Top > 機動海賊ONE PIECE Destiny 601氏_第11話
HTML convert time to 0.005 sec.


機動海賊ONE PIECE Destiny 601氏_第11話

Last-modified: 2013-12-24 (火) 19:10:58

「あらよっと!」
「くっ また消えやがった!」
「なんてすばしっこいんだあの赤服!」
「ぐあっ!!」
「またやられた?! どっからナイフが飛んで来るんだ!」
「知るか! 良いから早く探せ!!」

ゾロと別れたシンは、ゾロの方で騒ぎが始まるのとほぼ同時に、手近に潜んでいた賞金稼ぎ達に戦いを
仕掛けた。
地の利と言う点で言えば、賞金稼ぎ達の方が有利ではあったのだが、剃、月歩、フォースなどを駆使し
つつ、ともかく一箇所に留まる事をせず、相手の視界の外へ外へと移動し続けるシンの戦い方は、賞金
稼ぎ達を翻弄するに充分なものだった。

「えーと……さっきので10人目か。ケルベロスで吹き飛ばすなりエクスカリバーで薙ぎ払っちゃえば早
いんだろうけどなあ。今回は早さより戦術の方が肝腎だし」

はなはだ賞金稼ぎ達を舐めきったような言い様ではあるが、シンとしては別段舐めてかかってるつもり
はなかった。まがりなりにも軍人として多くの作戦に参加した身である。戦場において数の優位がいか
にやっかいであるかぐらいは、身をもって知っている。ひたすら移動し続けて各個撃破を続けているの
も、半分はその為だ。
残りの半分は、月歩も含めた新たな戦術の模索、と言う事でもあったのだが。

ともあれ、軽く一息入れて残りのナイフの数を確認するシンだったが、その耳に、遠くで賞金稼ぎ達が
挙げる怒号や悲鳴が届いた。そちらに視線を向ければ、大人数の只中を駆け抜けながら三本の刀を自在
に振るうゾロの姿があった。

「あーあー、アッチはまた派手に暴れてんなあ……まあ、ゾロなら大丈夫だろうけど」
「いたぞ、コッチだ!!」

呆れたように言うそばから、路地の入り口に賞金稼ぎが現れ声を挙げた。どやどやと足音が迫る中、
シンは小さく溜息をつくと――「剃刀!」――剃と月歩を組み合わせた技でその場から姿を消した。

「またか、クソっ!」
「早く探せ! あんなガキ一人に手間取ってちゃ、後でどんな罰があるか解らねえぞ!」
「そうだな。俺も同感だ」
「え? って、何だぁぁぁあああっ?!!」

集まった十人ほどの賞金稼ぎ達が、頭 上 か ら 掛けられた声に宙を振り仰げば――

「よっ」

足場など無い空中で、しかし、小刻みにジャンプを繰り返すシンの姿があった。

「このっ!!」

賞金稼ぎ達は一斉に頭上に銃を向けるが、その銃口が火を噴くより早く、またもシンの姿は掻き消え、
否――「ミラージュコロイド バージョン2!!」――空中、壁、屋根、地面など、彼等の周囲に幾
人ものシンの姿が現れた。

「おぉぉっりゃああぁぁぁぁぁああっ!!」

賞金稼ぎ達が分身に驚き戸惑いを見せたその瞬間、分身の一つが怒号と共に賞金稼ぎの中へ、ナイフ
を握った両手を交差させた態勢で突進し、一気にその中を駆け抜けた。
ある者は吹き飛ばされ、ある者は刃を受けてその場でくず折れ、僅かの間に十人近い賞金稼ぎ達が倒
された。
シンは全員に息があるのを確認し、ナイフをベルトに差したホルダーにしまいこみ、小さく溜息を漏
らした。

「分身はいろいろ使い勝手ありそうだな。しかし、投げナイフも残り一本か……コイツはともかく、
やっぱピストルの方は使いづらいなあ……当たんないし」

射撃自体は特に苦手と言う訳でもないのだが、滑腔銃身で球形弾を使うこの世界のピストルでは、至
近距離での威力はともかく――何しろ弾の直径が大きく、また重い――命中精度は悲しいものがあっ
た。これが、海兵達が持っているような銃身の長いマスケット銃ならばともかくも。

「これならボウガンでも使った方がまだ使い勝手はあるかなあ。『嵐脚』がまともに使えるようになっ
たとしても、片足塞がれるわけだし……遠い間合いでの戦い方は、やっぱ考える余地ありだなあ」

などと呟きながら、近場の建物の屋上へと登れば、遠くで聞こえていた剣戟の音も、すでに治まって
いた。あたりはしんと静まり返り、見やれば酒場の屋根に腰を下ろしたゾロが、こちらに向けて片手
に持った酒瓶を掲げた。シンもそれに右手を挙げて応えると、屋上に腰を下ろすと、夜空に浮かぶ満
月を振り仰いだ。

「良い月だなあ……」

月には、あまり良い思い出がない。あの最後の戦いの記憶は、最近ようやく薄れこそしたものの、し
かし、今でも尚、眉がしかめられるものだった。しかし、それでも夜空に浮かぶその姿を、美しいと
感じる事は、シンにも出来た。そもそも、この世界の月は、あの月とは別物なのだし。
だが、そんなしんみりとした時間は、僅かしかもたなかった。

「ん……? 何か、来た?」

妙な気配を感じ取り、ゾロのいる方へ視線を向ければ――

「死ねっ!! イガラッパッパ!!!」

あの町長の叫びと、それに続いて砲撃らしい音が響く。だが、ゾロは相変わらず屋上にいたままで、
砲撃の着弾も、まるで明後日の方向だった。

「何だぁ? 一体何が……」

起こっているのかと立ち上がると同時に、今度は複数の爆発が起こり、やがて。

「クェーッ!」
「急いで、カルー!!」
「アレは……ミス・ウェンズデー?」

シンの視界の下を、ダチョウとも鴨ともつかぬ奇妙な鳥が、ミス・ウェンズデーを乗せて駆け抜けて行った。
どうやら、彼女は何かから逃げているらしい。だが、その逃げている相手は。

「ゾロ――じゃあなさそうだよなあ……よし」

シンは屋根から屋根へと駆け抜け、ミス・ウェンズデーの後を追いながら背後を確認した。そこにいたのは、
見覚えのない男女の二人組みだった。男は、黒いコートにサングラス。女の方はサマードレスに日傘と言う
何処か呑気な格好だった。だが。

「あれが……さっきの気配の元か」

シンにも、それが只者ではないのだろう事が感じて取れた。

「何なんだ、一体……仲間割れとかか?」

今ひとつ釈然としないまま、半ばミス・ウェンズデーを追い越すように港に近づいていたシンだったが、途中、
現れた大女がミス・ウェンズデーを庇うように、追っ手らしい男に吹き飛ばされるのを見て、足を止めた。
眼下では、男が鼻をほじりながら勝ち誇るようにうそぶいている。

「俺は全身を起爆する事のできる爆弾人間。この“ボムボムの実”の能力によって遂行できなかった任務は、ない」

男が、ほじった鼻クソを指先から弾き飛ばす。ソレは、大女のやられた姿につい足を止めてしまっていたミス・ウェ
ンズデーと鳥に向かって――否。

 ど ぉ ん っ

「何ぃっ?!」
「あなた……赤服君?!」
「あーあ……投げナイフ、最後の一本は鼻クソと引き換えかよ……結構へこむな」
「何だ? 何時の間に現れた?」
「くっ……こんな時にっ!!」

すかさず攻撃しようとするミス・ウェンズデーを、シンは振り向かぬまま右手を差し出して制した。

「勘違いすんな。助けにきたんだ」
「え……私、を?」
「何がなんだか事情は良く解らないけど――どうにも、こういうの放っておけない性分でね」
「アナタ、この街の連中を切りまくってた剣士……? には、今ひとつ見えないわね」
「まあ、どうでも良いがな。何でその女を庇う?」
「だから、性分なんだよ。それに――お前等、どうにも胡散臭すぎだしな」
「ええと……赤服君? アナタ、もしかして本当に事情が」
「言うなよ。自分でも軽率だなーとか考えなしだよなーとかは思うんだから」
「あ、はい」

半ば呆れたような、それでいて嬉しげなミス・ウェンズデーの言葉を、シンが溜息まじりな声でさえぎる。そこに、
追っ手の2人が、半ばいらついたように割り込んできた。

「この野郎……何にしろ、俺達の敵って訳だ。邪魔だな」
「キャハハ! そうね、邪魔ね。だったら私の能力で……地面の下にうずめてあげ 「剃」 え?」

女の方の言葉が終るより前に――「何っ?!」――シンは、2人の目の前に肉迫していた。槍形態の両面宿難を腰だ
めに構えた体勢で。

「このっ!!」
「何時の間に!!」

そして、2人が反応するより遥かに早く。

「ケ ル ベ ロ ス!!!」
「あああああああ?!!!」
「きゃあああああっ!!!」

   ど  ん  っ

あっさりと、追っ手の2人は大通りにまっすぐ沿って吹き飛ばされ、そのまま突き当たりの建物の壁を突き破って転
げて行った。

「何ごちゃごちゃ言ってやがんだか……敵を目の前にして」
「あ……アナタ、一体何なの?」
「……人に言われると結構新鮮だな」

どこかしら呑気さすら窺わせるシンの言葉に、ミス・ウェンズデー、すなわち、アラバスタ王国王女ネフェルタリ・
ビビは、恐れとも、呆れとも、あるいは希望ともつかぬ奇妙な何かを、感じ取っていた。

】【戻る】【