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機動戦士ガンダムSEED  閃光のハサウェイ 第12話

Last-modified: 2007-11-29 (木) 21:09:02

その通りだ。ギルバートの言う通り、実質的な軍事的勝利を積み上げていく他あるまい。

何よりも『地球連合』の士気を削がねばならない。膨大な物量で来る敵に対して最も有効な戦法だ。

俺は自分でも気が付かない内に『プラント』が『地球連合』に勝利する為の方策を練り始めていた。
心のどこかで『プラント』に勝利をもたらしたい、という欲求が生まれている。

嘗て自分の世界では『地球連邦』という圧倒的な戦力の前に屈した『ネオ・ジオン』の事を思い出した。

当時はまだ自分は餓鬼で『彼ら』の志をまるで理解できず、盲目に一人の少女を自分自身の手で取り戻したいという、浅はかな『欲望』に取り付かれていたのだ。
そして、結局は少女は死に、『あの人』達も還らず、地球圏は腐敗した一部の特権階級の愚者の手によってそのまま汚染が続くことになった。

俺は『彼ら』の意思を継ぎ『ガンダム』で戦いを挑む決意をした。
そう。勝ち目は無いに等しかった……圧倒的な戦力を相手に――

意識が過去から現代に戻った。追憶の旅は一瞬のことだ。
そしてギルバートは俺の思考を読んだかのように話を続けた――

「ハサウェイ。その事で君に頼みがあるのだ。現在、我が軍は『グリマルディ戦線』で連合の『月基地』攻略の為の作戦を遂行しているのは知っていよう?」

「ああ、『プトレマイオス基地』の攻略だろう?思うように進んでいないみたいだな」

C・E70年5月3日に『ザフト軍』は『地球連合軍』の月面にある『プトレマイオス基地』を目標に侵攻を開始した。
月の裏側にある『ローレンツ・クレーター』に橋頭堡となる基地の建設を開始し、その結果、両軍は『グリマルディ・クレーター』を境界に二分し、以後は小競り合いを繰り返している。

このことから月の最前線は『グリマルディ戦線』と呼ばれるようになったのだ。
戦局としては完全に膠着状態に近い有様だ。

ギルバートは更に話を続ける。

「その事だ。一週間後に、『地球連合』の重要な軍事資源提供拠点基地である『エンディミオン・クレーター』攻略戦が開始される予定だ」

「ほぅ、今までに無い大規模な作戦になりそうだな?」

今までの小部隊による小規模な戦闘が中心になっているのにザフトの上層部は業を煮やしたのだろう。
一気に大勢力を投入するのか……戦略としては間違ってはいない。戦力の消耗を避けるには最適だ。

「その通りだ。月の裏側にある『ローレンツ・クレーター基地』のほぼ全兵力とプラントから派遣される増援部隊を投入する事となろう……」

ん?ちょっと待て。どういうことだ?
俺は慌ててしまった。部外者の……しかも未だ『民間人』の俺が聞いて良い話ではないぞ!!

「おい……『部外者』の俺にそんな作戦の『重要機密』を漏らしても構わないのか?」

ギルバートは飄々と俺の詰問に答える。
まるで風を受けてふわり、と浮かぶ柳のようだ……

「構わないさ。『当事者』である君に作戦を漏らした所、別に困るわけでもあるまい?」

なんだと?今この男は何と言ったのだ?俺は困惑する。
俺の顔に出てるであろう困惑をギルバートは完全に無視しながらとんでもない事を俺に要求した……

「君への頼みと言うのはこの事だよ。『エンディミオン・クレーター』を潰してくれ――」

「なに?」

俺の三半規管が麻痺したかと思った。それ程、意外な申し出だったのだ。

ギルバートは淡々と話す。まるで実験結果が解りきった事を話す科学者のように。
決まった方程式を当てはめれば自ずと答えが明らかになる問いに答える数学者のように。

「あそこを潰す事により『連合』は重要な軍事資源提供拠点を失う――そして我々は月の軍事拠点を増やす事ができる。そしてあわよくば月の支配権を握れるのだ」

「無茶苦茶な事を言ってないか?」

俺は喉に何かが絡まったような感じでしか喋れない。この男は一体、何を言っているのだ?
男はニヤリ、と冷笑しながら続ける。

「そうかな? 君が今までやった事に比べれば容易だろう?」

「だから……どうやってやるんだ?」

俺の喉はカラカラに渇いていた。

彼は周りに聞こえないように、そして囁くように俺に語りかける。眼差しが妖しく光る――
その眼差しにゾッとなる。

「――『ガンダム』……あれを投入してもらう――」

「……なんだと?」

室内の温度が一気に下がった。
冷や汗が出る。同時に眩暈もだ。

急に周りのに空気が凍てついて来たようだ。

敢えて忘れようとしていた俺の『分身』……
復活するのか、あの『白い悪魔』が

そしてギルバートは予言を語る神官の如く厳かに告げた。

「そうだ……『マフティー・ナビーユ・エリン』、預言者の王よ。我々に勝利をもたらしてくれ」

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