。

 

「地球から? アズラエルの言っていた傭兵と手駒か?」

 

 望遠モードのモニターに映し出されたのは、シャトルから出撃した四機の機動兵器達。
 戦闘を行くは、この後旋風寺舞人と勇者特急隊にとって最強にして最高のライバルとなる男、雷張ジョーの駆る飛龍。
 そして、シアトルの打ち上げ基地からこの場に駆けつけ、飛龍と合流したアズラエルの私兵三人であった。
 神話の中に出てくるハーピーの様なシルエットを持った地球連合のMSレイダーに、背から延びた長い砲身や全身に武装した火器が特徴のカラミティ、傘の様なリフターで機体の上半身を覆ったフォビドゥン。
 舞人の言葉通りアズラエルの用意した私兵である。ただし、それら三機の機体は正規の代物ではないのか、はたまたアズラエルの趣味なのか独自の改造が施されている。
 背に負っていた翼がより巨大なものに変わり、機体そのものにもミラージュコロイド他各種のステルス技術がつぎ込まれたレイダーガオー。
 胸部中央にあったスキュラが両胸部に移され二門に増え、バックパックに接続されているシュラークの砲身そのものが、本来のビーム砲から巨大なドリルに変えられ、手足がより太く、ゴツゴツとしたものに改造されたカラミティガオー。
 機体の外装に大幅な変更こそないもの、リフターから延びるシールドそれぞれに小型高性能化したゲシュマイディッヒパンツァーを搭載し、さらに対ビーム防御能力を進化させたフォビドゥンガオー。
 いずれもNJCの搭載によって核動力機と化した、セカンドステージの最新鋭機さえ上回る高性能機であった。
 そんなMSのパイロット達はユニウスセブンが落ちるという非常事態であるのに、さして緊張した様子もなく言葉を交わしていた。
 フォビドゥンガオーに乗る左右で色の異なる瞳を持った、どこか気だるげな少年がのんびりと呟いた。

 

「おー、ホントに落ちそう」
「なに寝ぼけたこと言ってんだよ、バーカ。ぼくらはこれを落とさないために使い走りやらされてるんだろ? 落ちても無いものを止めろなんて言われるかよ」
「いーからさー、あいつらさっさと皆殺しにしようぜ? ……で、あのヒリューとかいうのとガインとかいのうは落としちゃダメなの?」
「あいつらはおっさんの知り合いと傭兵なんだとよ。おれらの仕事はあっちのジン使ってる連中をぶち殺す事だ。おら、行くぞ、シャニ、クロト」
「るっせえ、オルガ! 一番ドン亀な機体に乗ってるお前が偉そうにすんな」
「先、行く」

 

 互いに好き勝手に罵り合いながら、三機のガオーMSがユニウスセブンをめぐる戦いに乱入した。
 パイロット達が前大戦で活躍した生体CPUと呼ばれた一種の強化人間である事に加え、機体性能も大きく上回るガオーMSに乗っていた事もあり、この三機の参戦は、数の不利を補って余りあった。
 カラミティガオーのでたらめな砲撃や、それらを気にせずに一気に突っ込んでくるフォビドゥンガオーやレイダーガオーの常識の枠から外れた戦い方は、ガインと舞人に集中していたテロリストたちの足元をすくい、その連携を乱す事に成功していた。
 一方で、ジョーは飛龍に握らせたヒリュウブレイザーと名付けたビームライフルで正確に一機、また一機とジンHM2を撃墜していた。
 前大戦を戦い抜いた経験を持つジョーから見ても、熟練のコーディネイターが乗るジンHM2は決して弱い敵ではなかった。
 高性能機の性能を生かしきれないルーキーなどよりも、機体の性能と特性を生かし切り、密度も量も濃い戦闘経験を持ったベテランと言うのははるかに手強い。
 今仮に、ガイアやカオスにのったステラやアウルらを相手にしても、こちらの方が強敵だとジョーは判断するだろう。
 だが

 

「おれと飛龍を相手にするには、それでもまだ足りん!」

 

 テロリスト達のジンHM2が放ったビームをかわし、生身の人間でありながら、ガインと同等以上の速さでヒリュウブレイザーの照準をつけ引き金を引く。引く動作と狙いを付けられたジンHM2がビームに貫かれて撃墜されるのはほぼ同時だった。

 

「む? アレか、ウォルフガングが言っていた超AI搭載型ロボットとやらは。ふ、たった二機でよく頑張ったと言いたい所だが、おれならもう少しうまくやれたな」

 

 自分達が来るまで持ちこたえていたガインと舞人を称賛する気持ちがわずかに沸いたが、それでも自分と比べればまだ未熟、そう判断し、ジョーは鼻で笑って背を向けた。
 一方で舞人とガインは、とりあえず敵ではないが味方とも言い切れない三機のMSと一機の特殊なロボットの登場で、わずかに動揺を露わにしたテロリスト達の様子を好機と呼んだ。
 数を優先し、ガインとマイトウィング、ロコモライザーを別々にしたままの状態でユニウスセブンまで来たが、予想を上回るテロリスト達の手練と数に裏目に出てしまっていた。それを挽回する為の手段も、多勢に無勢の状況で取れずにいたが、この状況でならば!

 

「ガイン、あれをやるぞ! ロコモライザー、再起動!」
『分かった、舞人!』

 

 舞人の指令を受け、落着してから微動だにせず、テロリスト達からも放置されていたロコモライザーが車体の各所から白煙を一挙に噴き上げて動輪を回し始める。
 惜しむらくは宇宙空間であるが故に、その車輪の回る力強い音が汽笛の音が響き渡る事がなかったことだろう。

 

「おらおらおらおらおらおらおらーーー!! あぁ? おい、見てみろよ。あのロボット何かする気だぜ?」
「はん?」
「なんだぁ? わざわざ飛び上がってフォーメーション組んでらあ。的にされたいの、あいつら?」
「知るかよ。とりあえずあいつら援護しとけってアズラエルのおっさんに言われてんだ。やるぞ、テメエら」
「はん、オルガの指示には従わないよ。ぼくはぼくの好きにやるからね。シャニはどうすんのさ」
「おれ? 別に、どっちでもいい。めんどくさいし」

 

 今、虚空に飛びあがり、マイトウィングと列車形態に変形したガインが左右前方に、動輪を激しく動かすロコモライザーが後方に位置して逆三角形を描くフォーメーションを組んでいた。それに気づき、ジョーもまた再び舞人達に目線を巡らす。

 

「ウォルフガングも知らない機能か? 面白い、何をするのか見せてみろ!」

 

 そして、マイトウィングのコックピットの中の舞人の叫びが、ユニウスセブン周辺の宇宙へと轟いた。

 

「レッツ! マイトガイン!!」

 

 ユニウスセブンを遠方に覗く場所から、高速でユニウスセブンに迫る彼にもその叫びは聞こえていた。
 アズラエルからユニウスセブン落下を聞かされ、急遽ミネルバやガーティ・ルーの追跡を切り上げた宇宙海賊ガイスター首領ダイノガイストである。
 戦闘機形態へと変形し、母艦サンダルフォンのバリアントを応用したリニアカタパルトで一気にマッハ百以上の大台にまで加速してこの戦場へと辿り着いたのだ。 
 機体内部に人間が登場していないからこそ可能な荒業で、サンダルフォンよりも速くユニウスセブンに辿り着いたダイノガイストの目の前で、舞人とガイン、そしてロコモライザーのフォーメーションが変形を始める。
 ロコモライザーの車体後部が折れ曲がり、真ん中から二つに分かれて巨大な足へと変わる。
 ガインとマイトウィングがそれぞれ列車部分の先頭を左右外側に向け、後部を巨大な腕と変わり、ロコモライザーの両側部へと連結される。
 球状の透過装甲に守られたコックピットは頭部の口の部分にあたり、マイトウィングからシートごと移動してきた舞人がそこに座していた。
 そのコックピット部分をカバーするフェイスマスクが左右から展開され、舞人を保護する。
 左右のアームレストにある専用のスロットルレバーを握り、舞人がそれを押し込む。

 

「マイトガイン、起動!」

 

 ガインとマイトウィングの折れた車体後部からは蒸気と共に五指を備えた巨大な手が現れ、ロコモライザーの先頭車両上部の一か所の装甲が開き、MSを大きく上回るロボットの顔が現れた。
 拳を握り、頭の上でぶつけ合い散った火花が降り注ぐ。
 一度右腕を引いてから突き出し、姿を現した合体巨人がユニウスセブンの地表へと降り立った。
 その光景を前にあろうことか呆然と動きを止めていたテロリスト達へ、舞人とソレ――MGと度々呼ばれていた彼は厳かに、しかし悪を憎む正義の情熱を宿した力強い声で告げた。

 

『銀の翼に希望を乗せて、灯せ平和の青信号! 勇者特急マイトガイン、定刻通りにただいま到着!!』

 

 見よ、白い蒸気をたなびかせ、あまたの死者眠る墓標に降り立つ勇者の姿を。
 ロコモライザーが胴体と脚部、ガインが右腕、マイトウィングが左腕となることで姿を現す旋風寺コンツェルンの総力と、舞人の父旭が求めた人類の新しき隣人、超AI搭載型ロボットの、正義を体現する姿を。

 

「へんけ……合体!? なんだお前は!」
「言った筈だ。勇者特急マイトガインだと!」
「ふ、ふ、巫ぅ山戯ているのかあ!」

 

 空想の中にしか、フィクションの中にしか存在しないような――事実、彼らはそうある存在だとされた世界もあったが――マイトガインを前に、テロリスト達はガインを初めて見た時以上に困惑し、それは怒りに変わって体を突き動かした。
 右上段に振り上げられる斬機刀、如何にして迎え撃つ、マイトガイン?

 

「ガイン、動輪剣だ!」
『おお!』

 

 舞人とガイン、二人の力を合わせるが故にマイトガイン。舞人の指示とガインがそれに従うのは全く動じであった。心は二つ、しかし、三つの体が組み合わさり誕生した新たな体を動かすのは同じ正義の炎を宿した心。

 

「ちぇえええいいい!!」

 

 烈帛の気合とともに振り下ろされるレアメタルの刃を、マイトガインが取り出した両刃の長剣が受け止める。真紅の柄に三つの車輪を備えた“動輪剣”。マイトガインの主兵装だ。

 

「おのれ、訳のわからぬロボットで我らの悲願を阻むとは不届き千番! この地に眠る我らの家族の無念、踏みにじられた嘆き、それに報いを与えるこの時を妨げるものは、閻魔許そうとも我らが許さん!」
『やはり、血のバレンタイン所縁のものか』
「なぜだ!? 理不尽に大切な人達を奪われる悲しみを知る貴方達が、なぜこんな事をする」

 

 自分自身、両親を何者かの悪意によって奪われるという悲劇を体験しているが故に、舞人はもう、このテロリスト達をただの大犯罪者達として扱う事はできそうになかった。
 たとえ彼らが行おうとしている事が、どれほどの悪であるにしろ。
 見方を変えれば、彼らは、両親を奪った者への復讐の道に陥った舞人のたどる結果であったかもしれないのだから。

 

「だからだ。この悲しみ、この憎しみ、この憤り、この喪失感!! 二度と戻らぬものを失った以上、胸に空いた穴を埋める事もできぬ。ならば、それを我らに強いたものに報いを与えんと欲する事になんの不思議がある!!!」
「だが、それは、八つ当たりだあ!!」
「おお?!」

 

 鍔競り合う姿勢のままバーニアを全開にしてマイトガインを押し込んでいたジンHM2が、舞人の叫びと共に大きく後方に弾かれ、姿勢制御を取り戻した瞬間には、右ななめに振るわれた動輪剣に左腕と左足を断たれていた。

 

「どんなに辛くても、どんなに苦しくても、その思いを無関係な人達にぶつけてしまえば、それは貴方達に苦しみを与えた者達と同じになってしまう。もう足を止めたくても、膝を折ってしまいたくても、その辛さを抱えてでも生きなければならないんだ。
 同じ悲劇を繰り返さないために。自分が味わった苦痛を誰かに味あわせないために。少なくとも、おれは、そうしてきた! 今までも、今も、これからも!!」
「若造の言う事かあああ!!!!」

 

 左の腕と足を失って尚、戦意の焔を豪と滾らせたジンHM2は、残るバーニアを全開にして最後の刺突を繰り出してきた。交差する両者。二機の間を繋いだのは二筋の銀光。
 右足と右腕を斬り落とされたジンHM2が、ユニウスセブンの地表に落着し、残る胴体部分のあちこちがぼこぼこにくぼんでいた。爆発の様子はない。パイロットは中で気絶しているのだろうか。
 あとで救助する必要があるだろう。

 

『舞人』
「すまない、ガイン。余計なダメージを受けてしまったな」
『いいや。私でも受けていたさ』

 

 二人の言葉が意味するところは、マイトガインの左胸部に浅く突き刺さり、半ばから折れた刀身であった。
 テロリストの魂からの叫びを聞いた舞人が敢えて受けた一刀である。それを左手で抜き、ガインは口を噤んだ舞人へ声をかけた。

 

『舞人、行こう。彼らにこれ以上罪を犯させないために。そして、このユニウスセブンで死んでしまったすべての人たちの為に。私達のできる事を、しなければならない』
「ああ、すまない。行くぞ!!」
『おおっ!!』

 

 動輪剣を構え直し、マイトガインは新たなジンHM2へとその巨躯を躍らせた。
 憎悪と悲しみに心傷つけられながらも、その悲劇を繰り返さぬために生きる事を選んだ者と、その悲劇に全てを奪われ明日を生きる事さえ捨て去った者の、同じ始まりを持ちながら異なる道を選んだ者達の戦いであった。

 

 そして、それを見ていたダイノガイストは…………笑っていた。これ以上愉快な事はないというほどに、心から笑っていたのだ。

 

『ふふふ、ふははははは!! 見つけた、見つけたぞ! 貴様のような存在が、この星にいたとはな!! ふははははは』

 

 それは一種のシンパシーであり、郷愁に似た感覚だった。この世界の機動兵器モビルスーツからは決して感じ取る事の出来なかった感覚。エクスカイザーを筆頭にカイザーズを前にした時に感じる、名状しがたい、眩いまでの光輝。
 それはエネルギー生命体の性質において発するいわば魂の輝きの様なもの。邪悪を許さず力無き者を、力を暴力として振るう者から守る盾となり剣となり、自らの身が傷つく事を許さぬ善なる者のみが放つ、あの輝き。
 お前なら、お前ならば

 

『エクスカイザーの代わりを務められるかな!? マイトガイン!!』

 

 惜しむらくは、今はあのマイトガインの力を試すよりもこの岩の塊が地球に落ちる事を防がねばならぬことだった。
 まだあの星には奪う価値のあるお宝が腐るほどあるのだ。なにより、あの星には、あのオーブには

 

――きょ、恐竜のロボット?
――恐竜さん、じゃなくてダイノガイスト、ひどい怪我してるよ!
――遊びに来たよ、ダイノガイスト様!
――はい。ダイノガイスト様、あ~ん
――戦争が終わったらまた会える?

 

 耳に蘇る、出会いから何度も何度も自分の名前を呼んできたマユの声。思い浮かぶ、何の代償を求める事も無く、無償で向けられた、輝くような笑顔の数々。
 そして、両親を失ったあの日、マユの瞳を染め尽くさんとした憎悪。理不尽な暴力を前に、暗い感情の暗黒へと落ちかけた心。
 数カ月ぶりに姿を見せた時、疲れを帯びた瞳一杯に涙を溜めて自分を迎え入れる様に両手を広げ、今まで一番の、飛びっきりの笑顔をやつれた顔に浮かべたマユ。

 

 失うにはあまりにも大きくなりすぎた、思い出という名の『宝』があった。
 果たして自分は変わったのだろうか? 以前の、エクスカイザーに敗れる前の自分なら宝を守るため、という以外の名目でこのような真似はしなかったろう。
 だが確かに今はマユとの思い出と共にある世界を失う事を許せぬと、怒りの咆哮を上げている自分を自覚している。ダイノガイストという存在を構成する根源的な部分は変わっていないが、それでも確かに変わったのもまた事実。

 

『エクスカイザー、これも貴様に敗れたが故よ。覚えておれ、いずれ億兆倍にして借りは返す』

 

 エクスカイザーは言った。“すべての命は宝だと”。それはダイノガイストに与えられた呪いであり祝福であった。
 命が宝であると既に認めたダイノガイストに取って、ユニウスセブンの落下で失われる宝の数は許容できる範囲を超えている。
 すべての命が等しい価値を持った宝ではない。
 だが、これから価値を持つかもしれぬ命もあるだろう。
 今はいずれ手にする価値を得るかもしれぬ命の為に、おれ様のものである『宝』を守るだけのことだ。

 

『チェエンンジ!! ダイノ、ガイストオオ!!!』

 

 ひときわ大きな声と共に、ユニウスセブン上方でロボット形態へと変わったダイノガイストは、バーニアを点火して突然の乱入者に気を取られたジンHM2を二機、背から抜き放ったダイノブレードで真っ二つにした。
 先ほどの舞人とテロリスト達のやり取りは聞いていた。奴らはある意味でエクスカイザーとの戦いに敗れて太陽に身を投げた自分と同じであり、同時に決定的に違う。
 自らの心の赴くままに生き続け、その死さえも己の意思で決めたダイノガイスト。
 あまりにも大きすぎる苦しみに耐えかね、その苦痛から解放される術を求めて、半ば自棄に近い形で地球に住む多くものさえも巻き添えにして命を捨てようとしているユニウスセブンの被害者達。
 命を自ら捨てながらなお違う、違うのだ、両者は。

 

『貴様らはすでにおれ様のものである命を捨てた輩。自らを死人と呼ぶ抜け殻よ。せめてもの情けに、お前達が愛したという者達の眠るこの場で、このおれ様自身の手で葬ってやろう!』
「馬鹿な、ダイノガイストだと!? なぜ宇宙海賊がこの場に」
『今から自殺しようという連中が、なにを驚く。この宇宙の宝はすべてこのダイノガイストの者。貴様らがこの岩を落とす事でその宝が失われるような羽目になっては困るのでな。このおれ様直々に出向いてやったまでの事よ』
「先ほどのマイトガインとかいう奴と言い、貴様と言い、なぜ我らの邪魔をするのだ!?」
『なぜ、なぜだと? それを聞く貴様らこそが自分達のしようとしている事を理解しているだろう』

 

 一挙にユニウスセブンの地表を踏みしめて踏み込んだダイノガイストが、すれ違いざまに一機のジンHM2の胴を輪切りにした。
 オーブでの戦闘でもそうだったが、これまで自身に課していた直接的な殺害を禁じる枷を外している。

 

『奪われた家族や友人の無念を晴らす為と言いながら、貴様らのしている事が八つ当たりにすぎん事くらい、貴様ら自身気付いているのだろう? だがそれを認められぬのだ。それが誤まった道だと本心では気付いているのだからな』
「何を言う!? これは、我ら残された者達の正当なる権利だ。命奪われた者達の想いに報いる為に……」
『それは唯の言い訳だと言っている。死者の想いに報いるだと? たわけめ、死んだ者達はなにもしはせん。語りかける事も耳を傾ける事も何もな。だから貴様らは、命は足掻くのだろう。貴様らがそういう生き物だと、おれ様はこの三年で学んだぞ。
 だが、貴様らはそれを止めた連中だ。これ以上生きていたくないと、胸に抱えた苦しさに耐えきれず、それを開放する術を求めてこのような真似をしでかした本当の愚か者よ。 
 だが、一人で死ぬ度胸も無い。だから、同じ者達で肩を寄せ合い、死者の無念を晴らすなどと言い訳をし、この墓標を地球に落とそうとする。これだけの質量が落ちれば多くのものが死ぬ。貴様らと同じ思いをする人間共で地上は溢れるだろう』
「だからどうした、それこそが我らの望み、我らの悲願、我らの命の使い道よ!!」

 

 ダイノガイストのダイノキャノンでコックピット毎上半身を吹き飛ばされたジンHM2が、間もなく大きな爆発を起こして無残に散った。

 

『そうだ。その地獄の光景を望みながら、貴様らはそれを見る事を恐れているのよ。自分達が起こす惨劇を目の当たりにする事をな。だから、この場で、ユニウスセブンを落とす事と引き換えに自分達の命を捨てようとしているのだ。
 自分達は死者達の無念を晴らした、想い残す事はない、これでやっと楽になれる、これで家族の待つ場所に行けると、悲しみを背負う事に耐えられぬから、苦しみを抱え続ける事が出来ぬからと、貴様らは言い訳をしながら八つ当たりをしているだけだ。
 己らの所業の結果を知る事を恐れ、生きる事に疲れ、一人で死ぬこともできず、ただただ無責任に、無関係の者も見境に道連れにしようとしているのだ』

 

 十数メートル以上上回る巨躯のダイノガイストであったが、高機動型のMSであるジンHM2よりなおはるかに優れた機動性や運動性をみせつけ、抗うテロリスト達を一人、また一人と葬り続けた。

 

「き、貴様、貴様アァッ!!」
『だが、貴様らと同じ様に大切なものを奪われながら、貴様らとは違い、あいつらは誰を恨むでもなく、悲しみも何もかも構えたまま生きている、未来へ向かって、精一杯生きいている。おれはそんな二人を知っているのだ』

 

 びゅっと刀身にこびり付いたオイルを払い、ダイノガイストはこのエリアの最後のジンHM2が起こした爆発を背に、ダイノガイストはマイトガインや飛龍や三機のガオーMSが暴れているエリアをスキャンした。
 先ほどまで苦戦していたマイトガインも、合体した事でその戦闘能力を大幅に上げ、飛龍らの登場で戦力を分散させたテロリスト達相手に優勢に戦っている。これならば、ユニウスセブンを砕く事もそう難しくはあるまい。

 

『来たか』

 

 ダイノガイストが廻らした視線の先には、艦船用のガイスター特製ブースターを装備し、超高速でユニウスセブンへ近づきつつあるサンダルフォンの艦影があった。そしてもうひとつ、迫りくる艦影群はザフトのもの。
 ユニウスセブン破砕用のメテオブレイカーを搭載したザフト艦隊が、ようやく到着したのだ。ユニウスセブンをめぐる戦いは、本来の主役達が姿を見せるよりも早く終息へ向かいつつあるように見えていた。

 
 

――続く。

 

こんなのダイノガイストじゃないわ、ボケェという異論は認めます。これダイノガイストの皮をかぶった別人じゃね? と思う今日この頃。暇つぶしにでもなれば幸いです。お邪魔しました。