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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第62話

Last-modified: 2012-04-23 (月) 10:31:47
 

刹那とキラは、アークエンジェルに戻ると直ぐに自分のMSの所に直行しようとした。
模擬戦の感覚が残っている間に、機体の調整を行っておきたかったからだ。
しかしいざ車を降りると、仁王立ちしたマリューが
2人を通さんとばかりに立ちはだかっていた。
「ラミアス大尉、先に言っていた通りキラが起きたから連れてきた。
これからMSの調整に入ろうと思うが」
「・・・・・・」
「・・・マリューさん?」
刹那とキラが話し掛けても俯き返事をしない彼女に、2人は首を傾げる。
無視して通り過ぎる訳にもいかず、反応を待つ事数分。マリューが漸く口を開いた。

 

「・・・2人とも、先に言う事があるんじゃないかしら?」

 

低く唸る様な声で言い知れぬプレッシャーを放つマリューが、
ゆっくりと顔を上げて刹那とキラを睨んだ。
「何の・・・事か」
ハンガーへ入り熱い外気は遮断された筈なのに、
キラは自分が大量の汗を掻いている事に気付いた。
乾いた喉から絞り出された苦し紛れの言葉は、
どうやらマリューの感情に火を灯してしまったらしい。
マリューは一歩前へ足を踏み出すと、怒りの声を上げた。
「模擬戦の事です!キラ君、模擬戦をするつもりで出てきたなら
なんで模擬戦用のガードも付いていない実体剣を持ってきたんですか!?」
「あー・・・それはその・・・ものの弾みで・・・」
アークエンジェルにはG同士の模擬戦用に、実体剣の刃に取り付けるガードがある。
マリューが声を荒げる事は珍しく、作業中の整備士達は手を止め、
緊張の面持ちで彼女を注視した。
まるで母親に叱られる様な有様で体を縮み込ませるキラ。
そんな彼に鼻息を一つ吹いて、マリューの視線が今度は刹那に向けられた。
「曹長もです!なんでキラ君の申し出を受けたんですか?
しかも本当にストライクを斬ろうとしましたよね」
「・・・・・・済まない」
マリューが言っているのは、居合いでストライクの腕を斬ろうとした事である。
マリューも流石にGの開発に参加していただけはあり、MSの本気の動きは分かるらしい。
言い逃れ出来ないと悟った刹那は天井に向けた顔を静かに下げた。
それでとりあえず怒りは収まったのか、マリューは静かな口調で続ける。
「まぁ、実戦に近いデータが取れましたからとりあえず不問にしますが、
本当なら2人とも営倉入りですよ」
「恩に着る」
「すいませんでした」
「分かれば宜しい」
事無きを得た刹那とキラは、ホッとした面持ちで自分の機体へと向かう。
マリューはそれを見送り、2人用の飲料チューブを取りにハンガーの司令室へ向かった。

 
 

砂漠の虎、バルトフェルド隊の旗艦レセップスのハンガー。
半ばバクゥ専用となっていたその場所に、今日は見慣れぬ人型のMSが2機佇んでいた。
「ほぅ、これが噂の機体か」
バルトフェルドが見上げる先には、明らかにザフトのとは異なる意匠のMSが2機、
灰色の巨体を直立させている。
「どうです?デュエルとバスターは」
赤いパイロットスーツの若者が2人、
キャットウォークから降りて来ると色黒の方がバルトフェルドに話し掛けた。
「君達がコイツのパイロットかな?」
「失礼しました。本日ジブラルタルから到着したイザーク・ジュールです」
「同じく、ディアッカ・エルスマン」
敬礼する2人を一頻り眺め、再び機体に目を移す。
「データは見せて貰った。若い割に良い腕だな。
流石は姫君を救出したクルーゼ隊の一員、と言った所か」
「有難う御座います」
「だが、砂漠戦はどうかな?まだ宇宙戦の経験しか無い様だが」
「なっ!」
バルトフェルドの挑発する様な一言にイザークが声を上げた。
「脚付きとの戦闘経験なら俺達の方が上だ、遅れは取らない!」
「負けの経験でしょ?」
「何っ!」
噛み付くイザークに横からアイシャが呟いた。
バルトフェルドが彼女の名を呼んで制するが、
イザークは更に言葉を重ねようと一歩前に出る。
しかし続く言葉は、横にいたディアッカに遮られた。
「イザーク、来て早々他の隊の隊長と喧嘩する気か?」
「ちぃ・・・」
「失礼しました」
再びイザークとディアッカが敬礼するが、イザークはまだ言い足りないといった感じだ。
「ふっ、君の様な奴は嫌いじゃない。
自信があるなら、バクゥ戦隊の直接支援を行って貰おうかな」
「・・・望む所です!」
デュエルとバスターは砲戦機体な為、バクゥの動きに付いてこれない。
足手纏いは御免だと、バルトフェルドは当初彼らをレセップス艦上配備とした。
直接支援は、バクゥ戦隊に張り付いての戦闘となるので
艦上からの支援に比べるとかなりの難易度となる。
しかしこれだけ威勢が良いなら、イザークは意地でも付いてくるだろう。
「良し。今整備士が砂漠戦用OSを組み込んでいる。
バスターは艦上からのレセップス護衛と狙撃だ。
艦上配備だからな、バッテリーは気にしなくて良いぞ」
「了解」
ただでさえ対空砲火の厚いレセップスにバスターの砲撃が加われば、
どんな事態になろうとレセップスは大丈夫だろう。

 

「で、脚付きの状況は?」
「ここから南東へ180kmの地点、明けの砂漠のキャンプにいるよ。
明日の出撃も、それを攻撃する為の物だ。
連中も戦闘準備をしている様だから、一筋縄ではいかないと思うがね」
「フン、レジスタンスなんぞ」
明けの砂漠、脚付き共に装備は大方判明している。
キャンプの上空に飛ばしてあった無人偵察機が、
ストライク以外のMSが起動しているのを確認したが、
見た所旧式のジンオーカーであった。
戦闘車両よりはマシだが、それでも大した脅威にはならないだろう。
搭乗しているのはクルーゼ隊からのデータにある連合の「蒼い奴」だろうが、
いくら腕が良かろうが、砂漠に二足歩行という枷があっては宇宙戦程の働きは出来ない。
それこそ、ストライクの様な飛び抜けた機動力、運動性能でも無ければ。
「裏切り者のコーディネーター2人が、連合の命運を握る艦を守る。全く皮肉な話だな」
「どうしたの?アンディ」
「いや」
連合に協力するコーディネーターは、プラント本国で裏切り者と呼ばれ蔑まれていた。
元はと言えば、開戦前にプラント以外にいたコーディネーターを、
他でも無いプラントが入国拒否したからだというのに。
裏切り者は、果たして本当に彼らなのだろうか?
皮肉なのは、無計画に追い出して敵に回られた我々なのではないか?
そんな疑問を呑み込んで、バルトフェルドは
退散しようとしていたイザークとディアッカを呼び止めた。
「君達、コーヒーはいける口かな?」

 
 

「いやー凄かったなさっきの模擬戦。
真上であんな事やられたら大抵のアクション映画は見れなくなるぜ?」
アークエンジェルのハンガー。
刹那がジンオーカーの調整に精を出していると、
暇を持て余していたムウがキャットウォークを昇ってきたのだ。
「地上戦初めてだろうに、よくあんなに動けるな」
「昔飽きる程駆け回った環境だ。MSも大して変わらない」
「ふーん」
モニターから顔を上げない刹那の返事に詰まらなそうに相槌を打って、
ムウはコクピットに半身を乗り込ませてモニターを覗き見た。
「今そんな細かく調整しても仕方ないんじゃねぇか?まだ装備が乗っかるんだろ、コイツ」
「問題無い」
マリューの説明を思い出しながらムウが首を傾げる。
その問いに刹那は、数度キーを叩いてモニターをムウの側に向けた。
「なんだこりゃ」
そこに映っていたのは3Dで描かれたMSの設計図だ。
現在のジンオーカーにゴテゴテと色々な物が付いている。
「バックパックにバッテリーを増設、
更にメビウスのメインスラスターを両側面に一基ずつ取り付ける。
左肩にはシールド、右肩にはグランドスラムを懸架する武装ハンガー、
アンカー付きのアーマーシュナイダー4本・・・」
「おいおい、バランスは大丈夫なのか?」
「ああ、メビウスのメインスラスターは使わないときには小さく纏まる様になるし、
グランドスラム装備の為に装備を減らしたからな」
刹那が顎で示した先に、製作中のメインスラスターがあった。
ジンメビウスの脚部から取り外した物で、
直進に必要なスラスター以外を外して軽量化している様だった。
今も整備士達が取り付いて作業している。
「お前、レーサーか何かの方が向いてるんじゃねぇか?」
「・・・たまに思う」
00クアンタに乗っていた刹那にとってはまだまだ物足りない速度でも、
C.Eの常識から見れば加速重視の異常な改造に他ならない。
ジンメビウスの時といい、整備士達も刹那をスピード狂と見ている節があった。
「やれやれ、援護する俺の身にもなって欲しいぜ。
キラもどんどんストライクを自分用にカスタムしていくし」
「あまり過剰にやり過ぎなければよいが」
「お前がいうか」
「・・・そうだな」
どうにも刹那には、他人を心配する反面自分を棚上げする癖がある。
結果的に彼が無茶をする事になるので、機動部隊隊長としては止めさせたいのだが。

 

しかしムウにはそれ以上に、刹那に聞かねばならない事があった。
「で、キラとは何話したんだ?誰にも言わないから言ってみろよ」
「何故だ?」
「何故ってお前そりゃ・・・」
ムウが珍しく言葉尻を濁した。
刹那は黙って彼を見詰め口を割るのを待つと、
その視線に耐えられなくなったのか仕方ないと口を開いた。
「いやな、アイツの目、泣いた跡があったから。
隊長としては、知っとかなきゃならない事かなと思ったんだよ」
「泣いていた?キラがか」
「まぁその割にはすっきりした顔してたけどな。
てかお前、隣に座ってたのに気付かなかったのか?」
呆れ顔のムウを余所に記憶を手繰った刹那だったが、キラ泣く様な事を言った覚えは無い。
「分からない。本当に分からないんだ」
「分かった分かった。心当たりが無いなら、少なくとも悪い事じゃねぇんだろ。
この話は終わりだ」
手をパタパタさせて話題を終わらせたムウは、
スカイグラスパーの整備に戻ると言ってキャットウォークを降りて行った。

 
 

トノムラを連れ、ナタルが訪ねていたのは明けの砂漠の幹部会議だった。
外の茹だる様な暑さも、洞窟を整備した会議場では鳴りを潜めている。
「攻撃?」
「そうだ。前回の戦闘を考えると、そろそろ奴らも本気で攻めてくる頃合いだろう」
多数の死傷者を出したバルトフェルド追撃戦が、
明けの砂漠の戦意を量った物だとするなら、
そろそろ本格的に明けの砂漠を潰しにくる筈である。
「キャンプに攻め込まれれば避難して来てる女子供が危ない。だから先手を打つ」
「我々は良いが・・・そちらはかなりの被害が出る事になるぞ?」
キャンプの周りにはゲリラ戦を仕掛けるのに有利な岩場が沢山ある。
それを捨てるのは、戦術的に考えれば下策に他ならない。
アークエンジェルが買い足した弾薬や機材の他に、
明けの砂漠もいくらかの装備を増強しが、それでもMSに対抗するには到底足らないのだ。
ナタルが懸念するのは彼らが戦場を混乱させてしまう事である。
砂漠の虎と正面衝突するなら、アークエンジェルに明けの砂漠を援護する余力は無いのだ。
そんな彼女の懸念を知ってか知らずか、サイーブは何を今更と鼻息を吹かした。
「バナディーヤを見たろう?
一見平和だが、あんな物は支配者のお遊びで簡単に崩される偽物だ。
それのせいで俺達は幾度と無く泣きを見て来た」
「うっ」
サイーブの目が鋭くナタルとトノムラを射る。
彼の言う支配者とは、何もバルトフェルドだけの話では無いのだ。
「だから俺達は戦う。支配される事も、支配する事も無い世界を夢見てな」
サイーブの意思は固かった。
周りに座る幹部達の表情も皆同一の決意を宿しており、
どうやらサイーブ個人の考えという訳でもなさそうだった。

 

「そちらの意志は理解した。で、どうする?
我々はこの辺りに詳しく無い、戦場の選定はそちらに任せるが」
「それはもうピックアップしてあります」
サイーブの隣に座る参謀らしき男が地図を広げた。
そこには明けの砂漠のキャンプと、バルトフェルドの部隊がいる位置が記されていて、
両方から伸びた矢印がぶつかる場所にバツ印が付いている。
タルパディア工場区跡地と記載されているそこを、どうやら戦場とする予定らしい。
「ここには以前埋めた地雷原がある。使わない手は無いだろう。
それに、ここを突破すればそのまま紅海へ抜けられる」
キャンプから伸びる矢印から更に線を伸ばすと、そのまま紅海の入り口に続いていた。
これなら、場合によってはバルトフェルド撃破後、
増援が来る前に紅海に入る事も可能だろう。
「感謝する」
「別に感謝される必要は無ぇよ。俺達のやれる事をやったまでだ。
これだって、虎に勝てれば、の話だからな。その為に、アンタ達もやれる事をやってくれ」
「分かっている」
互いの関係に同情や感傷はいらない、サイーブの目はそう言っている目だった。
ナタルもそれに頷き、作戦に合意する。
「よし、作戦開始は明日、0800時!そっちのクルーにも伝えてくれ」
「了解した」
ナタルとサイーブが互いに握手を交わし、その場は解散となった。

 
 

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