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機動戦士ΞガンダムSEEDDestiny166氏_第18.5話

Last-modified: 2013-06-23 (日) 23:18:31
 

アスラン・ザラは、再びの当惑の中にいた。

 

(――確か、戦友同士〈みんな〉との飲み会で、大いに盛り上がっていた筈だったよな……)
本当に久しぶりだと、掛け値なしに言えるくらいの楽しい酒を飲むことが出来て。
ついつい深酒をし過ぎてしまった酔いと火照りが相応に響いている目にと映ったのは、
すっかり誰もいなくなり、照明も常夜灯を残して落とされてしまったほの暗いバーラウンジの天井だった。

 

いったいどれ程の時間が経ったのか? 
長椅子の端寄りの位置に一人腰掛けたままで、アスランの記憶はぷっつりと途切れていた。
……いや、「誰もいない」と言うのは、実際には正確な表現ではなかった。
普段とは比較にもならない亀足ぶりでだが、覚醒して行きつつはあるアスランの意識は、
そんな自身にともたれ掛かって来ている〝誰か〟の存在にと気が付く。
そちらへと目を向けてみると――
そこにはつい今し方までの彼自身と同様、完全に酔いつぶれてしまったらしいメイリンが、
その上体を彼にともたれかけさせながら静かに寝息を立てている。

 

そのあまりの近さに、思わず驚いて上体を跳び退らせたり〝させなかった〟のは、
上出来……などと呼べるものではなく、ただ単にアルコールの影響による鈍化がもたらしてくれた、
いわば怪我の功名の様なものだったわけだが。

この場にいるのは彼ら二人だけであり、一緒にと飲んでいた筈の他の仲間達の姿はもう、
誰も見えなくなっていた。

 

(置いて行かれたのか……)
やはり亀足なままでの思考で状況をその様に認識し、そんな自らの置かれた状態に驚いたりするでもなく
不思議と素直に納得をしてしまったと言う辺りは、流石にいい具合にアルコールの酔いも回っていて、
アスラン自身の思考も平常とは違う動きをしていたと言う事であったのかも知れない。

 

つまりは、その後にと続くアスランの一連の行動もまた、その様な「普通でない状態」の
産物と言う事になるのだろうが、自分達だけ置いて行かれてしまったみたいだなと思った彼が
とりあえずした事はと言えば――
自らの傍らで寝入ってしまっているメイリンを抱き上げて、彼女ら姉妹の部屋へと
連れて行こうとすると言うものであった。

 

 そんな状況それ自体が、一斉に姿を消した他の面々が実は仕組んだものであるとも知らずに……。

 
 

流石に遅い時間のせいか、幸い他の誰かに出くわす様な事もなしに、
アスランは所謂「お姫様抱っこ」の格好にしたメイリンと共にエレベーターにと乗り込んで、
彼女ら姉妹の部屋があるフロアへと昇る事が出来た。

目的の階にと到達して分厚い絨毯の敷かれた廊下にと出、ホーク姉妹にと割り当てられた部屋の
ドアが見える廊下の角を曲がった処で、アスランはこの場合、間違いなく最も丁度いい相手だと
言える人物――ルナマリアの背中を視界の端にと収め、声を掛けようとして……
寸前で、それを呑み込んだ。

 

その背中が見えたルナマリアはちょうど、互いに腕を絡め合うシンと並んで
共にその部屋へと入って行く処であったからだ。

 

いかな朴念仁のアスラン――まあ、眼前の情景を見るまで想像だにしてもいないと言う辺りからも
それは瞭然だとも言えるわけだが――であっても、流石に改めて気付かされる。
(ああ、そうか。あの二人はもう、そう言えば〝そういう仲〟なんだったな……)
と言う事に。

 

しかしながら、そうして結局声を掛けそびれてしまったが故に。
その眼前で、メイリンを送り届けるべき筈の部屋の扉は無情にもパタンと閉まってしまう。
さながら天の岩戸の如き、閉じてしまった部屋の扉を前に。
腕の中にメイリンを抱え上げたままアスランはただ立ち尽くすよりなかった。

 

一方、彼にとそんな状況をもたらしたその〝岩戸〟の中では――
当のシンとルナマリアの二人が部屋の内扉を潜ってから、互いに顔を見合わせてにんまりとしていた。

 

「隊長、来てたわよね?」
無論のこと部屋の防音性は折り紙付きなのだけれど、それでも心理的な無意識に
声を潜め気味にして確かめるルナマリアにシンも頷き返す。
「うん、来てた来てた。ちゃんとメイリンも連れてたよ」

 

どうやら上手く行ったみたいだと。
そう言い交わして人が悪いものではなしにほくそ笑むこの二人もまた、もちろん仕掛人達の内だった。
それも、ある意味一番重要な役目を担っての。

 

副官役としてアスランの身近にと接し続ける日々の中、
そんな彼にと本気で惹かれて行きつつあるメイリンの様子は周囲の面々の目には明らかで。
ザフト側からすると、この世界においては超越的な戦闘力を有するマフティーの面々と一緒にいる以上は
無自覚に「その手の緊張感」も薄れそうな危険性も逆に有るくらいなのだが、
それでも戦争のその最前線にと身を置いている以上、
「明日は誰にも判らない」と言うのはやはり、確かな事でもあるのだ。

 

だからこそ……と言う思いで見た場合の、いいタイミングじゃないか? と言う状況――
更には(悪い人物ではないにせよ)幾ら芝居だとは言ってもいささか露骨過ぎな
〝ラクス〟の介入と言う事態も、マフティーとザフトの面々をして、
「いいからさっさとあの二人に既成事実作らせてしまおうぜ!」
と言う方向へと舵を切らせる動機となっていたわけなので。

 

まずはアスランを酔い潰れさせて、メイリンとの二人だけでその場にと放置して。
他は示し合わせてさっさと撤収。
なんとなれば、アスランならきっと下心なしにメイリンを連れて来るだろうから、
ルナマリアはシンと共にそれを待ち受けて、こうして声を掛けられなくさせると言う形を作りあげてしまう。
そうする事によって外堀を埋めてしまおうかと言う格好であった。

 

――まあ、とは言えそのメイリンの方も、芝居ではなくて本気で寝入ってしまったと言うのは
いささか誤算でもあったのだが、とは言えこの企みを彼女自身には内緒でいたわけだから、
それもまたやむを得ない事ではあっただろう。

 

「メイリン〈あの子〉もあれで、やっぱり奥手だものねぇ……」
シンへと身体を寄せながら。姉として、心配半分気遣い半分と言う顔で言うルナマリア。

「うーん、けど相手はあの生真面目な隊長だしなあ……。ま、なるようになるだろって事かな?」
シンも二人の事を気遣ってもいれば、同時にそんな二人にはやっぱり微苦笑も覚えるなと言う感じで応える。

 

 あの二人もうまく行けばいいねと言う願いを共有しながら。
 仄暗い部屋の中、寄り添う二つの影はそっと重なるのだった。

 
 

(しかし、困ったな……)

 

扉〈岩戸〉の向こうのそんなやり取りなどは知る由もなく。
結局、声を掛けそびれてしまってそのまま眼前で閉じられたルナマリア達の部屋の扉と、
お姫様だっこにしているメイリンとを交互に見ながら、しばしの間廊下にと立ち尽くしてしまっていた
アスランだったが、だからと言って、このままメイリンを放置するなどもちろん出来る筈もない事で。

 

そのままの状態でしばし考えて――
その結果出した結論が、彼女を自分に割り当てられた部屋にと連れて行って代わりに寝かせ、
自らはその足でミネルバに戻ると言うものだったのは、その時点で自覚は全くないわけだが、
やはり平常でない頭ならではの状態の産物だったと言う他あるまい。

 

そうして戻って来た、一つ上の階にある自身の泊まる部屋の表扉を開けて、
アスランが室内へと踏み込んだタイミングで。
抱き上げたままのメイリンがちょうど目を醒ましかけたのか、「ん……」と、
微かな声を上げて小さく身じろぎをした。

 

それでうっかり彼女を落としたりしてしまわない様にと、そちらに気を取られていたせいで
アスランは気付く事が出来なかった。

 

――その状態で潜った内扉の影の中から、「アスラン!」と言う声と共に
背後から勢いよく抱きついて来たミーアの存在に。

 

完璧な奇襲だった。
アスランにしてみれば、ほとんど背中にタックルをくらった様なもので。
「うわッ!?」
思わずそんな声を上げさせられながら、そのままもつれ合う様に彼らはベッドの上へと倒れ込む――
もちろん〝三人〟一緒にだ。

 

そしてそんな状況に、奇襲を仕掛けた側である筈のミーアもまた、戸惑っていた。
抱きついたその相手の身体ボリュームがやけに大きく、同時にそこから伝わってくる半分ほどが、
明らかにアスラン――と言うより一般男性のそれではない柔らかな感触もあるとなれば、
戸惑うのもある意味当然だとは言えようが。

 

「き、君は……ッ!」
と、まだ上擦った意識を残したまま、ほとんど反射的にベッドの上で
上体を跳ね起こして声を上げるアスラン。
通常の反射的に当然の動きではあるが、この場合は更に体勢的な必然として
メイリンを組敷いてその上に覆い被さる格好にもなってしまっていた分も加味されて、
多分に酔いの残っているその状態で考えるならば、その動きは奇跡的なくらいに迅速だった。
そんな彼に対しての奇襲を仕掛けた側のミーアの反応はと言えば――

 

「えーと…………お邪魔だった?」

 

と言う、何とも微妙な雰囲気の驚きと苦笑とが入り交じった複雑なものだった。

 

そう言ったきり無言のままのミーアの視線の先は、アスランの背後にと向いていた。
じわじわと湧き上がって来る嫌な予感を必死に押さえながら、
それを辿って自身の後背を振り返り――アスランは思わず天を仰ぎたくなる。
そこには流石に半覚醒状態なのは明らかながら、今の衝撃で目を醒ました様子のメイリンが、
彼と同様にその上体を起こしていた。

 

(……その子、〝お持ち帰り〟して来ちゃったのよね?)
再び目をやったミーアのその表情が、明らかにアスランに向かってそう言っていた。
「誤解だ!」
そう叫びそうになって、危うくそれを喉元までで踏み止まらせたアスランは、
一つ息をつくと、「そうじゃなくて!」をようやくミーアに問い詰める。
「何で、君はこんな事するんだ!?」
ついつい大きくなりそうな声を、意識的に控えめに抑えようとするのには結構な忍耐が必要だった。

 

「え? 何でって……だって、普通離ればなれの恋人同士が久しぶりに逢ったらぁ……」
本人にしてみれば全く予想外のアスランの反応に、きょとんとした様子で答えるミーア。
もちろんその声は、眼前のアスランの努力になど気付いてもいないのだろう、
抑えるとかは一切ない普段通りのボリュームだ。
「〝ラクス〟は、そんな事しないッ!」
それを受けたアスランはアスランで、彼にしてみれば当然の反応をミーアにと返す。
もちろんさっきまでの努力など、どこかにすっ飛ばした大き目の声にとなってしまうのを
防ぐのは無理だった。
――結局の処、初めから互いの立場と意識とが違いすぎていて、
その実全く会話が噛み合っておらず、しかもその現実に気が付いてもいないと言うことなのだ。

 

だから、ミーアにしてみれば更に疑問もいや増すと言うわけで。
「えぇーっ!? しないの? …………なんで?」
故に重ねてそう聞くのも、それはそれで自然な反応であるのも確かなのだが。
そしてそう聞かれてしまうと、答えに詰まってしまうアスランだった。
当然ながらほとんど知られていない、普通に友人同士で、
既に彼女には別のパートナー〈キラ〉がいる――と言う、ラクスと自身の「現在の実際の関係」を、
例えそれが影武者たる彼女〈ミーア〉にであっても、ペラペラとしゃべってしまって良いものか? 
と言う意識があるが為に。

 

そうした〝立場が故に言えない本当の事〟と言うファクターこそは、この場に限らず
いずれ対峙の再会をする事になるキラ達との関係においても、
アスランに苦しい思いをさせる原因ともなって行くわけなのだが……。

 

しかし、アスランが躊躇したそれも、ことこの場においては意外な方面から
あっさりとクリアーされる事になる。

 

無言の内に向き合う格好となっていたアスランとミーアの間に、不可視の仕切りをするかの如く、
ラクス様!
と言う、決して大きくはなく、鋭いわけでもないながら、
妙に強力な制圧力を有したメイリンの声が不意に割り込んだ。
その静かな迫力で、アスランのみならずミーアの視線までも引き寄せるメイリンは、
そのミーアをひたと見据えて言った。

 

ラクス様。幾らザラ隊長とお二人して、今でも外向けには婚約者同士として振る舞う事に
 していらっしゃるとは言っても、〝お芝居でここまでする〟のは
 ちょっとやり過ぎなんじゃありませんか?
 それにこんな事、『ラクス様の本当の恋人さん』だって、
 きっといい気持ちはされないんじゃないかと思います!

 

アスランと同様に、メイリンもまたアルコールの強い影響下ならではの
(良くも悪くも)平常ではあり得ないモードに入っていたからだと言えよう。
完全に目が据わっている。
静かな、しかしだからこそ、今のメイリンには気圧される様な迫力が満ちていた。
そして、思いがけない形で暴露されてしまった「真実」に、アスランは無言で額を押さえ、
「えっ!? ええぇっ!! そ、それ、どういう事!? ねえ、どういう事?」
と言う、(無理からぬ話だろうが)理解力がオーバーフロー気味になってしまったミーアだけが、
一人戸惑いの声を上げるのみだった。

 

かくして、万事休したアスランは、ミーアにも「真実」を話して聞かせてやらねばならない
仕儀にとなったかと、意を決して口を開く。
「いや、どういう事も何も、メイリン〈彼女〉の言うその通りの意味だ、ミーア。
 本当はラクスと俺の間ではもう、婚約はとっくに解消してるんだ」
そう言われて、ぽかんとした表情になるミーア。
「あ……そ、そうなんだ……」
とは言うものの、それは明らかに感情が置き去りにされた脊髄半射的なだけの理解でしかなかった。

 

「そ、それって……やっぱり、貴方のお父さんとラクス様のお父様が〝ああなっちゃった〟せいで……?」
衝撃に打ちのめされながらも、必死でそれにと抗おうとする作用にも背を押されて、
ミーアは彼女なりに思い浮かんだ婚約解消の「その理由」を問う。
「いや、それは直接には関係無いんだ。今でもラクスとは互いに普通に友人同士なのは変わらないし……」
ミーアが想像した〝理由〟は確かに心情的には納得出来る落とし所であっただろうし、
事実そう見えても自然ではある筈なのだろうが、そこでその心情に上手く便乗して、そう言う事にして
この場を済ませてしまおうなどと言う様な、とっさの腹芸が使える人間では無いアスランは、
(例え不本意であったにしても)一度腹を括ってしまったからには、
あくまでも真っ正直に「真実」を、話せる範囲内での全てを包み隠さずに話して聞かせていた。

 

果たしてそれが正しかったのか? それとも間違いだったのか? については判断が難しい処ではあろうが、
少なくともこの場においての即効性と言う意味合いでは、残念ながらそれは裏目となった様だった。
アスランが語って聞かせた「表には出てこない真相」の内容の中でミーアが食いついたのは、
メイリンも口にしてしまった今のラクスの「本当の恋人」――流石にその名前までは出さない
キラ・ヤマト――の事だったからだ。

 

「え? じゃ、じゃあ、あの戦争の中、ラクス様と〝その人〟と……
 それにあなたとで、三角関係だったのぉ?」
何というか、完全にゴシップニュースをすっぱ抜きで知ったかの様な興奮を見せ、
ミーアは明らかに目を輝かせていた。

 

(なんでそうなる!?)
 思わずそう叫びそうになってしまったアスランだったが、もう一つの要素〈ファクター〉たる
カガリの事を知らないミーアに向かって、彼自身の説明もその存在がすっぽり欠けたものに
なっていたのだから、それもまた然りな帰結である筈だよね? と、
客観的にはそう言うより他にあるまいとなる以外無い状況ではあっただろう。

 

そして、やはりアルコールの影響下の故にアスラン以上に平常とは異なる諸々の判断力、
理解力が低下の状態にあるとは言え、流石に眼前でここまで〝ちぐはぐなやり取り〟を
演じて見せられ続けてしまっては、その事に気付かずにはいられなかった「もう一人」が、
そこで再びの介入をする事になる。

 

あの、隊長……? それにラクス様も。さっきから、会話がちょっとおかしくありませんか? 
 ラクス様もご自分の事なのに『ラクス様は~』ってまるで他人事みたいに言われてますし、
 隊長はずっとラクス様に向かって『ミーア』って……

 

(どう言う事ですか?)
実に自然な帰結でそう聞いて来るメイリンが、そもそもの始まりだとも言えるわけだが、
とは言えミーアを相手にすると素面〈普通〉でもだいたいアスランはペースが狂うのも間違いない事で。
あまりにもミーアの行動が斜め上過ぎて、そちらへの対応と噛み合わなさ気味も相当の
ミーアとのやり取りに引きずられまくって、明らかにメイリンも脇で聞いていると言うのを
うっかり失念していた。
今更遅いが、アスランはしまったと言う思いで自らのドツボへのはまり過ぎっぷりに
がっくりと肩を落とし、そんな状況の元凶でもあり、同時にもう一方の当事者でもあるミーアもまた、
「ラクスとして」やらかしてしまったと言う事にやっと気付いて、
(あちゃー……)と言いたげな表情で口元を押さえた。

 

結局、「副官として~(知っておいて貰うべきだとは思う)」と言う理由を捻り出して
秘密の真実〈ミーアの事〉のあらかたを聞かされたメイリンもそれでようやく納得し、
とりあえずの修羅場はひとまず落ち着きはした。
とは言え、幾ら広くとも同じ一室内に〝合意したわけでも無しに〟男女三人が一緒だと言う、
複雑で奇妙な状況である事には何も変わりは無かったわけだが。

 

その結果――ミーアとメイリンとが背中合わせに同じベッドでとそのまま眠り、
アスランは離れたソファーで横になる事にと落ち着いたのだった。

 

メイリンはやはりアルコールの影響もあって再びの〝おねむ〟な状態が揺り戻して来てしまっていたが、
部屋に戻ってからこちらの一連のやり取りで精神的にごっそりとやられた後では、
流石にアスランにもミネルバまで戻るとか、ロビーで過ごそうなどと言う気力も枯渇しきっていたし。
逆説的な話だが、この状況下ではむしろミーアにも一緒にいて貰った方が、
むしろ安心〈いい〉と言う事になっていたわけだ。

 

全く、散々な夜になってしまったなと、電池切れになりそうな意識の中でひとりごちるアスラン――
とんだ女難の散々な〝オチ〟はまだ、この先〈その朝〉にこそ控えているのだったが。
この時の彼に、そんな事を想像する余地などある筈もなく。

 

(なにこの状況……?)

 

と言う想いだけは三者それぞれに共有はしながらの、〝同床〟と〝異床〟の異夢がそれぞれ同居する
「奇妙な一夜」は、かくして過ぎて行くのであった。

 
 

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