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戦後シン×ミーア_PHASE11

Last-modified: 2008-04-27 (日) 18:40:36

シンは軽くシャワーを浴びて直ぐにロッカー室を出た。
メイリンを待たせているので髪は殆ど乾かして居らず、時々滴る水滴が冷たくて気持ち
悪かった。

 

「もうちょっと待つから髪、乾かしてきたら?」
「・・・昔は待たせたら怒った癖に」
「今回は別よ。あたしが急に声を掛けたんだもん。風邪引かせたら大変だし」

 

いや、タオルで時々拭えば問題ない。

 

メイリンが声を掛けた理由が気になって仕方が無かった為、大き目のタオルを肩に掛け、
シンとメイリンは並んで歩き出した。

 

どこか人目に付かない場所に向かうのかと思えば、逆に人が多く居る食堂のテラスで
食事を取りながら・・・という事になった。
空の色は赤く映し出されている。
雲も無いのに雲の映像までプラントの空に張り付かせているのが、昔は変だと
思っていた物だが、慣れてしまえばこれが当然だと思うようになっていた。

 
 

メイリンは戦争が終わって直ぐにプラントに戻って来た。

 
 

最初は脱走兵として扱われた彼女だったが、それをアスランが庇ったのだ。
そもそもアスランにZAFTへの叛意有りというという理由で捕らえようとされた為、
アスランは逃げたのだ。
では、その叛意があるという証拠は何処にあるのか。

 

差し出されたのは一枚の写真。

 

オーブのカガリ・ユラ・アスハと、キラ・ヤマトというフリーダムのパイロットという
少年と会ったというだけだ。
そこで交わされた会話に付いて、ルナマリア・ホークが情報の取得に成功していたが、
その会話の内容は破棄されていた。
しかし、ルナマリアは会話の内容を告げた。

 

アスランはオーブに情報を売っていたという訳ではない事。
逆に決別の瞬間の写真であった事。

 
 
 

彼女が証言したのは勿論妹を助ける為である。
それは最高評議会も考えたが、結局は証拠不十分でアスランの叛意については保留とされた。
その為、メイリンに対しても処分の下しようが無く、メイリンはプラントに戻って来た。

 
 

食事の間、二人は昔話に花を咲かせ、そして食事が終わった頃、メイリンはまるで時間
潰しのようにゆっくりとデザートを食べていた。

 
 

何も言わず、微かな緊張感を持っている。
シンもそれを感じ取ってメイリンを急かすような事は言えなかった。

 

メイリンはブラウニーを小さく小さくとりながら口元に運び、再びフォークでケーキを
崩そうとした時に、口を開いた。

 
 

「アスランさんが・・・・。シンに協力して欲しいって」
「・・・・・・アスラン・・・・・」

 
 

突然出て来た名前は、時々ミーアの口から出ていた名前だったが、メイリンから彼の
名前を聴くと少し違和感を感じた。
この緊張感のせいかもしれなかったが、今それを分析しようというつもりはない。
アスランとミーアにシンには分からない繋がりがある事は、前から分かっていた。
先を進める様にシンはメイリンの言葉の続きを待つと、メイリンはちらりとシンを上目
遣いに見てから続きを口にした。

 
 

「あの人を・・・連れ戻したいって」
「はぁ!?」

 
 

アスランが何を言ったと?

 

それを、シンに協力して欲しいと?

 
 
 

シンが何かをしたいと思った時、いつも眼前に立ち塞がってきた彼をシンは思い出して
眉を吊り上げた。

 

以前はオーブへの反抗心。
今回は、ミーア。

 

「何を・・・今更!」
「アスランさんは本当に心配してるの。彼女の事。あの人には後ろ盾とか、そういうの
全くないもの。だから、守って上げなきゃって」
「今、この状況であの人はそんな事言ってるのか!?自分だって・・・・!」

 

プラントに戻れず、他に行く場所もなくオーブに居るくせに!

 

そう、シンは叫びたかったが、場所が場所である。
テーブルの上に置いた手を硬く握り締める事で最後まで叫ぶのを堪える。

 

「でも、最高評議会は彼女に対しての処置をまだ発表してない。戻って来た事だって
誰も知らないのよ?勿論、戻ってきている事を疑ってるパパラッチは居るけど、でも、
誰もまだ証拠は見つけられてない」

 

断定的に語ったメイリンに、シンは訝しげに眉を寄せ、彼女を見た。
何を持ってメイリンが断言できているのかシンには分からなかったのだ。

 

「何で、そんな事が分かるんだ?」
「調べたから」

 

どうやって?

 

と、その場で聞けない雰囲気だった。
それ以上は聞かないで欲しいとメイリンの瞳が語っていた。
だから今は尋ねる事を控え、シンはもう一度不機嫌にテーブルの上を睨みつける。

 
 

「出来ない。アスランには・・・・渡せない」
「シンは守れるの?守るつもりなの?・・・・・それとも、彼女を見殺しにしてもいい
と思ってるの?」

 
 
 

メイリンの声は淡々としていた。
そこに何の感情もないからこそ、彼女が冷静である事、アスランが本気である事、
そしてシンを本気で説得しようというつもりがあるのだと思い知らされる。

 
 

「守る。俺が、守ってみせる。殺させるつもりはない」
「どうやって?何をしたらシンは彼女を守れるの?今何を守ってるの?これからあの人
をどうするつもりなの?シンはずっとあの人を守り続けるつもりなの?」

 
 

畳み掛けるようにメイリンが静かに尋ねる。
今はブラウニーを崩す手も止め、シンをじっと見つめていた。

 

淀みのない純粋な疑問。

 

ただミーアと一緒に居た時間が心地良くて何の危機感も持ってなかったシンは、
メイリンの言葉に返す言葉が見つからない。
最高評議会がミーアを動かすとしたら、もっと時間が掛かるだろうと勝手に思っていた
のだ。
そういう意味ではアスランの対応の方が正しいのかもしれない。

 

一刻も早く彼女の安全を。

 

今のシンにはミーアの安全を確保する術がない。
せいぜい逸早く最高評議会の決定を伝えられる位か。

 

いや、結局それでは後手になってしまうのだと、今になって気付く。

 
 
 
 

「嫌だ・・・・・・!ミーアは・・・・・・・俺が・・・・・・」
「あたしもオーブに居た方が安全だと思う。プラントが第二のラクス様を育てる事に
なるかもしれない。それを評議会が黙って許すとは思えない」

 

ミーアの人気はメイリンだって分かっている。
しかし、人気だけでミーアの命が救われるとはメイリンには思えないのだ。

 
 
 

時間は流れる。

 

そして時間と共に記憶は薄れる物だ。

 

ミーアの喪失を嘆いたとしても、プラントは動く。

 

それくらいシンだって分かるだろうとメイリンは言外に伝える。
当然シンとてメイリンの言葉を理解していたが、反論する言葉も見つからない。
シンではミーアを守れないのだと、認めたくなかった。

 

「でも・・・ミーアがオーブに行く訳・・・・」
「・・・・・・今日、別ルートであの人にはアスランさんの意志が伝えられるように
なってるの」

 

瞬間、シンの脳裏に一人の人物の顔が浮かんだ。

 
 
 

ディアッカ・エルスマン!!

 
 
 

反射的にテーブルを激しく叩いて立ち上がり、シンはメイリンを鬼の形相で睨み付けた。

 

「メイリン!」
「・・・・・・・アスランさんは、シンにもオーブに戻って来いって。シンの故郷だから」
「俺は!絶対にあの国には戻らない!!!」

 
 

あの国にはもう、何も無いのだから。

 
 

シンはこれ以上メイリンと話す必要はないとその身を翻して自分のバイクが置いてある
駐輪場まで駆け出した。

 

メイリンはその背を暫くは目で追い駆けていたが、手元のフォークを動かした事を
きっかけにしてケーキの乗った皿に視線を落とした。

 
 

ブラウニーはいつの間にかぐちゃぐちゃになっていた。

 
 
 
 

シンが病院に着いた時には、もう病院の面会時間が終了していたが、シンはFAITH
であるため、特別に中に入る事を許可された。
病院側が勝手に察してくれたと言っていい。
ミーアの話を聞けば、いつもシンが帰った後もテレビを見て時間を潰しているらしいが、
今日は直ぐに眠ったのかもしれない。
扉から光が全く漏れていなかった。

 

扉を勝手に開け、中に入る。

 

ベッドまで近付くと、彼女は眠っているようだった。

 

すぅすぅという静かな寝息にシンは安堵と同時に言葉に仕切れない不安に駆られてシン
にしては大胆にもミーアの頬に触れた。
ただ手を当てるだけでは物足りなく感じて頬を撫でる。
ミーアは突然の感触に夢の中でも違和感を感じたのだろう。
気だるく手をシーツから出すとシンの手を払おうとしたが、シンがそれに従わなかった
ため、結局はシンの手に手を重ねてゆっくりと目覚めた。

 

「シン・・・・・・・・・?」

 

夢でも見ているつもりなのか、ぼんやりとした声にシンは切なくなってミーアに覆い被
さるように抱き締めた。

 

これにはミーアも驚き、意識が完全に覚醒した。

 

「シ。・・・・シン・・・?」

 

背に腕を通し、持ち上げるように抱き締めると、ミーアは胸が圧迫されて苦しげにシン
の肩や背を叩いたが、彼女が解放される事はなかった。

 

頬を触れ合わせ、耳に唇を寄せると、シンの呼気に反応してミーアの背がひくひくと
震えた。
何かを堪えるようにシンの腕に爪を立てるように強く握り締めて来た理由が分からなかったが、
そのままシンは囁いた。

 
 

「アスランには渡さない。ミーアは・・・・・・俺が守る」

 
 

これまでずっと胸に秘めていた想いを、初めて口にした。