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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第27話

Last-modified: 2011-08-21 (日) 01:26:23
 

ヴェサリウスがプラントを発って3日、脚付き追撃の為に残っていたガモフと合流していた。
「待たせて済まないなゼルマン。報告を聞こう」
『はい。残念ながら、この艦では速力が違い過ぎましてな。
 脚付きはロストしました。その後航路を予測し、追撃を続けていたのですが』
「ですが・・・どうした?」
ゼルマンが報告で言葉を濁すのは珍しい。長年船乗りをしている彼ならば
脚付きの航路を予測するのは容易いだろうから、それ以外で何か予想外の事でも起きたか。
『艦前方に連合の艦隊を発見しました。小規模ですが、ここにいるのは不可解です』
送られてきたデータを見てクルーゼはふむと顎を撫でた。
送られてきた映像には、確かに連合の艦3隻による艦隊が映っている。
どこかを攻撃するにはあまりに小規模だし、偵察目的にしてはあまりに呑気な速力だ。
ゼルマンが対応に困るのも理解出来る。

 

「貴官はどう考える?」
『・・・この艦隊はつい先程からまるで動こうとする意思が見えません。
 辺りに気を張っている様で、偵察を行ったニコルも随分気を使ったそうです。
 こんな宙域でそんな事をしている理由は自然と限られます』
この宙域は連合の衛星軌道上より幾分外の宙域である。
つまりザフトが制宙権を持つ宙域の玄関なのだ。
そこに小規模な艦隊で防衛、という訳でもあるまい。
『恐らくは、脚付きを探していると考えられます。
 デブリベルトを避けて、最短で衛星軌道上に到達するにはこの宙域を通るしか無い』
「流石だなゼルマン。私も同じ考えだ」
『ならば早々に?』
「いや、彼らには火になって貰おう。虫を引き寄せる火にな」
『・・・成程、了解しました』
現在クルーゼ隊は脚付きを見失っている。
今艦隊を攻撃しては、脚付きに気付かれ逃げられる可能性もある。
ならば攻撃するのは脚付きをレーダー内に捉えてからだ。
クルーゼは微笑み、後で連絡すると言って通信を切った。
すると間髪入れずに、横に控えていたアデスが口を開く。
「宜しいのですか?我々にはラクス・クライン嬢の探索が・・・」
「分かっているさ。だが、敵を打ち倒す事こそが軍隊の本分だ。
 宙域を犯す敵がいれば屠るのが我々の役目だよ」
「しかし・・・」
「それに、あの艦隊も脚付きの動きを読んでここにいるのだ。近くに奴らが現れる可能性も高い」
クルーゼは確信していた。間も無くこの宙域に脚付きが現れると。
「もっと広い視野で物事を見ろアデス。後世の歴史家に笑われぬ様にな」

 
 

キラがアークエンジェルのブリッジに着く頃には、ミーティングのメンバーは全て集まっていた。
急いでドアをくぐると、睨みを利かせたナタルと目があった。
「遅いぞ少尉!病み上がりとはいえ、規律は守れ!」
「すっすいません」
ナタルの叱咤が妙に懐かしく耳に響いた。
周りを見渡すと、既に馴染みとなった面々がキラを迎えていた。
視線が自分に集中するのに慣れないキラは一度俯き、頭を掻いて口を開く。
「あ、えーとお騒がせしてすいませんでした。キラ・ヤマト復帰します」
出来るだけ声を張って見せる。しかし、同じMS乗りは誤魔化せない様だった。
ムウがキラの首に腕を回して引き寄せる。
「慣れない事するモンじゃないぜ。病み上がりなんだからよ」
「普通にしていれば良いのよキラ君」
「有難う御座います」
キラに優しい声を掛ける2人に、ナタルはこれ見よがしな咳払いをして話を始めた。
「緊急ミーティングを始めます。急な召集の理由は、パル伍長が探知した暗号通信でした」
「まさか・・・」
「はい。連合の物でした。通信によると、先遣艦隊が既に近くに来ています」
ナタルの説明に、ミーティングに参加していた者以外のブリッジクルー達も一斉に湧き立った。
連合がアークエンジェルの為に迎えを寄越してくれたのだから当然である。
「艦の識別は?」
「第八艦隊の物です」
「ハルバートン提督の部隊か!」
つい最近までただのオーブ国民だったキラには分からない事であったが、
地球連合軍第八艦隊はデュエイン・ハルバートン提督旗下の艦隊であり、
アークエンジェルが編入される予定の艦隊である。
同時にハルバートンは新型MS群及びアークエンジェルの開発計画の責任者でもある為、
ユーラシア連邦のアルテミスとは違って信用出来る相手である。
「俺達、もう安心なのか!?」
「まだ分からん。お前達は正規では無いとはいえ軍人だ。
 少なくとも、連合の勢力圏に入るまでは気を抜くなよ」
「りょっ了解」
立ち上がって喜ぶトールをナタルがピシャリと諌める。
こちらをロストしているとはいえ、ザフトの追撃部隊は未だ健在と見た方が良い。
最後まで気を緩ませてはいけない。

 

「他に質問は?・・・マジリフ曹長」
ナタルがクルーを見渡すと、今まで黙っていた刹那が手を挙げていた。
「この艦には、キラや俺の様な非正規な者が数多くいる。合流した後の処遇はどうする?」
刹那の質問は学生組、特にコーディネーターであるキラにとって他人事では無い。
軍人側からしたら最も厄介な質問にナタルは答えに窮した。
今自分が、彼らの安全と身の自由を約束した所で、自分はたかが少尉だ。
更に階級が上の者の一言で、処遇などいくらでも変わってしまう。
特に佐官クラスがごろごろいる第八艦隊と合流した後の事など、保障出来る訳も無かった。
「それは・・・」
「第八艦隊提督のハルバートン准将は、理性的な人です。貴方達を無碍に扱う様な事はしないわ」
そこに割り込んだのはマリューだ。
彼女にとってハルバートンは直接な上司に当たり、新兵時代の教官でもある。
つまり師弟関係にあるのだ。
「信じて良いんだな?」
「ええ」
艦内一信頼されているマリューが擁護に回った事で、一瞬緊張した空気が解ける。
ナタルは軍帽のつばに軽く手で触れマリューに礼をいうと、再び声を上げた。
「他に質問のある者は・・・いない様なら、これでミーティングを終了します。
 先遣艦隊にはこちらからも暗号通信を飛ばしているから、
 事の進展があるまで諸君は各々の任務に勤めて下さい」
ナタルの言葉を最後にクルーは解散となった。
「艦長、民間人にはこの事を?」
「もうこの艦に飽き飽きしている者もいるからな。
 まだ合流が上手くいくかは分からないが、それで大人しくなってくれるなら流してやれ」
「了解」
民間人達の不満はそろそろ限界であった。希望を持たせる事で、静かになってくれるなら有り難い。

 
 

ブリッジを出て行くクルーに紛れたキラは、希望が見えて明るい表情の皆の中、1人複雑な気分であった。
先遣艦隊と合流して、そのまま連合軍の勢力圏に入れたとして、ラクスはどうなるのか。
マリューが言うからにはハルバートン提督は信用出来る人なのだろう。
しかし、マリューが無碍には扱わないと約束した者の中に、ラクスは含まれていない。
少し不思議な女の子ではあるが、話し方、仕草からキラでも
ラクスが良家の出身だというのは何となく分かっていた。
敵国のお姫様は、連合で一体どんな待遇を受けるのか。
「どうしたキラ」
「えっいや・・・」
「ラクス・クラインの事か」
ブリッジと他の区域を繋ぐエレベーターから降りると、刹那が急に声をかけてきた。
ずっと考え事をしていた為気付かなかった。
それにしても、なんでこの人はこんなに勘が良いのだろう。

 

「・・・それはどうしようも無い事だ」
「そう、ですよね」
周りに人がいると話し難いという事で、刹那はシミレーション室でキラの話を聞いていた。
キラの言う通り、プラントの要人の家族であるラクスが連合本部でどんな扱いを受けるかは分からない。
しかしそれは下士官、しかも非正規な刹那やキラにはどうする事も出来ない事案である。
が、ラクスはC.Eで刹那が見つけた初めての脳量子波持ちの人間である。
上手くいけば、対話の先駆けになってくれるかもしれない彼女を、
無責任に扱われるのは刹那としても避けたい。
「キラ、ここだけの話だが」
「何ですか?」
他に誰もいないにも関わらず、刹那はキラに顔を近付け声のトーンを下げた。
キラもそれに釣られて小声で聞き返した。
「近くに来ている艦隊にも、ラクスをどうこう出来るという事は無い。
 彼らは第八艦隊の本隊から派遣されてきた。ここまでは分かるな?」
「はい」
「本隊は恐らく衛星軌道上にいる。ここからでは更に長い時間がかかる。
 それまでラクスの処遇は保留という事だ」
刹那の話は、本来ならさり気無く、独り言の様に話すのが基本なのだが、
彼にそんな器用な芸当は出来なかった。
「・・・少なくとも本隊に着くまではラクスは安全で、僕達が共にいられると?」
「そうだ。それまでに何があるかは、俺にも分からないが」
また暫くキラは考え込む素振りを見せた。プラントの人間といえど、この艦で唯一の同類なのだ。
会って日が浅いとは言っても真剣になるという物だ。
「ただし、周りの反感を買う様な事は極力避けろ」
「それは・・・気を付けます」
そう付け加えると、キラは歯切れの悪い返事を返した。
ある程度までなら、規則を破るのは別に構わないと刹那は思っている。
しかし、ナチュラルの反感を買う様な事はキラの為にも避けるべきだ。
理解者がいるとはいえ、ナチュラルとコーディネーターとの溝はそんな簡単に埋まる物では無い。
「俺はジンの調整に戻る。そろそろ夕食の時間だな?」
「あ・・・はい」
夕食の時間という事は、ラクスの所に行く時間だ。
刹那がドアを開けると、キラも急いで食堂へ向かった。

 
 

ラクスとの夕食を済ませた後、キラは空になったトレイを片付ける為食堂に向かっていた。
「・・・なんだろう?」
食堂に着いてみると、民間人が騒いでいる。
キラが食堂を見渡してみると、学生組のメンツが目に留まった。
「どうかしたの?」
「あっキラか。実は」
カズイがキラの姿を認めて話始めた。
「例の艦隊と通信が取れたんだって。どうもフレイのお父さんも乗っているみたい」
「フレイのお父さんって軍人だったの?」
「いや」
興奮しているフレイの下からサイがやってきた。
フレイを抑えるのに疲れたらしく、襟を直しながら溜息を吐いている。
「フレイのお父さんは連合の事務次官なんだ」
「だから来てるのか」
艦隊の存在を知って喜ぶ民間人達と一緒になっているフレイを横目で追ってから、
キラは出来るだけ何も無い風に返事を返した。キラはフレイの言った事を忘れた訳ではない。
しかしフレイは初恋の人だ。それに、人に悪く言われたからといって、
その人を嫌いになれないのがキラである。今はただ、再会出来る親子を祝おう。
そう思った矢先、艦内放送から緊迫したミリアリアの声が響いた。

 

『第一種戦闘配備!繰り返します、第一種戦闘配備!
 先遣艦隊がザフトの攻撃を受けている模様!各戦闘員は速やかに・・・』

 

「艦隊が・・・!?」
切迫した声に民間人が固まる中、フレイがサイに飛付いた。
「パパ・・・大丈夫よね!?」
「ああ、心配無いよ。フラガ大尉だって、マジリフ曹長だっているんだ」
フレイの肩を力強く抱いて彼女を落ち着かせると、サイはカズイと共に食堂を出る。
「僕も・・・!」
「お前はダメだ!」
その後に付いていこうとしたキラを、サイは強い語気で止めた。キラも思わず固まる。
「調子、まだ良くないんだろう?それに艦長からの許可も」
「でも・・・」
「たまには僕達に任せてよ。MSに乗れる訳じゃないけどさ」
カズイにまでそう言われては、キラも付いて行くとは言えなかった。
遠ざかる2人の背中を見送りながら、茫然と立ち尽くす事しか出来なかった。

 

つい先程までジンの調整を行っていた刹那は、
先遣艦隊が攻撃を受けているとの報告を受け、調整を中断、出撃準備に入っていた。
「敵の戦力は?」
『正確な数は不明ですが、機種は全てジンだそうです』
『って事は、まだ野郎の部隊かは分からないのか』
ミリアリアの報告に、既にメビウス0に乗り込んだムウが唸った。
しかし、こんな都合良い位置にいるザフトの部隊となると、
例の追撃部隊である可能性も十分考えられる。
「フラガ大尉、確認するが、今回キラの出撃は無い。艦長も了承済みだ」
『分かってらぁ!坊主なんていなくても、俺達で方を付けるぞ』
「ああ」
既に艦内では当然の様になっていたが、本来キラはMSパイロットでは無いのだ。
ムウと刹那の間には、大人としての義務感が存在していた。
出撃準備を整えたジンとメビウス0がカタパルトに移動する。
『曹長、ジンはまだ調整が終わっていません。くれぐれも無理をしないよう』
「了解した」
機体の物理的な調整はマリューのお蔭で完璧だったが、
パイロットに最適な重心をまだ見つけられていない。
本来ならハンガーから出しての試験運用をしながら見つける物だが、
艦を常に最高速度に保っている現状でそれは望むべくも無かった。
『ジンマジリフ機、メビウス0、カタパルト固定完了。システムオールグリーン。発進どうぞ』
「了解。ジンマジリフ機、出る」
スロットルを入れると、カタパルトの加速と共に蒼い機体が宇宙空間に押し出される。
『先行くぜ!』
同時に出撃したメビウス0がスロットルを全開にし戦闘宙域に突入していく。
ジンもそれを追って、一回り大きくなった左肩のマントを靡かせて先遣艦隊の援護に向かった。

 
 

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