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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第04話

Last-modified: 2011-04-05 (火) 01:08:21
 

「正規クルーは殆どが死傷・・・」
「その通りですラミアス技術大尉」

 

刹那達はアークエンジェルに回収され、現在同ハンガーにいた。
目の前ではマリューと、艦長代理を務めるナタル・バジルール少尉が状況把握に努めている。
この場には彼女達の他に、生き残ったクルー数名と、刹那、キラが同席していた。
メビウス0のパイロットは機体の損傷が激しいせいか、まだメカニック達と格闘していた。
「この後どうなるんでしょう・・・」
「・・・向こうに残っている戦力に依るだろうが、戦闘になる事は間違い無いだろう。
 だが、お前が心配する事じゃない。大人達が何とかする」
不安げなキラを励ます。こちらの戦力が不足している以上、
否応無くキラも戦闘に参加する事になるかも知れないが、それでも励ますのが、大人の責任という物だ。
「そうそう、心配するな坊主!」
「貴方は?」
軽いノリで現れたのは、紫色のパイロットスーツに身を包む青年だ。
「お会い出来て光栄です。『エンディミオンの鷹』殿」
「ええっ!?あの・・・?」
「その呼び方止めてくれないか。民間人もいるし、ちゃんと名前と階級があるんだからさ」
ナタルの言葉に、青年は軽く肩を竦める。その異名を聞いたキラが目を見開いた。
「あら、俺も有名になったもんだなぁ。こんな坊主も知ってんだから」
「当然ですよ、ムウ・ラ・フラガ大尉。連合軍期待の星ですから」
ムウ・ラ・フラガ大尉こと、『エンディミオンの鷹』の名前は
連合のトップエースとして華々しく報道されていた。
それこそ、中立国にいるキラが知っている程である。

 

「まぁ、輸送艦を落とされ部下を失い、揚句ボロボロの機体から降りてきて登場ってのは締まらないがな」
「それは・・・」
「あんたんとこの機体に乗る筈だった連中・・・守れなくて済まなかった」
ムウが護衛に付いていた輸送艦には新型のガンダムに乗る筈だった5人のパイロット候補生が乗っていた。
ムウは先程の軽い雰囲気から一転、真面目な表情でマリューに頭を下げる。
「・・・・で、さっきあのジンに乗ってたパイロットって、あんたか」
「そうだ」
ムウの質問に刹那は素直に答える。
「ふぅん・・・、浅黒い肌に堀の深い顔、典型的な中東系だな。コーディじゃねぇ」
ムウは刹那の顔を無遠慮に眺めると、腕を組んで1人頷く。
「じゃあ新型に乗ってたのは誰だ?あんたじゃ無いよな?」
白いガンダムのパイロットを探し、再びマリューに顔を向けるが、
肩を負傷している彼女が真っ当な操縦が出来るとは思えない。
「・・・もしかして、この坊主が?」
「あ、えっと・・・」
「そうだ。この子が、ヘリオポリスを守ろうとしてやった事だ」
戸惑うキラの背を刹那が押す。
「経緯はどうあれ、お前はヘリオポリスを守ろうとしたんだ。普通に出来る事では無い。堂々としていろ」
「へぇー」
刹那の話を聞いて、ムウが刹那にやったのと同様にキラの顔を覗き込む。一瞬だけ真剣な表情になるが、
「イケメンだなぁ」
若干引き気味のキラをそう評しただけで元の軽い表情に戻った。
「この色黒の言う通りだ。お前はその場で出来うる以上の事をしたんだ。
 それはデッカイ事さ。人間としても、男としてもな」
そう言ってキラの肩をポンポンと叩く。
刹那もムウも、言外にヘリオポリスに穴を空けた事を気にし過ぎるなと言っていた。
「無駄話はそこまでにして下さいフラガ大尉。今は、この現状からの脱出は急務です」
「無駄話って・・・。あのなぁ少尉、これは命を賭ける男同士の大事なコミュニケーションなの。
 女同士でもやるでしょ?」
「・・・分かりました。パイロットに志願して下さる民間人の2人は、直ぐに出撃出来る様にここで待機。
 フラガ大尉は乗機の修理に時間が掛かるでしょうから、そのコミュニケーションとやらが終わり次第、
 外の敵戦力を報告して下さい。
 ラミアス大尉はメビウス0の修理とジンの装甲取り付けをお願いします。私はブリッジに戻りますので」
ナタルは恐ろしい早口で言いたい事を言い終えると、唖然とする一同に背を向けてハンガーから出て行った。

 

「フラガ大尉、困ります。あまり彼女をからかわないで下さい」
「悪い悪い。あんまり肩肘張ってるもんだからつい、な」
「仕方有りません。艦長候補生の生存者は彼女しかいないですし、この状況では・・・」
「そうだよなぁ・・・」
「あのぉ・・・」
軍人同士の内輪話の最中に、キラがオズオズと割って入った。
「なんだ坊主」
「僕・・・パイロットに志願なんてしてません」
「ああ・・・それは・・・」
マリューが言い淀む。そこに黙っていた刹那が割り込んだ。
「現状、敵の規模が定かで無い以上、戦力は多い方が良い。あの新型の操縦は、お前にしか出来ない事だ」
現状、MSに乗れる人間は刹那とキラしかいない。
ジンに乗せるくらいなら、新型に乗っている方がキラも安全だろう。
何より、これはこの世界の大きな流れであると刹那は感じていた。
その流れを大きく変える様な事は、刹那としても本意では無い。
「酷な話かもしれないが、緊急事態で志願した民間人を登用ってしなきゃ、
 君は重犯罪者になっちまうからな」
「でも!」
理不尽な話に、キラは思わず声を荒げた。
「心配すんな。俺とこの色黒が、死んでも君を守るからな」
ムウの言葉に刹那も頷く。
「あっ、それと」
刹那とキラの首を両腕で引き寄せてムウが小声で呟く。
「君、コーディネーターだろ?」
「なっなんでそれを!?」
急な大声に、マリューが何事かと振り向くが、ムウが「心配無いから整備お願い」と言って
追及される前に終わらせる。
「・・・なんでそれを知ってるんですか」
改めて小声で聞き直すキラにムウがニヤリと笑う。
「いやぁ、こんなイケメンがナチュラルな訳無いと思ってな。カマ掛けたんだよ」
「ずっずるい・・・」
「あんたは別にブルコスじゃないよな」
キラとは逆の腕に捕まえている仏頂面の方を向いてムウが尋ねる。
「ああ、ブルーコスモスならオーブには住まないだろう?」
「はは、そりゃそうだ」
オーブは中立であり、多くのコーディネーターが住んでいる。
刹那の答えに満足したのか、再びキラの方に顔を向けた。
「という訳で、パイロット連中でお前を差別する奴はいない。
でも、他の連中には言わない方が良いな。悲しいけど、この戦争ってそういう戦争だからよ」
「分かってます。オーブにもそういう差別はありましたし・・・」
「そうか・・・。でも、良いじゃない。
 こうやって、ナチュラルとコーディネーターが一緒に戦うってのもさ」
そう笑うと、2人の首を捕まえていた腕をぱっと放した。
「多分俺の機体は次の出撃には間に合わない。だからな坊主、いやキラだったか。腹括れよ!」
「は、はい・・・」
自分の胸をトントンと叩いて、ムウがハンガーを出ていく。ナタルに敵戦力の概要を説明にいったのだろう。

 

「・・・理不尽な事、不条理な事は人生に珍しい出来事じゃない。
 問題は、それに屈せず、どう乗り越えるかだ」
「カマルさん・・・」
「あのムウ・ラ・フラガという男も悪い男では無い様だ。
 俺が全力で援護する。お前は自分が死なない事だけを考えろ」
未だに納得していないだろうキラに、刹那が諭す。
この少年は死なせてはならない。刹那の脳量子波がそう訴えてくる。
「カマルさん!ジンの事で少々お話があります。こちらに来て下さい」
刹那のジンの前で、部下の整備士達に囲まれながらマリューが大声で呼ぶ。
刹那はそれに手を挙げて応えると、キラにもう一度声を掛けた。
「自分の中の神に従え。それが、最良の道だ」
「ぼっ僕無宗教ですけど・・・」
「その内分かる。心に留めておけ」
キラは良く分かっていない様だったが、そこから先は自分で理解するしかない。
刹那はマリュー達のいるジンのハンガーに向かった。
「武装の話か?」
「装甲の話もです」
ジンの元に着いた刹那が本題を切り出す。改めて見ると、装甲も武装も無いジンはかなり心許無く見える。
「この艦は、新型の運用を前提にしているので、ジンで扱える武装が限られているんです。
 装甲の方は、何とかなりますが・・・」
「・・・・・・」
手渡されたジンでも使用出来る武装の一覧を見る。基本的に射撃武器は使用出来ない様だ。
新型の武装がビーム中心なのを考えれば仕方ないだろう。
「装甲は最低限でいい。武装は重斬刀と・・・、この新型の装備にある大型実体剣は使えるか?」
「使用するだけなら問題ありません。・・・でもビーム刃はジンでは起動させられませんし、馬力も・・・」
「問題無い。後、ミストラルのワイヤーはあるか?あれを・・・」

 

キラは手に持っている新型の武装に目を通しながら、
遠目でマリューと刹那が話しているのをボーっと眺めていた。
機械工、歌の先生というには、ジンの整備に口を出している刹那の姿は様になり過ぎている。
アクション映画などに出てくる、本当は凄腕の戦闘員なのに普段は昼行燈で、
いざとなるとカッコいいキャラのようだなぁとキラは考える。
「カマルさんって・・・一体何者なんだろう。トールなら知ってるかな」
無事シェルターに逃げ果せただろう友人を思い出す。
トールが刹那に言っていた、歌の下手な友人とはキラの事であった。
この一連の異常事態が終わって、オーブ本国で彼から歌を教わる事はあるのかとキラは思う。
戦争とは遠く離れた、平和な世界で―――

 

キラの思考を停止させたのは、激しい警告音だった。
『ザフト軍ジン接近!パイロットは順次出撃せよ!』
緊急事態を示すナタルからの通信が艦内に響く。同時に、キラの心臓も大きく跳ねた。
ナタルが言っているパイロットには、自分も含まれているのだ。
「おい坊主!ぼさっとすんなストライクに乗れ!」
「ストライク?」
固まっていたキラに声を掛けたのは、ストライクの整備を担当していたコジロー・マードック曹長である。
キラは聴き慣れない名称に首を傾げた。
「お前が乗ってた新型の名前だよ!今更機密云々なんて関係ねぇ!早く乗れ!」
「はっはい!」
尻を叩かれ、新型―――ストライクの下に急ぐ。
近付けば近付く程、灰色の巨人がこちらを威圧する様に大きくなる。
「今から僕は、これで何をするの?」
デッキに登りながら、傍から見れば奇妙な言葉が吐き出される。実際、キラには実感が湧かない。
さっきは無我夢中で、初めから乗るつもりも無かった。
だが今は違う。自分の意思でストライクに乗り込むのだ。
そこに発生する大きな差異に、キラは自分の体が重くなるのを感じた。
「ほら、気を付けろよ」
「あっ有難う御座います」
デッキの上で待っていた整備士にパイロットスーツを手渡される。素早く上着を脱ぎ、
ツナギになっているパイロットスーツに袖を通してヘルメットを被った。
これで、正真正銘のパイロット、戦争の一部だ。
『キラ君、装備はどうする?』
「あ・・・えっと」
コクピットに乗り込むと、マリューから通信が入った。装備とはストライカーパックの事だ。
用意されている3種のそれは既にキラの頭に入っていたものの、
自分がどれを装備すれば良いのか見当も付かない。
『キラは実戦も初めて同然だ。・・・アグニ以外のランチャーパックに、
 エールのビームライフルとシールドが適切だろう』
答えに窮しているキラに、刹那が助け舟を出した。彼が提案したのは、バッテリーの保ちが良く、
実弾兵器も充実しているランチャーパックから、MS相手には不必要なアグニを取り外した物だった。
新兵に有りがちな無駄撃ちによるバッテリー切れと、誤射による被害を同時に防ぐ事が出来る。
『・・・それで良い?キラ君』
「あっはい、お願いします」
良く分からないまま答えたキラが、事前に聞いていた通りストライクをカタパルトに移動させる。
するとカタパルト側面と上部が開き、中から武装が迫り出してきた。
『出撃したら直ぐに甲板に陣取れ。
 PS装甲にABC(アンチビームコーティング)シールドを装備したMSが、ビームを連射してくる。
 それだけで相手は怯む筈だ』
「カマルさんは?」
後ろに控える刹那のジンは、腰に重斬刀を提げ、両手でシュベルトゲベールを保持している。
関節の動きを阻害しない最低限の装甲に、左肩にはストライクのシールドが取り付けられていた。
『俺は格闘戦で確実に敵を仕留める。お前は撃ちまくってるだけでも良い』
まるで何十年も戦場にいるかの様な刹那の落ち着いた物言いに、キラは頼もしさを覚える。
見た目は二十代だが、もしかしたらもっと年上なのかもしれない。
『システムオールグリーン、ストライク発進どうぞ』
ブリッジから発進命令が下った。
『戦場では何時でも俺がいる。お前は1人じゃない、忘れるな』
「はい。ストライク、キラ・ヤマト、行きます!」
カタパルトから火花が奔り、ストライクが勢い良く艦外へ射出される。
初めて経験するGに、軽く呻き声が漏れるた。

 

続いて白いジンがカタパルトに足を固定した。
『システムオールグリーン、ジン・マジリフ機、発進どうぞ』
ブリッジから発進命令が下る。
ジンのコクピットに映る光景が、トレミー2改から00Qで出撃した時の光景とダブる。
まさか、またこうして戦艦から発進する日が来るとは思わなかった。刹那は皮肉そうな笑みを浮かべる。
「了解。ジン、カマル・マジリフ、出る!」
久しく発していなかった言葉と同時に、一つ目の巨人が戦場に飛び立った。

 
 
 

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