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機動戦士ガンダム00 C.E.71_第75話

Last-modified: 2012-08-02 (木) 03:32:09
 

カガリがムウと刹那に救助されてから2時間、アスランもまた、
ニコル達に救出され初めて自ら指揮する潜水母艦に乗艦していた。
そして休む暇無く、潜水母艦のレーダーが脚付きを捕捉。
総員にコンディションイエローが発令されていた。
「もうイージスを出せるのか?」
「ああ、カーペンタリアは融通が利く連中でな。
クルーは選りすぐりの人員を集めてくれた」
「整備士に礼を言っとくんだな」
発令所に集まったザラ隊メンバーは、
この海域の地図を睨みながらブリーフィングを行っていた。
「人間の方はそう簡単に回復する物じゃないんだがな」
「おいおい、お前は隊長なんだ。部下の前ではキリッとしてろキリッと」
「でも絶好の機会ですよ。アスランを探していたら脚付きが近くにいるなんて」
疲れた様に肩を落として見せるアスランをミゲルが乱暴に叩いた。
ニコルの言葉に地図へ視線を動かしたアスランは、
点滅しながら移動する赤い点を複雑な気持ちで見詰めていた。
脚付きが近くにいたという事は、やはりカガリはそれに乗っているのだろう。
キラにカガリ、敵の中に見知った人間が増えた事で、アスランの気は更に重くなった。
アカデミーで敵の事など知ろうとするなと言っていた教官の言葉が、
今になって身に染みてくる。
それをおくびにも出さず、アスランは地図の一点を指し示した。
その一点は、丁度四方を島で囲まれている地点であった。
「脚付きがここを通るタイミングで仕掛ける。
低空で接近すれば、脚付きの艦砲射撃を凌ぎながら接近出来る筈だ」
アークエンジェルは地上でも馬鹿にならない火力を持った戦艦である。
並みの連合水上艦隊を相手にするより厄介である。
「俺とイザーク、ミゲルは脚付きに取付きつつ敵戦力を削る。
ディアッカ、お前は俺達が取り付くまでの援護と、取付いた後の後方からの砲撃。
脚付きを仕留めるのはお前だ。
ニコル、グゥルに乗った状態ではブリッツの長所は生かせない。
ディアッカの護衛を中心に動いてくれ」
アスランが早口で述べて行く指示に、
隊員達は軽く確認を取りながらブリーフィングは続いていく。
その光景に、発令所にいる潜水母艦のクルー達は唖然としていた。
髭を蓄えた壮年の艦長などは口笛を吹きそうな勢いである。
それもその筈で、彼らはザラ隊に徴用されると聞いて若干気が滅入っていたのだ。
軍艦は陸海空宙どこに行っても閉鎖的な物だが、
潜水母艦となるとその度合いは更に高くなる。
歓迎されない余所者が、宇宙戦しか経験の無い、しかも最高評議会議員達の子息達なのだ。
彼らが滅入るのも無理は無い。
どんな坊ちゃん達の相手をさせられるのかと思ったがしかし、
そんな彼らを認めざるを得ない程目の前のブリーフィングの見事だった。
「よし、それで行こう。艦長、出撃準備に入ります」
ブリーフィングを終えたアスランが艦長にそう言い、出撃準備の為発令所を出て行く。
その後ろ姿を、艦長はザフト式の敬礼で見送った。

 
 

「レーダーに感、これは・・・イージス、バスター、ブリッツ、
デュエル、それにディンです!」
「またあの部隊か!」
カガリを発見した事で明るい雰囲気になっていたアークエンジェルに激震が走る。
砂漠の虎との戦闘でバスター、デュエルは確認していたが、
まさか例の部隊が丸ごと追ってくるとは。
「ちっ、しつこい連中だ。総員に第一戦闘配備、対MS戦闘用意!」
「艦長、奴ら島の影に隠れて!」
「分かっている。艦の管制システムは、イーゲルシュテルンの起動を最優先としろ!」
周りの小島に隠れて接近してくるMSに、
長射程高火力のゴットフリートやバリアントは意味が無い。
寧ろ敵に長距離狙撃を得意とするバスターがおり、初めの一手が敵の手にある以上、
下手に展開して狙い撃たれでもしたらそれこそ甚大な被害を被る事になるだろう。

 
 

第一戦闘配備の発令は、カガリ発見からやっと落ち着いてきたハンガーにとって、
まさに寝耳に水だった。それでもマリューやムウの指示で素早く戦闘態勢に移行する。
『まさか地上まで追ってくるなんて!』
「それだけ彼らも必死という事だ。気は抜けない」
『でもよ。そいつ等本当にクルーゼ隊か?』
それぞれの機体に搭乗し、出撃準備を進める3人のパイロット。
因縁の相手の襲撃にそれぞれの思いを口にするが、ムウだけは首を傾げている。
「何故そう思う?」
『クルーゼの野郎を感じないんだよ。そりゃあ、確証がある訳じゃないが』
『以前とは違うと?』
ムウはクルーゼと感じる事が出来る。
刹那も、以前感じた冷たい意志を感じない事から、ムウの言葉が正しい物だと認識した。
「以前とは戦い方が違うかもしれない。注意しよう」
刹那の言葉を最後に各MSがハッチへの移動を開始する。
空戦が主という事で、ジンオーガーにはデュエルのバズーカ2丁を両脇に抱え、
肩にはグランドスラムを提げた重武装だ。
ストライクは何時ものエールとコンボウェポンポットの組み合わせである。
「ジンオーガー、出る」
『ストライク、行きます!』
ムウが出撃した後に、2機のMSがハッチから直接甲板上に飛び出した。

 
 

レーダーが島の向こうにいるアークエンジェルを捉える。
向こうもこちらの接近に気付いたらしくMSが展開し、船速が上がった。
大気圏内でも予想以上の船速を見せるアークエンジェルに、
島に隠れて接近出来る時間も少なくなる。
『更に速度上昇・・・、大気圏内外問わずにこの船速、やっぱり化け物艦だぜありぁ』
「だからこうして島を盾に接近しているんです。ディアッカ、初撃は任せるぞ」
『了~解』
アークエンジェルの左後方に位置する島を盾に接近していたザラ隊は、
いよいよ仕掛け時に入っていた。射線を確保する為、バスターとブリッツが隊から離れる。
残ったイージス、デュエル、ディンはそのまま直進を続ける。
新しくザラ隊に配備されたディンは、元々ミゲルが地上で運用する為に調整されていた機体で、
本来はスピットブレイク作戦で日の目を見る筈だった代物だ。
武装は従来の物に加えて腰に軽量型の重斬刀を装備し、
格闘戦にも対応出来る様に関節を強化。
増えた重量を支えるのは、出力が上がり巨大化したスラスターだ。
日の光に照らされた機体は「黄昏の魔弾」に相応しい風貌である。
『カウント、5、4、3、2』
位置に着いたディアッカが、仕掛けるタイミングを合わせる為カウントを開始する。
直進組も速力を上げ、戦闘開始に備えた。
『1』
カウント終了直後、長距離狙撃ライフルが火を吹き、
大気圏内でも十分な威力を誇るビームが一直線にアークエンジェルへと延びる。
後方からエンジンを狙った一撃はしかし、寸での所で何者かに防がれ消えた。
『ちっ、またアイツか!』
「各機攻撃開始!」
狙撃から間髪入れずにイージス、デュエル、
ディンがアークエンジェルへの攻撃を開始した。
狙撃を防いだのはディアッカにとって因縁のある例の蒼い奴だ。
甲板上から飛び降りてビームをシールドで防ぎ、
背中の大型スラスターで直ぐ様元の位置へ戻ろうとする。
ディアッカは声を出して悔しがったが、アスランにとってここまでは予想通りだ。
今までの蒼い奴との交戦データを見ると、奇襲の類が効かないのは分かっている。
ディアッカに初撃を任せたのは、蒼い奴がそれを防ぐ為に動いた間に、
前衛組がアークエンジェルに接近する為の時間稼ぎだ。
僅かな時間でも、弾速の遅いバズーカで狙撃してくる様な相手を封じられるのは大きい。
『今日こそ決めるぜ、蒼いの!』
直ぐ様展開されたアークエンジェルの弾幕やストライク、
スカイグラスパーの射撃を潜り抜け、
逸早くアークエンジェルに取付いたのはミゲルだった。
グゥルというSFSに搭乗した他のザラ隊と違って、彼のディンは純粋な空戦専用機体だ。
その持前の身軽さで、後方甲板に着地したばかりの
ジンオーガーに挨拶代わりの射撃を浴びせた。
シールドでそれを防いだジンオーガーがバズーカを構えるが、
ミゲルは直ぐ様船体底部へ降下して射線から逃れる。
『底部に安全圏を作る。有効利用しろよ!』
「助かります」
ミゲルが底部に潜ったのは何も回避の為だけでは無い。
アークエンジェル底部に設置されたイーゲルシュテルンを排除する事で、
その部分を安全圏にしようというのだ。アークエンジェル攻めには時間が掛かる。
一瞬でも気が抜ける場所を作れれば、休み休み戦う事も出来る。
しかしそれを敵が許す筈も無く、ミゲルを追って
スカイグラスパーが低空で攻撃を開始した。
『ストライクーッ!』
「イザーク、対空砲を減らす方が先だ!」
一足遅れてアークエンジェルに取付いたデュエルが、
アスランの警告を無視して真っ直ぐストライクに突進する。
ストライクもそれに応える様にビームサーベルを抜いた。
ヒヤリとした悪寒を感じアスランが横を見ると、
バズーカでデュエルを狙おうとするジンオーガーが目に入った。
「させるかっ!」
ジンオーガーが榴弾を発射するが、射線に割り込んだイージスの盾がそれを防いだ。
「お前の相手は、この俺だ!」

 

デュエルの上空から振り下ろすビームサーベルに、ストライクはシールドで応えた。
衝撃を下に逃がす様に膝を曲げたストライクが、
構えたビームサーベルでデュエルの左腕を狙おうとする。
「甘いんだよ!」
それより早く、ストライクのシールド目掛けてシヴァが火を吹いた。
既にデュエルのビームサーベルを受け止めていたストライクは、
更に加わった衝撃にシールドを弾き飛ばされ、体勢を崩す。
「貰ったっ!」
無防備な横っ腹を晒すストライクに、デュエルが再度ビームサーベルを振るう。
決まったかと思われた一撃は、しかしストライクの急旋回によって空を切った。
「なっ!?」
予めこちらの意図を読まれていたかの様な、回避の仕方だ。
エールのスラスターで急回転したストライクが、
腰から抜いたアーマーシュナイダーを投擲した。
遠心力を加速に変えたアーマーシュナイダーが、無防備なグゥルに突き刺さる。
「しまっ・・・!」
グゥルの機能が停止し、モニター内の表示が消える。このままでは海に突き落とされる。
そう思ったイザークだったが、ストライクは全く逆の行動を取った。
アーマーシュナイダーを投げた腕が、そのままの勢いでデュエルの頭部を鷲掴みにすると、
体勢の崩れた機体を甲板上に引き落とした。

 

引き倒したデュエルが甲板上に転がる。
無防備なその姿に、キラの中の凶暴な殺意が鎌首をもたげる。
だがまだだ、直ぐには殺さない。
シャトルと共に散った、幾つもの悲鳴と同様の恐怖を刻み込む。
デュエルの上にストライクを馬乗りにさせると、
眼下のパイロットの恐怖心が伝わってきた。だがそんな物では足りない。
キラは右肩のガトリング砲を起動させ、躊躇いなく引き金を引いた。
吐き出される120ミリ砲弾が、こちらを狙おうとしていたシヴァを吹き飛ばす。
既に充電が開始されていたレールガンは、肩の追加装甲を巻き込んで爆発した。
爆発がストライクにも衝撃を与えるがそれでも引き金から指を離さず、
他の追加装甲にも銃弾の雨を降らす。
二の腕、左肩、胴体、順に破壊していく度、至近距離の射撃の衝撃で
身動きの取れないパイロットの恐怖が増大していく。それでも―――
「足りない、足りない、足りない」
呪詛の様に繰り返しながら、
ガトリング砲の銃身が高熱で赤くなるのも気付かず引き金を引き続ける。
遂には追加装甲を破壊し尽くし、それでも足らず素体のPS装甲に弾丸を撃ち込む。
PS装甲に弾かれた弾丸が跳弾し、ストライクの装甲を叩いた。
その時、唐突に地面が激震した。
正確には、足場にしているアークエンジェルが傾いだ。
バスターの狙撃が、アークエンジェルのミサイル発射管を貫いたのだ。
射撃に夢中で姿勢制御が疎かだったストライクが堪らず尻餅を着く。
その隙に、デュエルがスラスターを吹かして緊急離脱を図った。
「待てっ!」
離脱しようとするデュエルにガンランチャーを撃ち込むが、
何も無い空間から躍り出たブリッツに防がれた。
「うわっ!?」
『キラ、何をしてる!』
珍しく荒い刹那の声が、キラの耳に響いた。

 
 

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