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機動戦士ガンダムSEED  閃光のハサウェイ 第42話

Last-modified: 2007-11-29 (木) 21:27:44

 ――ビッビッ!!

 ――我が愛機は、私の意思に感応するように激しくモノアイを点滅させている。

 私の歓喜に答えるかのように機体は咆哮を上げているのだ。
モビルスーツとは元々、戦う為に生まれた”巨人”である。

自らを激しい戦い中に置く事こそ、彼らの望むところなのだ。

 「――わかるぞ。お前の”心”が……。もっと強い敵と戦いのであろう?」

 私は、機体へと語りかけた。すると、

 ――オォォン!

 私のハイマニィーバは、答えるかのように大きく響いた。
 無論”ガンダム”のようにサイコミュ・システムが積んであるわけでもない。

 このハイマニューバは、”彼”に比べれば確かにこの世界では最先端の新技術を
投入しているが、彼がやって来たあの遥かな彼方の世界では、旧式であり世代的にも
古い機体となるのだろう。

 そう、何ら特別な存在ではない。

 だが、機体というものは単に火力があり無数の砲身がついているとか、特質的機動力や
多数の敵をロックオンできるマルチロックなど必要が無いのだ。
 そんなものは、パイロットの技量しだいでどうとでもなる。頼る者こそ愚か者である。

 必要なのは何か?それは至極、単純な事である。
 
 ――愛機を己へと近づけることだ。

 それは、簡単な事のようで難しいことだ。
 
 自分がその機体と一心同体となり、機体が己自身となる。
 これは機体を単に道具と思っている連中には不可能なことなのだ。
 
 MSは所詮、兵器であって道具であるという認識は、ある意味で正しいが、
私は否定している。自らの命を預ける存在をそのように扱って機体が応えてくれるのだろうか?

 後日の事となるのだが、私は自分自身の『ガンダム』を手に入れ、『彼』を生涯の愛機として付き合う事となる。

 確かに冷静に考えれば、モビルスーツは只の道具だ。戦闘を優位に保つ為の手段に過ぎない。
多分にこの思いも夢想に過ぎないのかもしれない。

が、ウダウダと考えずに今はこの感覚に浸るべき時なのだ。いくさ人とはかくあるべし……!!
そう、罠があったら噛み破ればいいのだ。

 ====================

 ――ドキュゥゥゥゥン!!

 「くっ!」

 鈍痛が脳裡から沸き起こる。これは、今までの感覚と違う……?
 
 ――ビッビッ!!
 
 ……白いジンが一瞬、オレに向って嘲笑ったかのように見えた――!

 なめられた――!?このオレが……!!

 ――モビルアーマー乗りの誇りにかけて貴様を撃ち落してやるぜ!
 ピタリと正面に照準を合わせるとオレは一気に突撃を掛ける!

 『隊長!タイミングが早すぎます!」

 『兄貴!どうした!?』

 後ろからケインとラッセルの声が聞こえた気がしたが、そんな事は今のオレには、どうでもいい事だった。

 ――そう、コイツをぶっ殺す!!

 「このオレをなめるなよ!!白いクソ坊主がぁぁぁ!!」

 スロットレバーを引きながら、<ガンバレル>4機全部を一斉に解放した!

 ====================

 ――ピキィン!

 「来るか……?」

 軽いプレッシャーと共に、メビウス<ゼロ>3機が私の目の前で
リーダー機と思しき一機を中心に展開してゆく――。

 その光景を見ながら、私は自然に操縦桿を強く握る締めている事に気がつき、僅かに苦笑する。
 
 この程度のプレッシャーごときに何故、緊張する必要があるのだ?
 頭に血が上っている狂犬の1~3匹など物の数ではない。 

 既に相手のプレッシャーから読みきっている私は、相手の感情など手にとるようにわかった。
 怒り、焦り、恐れ――諸々。もはや相手は、私に対して髪の毛1本も勝機は無い。

 ――今の私に敵はいない。なぜなら

 「――絶好”蝶”である!」
 
 と、ここで名台詞で決めてみた。ああ、何てカッコいいのだろう私は――!
 他人からどのように罵られようとも誰も自分の生き様を変える事はできないのだ

 そして、素早く陶酔から冷めると、

 ……死地にいるはずなのに案外余裕があるな、私も……。

 と私は自分を戒めてみる。

 ――ピキン!

 正面から微弱なプレッシャーを感じる。弱いのだが、何故かうっとしいのだ。
夏で自分の周りに蚊が飛び回っている五月蝿さとよく似ているのだ。プチッと潰してやりたい。

 「さてと……冗談はここまでだな!!」

 ――ゴォォォー! 

 正面から先端に鮮やかな羽マークとNo2のエンブレムを刻み込んだ
メビウス<ゼロ>が正面から向って来る!

 ――バシッ!バシュ!バシュッ!バシュッン!

 機体の周りに取り付いている4つの樽型の特殊兵装が本体から切り離された!
この樽型の兵装は本体から切り離し、有線誘導によってそれぞれが全く別の動作をする事ができる。
本体の樽型は中心から二基の銃身が飛び出て、照準を私を狙って合わせて来る!

 「ぬぅぅぅん!!」

 ――ピキィィィッィィン!!

 気合の掛け声をあげ、私は瞬間的に感覚を全周囲へと広げた。

 それは光の速さを凌ぎ、コックピットを通り越し、機体外部から
更に宇宙空間全てに広げってゆく。

 蝶……もとい超感覚は広がってゆき、瞬時に私は周辺全ての戦状況を把握した。

 ――メビウス<ゼロ>、三機のそれぞれの位置を確認。
 
 ――正面からは、うっとしい微弱なプレッシャーを放つ小物。
 ――小物を背後から追うようにして、左右へと展開してゆくプレッシャーすら無い雑魚2機。

 ――さて、どのようにして戦う?

 ――No2マークを記した奴は、機体周囲の樽型の<ガンバレル>を解放し……。

 ――それぞれ1、2機目の樽型上空を斜め30度と60度……。
 ――3、4機機目が続いて約20度ずらしながら、1機目の樽型の射線軸上へ10度ずつズレながら並行に移動……。

 その光景が脳裏に浮かび上がり、瞬時に回避行動へと移らせる。
次の瞬間に寸分違わない位置へ樽どもは、移動し間髪いれずに攻撃を仕掛けてきた! 

 ――ドドッドドド!! ドドドドッ!!
 ――ドドッドドド!! ドドドドッ!!
 
 白いハイマニューバは、機体を右斜めに逸らし、機銃を構える右腕を
真っ直ぐに伸ばしながら、左腕のシールドは次の瞬間には手放している!
 
 ドドッ!ビュッン!!
 
 体を逸らした瞬間――。

 1撃目と2撃目のガンバレルの射撃が自分の装甲の表面をギリギリかする寸前で
通過していくのが肌で分かった!まるで自分の肉体が、ギリギリで避けきったような痛快な感覚である!

 弾道が通過する瞬間、一瞬だけ鳥肌が立つが、逆に血が沸騰し心は高揚する!

 ――当たりはしない!!
 
  ビュッン!!ビュン!
 
 ――かわしてみせる!!

 今度は体を反対側へ捻るようにして、白いハイマニューバは3撃、4撃目の射線を回避していった!
 
 もちろん、装甲にはかすり傷一つ付いていない。当たったところでジンの装甲は厚い。
1撃や2撃程度では致命傷は与えられないのだが……ご覧の通り、私にはかすりもしないのだ!

 巧妙に放たれた攻撃の隙間を掻い潜りながら、私は会心の笑みを浮かべていた。
これこそ生きている証!実感!戦士としての充実感!

 私は根っからの戦士だと実感する。あの実業家の真似事をしていたあの男と私は根本的に違う。

 ――そう違うのだ!奴とはな!

 ――自分は生涯を戦士として生きるであろう。

 今の私は、自分の能力に些かの疑いを持たない。
 これこそが ”ニュータイプ戦士”である私の力なのだ。
 これは私自身の力だ。あの愚かな男は、用いる事はできなかった……!!
 
 腹の底から笑いが込み上げてくる。精々あの世の地獄とやらで悔しがっているのだな……”オリジナル”どの!
もう、貴様の事を苦々しく思い出すのもこれが最後だ。

 ――もはや、酒の肴で扱き下ろす時の下ネタ位にしかならないだろう。さようなら過去の汚物よ。

 決別を済ますと心は更に軽くなり、遥かに飛翔してゆくのがわかる!

 綱渡り同然の行為だが、私は楽しんでいた。
 この生と死のギリギリの境界線を掻い潜るの行為は堪らなく楽しく、面白い。
 こんな楽しい事がこの世にあったとは、まだこの世は捨てたものではないだろう。

 今、この楽しみを分ち合う事できる同志は、今のところ一人しかいないのだ。
(だが後で、そんな馬鹿は、お前だけだと言われてしまった……)

 同時に自分の戦士としての判断力がずば抜けている事を再認識する。

 シールドを手放したのは咄嗟の判断と計算が働いた為である。
防御にシールドを使用していれば、ワンテンポ動作にタイムラグが生じるからだ。

 ――これぞ、天才”ラウ・ル・クルーゼ”の真骨頂である……!

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