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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第44話

Last-modified: 2011-12-27 (火) 00:03:39
 

敵が隊を2つに分けた。こちらと迎撃中のメビウス隊を合流させないつもりだろう。
『正面から突破するしかねぇな』
「ああ」
分かれた3機が刹那達の方に向かってくる。
メビウス隊と分断されるのは痛いが、相手が少数精鋭で数の差などが無いとなると
戦術よりも個々の戦闘力で雌雄を決する面が強くなる。
ここは向かってくる3機をこちらの3機で迎え撃つ他無い。
下手に小細工をしようとして戦闘力で押し切られる愚は避けたい。
『じゃあ俺は後方から援護するぜ』
「任せる」
『正面は3対2になって辛いと思うが気張れよキラ』
『はい!』
隊長らしく刹那とキラに声を掛け、ムウはメビウス0を他の2機より半歩後退させた。
その段階になって、向かってくる突出した1機の機種が目視で確認出来る距離まで近付くと、
その見慣れない姿にキラは目を白黒させた。
「あれは・・・」
『デュエル?でも装備が』
頭部の形状とカラーで辛うじて機種を把握するが、それでも疑問符を付けたくなる程
その姿は以前の物と違っていた。
細身だった機体がずんぐりとした追加装甲で覆われ、一回り大きな機影を有するデュエルが
以前よりも上がった加速性能でストライク目掛けて突進してくる。
「キラ、奴はASを装備している。気を付けろ!」
『カマルさんは?』
「ブリッツとハイマニューバを相手にする。大尉、援護は任せる」
『頼まれた!』

 

キラはデュエル、刹那はブリッツとハイマニューバ、
この組み合わせでは先の戦闘の時と同じ組み合わせになるが、今回はムウの援護がある。
『アークエンジェルには行かせない!』
キラの一言がムウと刹那の気持ちを代弁していた。
その為にも、早くこの奇襲部隊を撃退して、正面の防衛に当たらなくてはならない。
デュエルとストライクが互いの射程圏内に入り、銃火を交え始める。
キラの今の状態は分からなかったが、何か異変があれば直ぐにでも
フォローしてやれる距離を保つのが理想だろう。
デュエルASに遅れて、ブリッツとハイマニューバもジンメビウスの射程圏内へ侵入してくる。
刹那は1マガジン分の榴弾を立て続けに撃ち放つと、直ぐに武装を重斬刀に持ち替えた。
榴弾の弾幕に怯んだ2機の懐に躊躇無く飛び込むと、ハイマニューバに連装レールガンをお見舞いする。
寸での所で躱されるがそれも気にせず、発射の反動を使って立ち直りが遅いブリッツに斬り込んだ。
ビームサーベルの展開も間に合わず、トリケロスで重斬刀の突きをいなすブリッツ。
しかしジンメビウスは体勢を崩す事無く、そこから重斬刀を振り下ろした。
刹那の苛烈な攻撃が容赦無く続く、がしかし苛烈過ぎる攻勢は隙を生むものだ。
鍔ぜり合う形となったジンメビウスに、フリーになったハイマニューバが照準を合わせた。
PS装甲の良い所は、こうした通常なら誤射を気にする様な場面でも躊躇無く実弾を撃ち込める所である。
しかし、ハイマニューバの火砲は結局放たれずに終わった。
ハイマニューバを2基のガンバレルが狙撃、回避運動を強いられたからだ。
的確な援護に有難味を感じながら、刹那はその間にジンメビウスは重斬刀とトリケロスとが
接触する部分を起点にブリッツを飛び越える様に一回転、ブリッツの背後を取る。
ブリッツが振り向く暇も無く、背中のメインスラスターに渾身の斬撃を与えた。
しかし、ブリッツがよろめいただけでメインスラスターは無傷だった。
「やはり無理か」
今度こそハイマニューバの射撃がジンメビウスを襲い、刹那はその火線を回避した。
構造的に脆いメインスラスターなら或いはとも思ったが、そこも完全にPS装甲に覆われており
実体剣では刃が立ちそうに無い。
これまで通り、旧世代機でGN粒子対応型と戦うつもりでやる他無いだろう。
西暦でもそうだった様に、上位機体に対抗する為には、旧世代機は相当に無理をしなければならない。
ジンメビウスの状態は今までの酷使で既に全身イエローゾーンだが、この戦闘では保って貰わなくては困る。
ブリッツから放たれるビームを回避しつつ、牽制のマシンガンで応射した。
「これは・・・時間が掛かるな」
早く正面の部隊の迎撃に向かわねばならないというのに、
決め手に欠けた戦いは早くも長期化の様相を見せていた。

 

一方、キラはデュエルASの猛攻に苦戦を強いられていた。
ビームサーベルを紙一重で躱した直後に両肩の新武装であるミサイルとシヴァがストライクを襲う。
実弾の為直接のダメージは殆ど無いと言って良かったが、弾幕とは無条件で晒される人間の気力を削る物だ。
そしてキラにとって何より辛いのが、デュエルASの動き、
正確に言えばそのパイロットの動きがまるで読めない事だった。

今まで何となく受信出来ていた電波が、突然大きなノイズに覆われた様な感覚だった。
前回の戦闘での暴走が、キラに人の思考を読むのを恐れさせているという要因もあったが。
どちらにせよ、完全に防戦一方な事に変わり無い。
読みを抜きにした自分の技量がどれだけ未熟であったか見せつけられ、キラは唇を噛んだ。
しかし、刹那から任されたからにはこの敵を倒すのは自分の仕事だ。
キラは歯を食い縛り、シヴァの直撃を受けてよろけたストライクに前進を指示する。
ビームサーベルを抜き、デュエルASと切り結んだ。
鍔迫り合いの最中にシヴァが飛んでくるかと警戒したが、
その代りに装甲を叩いたのはデュエルASの装甲だった。
『どうしたストライク!前見せた力を見せて見ろ!』
「接触回線!?」
突然コクピットに響いたデュエルASのパイロットの声にキラは面喰らう。
鍔ぜり合う両者の間にあった隙間を埋め、肩の装甲同士を接触させたのだ。
自分と同世代らしい若者の声が更に激しく続ける。
『俺のプライドを傷付けた罪は重いぞストライクッ!』
「プライド?」
そんな物の為に戦った事など無かったキラは唖然とした。
その隙を突いて、デュエルASの膝がストライクを蹴りあげる。
浮いた様に仰け反ったストライクに追撃の肘打ちが突き刺さった。
「あうっ!」
重量が増したデュエルASの、まるでトラックと正面衝突したかの様な衝撃の連続に、
キラが意識を奪われなかったのは奇跡的だっただろう。
大きく突き飛ばされたストライクにデュエルASが追撃をかけようとするが、
ガンバレルの援護射撃がそれを防ぐ。
『冷静になれ!奴は格闘戦に強い、距離を取るんだ!』
「でも、それだと時間が掛かり過ぎます!」
ムウの助言を振り解き、キラは再度ビームライフルを撃ちながらデュエルASに挑みかかった。

 

「あんの馬鹿!」
技量の差は一目瞭然なのにも関わらず、尚もデュエルASに接近戦を挑むキラにムウは舌打ちする。
「曹長、暫くそっちの援護は出来ねぇ!持ち堪えられるか?」
『心配するな。持たせる』
2機の敵機との戦闘を強いられている刹那はムウの援護無しでは辛い筈だが、
返ってきた無線には戸惑いも焦りも見られない。
こういう時の刹那は非常に心強いが、彼は無理をしていても
冷静な声が出せる男だという事を短い付き合いながらもムウは理解していた。
「キラ、お前のそれは勇気じゃない」
相手との実力差を弁えず勝負を挑むのは新兵の悪い癖の様な物だ。
それで死んだ人間をムウは両手で数え切れない程見て来た。
必要な時にも援護を頼まないやせ我慢な性格の刹那といい、
自分には何か呪いでも掛かっているんじゃないかと疑いたくなる。
「まぁ、そんな連中の面倒見るのも隊長の努めってか」
これも自分の運命かと溜息1つで自分を納得させて、
ストライクを迎撃しようとするデュエルASにガンバレルの弾幕を浴びせる。
デュエルASの被っている追加装甲はザフト製なのだろう。
PS装甲では無い分、ガンバレルの弾幕でもそれなりの効果が期待出来た。
ムウの期待通り、弾幕を嫌がって回避機動を取る
デュエルASにストライクが上手い事接近する。
後は上手くガンバレルをチラつかせれば、デュエルASの行動は制限出来る。
そうすれば、技量で劣るキラでも反撃の糸口が掴めるかもしれなかった。

 
 

メネラオスのブリッジは先程と変わらない喧噪の中にあった。
正面の敵本隊に対してメビウス部隊の半数を展開、アークエンジェルも新たに迎撃に加わったのは良い。
しかしそれも時既に遅し、敵本隊は艦隊最前列に位置するドレイク級に食付き始めていた。
各艦からイーゲルシュテルンの光が上がり始め、艦隊全体が一気に明るくなる。
アークエンジェルの途中参加で予想以上の敵機を撃墜出来ている筈だったが、
敵の勢いは全く衰えを見せない。原因はやはり―――
「ベルグラーノ大破!」
「・・・クルーゼか」
拡大されたベルグラーノの爆炎から、1機のMSが飛び出していくのが確認出来た。
艦隊に接近してくる間、ミサイルを迎撃し続けていたシグーである。
最早あの機体にクルーゼが乗っている事を疑う者はいなかった。
榴弾2発で艦船を撃沈出来る男がそういる筈も無い。
「セレウコス、アンティゴノスはベルグラーノが抜けた穴を埋めろ!
 カサンドロス、プトレマイオスは現状を維持、1機でも多く撃墜せよ!」
最前列でMSの猛攻に晒されるドレイク級を助けるなら、
ネルソン級各艦を前に出して対空砲火を厚くする事で互いの死角を無くすのが得策だ。
しかしハルバートンはそうしない。何故なら、ドレイク級に攻撃を集中する
MSを後ろから攻撃する方が、敵機を墜数は稼げるからだ。
ドレイク級はいわば攻撃を後列まで届かせない為の壁であった。
非情な様だが、第八艦隊の任務はアークエンジェルをアラスカに送り届ける事であって
所属艦を守る事では無い。
ドレイク級各艦の乗員もそれは十分理解していた。
その策が功をそうしてか、今の所前線を突破してくる敵はいない。
だがネビュラ勲章持ちのMSパイロット相手では、ドレイク級の壁など大した時間稼ぎにもなるまい。
電子海図に視線を移せば、今まで後方で待機していたザフト艦隊も遂に動き出した様だ。
MSへの対応に手一杯のこの最中に、艦砲射撃の一斉射でも開始されれば
そのままチェックメイトを決められる可能性もある。
卓上演習ならもうとっくに詰みな戦況だった。
それでもハルバートンは死に逝く部下へ敬礼する暇も惜しんで、頭をフル回転させた。
今は生きる者達の事を考えるべきだ。
アークエンジェルで出会った若者達も今この瞬間、自分の頭上で戦っているのだ。

 

「駄目です、セレウコス沈みます!」
残ったイーゲルシュテルンを懸命に撃ち放ってはいるが、
ドレイク級特有の、船体からはみ出たミサイル発射管の喪失や、
船首が千切れ飛んだ様を見れば、セレウコスが死に体なのは誰の目にも明らかだった。
トドメとばかり周囲のジンが砲火を集中させ、セレウコスが完全に沈黙する。
第八艦隊2隻目の喪失に、メネラオスのブリッジに沈黙が降りる。
しかしそれは一通の電信によって破られた。
「アンティゴノスより電信、我後退能力消失、艦隊は隊列を整え直されたし、です!」
「・・・っ!」
アンティゴノスの殆ど遺言といってよい電信に、ハルバートンは己の無能さを呪った。
アンティゴノスは自分が盾になっている間にネルソン級を後退させろと言っているのだ。
「艦長」
「・・・分かっている。カサンドロス、プトレマイオス後退、メネラオスの両翼に付け!
残る正面担当のメビウス隊も後退だ」
アンティゴノスのクルーに頭を下げると、ハルバートンは鋭い指示を出した。
ドレイク級が損失したとなれば、戦術を代え、新たに隊列を組み直す必要がある。
ハルバートンの命令に従い、2隻のネルソン級が後退を始めた。
前列に艦を配備しないのは、各艦の火力を最大限に生かす為だ。
アガメムノン級とアークエンジェル、それにネルソン級2隻が加われば、
連合でも有数の火力を誇る砲列となる。
しかしこれは極端に防御が薄くなる為、殆ど最後の賭けと言っても良い。

 

「アークエンジェルは既定の時間になったら降下を開始。
 場合によっては私の判断で早まるかもしれんが、それまでは付き合って貰うぞ」
『了解しました』
降下時刻が早まれば地球の自転の影響で降下地点がズレる事になるが、
衛星軌道上でみすみす敵の手に掛かる事を考えれば仕方の無い判断だった。
最悪の場合は神頼りとはよく言ったものだ。
「アンティゴノス、沈みます!」
囮となった艦が集中砲火の末火球に変わる。
クルーの誰しもが、赤く照らし出されたそれに一瞬目を奪われた。
これで第八艦隊所属のドレイク級は全滅した事になる。
「しかし、無駄な犠牲にはせんぞ。各艦、射撃開始!」
ハルバートンの号令と共に、アンティゴノスの爆炎から
こちらに向かってくるMS隊目掛けて各艦の一斉射が放たれた。
これまでの火力とは比べ物にならない火線が、突入してくる敵MS隊に叩き込まれる。
先程の戦術の様に陽動と本命が分かれている訳ではない為、命中率は下がる。
しかし戦術から解放された火力は、それを差し引いても有り余る威力を発揮した。
あまりの数の火線に、突入してくる敵MS隊が次々と被弾するのが目に取れる。
クルー達はその光景に歓喜の表情を浮かべるが、ハルバートンにしてみればこれは一時的な物だ。
こんな火力任せの攻撃が何時までも通用する筈が無かった。

 
 

ムウはキラの援護に集中しながらも、眼下の光景に戦慄していた。
綺麗に砲列を作っていた筈のドレイク級各艦が火に包まれ突破されていく。
第八艦隊とアークエンジェルが残った艦船総出で迎撃の砲火を浴びせているが、
それも何時まで持つか。こちらの戦況も未だに硬直したままだというのに。
「これは本格的に不味いな・・・」
これで接近中のザフト艦隊が第八艦隊を射程に捉えたら終わりだ。
焦りの色が強くなるムウに、更なる悪い情報が眼前に現れる。
別れていたイージスとバスターがこちらに向かってきているのだ。
それが意味する物は、迎撃に出ていたメビウス隊の全滅である。
助けられなかった事を悔やみつつ、ムウは無線でメネラオスに連絡を取った。
「メネラオス聞こえるか?先に出てた連中がやられた、全滅だ」
『了解した。・・・・・・アークエンジェル所属の部隊は後退して、本隊と合流せよ』
「なっ・・・了解した」
思わぬ後退命令に一瞬狼狽えるが、今はその事で問答出来る状態では無い。
ムウは問いを飲み込んで命令に従った。
「キラ、曹長聞こえるか?後退命令だ、本隊と合流する」
『えっでもそうしたら、新型が第八艦隊に・・・』
『提督に考えがあるんだろう。ここは後退だ』
狼狽えるキラに刹那が言う。納得していない様子だったが、キラも『了解』と応えた。
自分達が後退して第八艦隊と合流するという事は、同時に敵G部隊を第八艦隊に接近させる事を意味する。
それを考えれば、キラの態度も仕方ないだろう。
だがこの敵を、手負いのメビウス0を含めた3機で相手取るのが辛いのも事実だった。
それにハルバートンからすれば、ストライクを墜とされるのは何としても避けたいのだろう。
各機がされぞれ弾幕を張りながら、第八艦隊へ後退を開始した。

 
 

迎撃に出てきたメビウス隊の最後の1機をイーゲルシュテルンで堕としたアスランは、
イザーク達の援護に回ろうと機体を反転させる。
しかしそこで戦闘している筈のアークエンジェル所属の部隊は、弾幕を張りながら後退を始めていた。
「艦隊と合流するのか?」
『罠、かもしれないな』
ディアッカの言葉に、アスランは無暗に敵機を追わない様他の隊員に指示を出す。
『何故だアスラン!本隊も突入を開始しているんだ、追わない理由は無いだろう!』
それに真っ先に異議を唱えたのはやはりイザークだった。
ギリギリの所で自制しているが、言葉を間違えれば単機でも突っ込んでいきそうである。
「勿論アークエンジェルにはここでトドメを刺す。
 だが慎重に、突入する本隊側から攻めるぞ。
 こちらはもう残弾、バッテリー共に万全じゃない。
 周りに味方のいない状態での戦闘不能は避けたいからな」
『・・・分かった』
部隊の中でも1番消耗している自機の現状を把握したのか、
イザークは渋々といった感じでアスランの指示に従った。他の機体も消耗が激しい。
特にブリッツは、ジンメビウスに攻撃を貰い過ぎてバッテリー残量が心許無かった。
「・・・ニコルは1度帰投しろ。補給を受け次第再出撃だ」
『そんな、アスラン!』
今戻れば、補給している間に戦闘は終わっているだろう。
事実上の離脱命令に、ニコルは悲しみの声を上げた。
因縁の相手であるアークエンジェルと雌雄を決する大事な一戦で、
戦友と共に戦えないのはパイロットとして辛い事だった。
しかしそれでもアスランは、優しく諭す様に続けた。
「俺は、お前の母に必ず、お前を生きて帰すと約束したんだ。戦果より大切な事なんだよ」
ニコルの母であるロミナは、まだ幼さを残すニコルが戦場に出るのを心配していた。
だから彼女は、ニコルが慕っているアスランに息子の無事な帰還を願ったのである。
『・・・・・・分かりました』
母の名を出したのが効いたのか、ニコルも大人しくアスランの指示に従った。
「よし、ザラ隊は本隊と合流、敵艦隊を殲滅しながらアークエンジェルを墜とす」
アスランの号令に部隊の全員が『了解』と答えると、
ブリッツ以外の4機は直下にいる本隊へと向かった。

 
 

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