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機動戦士ガンダムSEED  閃光のハサウェイ 第33話

Last-modified: 2007-11-29 (木) 21:21:46

戦艦『ガルバーニ』から発進した私は、ジン・ハイマニューバの両腕両脚を器用に使いながら姿勢制御を瞬時に正すと、
後続部隊が苦戦しているであろう戦場へ向かう為に、メインスラスターである『MMI-M730試作型エンジン』を全開させた。

ゴォォォ!!

――ハイマニューバの背後にある大型メインスラスターは盛大に噴射をし始めて、機体全体に加速が掛かる。

心地良い、Gと共に私の体はシートへと押し付けられ、
前面のメインモニターは荒涼たる月面の光景を急速に疾(はし)らせてゆく。

「――む!」

荒涼たる光景を目の前にして、不意に私は天上に向かって急速上昇を試みたくなり、操縦桿を大きく手前に引く。

――ギュォォン!!

無理な方向転換に機体が一瞬、唸りを上げた。
そしてエンジンの出力を一旦、停める。

ゴォ!!

そして、サブ・スラスターが機体の方向転換を掛ける為に火を噴いた。
それから連続して停止したメインスラスターが大きく火を噴く!

――ゴォォォ!!

私は天上方向に向けて機体を一気に上昇させる!!
開いた翼は天に翔(と)んだ!!

そこからは青く輝く惑星が私の目に写った。
『彼』の言葉が耳に蘇る……

――『この地球から重力に魂を引かれた人間を全て追い出すんだ』

――『そうしなければ地球と人類は滅びる』

『彼』が繰り返し呟き、そして生涯の使命と言うかライフワークとしている事……らしい。
ある『偉大な人物』の受け売りだと本人は言っていたのだが……その男もかなりやばい男だったのだろう。
私はそれらに比べれば幾分はマシな方だと首肯する。

だが――わかるぞ。私も人類は全て滅びるべきだとは思う。彼らの思想に共鳴する。
傲慢で自分達を生み出したこの美しい蒼い惑星をも喰い荒らす存在。

――だが、地球から出た人類はどうなるのだろうか?
宇宙に生きる人類は?

最近、その答えの片鱗だけでも見たいと漠然と思うようになって来た。
自分自身をも見出す答えの理由の一つにもなりつつあった。

その為にも、今は取り合えず戦っておこうか。
と最近、詩人や哲学者へと成りつつある自分に苦笑いをする。

――この時、後世に私は幾つかの著作を執筆し、その中の一つが当時のこの戦記を書き残す事となり、
それが歴史家の間で物議を醸し出す事になろうとは正直、思わなかった。

私の脳裏の思考とは裏腹に、この無茶な高速機動にハイマニューバはピクリとも軋まずに、私の想い描いた通りの動きをする。
これには、口元に微笑を浮かべ満足そうに私は頷く。

そして、思考が戦いの一点に集中する。
これなら完璧だ。私の想い描いた戦い方が可能だ。

ゴォォ!!

メイン・スラスターを吹かし、そして、また急速に機体は下降する。
地面すれすれまで一気に下降し、寸前に機体をふわりと浮かび上がらせる。
そして、戦闘可能領域までの位置に機体の姿勢を固定させる。
これで機体の各部が暖まり、万全の戦闘状態を維持が完成する。
この方法が実戦を積み重ねてきた私のやり方だ。

――宇宙(そら)に浮かぶ蒼い惑星を見て感慨を耽るのもこれまで。
戦いの舞台は、神々の住まう天空の宇宙(そら)ではなく月面なのだから。

だが、この宇宙光景を目にすればこの世界に神などは存在しないが、
それに近いものは存在するのかもしれないという感慨に耽るのもまた良しであろう。

ピーピーピー!

コックピット内で後方確認の為のアラームが鳴り示す。
そして、同時に後方の戦艦三隻から我が『クルーゼ隊』が誇る列機たるジン達が次々と飛び出して来た。

各機は一旦、バラバラに思いのままに上昇や下降をすると、
私が指示を出すまでも無く、まるでテレパシーで統率されたかのように一斉に隊列を組み始めた。

15機の機体は完全に一つの生き物のように陣形を組立てる。
今度の陣形はスピードと中央突破用の嚆矢の陣形となる。

今度は私も部隊の全員に号令を掛ける。
気合を入れる意味でもだ。

「行くぞ!!味方が苦戦している!この一秒に全てを賭けろ!!」

『『了解!!』』

我がクルーゼ隊のジン全機は私のハイマニューバを先頭に一気に激戦区へと突入する。
背後からは我が旗艦『ガルバーニ』を先頭に3隻のローレシア級戦艦が全力前進で駆け抜けようとする!

――急げ!戦場へ!

全力で部隊は加速し続ける。私の機体は他の者と違い特別なジン・ハイマニューバなので
と、すれば一機だけ突出して他の者を引き離してしまう。
逸る気持ちを抑えながら、部隊全体が出せる最高の戦闘航速スピードを維持しながら戦場へと急行する。

――見えた!!

その瞬間(とき)、僅か十数秒の間にコックピットのメインモニターには前方では、
戦闘による火器応酬による点滅が肉眼で確認できて、激烈な戦闘が目の前で繰り広げられている様子が確認できた。

そして、味方側のジンは統制が全く取れておらず、各機が個人でバラバラで戦っている有様が手に取るようにわかった。
逆に敵側である連合の部隊はメビウス<ゼロ>の部隊を中心に連携の取れた攻撃をしている。

奴らは、明らかに相手側である我々のザフト軍が統制が取れておらず、バラバラに戦っているのを好機と見ており、
メビウスと連携を取りながらジンを追い詰めてるのが確認できた。

私は痛烈な舌打ちを鳴らす。この程度の敵に何をしているのだ?
敵側に傍受されるのを構わずに私は通信をオープン回線にする。

「クルーゼだ!!後続部隊は下がれ!この程度の敵に何を手間取っているかぁ!!」

私と部隊のジンは一気に敵中の激戦区に突っ込んだ。
牽制用に突撃銃を放ちながら連合軍の陣営をかき乱す!

『おお!クルーゼ隊長!』

『あの、世界樹の英雄クルーゼが来たぞ!!』

オープン回線や通常回線から次々に歓声が入って来る。
コズミック・イラ70年2月22日の世界樹攻防戦で、ジン一機で私はモビルアーマー37機・戦艦6隻を撃破。
その功績を称えられネビュラ勲章を授与された事はプラントで大きく知れ渡り、連合側でも恐怖の象徴として悪名を轟かせている自分だ。

この名声の効果とやらを最大限に使用してやった。

その連合側の一瞬ひるんだ隙を見逃さずに、私は一機のメビウスの狙いを絞り獰猛な鷲のように襲い掛かる!!

私は、武装のJDP2-MMX22 試製27mm機甲突撃銃を瞬時に構えると、
狙いを外すこと無く一機のメビウスのコックピットの中心を貫いた。

ドォォォン!!

爆発し盛大な花火となったメビウスを横目に次の獲物に襲い掛かる。
レールガンを必死に放つもう一機メビウスの攻撃を嘲笑混じりにかわすと、
そのメビウスの前に躍り出て、一気に突撃銃に装備された重斬刀で切り裂いた。

グワァァシャァァン!!

鋭い斬撃による衝撃でメビウスの装甲が捻じ曲がりグシャリと叩き潰されそしてバラバラに砕け散る。
エンジンに誘爆し引火したのかこれも瞬時に、火達磨になった。

この鮮やかな手並みには流石には連合軍のMAの連中は右往左往し始め、混乱し逃走も出始めた。
だがその混乱の中を、連合軍の中でも一際目立つオレンジの機体が私の前に現れた。

『――ラウ・ル・クルーゼだと!?その首を貰うぞ!!』

混戦の状態で一機のメビウス<ゼロ>が果敢にも私に突撃を仕掛けてきた。
そして、すれ違いざまにオープン回線越しに私の耳にその声が入って来る。
こいつが噂のメビウス<ゼロ>部隊のエースか!

「ほう、おもしろい!ならば、かかって来るが良い!!」

――こいつは、エースだと直感的に理解する。

こちらもオープン回線でわざと挑発気味に答えてやる。
わざわざ名指しで私に倒されに来たのだ。多少の礼儀を伴ってやろう。

「フフフフッ!貴様は正しいぞ!!」

私は歓喜の笑みと声を搾り出す。

恐らく、私を倒す事によって味方の建て直しを図ろうとしているのだろう。
もはや、エースによって戦場の秩序が成り立つ現在では最も効率の良いやり方ではある。

「ルキーナ! オロール! 手を出すなよ!こいつは私が息の根を止める!!お前達は他の雑魚を任せるぞ!」

『隊長!!』

『危険です!!』

隊員達の心配げな声を背後に受けながら私は激烈な戦闘衝動へと突入してゆく。
――久々だな。この感覚。
――強敵を前にした時のこの喜び。

どうしようもなく、熱くなってゆくこの感覚。
同時に、冷めてゆくかのように冷徹に研ぎ澄まされれゆく感覚。

そして、自分の小隊の列機達に手を出させないようにする。冷徹な感覚の方が警告するのだ。
下手に手を出したら彼らでは対応できずにやられてしまう可能性がある。と

この相手ではな……私以外は無理だろう。

そのメビウス<ゼロ>は私のその挑発の声を聞こえたかのように襲い掛かって来る!
そして、その機体には『No.0』のマークが輝いていた。

ゴォォォ!!

私もメインスラスターを一気に全開にし相手に突っ込んでゆく!

――ピキィィィィンン!!

――脳裏に閃光が疾る!――来るぞ『ガンバレル』が!!

『ニュータイプ能力』を全開にさせた私は、感覚を機体の外に広げる事により、
周囲の認識度が通常の状態では考えられないほどの鋭敏さと感知能力を持つ事が可能になったのだ。

しかも、『敵』の『プレッシャー』を感知する事でどのように攻撃してくるか手に取るかのようにわかる。

奴らメビウス<ゼロ>は、機体中央に装備されたレールガンを中心とした攻撃を牽制に使用し、
本体を取り囲むように装備されている4基の有線誘導式ガンバレルが一斉に本体から切り離れて有線誘導によってこの樽型の兵装はそれぞれが全く別の動作をするのだ。

これによりメビウス<ゼロ>は単機での包囲攻撃、或いはは多数の敵機と渡り合うことを可能としている。
一撃でジンを仕留める事は難しいが、4基のガンバレルで集中砲火を浴びせれば反撃を受けずに撃破することは充分可能である。
これによって味方の後続部隊のジンが多数撃破されたのだ。

だが、この程度のことで私が倒せると思ったか!!

カァッ!!

それに答えるかのように、ジン・ハイマニューバは一つ目である『モノアイ』をひと際激しい閃光を放つ!

『No.0』のメビウス<ゼロ>に搭載された4基の有線誘導式ガンバレルが、まるで意志を持った生き物のように
一つ一つがバラバラに動き私に襲い掛かろうとする。

それは通常のパイロットには極めて把握しづらい動き。
パイロットのその一瞬の戸惑いが簡単に撃破される危険性がある程の素早い動きなのだ。

だが、私にとっては、この程度の動きなどに騙されはしない。
本体であるメビウス<ゼロ>の動きは無論のこと、有線誘導式ガンバレル4基の動き一つ一つを完全に把握できるのだ。

そして、4基の有線誘導式ガンバレルの一つが攻撃を開始しようとする!

――ピキィィィィン!!!

攻撃の一瞬前に脳裏を閃光が駆け抜ける!!

ズドドドドォ!!

次の瞬間に樽型の兵装に装備された2本の火砲が放たれた!!

「ぬうぅ!!」

そして、私は同時にメビウス<ゼロ>本体の動きとガンバレルの有線動作による軌跡、
その先にある突き出た2基の発射口から放たれるであろう弾道の軌跡の位置すらも把握する!

実際にこれは、肉眼でモノを視認して見るという行為ではないのであろう。
『ニュータイプ能力』により拡大した意識が、脳裏に一瞬の閃光のようなイメージが走ることによって生じる一種の予知のようなもの。

そう、頭や理屈で考えるものではない。
これは超心理学に於けるテレパスに近いものなのかもしれない。

それら一連の敵の行動を感知しながら、理解する前に私の腕は素早く操縦桿を動かしているのだ!!
ハイマニューバのモノアイが力強く輝きを放つ!

――ジン・ハイマニューバはコンマ一ミクロンの狂いも無く、私の意志通りに回避行動を取った。

突撃銃とシールドを両腕に持ちながらそれぞれ横に水平近くに上げる。
そして、上体を大きく捻りながら、まるで曲芸師がスレスレで弾丸をかわすかのような絶妙な回避運動でかわす事ができた。

――シールドによる防御動作を全くせずに回避運動だけを重視する!!

敵側の必殺の一撃をかわした私は次の動作に既に入っていた。
だが、向こうもそれを予測していたのだろう。奴は予め2段3段の攻撃の備えを整えていたのだ!

そして、今度は2基目と3基目のガンバレルが同時に来る!

――ピキィィィンン!!

――この動きは、2基目のガンバレルに3基目のガンバレルが影のように隠れて、斜線上の死角を作ろうとしている!!
今、私の目の中には2基目のガンバレルを透視して、その後ろに影のように隠れているガンバレルまでも見えることができた!

「見えた!!そこか!!」

私は大きく叫ぶ!!
2基目のガンバレルの射撃を囮にして、3基目の本命の一撃を私に与えようとしようとしているようだが……そうはいくか!!

ズドドドドォ!!

2基目のガンバレルが火を噴いた!
その攻撃に対して私は機体を微妙に振動させて、擦り抜けるかのように私は回避した!!

――3基目!来るぞ!

2基目の物陰に隠れたガンバレルが丁度、射線上に入った私のハイマニューバを捕らえようとする!

ズドドドドン!!

咄嗟に姿勢制御用バー二アの一部を逆噴射して一瞬、機体はカクン!と下がる。
そして一瞬で何も無い空間を火線が無意味に駆け抜けた。そして、次の瞬間にはハイマニューバは元の位置に戻っているのだ。

傍目から見たらハイマニューバが瞬間、分身したように見えるだろう。

――もはや、終わりにする!!

私は一気に加速して距離を詰めた!!
4基目のガンバレルが、慌てて私を狙おうと追尾をかけようとするが、それはもはや私は読んでいる!
心に余裕を持ちながらハイマニューバはJDP2-MMX22 試製27mm機甲突撃銃を構え、4基目のガンバレルを狙い打ちにする。

ズドドドドドッ!!

――ドォォォォンン!!

こちらの突撃銃が火を噴き、ガンバレルが粉々に爆発した。

相手側のパイロットの驚愕が手に取るようにわかる。

「――相手が悪かったな。地獄に逝く前に良い土産話が出来たであろう?」

この時の私は恐らくは残虐な微笑みを口元に浮かべていたことであろう。

「――さよならだな!!」

距離を詰めると、必死にレールガンを撃つ『No.0』のメビウス<ゼロ>のコックピット付近に重斬刀を叩き込んだ!!

グワシャッァァン!!

メビウス<ゼロ>のコックピットがグシャグシャに潰れ、砕け散った。

「――安心しろ!地獄はこれから賑やかになるぞ!!」

一瞬、相手の断末魔のイメージが脳裏に響き渡るかのような錯覚を覚える。
そして私は満悦する。強敵の息の根を止める瞬間。これこそ戦士の醍醐味であろう。

同時に『No.0』のメビウス<ゼロ>はエンジンに火が着いたのか爆発を始める。
私は瞬時に機体を爆散に巻き込まれぬように離して距離を取る。

――今までの戦いで恐らくは五本の指に入るはずの強敵を討ち取った満足感が私の心を満たしてゆく。

――この一瞬の刹那の刻が堪らぬ!!

私が骨の髄まで戦士でありMS乗りだという事を実感する。
戦わなくては生きてはいけない人間なのだと骨身に染みて感じる!
これぞ生きている証――。

回線から次々と歓声と悲鳴の声が入る。

『やったぁー!!クルーゼ隊長!!』

『敵が動揺しています!!今です!!』

味方からは賛辞とそして連合軍側の回線であろう。悲鳴が聞こえた。

この事によって、味方のジンたちは勇気百倍となり士気があがった。
そして残った連合軍側ののメビウス<ゼロ>やメビウス達に動揺が走っているようだ。

恐らく私が倒したメビウス<ゼロ>は隊長機でありトップエースであったのであろう。

戦闘が終了した後で聞いた事だが私がその時に討ち取った奴は、
メビウス<ゼロ>部隊を纏めていた大物『ウィンターズ大尉』という連合側では相当に名の通った人物であったそうだ。

しかし、それはあくまで後日談のことである。

最終的に『ガンダム』の驚異的な戦闘力の前に連合軍は致命傷を受けて壊滅してしまい
ザフト軍は圧倒的な大勝を収める事となったのだ…・・・
そのお陰で私の大活躍は隅に隠れてしまったのだ。なんとも無念だ。
私がその為に拗ねてしまった事は秘密にしておいて欲しい。

そして隠れた武勲として記されるべき事は、私が隊長機を撃破している間に部下達が2機のメビウス<ゼロ>と4機のメビウスが片付けていた事である。
私は部下達のその武勲によって更に士気が高揚し、残りを始末する為に哀れな獲物達へと襲い掛かってゆくのだった。

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