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機動戦士ガンダムSEED  閃光のハサウェイ 第34話

Last-modified: 2007-11-29 (木) 21:22:16

――ズゴォォォォォォン!!

と、唸るような轟音の響きを肌で感じながら俺は、
広大な空洞全体に亀裂が入り崩壊する様子を一瞥した。

黄昏の地底王国は崩壊し、地下に集う『巨人』達が今、滅び去ろうとしている

『巨人』達が王国各地で断末魔上げ、筒状の巨人達はあるものは倒壊し、
又あるものは生じた亀裂に呑み込まれ地底奥深く朽ちながら消えていく……

――そして『エンディミオン・クレーター』が崩壊を始めた。

もはや、この基地は資源収集用の重要拠点としての役割を果たす事は当分はないであろう。

ギルバートが言う様に地球連合軍にレアメタルが渡る事を阻止し、
プラント側が月面に於ける優位性を確立する為の第一歩となる。

それならば基地を制圧し、なるべく傷をつけずに手に入れることの方がベターだという意見もあるだろう。

だが、奴はプラント自体に積極的な攻勢態勢が築かれる事を好ましく思っておらず、
基地を完璧に叩いた上にレアメタルをもプラントの手に渡らないように画策したのだ。

有力なパトロンでもあり、『総司令官』殿の意向な訳だから、
俺とても従わない訳にもいくまい。一応は。

――俺も戦争が長期化し継続は好ましくないと思う。

俺自身が『反体制派』の組織のリーダ―であった事も関連するのだが、
職業上の都合と自分自身の知的好奇心を満たす為に『向う』過去の近代戦史を好んで調べた時期があった。

特に好んだUC79の『一年戦争』とUC93に発生した『赤い彗星の蜂起』などは、
様々な戦史資料を繰り返し読み漁ったり、擬似軍事シュミレーションなども繰り返しやり込んだものだ。

何故、それら卓越した指導者を頂点とした組織が官僚の悪癖が慢性し統治能力をも疲弊し、
老朽化した地球政府組織に敗れたのか?

やはり、一番の敗因は国力の圧倒的な差であろう。

かつて、UC世界で『一年戦争』と呼ばれた戦いではコロニー国家と地球政府との間には、
国力比1:30という圧倒的な国力の差が横たわり続けたのだ。

コロニー国家が緒戦で優勢だったのは、本当にMSの登場と緒戦の奇襲らが成功したからに他ならない。
地球という確実な地盤を持ち続ける地球政府。この世界に於いてはどうなのだろうか?

これは今の、プラントと地球連合にも見事に当て嵌まる。
俺は戦う事を決意するに当たって、この事を真っ先にギルバート達に示唆したのだ。

ギルバートやラウも俺が用意したこの関連資料には目を血走らせながら何日も徹夜を繰り返し、
さんざん頭に叩き込んだという。

この結果、プラントは圧倒的な危機管理の甘さと崖ッ淵のギリギリに立っている事を改めて認識したという。

そして、今ならまだ間に合う!と結論を出し、俺達は一斉に行動を開始を始めたということだ。
その手始めが、この『エンディミオン・クレーター』壊滅作戦という訳だ。

そして今現在の俺は、目の前で崩壊してゆく『サイクロプス・システム』を目にしながら、

「――人が犯した過ちは『マフティー』が粛清する……か」

しかし、そう小さく呟きながらも、実際に俺の心はそれとは裏腹に、
作戦を無事に完遂した喜びに満ちていたのだった。

前の世界では、自分が『マフティー』である。と常に心で言い続けてきた。
組織のリーダーとして架空の人物を演じ続ける自分に対する戒めでもあったのであろう。

そして、今は、逆に自分が『マフティー』だという事が全くの重荷になっていない。
逆に気楽な部類に入るのだろうか?

元の世界で自分は一度『死んだ』のだという事は大きい。
前の世界での自分は死んでしまい、この世界の俺は何の楔を持たない気楽な異邦人……

これが大きいのだろう。
この世界に昔の自分の痕跡が何も残っていないのは、自分に弱点が無い等しい。
だから、どのような大胆な事もできるようになるのだ。

もう一つの出来事は、俺の『ニュータイプ能力の』爆発的な拡大だ。
前の世界では感覚的な制限があったように思えたが、此処の世界に来て(正確にはラウと邂逅)してからは、
天井知らずに能力や感覚が拡大してゆく。

一般のMSは無論のこと、サイコミュを搭載した『Ξガンダム』は乗るというよりも、
一体化したという感覚になっている。

最近、『Ξガンダム』に搭載されたコックピット・システムを利用し、
記録されている『赤いユニコーン』との擬似戦闘 シミュレーションでも10回中8回は確実に勝利するようになっていた。
前は10回に良くて2本しか取れなかったのにだ。

自身の経験もあるのだろうが、自分の能力や応用力が比較的に高まっている事が実感できる。

今の自分ならば、『アデレートの戦い』の時の自分に対して100回中99回は勝利する事ができる。
あの『ペ-ネロペー』に苦戦した事が今の自分を顧みると不可思議に思って来る。

あの時は切羽詰ってたし、焦りもあった。戦いにマイナス面が数多くあったのは正直否めない。
だが、それを差し引いても自分の能力の拡大に驚くばかりだ。

そして、ふと疑問が湧く。俺が知る限りの今までの『ニュータイプ戦士』の先達たちのことである。

――やはり、『ニュータイプ』という存在は近くに味方としてか、
それとも敵として同レベルの、或いは凌駕する存在の同じ『ニュータイプ』が必要なのだろうか?と

それは神が与えた人が進化する上での必然的なことなのだろうか?

……ニュータイプ論は置いておこう。

今回の戦いは此処に来てから久しぶりの戦闘であり、しかも暗殺などという嫌らしい方法ではなく正面から敵本拠地に殴り込んだのだ。
――しかも見事に成功したのだ。
久々の充実感が伴う。

――戦士としての誇りに恥じぬ戦いとしては申し分が無い。
……『邪気』が漂う連中の息の根を止めたのだ。

……それが自己満足なのは無論、承知しているが、
これは『戦士』の性なのだろう。

卑怯で恥知らずの敵を自分の力で叩き潰すのはある意味爽快でもある。

MSを駆る現代の『騎士』として、『尊敬に値する敵』に対しては正面から正々堂々と戦って相手の命を奪う。
そして、卑劣な連中にはそれ相応の報いをくれてやるのも、また戦士としての作法だと俺は思っている。

――俺は『サイクロプス・システム』が完全に破壊されたその崩壊の一連の光景を、
『Ξガンダム』の目を通した360度スクリーンによって目に焼き付けた。

……全て俺がこの手で行った破壊の痕跡と爪痕である。

操縦桿を強く握り締めた。

――ピピピピ!

「うん?」

警告音と共に360度全天周囲のメインモニター上に、幾つものサブスクリーン表示が浮かび上がり、これにより現在の周辺状況のリアルタイムで確認できる。

そして、俺はそのサブモニター表示を素早く確認する……
次に出た言葉は、

「なに?」

の一言だった。

『ターゲット破壊の際に生じた破壊エネルギーの逆流の可能性あり。
  危険度指数89パーセント。本機の緊急避難の必要を認める』

と、周辺状況の詳細のデータが表記された後に、
最後に『ガンダム』が判断したであろう予測と要望が述べられていた。

「……む?」

『ガンダム』はこの地下空洞が、大爆発する前兆があるとしてさっさと逃げろ!と俺に言ってる訳だ。それはお前が調子に乗った所為だという文句……いや、結論が付けられていた……

要するに、早く脱出しなければ俺達は大爆発に巻き込まれてお陀仏となってしまう訳か?
俺は一度、大きく溜息を吐くと精紳集中に入る。

――ピキィィィン!

機体周辺のセンサーとは別に、精神感覚を触覚が広がるかのように周囲に張り巡らせる。

サイコミュと呼ばれる精神連動システムによって、
俺と『Ξガンダム』は見えない力によって強く一体化している。

自分自身が広がってゆくような感覚によって、
周囲の状況が抜き差し成らぬ事態に成りつつあることを肌身で実感させてくれる。

やはり、センサーだけで『知る』のと、自分自身が肌で実感する事では雲泥の違いのようだ……

――拙い……と内心呟く。

『マフティー・エリン』の素顔を隠す為の象徴たる黒の専用ヘルメット。
これは俺の精紳波をガンダムに送る為の補助用のシステムも組み込まれている。

それを被っている俺の額から顔へ冷や汗が伝わり始めた。

――多少、調子に乗りすぎたのだろうか?

――ピピピピ!!

「ガンダム!――今度は何だ?」

……更に追い討ちをかけるような危険警告の表示がサブモニターのウィンドウに表示される。

「それは――本当か?」

……ガンダムのセンサーに拠れば、先程ここへ入ってきた侵入経路が、落盤によって完全に埋まってしまったというのだという。
脱出路の確保もせずにターゲットを破壊したのは、正直言って後先考えない無茶無謀であり痛恨極みであろう。

無意識に『ガンダム』のパワーを当てにしすぎるのも良くない事なのだろう……な。

そう、今まさに『Ξガンダム』の圧倒的なパワーで破壊された『サイクロプス・システム』の破壊エネルギーの余波は、逆流をし始めて俺達に襲いかかろうとしているのだ!

『ガンダム』のメガ粒子砲によって生じた莫大な破壊エネルギーは、『エンディミオン・クレーター』地下深くで爆発的な破壊波動を生み、
上へ上へと向かい基地上空に奔流となり迸る事になるであろう。

メインモニターに映る基地の詳細図面を表記しているナビシステムによれば、
今から、元来た道に穴を開けながら戻ろうとすればちょっぴりと時間が足りないかもしれない。

……その間に、俺達は爆流の猛威に巻き込まれる恐れがあるのだ。

「――本当に拙い状態になってきたぞ」

――ウィン!とコックピット内に振動が走った。
俺が呟いた独り言に『Ξガンダム』は反応したのだろうか?

都合良く――当たり前だ。というような答えが返ってきたのだ。

確かにこのままでこの場に居れば、幾ら最強を誇る『Ξガンダム』も一巻の終わりなのかもしれない。
しかし、頑強な『ガンダム』の装甲ならばこの程度の……

――ウィン!!

「おわっ!!」

ガクン!と一瞬,姿勢制御のアポジモーターが都合良く途切れる。
コックピット内が思いっきり揺れてしまい、俺は大きく仰け反ってしまう。
……どうやら怒られたようだ。

俺はヘルメットに隠れた顔の中でで苦笑する。タイミングよくやってくれるものだ。
本当にこの『ガンダム』には、自身の意思が宿っているかのようだ。

「――悪かった……わかってる。脱出するぞ!!」

今度は何の異変も起こらずに、ウィンと駆動音からは了解のような答えが返って来る。
――笑ってしまうな。『メカ』にも意志が宿るものなのだろうか?

母の故国では物には八百万と呼ばれる『神』が宿ったと言う。

MSも物の神と言えるかも知れない……確かに『ガンダム』は特別な存在なのだろう。
一般的な『神』と呼ばれるよりも猛々しい『戦神』の部類に入るに違いない。

「よし。では行こうか『相棒』!」

俺はコックピットの天上に顔を向けながら『ガンダム』にそう答えた。

さて、本格的な脱出経路を考案しなければ。
しかも、急がないと拙いのだ。

――ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!

ギルバートやサラが入手した基地の内部構造データを合わせて、
俺はキーボードを瞬時に叩き最短距離をコンピューターに割り出させる。

『Ξガンダム』のコンピューターは俺の入力データに反応し、今現在の周囲状況を惨状をセンサーでモニターしながら、
コンピューターが予測を立て、メインモニターから別の窓枠が形成され、サブモニターが出現する。

そして、出口までの最短距離が瞬時に表記される。
来た道よりもよりもやや距離はあるが、別の脱出経路がメインモニターのサブモニターに記される。

……これが最高のベターなのだろうな。
決してベストではない。が、それは仕方が無いことだ。

――スゴォォォォン!ドオオォォォーン!!

その間にも周りの空洞は崩壊し始め、岩盤が無数に降りかかる。
タイム・リミットまで後、僅かなのだろう。

ならば……よし!!
――目を一瞬閉じ、精紳を集中する。脳裏に閃光のイメージが炸裂する!

――ピキィィィン!!

俺は『思念』を放ち、サイコミュで俺と連動している『ガンダム』はそれに受け答える。

ガシャン!と瞬時に両肩と胸部パーツが変形し『ガンダム』は高速飛行形態へと再び変形した。

俺は改めて、サイコミュ・システムの結合を確認し、
完全に自分と『Ξガンダム』を一体化させる。

――ウォォォッォーン――

『Ξガンダム』が大きく咆哮を上げ、そして二つに輝く双眸が俺の目となった――

キュィィィン!

という似た音が俺の頭脳に響き渡る。機体の全身に俺の神経が通った証だ。

――俺は操縦桿を握り締めた。

するとガシャン!という音と共に『ガンダム』のマニュピレイターの一つ一つの指先の感触を感じ手の平が自由自在に開閉できる事を確認した。
今、『ガンダム』の腕は指先まで完全に俺の腕となったのだ。

俺がフットレバーを踏み締めると、同時に連動して『ガンダム』の両脚の隅々まで完全に俺の脚となった。

ギュイン!

両脚に備え付けられたアポジモーターが唸りに似た響きを上げる。
姿勢制御用バーニアも俺の感覚器官の一つとなる。

そして、背部に感覚を回すと背後のメイン・スラスターが大きな騒音と共に唸り声を上げた。

――俺は同時に気合の声を上げる。

「いくぞォォォ!!」

ゴゴゴゴォォォォォ!!

メインスラスターは爆発的な加速エネルギーを生み出し、
俺と『ガンダム』を崩壊しつつある地底の地獄から、星空が煌く月の天空へと羽ばたかそうとしていた。

――そして、このまま友が待つであろう戦場へと俺を導くのだ。

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