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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第71話

Last-modified: 2012-07-09 (月) 00:24:28
 

先の交戦以来、警戒を強めていたアークエンジェルのソナーが、
敵機の接近を探知していた。
艦内に第一種戦闘配備の命令が走り、クルー達が慌ただしく持ち場へと走って行く。
「たく、航路変更したのもあんま意味無かったかもな」
『潜水母艦がいるなら、どちらにせよ戦う事になっただろう。遅いか早いかの違いだ』
スカイグラスパーに乗り込んだムウとナタルがモニター越しに話しているのは、
先の戦闘後にしたムウの提案についてだった。
前回の交戦地点は、ジブラルタルともカーペンタリアとも微妙に離れていた。
距離的に考えれば、MSが航行出来るギリギリの距離なのだ。
そんな距離で偶然の交戦というのは考え難い。
ザフトはアークエンジェルが紅海方面に逃げたという事は掴んでいる筈だ。
潜水母艦が潜んでおり、アークエンジェルを補足、
艦載機を出撃させたと考えるのが自然だった。
だからこそ、ムウは潜水母艦が身を隠し難い深度の浅い海を通る様提案した訳だが、
あまり意味は無かったのかもしれない。
「有難よ艦長。まぁそれより俺は、漁でもすんのかって装備な目の前の連中が気になるが」
『心配いらないわ大尉。2人の装備は私が許可を出しました』
「キラは兎も角・・・曹長は何をトチ狂ってそんな装備にしたんだよ・・・」
呆れ果てた視線の先には、何やら器具が追加されたグランドスラムを担いだジンオーガー。
重量の関係でバズーカすら積んでいない。
『バズーカでは弾速が遅い。グランドスラムなら重量と鋭利さで、
水中でも速度の低下は最小限に抑えられる』
「・・・左様で」
律儀に説明する刹那だが、そんな真顔で言われても反応に困る。
最早慣れたと言わんばかりに適当な返事をして、話を切り替える。
「今回はディンがいないそうだ。俺とカガリは潜水母艦を探索、撃破する。
海中の敵は任せたぜ」
作戦を再確認すると、刹那とキラの慣れた声と、
カガリの気負った声の『了解』が返ってくる。ムウは満足げに頷いて、出撃準備に入った。

 
 

アークエンジェルを追尾していた潜水母艦から、MSが出撃する。
その数は5機、内4機はグーン、先頭の1機はゾノと呼ばれる新型機だ。
グーンよりも幾分ずんぐりしたその巨体の中で、
脚付き追撃部隊隊長であるモラシムは不敵な笑みを浮かべた。
「ふん、浅い海を行ってくれるとはこのゾノには好都合よ。
クルーゼも降りてきているからな、今日こそ沈めてやるぞ!」
事前の作戦通り、母艦から魚雷が発射される。
8本の鉾が、アークエンジェルを取り囲む様な軌道を描きながらゾノを追い越して行く。
アークエンジェルもそれを察知して迎撃と離水を開始した。
「やはり反応が遅い!」
海を縄張りとするモラシムにとって、その反応はあまりにも手際の悪い動きだった。
8本の魚雷を迎撃せんとイーゲルシュテルンが唸りを上げ、内2本を破壊する。
発射された魚雷は対艦用の最も威力が高い種類だ。
2発も被弾すれば、大抵の艦は航行不能となる。
接近する間に更に2本の魚雷が破壊され、残るは4本。
最早間に合わない、4本の爪が離水直前の獲物を捉えようとした、その時。
海上から他の弾幕よりも大口径な、狙い澄ました砲火が2本の魚雷を捉える。
直後に海面を爆ぜさせたのは、前回の戦闘でも見た例の白いMS。
黄色いデュアルアイは魚雷の破壊を確認する事もせず、
残り2本の魚雷に向けてバルカン砲を連射。
的確な射撃は、機械仕掛けの弾頭を容易に捉えた。
その高い射撃能力に驚かされるモラシムだったが、
その手に握られているシュベルトゲベールを見るや元の不敵な笑顔を取り戻した。
「水中でこのゾノに格闘戦を仕掛ける気か、面白い!
MSは私がやる。1機は援護、残りは脚付きを沈めろ!」
モラシムの指示で隊が2つに別れる。
その直後、別れた隊のグーンが1機、何かに貫かれて爆発した。
「なんだっ!?」
エンジントラブルか?爆発したグーンを見やると、
海面に向けて何かが引き戻されていくのが目に入った。
「今のが攻撃だと言うのか!?」

 

海面が大きく爆ぜる。その大きさは、間違い無くMSの爆発による物だった。
「命中か」
前部甲板に陣取るジンオーガーは、野球の投手が球を投げた瞬間の体勢で固まっていた。
振り下ろした方の腕には極太のワイヤーが付いており、それが海中へと繋がっている。
直後、海面からグランドスラムが顔を出した。
ワイヤーと繋がったそれは、スラスターを吹かしてジンオーガーの元へ飛んでくる。
「上々だな」
キャッチしたそれを見て、刹那は何時もの仏頂面のまま頷いた。
刹那が考案した武器、それは早い話が銛だった。
グランドスラムと右腕を、作業用ワイヤーを何本も束にして強化した極太ワイヤーで繋ぎ、
本来左腕に装備されたスラスターをグランドスラムの柄に移植している。
「もう一撃」
敵がアークエンジェルの下に潜り込むまでにもう一投出来る。
刹那はジンオーガーを操作し、一投目と同様にグランドスラムを振り被らせる。
その姿は槍投げのポーズにも見えた。
急造兵器な為、勿論照準という物は無く、完全に脳量子波での探知に頼った兵器である。
ジンメビウスで照準の無いレールガンを使いこなした実績が無ければ、
いくらマリューといえども許可しなかっただろう。
「シッ!」

 

海中を透視するかの如く標的に狙いを定め、鋭く息を吐いた。
刹那の操作に従い、右腕のスラスターが点火。
振り下ろされる腕から、運動エネルギーが最大になる点でグランドスラムが投擲される。
矢の様に撃ち出されたグランドスラムは、海中で取り付けられたスラスターが点火、
再加速を掛けながら獲物目掛けて飛び掛かった。
直後、一投目と同様の水柱が上がり、ジンオーガーの装甲を水滴が叩く。
「アークエンジェルには・・・残り1機か」
主の下へ再度舞い戻ったグランドスラムを掴み、
刹那は敵機の撃墜を誇るでも喜ぶでも無く淡々と、
アークエンジェルを狙う最後の1機へ照準を移した。

 
 

海中にくぐもった爆音が響く。
また刹那が1機MSを撃破したのだと感じとり、キラは焦りに顔を曇らせた。
海上から実体剣で海中の敵を狙撃するなんて、馬鹿らしいを通り越して呆れる話なのに。
それをやってのけてしまった彼に、どこかで彼なら出来ると確信していた自分に、
どうしようも無く腹が立った。
ゾノから放たれたフォノンメーザーをシールドで防ぎながら思う。
こんな畜生以下の連中に情けを掛ける、
間違った優しさを見せる刹那に負けている自分、それが1番憎い。
「はぁっ!」
裂帛の気合いと共に振るわれるシュベルトゲベールが空しく空を切る。
ゾノはその見た目によらず、グーンよりずっと素早かった。
お返しとばかりに返ってきたのは、ゾノを援護しているグーンの魚雷だ。
爆発が機体を揺らし、モニターを閃光に染める。
視界が回復した瞬間現れたのは、モニターに大写しになるゾノの巨体だった。
シュベルトゲベールの間合いの内側に侵入されたキラは、
トリガーを引き絞って頭部のイーゲルシュテルンを乱射する。
しかし分厚い装甲を持つゾノに、75ミリ弾では歯が立たなかった。
「ぐぅ!」
魚雷の直撃よりもずっと重い衝撃がキラを襲う。
巨大な質量を生かした体当たりを受けたストライクは、機体をくの字に曲げて吹っ飛ぶ。
飛ばされながらも右肩のバルカン砲で反撃するが、
回避された弾丸が岩場を削るだけに終わった。
「くそ、これじゃ前と同じじゃないか・・・」
刹那は見事に対処したというのに。苛立ちを噛み殺し、襲ってくる2機を睨みつける。
―――怒りを制御しろ
刹那の言葉が脳裏に過る。
アークエンジェルを、フレイを守る為なら、ザフトを根絶やしにする為なら、
苛立たしい彼の助言も飲み込むのが今のキラだった。
「・・・あれが邪魔だ」
キラが言うのは、ゾノを援護するグーンの事だ。
ゾノと常に十字砲火を展開出来る位置に陣取り、ゾノの隙を巧みにカバーしてくる。
ゾノのパイロットの腕自体は、クルーゼ隊やバルトフェルドよりも下だ。
問題はグーンの方。キラはそう結論付け、行動を開始した。
張り付いてくるゾノのクローを躱し、半身の状態から
シュベルトゲベールをその丸い胴体に叩き込む。
しかしそれは、寸での所でゾノに捕まれてしまった。
片腕で振るった為に馬力が足らず、いとも簡単に弾き飛ばされてしまう。
「よし、いるな・・・!」
跳ね飛ばされた衝撃に耐えながら、
キラは射撃で追撃を掛けようとするグーンから目を離さなかった。
予め左腕に装備させていたアーマーシュナイダーを、グーンに向けて投擲する。
グーンは危なげ無くそれを躱す。
避けられたアーマーシュナイダーはグーンの背後にあった岩場に突き刺さった。
グーンが再度射撃体勢を取り、ストライクに向けてフォノンメーザーを発射する。
未だ体勢を回復していないストライクには為す術が無いと思われた。
しかし、フォノンメーザーがストライクを捉える直前、
ストライクが引っ張られる様に直角に曲がったのだ。
「貰った!」
フォノンメーザーを回避したストライクは、
今までとは段違いの加速でグーンへ襲い掛かると、そのままの勢いでグーンを両断した。
「はぁはぁ・・・よし」
段違いの加速の正体は、先に投擲したアーマーシュナイダーにある。
初めから岩場を狙って放たれたそれには、
パンツァーアイゼンでストライクと繋がっていたのだ。
フォノンメーザーを回避した直角に機動も、ワイヤーを巻き取る勢いを利用した物だった。
グーンの爆発をシールドで防ぎ、ゾノを探す。しかしあの巨体がどこにも見当たらない。
「どこだ・・・さっきまであんなに」
『キラ、後ろだ!』
唐突に刹那の声が響き、反射的に振り返った。
直後、背にしていた岩場が砕け、飛び散る岩の中からゾノが躍り出てくる。
「しまった!」
キラがその存在を認めた時には既に遅く、強力な膂力がストライクを捕らえる。
ゾノはそれだけでは止まらず、地面を削りながらストライクを数十メートル引き摺った。
『やってくれたな、ストライク!』
体当たりされた衝撃でシュベルトゲベールを落とし、
地面に押さえ付けられた状態になったストライクのコクピットに、
荒々しい男の声が響いた。
『貴様をズタズタにして、クルーゼの前で晒し者にしてくれる!』
ゾノが更に力を込め、掛けられる負荷にストライクが悲鳴を上げ始める。機体全体の軋む音と警報のアラームがコクピットを埋め尽くした。
そのただ中にあっても、キラにはモラシムの言葉と共に、劣等感と功名心が伝わってくる。
意気揚々と、武勲を競う様に殺しを行う目の前の男に、ふつふつと怒りが込み上げてくる。
「ふざけるな・・・」
『はっ、何を言っているか聞こえんな・・・死ね!』
様々な音が鳴り響く中では、キラの声は接触回線越しでは聞き取れないのだろう。
既に首を獲った気でいる男は、そんな事はどうでも良いと更にゾノの出力を上げる。
左腕と頭を相反する方向へ引っ張り、引き裂こうと力が込められる。
このままではストライクがバラバラになるのも時間の問題だ。
「死ぬのは・・・アンタだ!」
叫ぶと同時に、衝撃が走りゾノが僅かに傾いだ。
『なんだ!?』
衝撃の正体は、ゾノの背中に食い込んだシュベルトゲベールだった。
ゾノに押さえられる直前に、パンツァーアイゼンと
シュベルトゲベールを繋いでおいたのだ。
ワイヤーで繋がれた右腕で操作されたシュベルトゲベールは、
慣性の法則に従って蛇の様にゾノを背後から襲った。
勿論、直接振るった訳では無いので装甲に食い込んだ程度だ。だがそれで十分。
気が逸れた事で緩んだ拘束を抜けたストライクが、
フレーム構造の優秀さを生かしてあっという間にゾノの背中を取った。
『まっ待て・・・っ!』
「何を言っているか、聞こえないよ」
一切の容赦無く、食い込んだシュベルトゲベールを
両手でしっかりと掴んだストライクは、最大馬力で大剣を振り抜く。
命乞いも空しく、ゾノはその丸い巨体を真っ二つにされ爆発した。

 
 

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