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機動海賊ONE PIECE Destiny 601氏_第12話

Last-modified: 2013-12-24 (火) 19:12:33

ミス・ウェンズデーこと、アラバスタ王国王女、ネフェルタリ・ビビ。
故郷アラバスタを乗っ取ろうと謀るバロックワークスに潜入し、ついにそのボス、Mr.0の正体を掴むに至った。
その間、彼女は王女として生まれた身には過ぎたとも言える冒険をして来た。
その、つもりだった。だが――

「ゴムゴムのォ~~~~~~!!!」
「“鬼”……!!!」

   ド オ ン ッ
   ガ ギ ィ ン ッ

「“バズーカ”!!!!」
「“斬り”!!!!」

「えーと……軽業師君?」
「聞かないで……って言ってもダメか」

彼女の正体をバロックワークスからの刺客、Mr.5とミスバレンタインのペアに肉迫されたのだが、突如現れた
海賊一味の軽業師によって、Mr.5ペアは一撃で吹き飛ばされてしまった。
Mr.5と言えば、バロックワークスのオフィサーエージェントでも上位に属する。如何に不意打ち気味とは言え、
ビビからすれば、ほとんど異常としか言い様がない。
大体、不意打ちとは言っても、互い正面から見合った状態から、有無を言わさぬ高速で接近、攻撃となると、そう呼
ぶ事もはばかられるように思える。

が、それだけならばともかくも――後から様子を見に来たらしい剣士と、何かに対して憤慨した様子の船長がいきな
り殺し合いかと思うほどの対決まで始めたのだ。

何でも「親切な街の住人を切った事が許せない」のだそうだ。

鈍いにも程があると――その街の住人の一人でもあるビビですら思わずにはいられなかった。

「それにしても……」

彼等の強さは一体何事なのだろう。途中、復活したMr.5ペアが対決する二人に攻撃を仕掛けようとし、あっさり
と返り討ち――と言うよりは彼等の戦いの巻き添え――にされていた。
ここウィスキーピークは、リヴァースマウンテンから一つ目、「偉大なる航路」の入り口でしかないのだ。
何でこんな連中がこんな所にいるのか。

「あなた達って……一体何者?」
「何って、海賊としか」
「そういう事じゃなくて」

ビビの言葉に、シンは眉をしかめた。

「むしろこっちが聞きたいよ。アンタこそ一体何なんだ? ゾロは賞金稼ぎだの秘密犯罪会社だの言ってた
けど、あの二人組みもそうなんだろ? 何で仲間に追われてるんだよ」
「それは――」

言いよどみ、視線を逸らすビビの表情に、シンはかすかなデジャヴを感じた。それは、深刻な悩みと秘密を
同時に抱えこんでいる者に、特有のそれだったからだ。例えばあの――レイ・ザ・バレルのように。

「なあ、アンタもしかして――」

つい、シンが問いかけの言葉を発そうとしたその時。この場を収拾出来るであろうただ一人の人物が、つい
に降臨した。

「よ さ ん か ぁ っ!!!」
「へぶっ!!」
「んがっ!!」

麦わら一味の航海士、ナミである。互い一歩も退かずドつき合う二人に、怒声と共に拳を叩き込むと、シン
達の方に気付き声を掛けてきた。

「あら、シンも起きてたんだ。王女様は無事?」
「ああ一応……って、おう、じょ?」
「貴女、どうしてそれを……!」

驚くビビに笑いかけナミは――「や め ろ っ!!」――じたばたと、なおも掴み合おうとするルフィと
ゾロを殴り倒した。

「アラバスタ王国?」

とりあえず場を収めたナミは、彼女が――実際にはゾロだが――イガラッポイことMr.8、しかしてその
正体はアラバスタ王国衛兵隊長イガラムから、ビビの救出と護衛を依頼された事を話し出した。
それを受け、ビビは彼女の故郷がさらされつつある危機について説明した。

秘密犯罪会社バロックワークスによる、王国乗っ取りの陰謀について。

ビビは、一貫して相手の強大さを強調し、関わる事の危険性をルフィ達に訴えた。助勢を言い出された側と
しては、本来は有り得ぬ態度ではあったが、ビビからすれば、それはむしろ当然の事だった。
自分が掴んだバロックワークスのボス、Mr.0の正体を考えれば、下手に他人を巻き込む事は出来ない。
だが。

「なあ――質問があるんだけど」

ビビが話し出してから、ずっと仏頂面を決め込んでいた赤服の軽業師が、どこか暗い所のある視線で聞いて
来た。

「あ――何?」
「アンタ、さっきから聞いてれば無茶だとか何とか言ってるけど。国を守りたいのか、そうじゃないのか、
どっちなんだよ?」
「ちょっとシン」
「黙っててくれ、ナミ。今俺はこの王女さんと話してるんだ」

たしなめようとしたナミの言葉に、シンは振り返りもせず、殺気すらかすかに窺わせる声で答えた。そうし
たシンの態度にナミは「アンタその言い方は!」と激昂し掛けたが、ゾロが片手でそれを制した。
ルフィもまた、二人の会話を滅多に見せぬ真剣な顔で聞き入っていた。

「どっちって、そりゃあ守りたいに決まってるでしょう?! アラバスタは、私の生まれ故郷なのよ!!」
「だったら、何でそんな形振り構ったりするんだよ」
「形振り……」

ビビは反論の声を挙げようとしたものの――到底、口にすることが出来なかった。シンの目が、それを許さ
なかった。
その目に映っているものが、苛立ちと怒りと――悲しみと悔恨である事に気付いてしまったのだ。

「生まれ故郷だから。自分の国だから。まあ理由は――どうでも良い。けどな、守りたいって心底思うなら、
やれる事は全部やれよ。言い出してんのはこっちなんだ。俺が迷惑に思うかどうかなんてのは、俺が決める
事だ」
「でも――いくらあなた達が強くても、奴等のボスは王下七武海のクロコダイルなのよ?!!」

「あ」

直前までのシリアスげな空気もどこへやら――間の抜けた瞬間が、その場をよぎった。

「言ってんじゃねえか」

呆れたように言うゾロの言葉が、やけによく響いた。

その後――バロックワークスの情報収集担当、ハゲタカとラッコのアンラッキーコンビに顔まで覚えられ、
最早逃げる事はかなわなくなった。

「とりあえず、これで俺達四人はバロックワークスの抹殺リストに追加されたってわけだ」
「なんかぞくぞくするなー!」
「気楽だなあ、お前等」

楽しげな男たちに対し、ナミは一人ドン底に沈みこんでいた。

「……………………!!!」
「わ、私の貯金50万ベリーぐらいなら」
「ま、どっちにしろ、これでもう四の五の言ってる暇はないわけだ。もう文句はなしだぞ、王女さん」
「ええ……」

改めて確認するように、やや表情を引き締めて言うシンにビビが答えたその時

「ご安心なされいっ!!」

イガラムが来て――しまった。

「大丈夫、私に策がある……」
「イガラム……!! その格好は?!」
「うはーっ! オッサンそれ受けるぞ絶対!!」
「もう、バカばっかり……」

恐らくは、ビビの変装――のつもりなのだろう。はなはだ微妙な格好をしたイガラムが4体の粗末な人形を
抱えて立っていた。
彼の策とは、すなわち、彼が囮としてビビとシン達四人を装い、永久指針で一路アラバスタへ向かいバロック
ワークスの追っ手を引きつけ、その間にビビを連れた麦わら一味は通常航路でアラバスタへ、と言うものだった。

「では王女。過酷な旅になるかと思いますが、道中気をつけて」
「ええ、あなたも」

やがて、港でビビと握手を交わしたイガラムは、一人船で出帆して行った。

「行っちまった。最後までおもしろいオッサンだったなー」
「あれで結構頼りになるの」

皆も自身の出航の用意をと、踵を返したその時――

  ド ォ ン ッ

イガラムの乗った船が向かったその沖で、突如起こった爆発が、辺りの空気を震わせた。

「まさか……もう追っ手が」

呆然と炎に照らされる海面を見詰めるビビを他所に、シン達は行動を開始していた。

「立派だった!」
「おいナミ、ログは!」
「だ、大丈夫! もうたまってる!」
「王女さんはこっちだ船を出す。ルフィはサンジ達を頼む」
「ビビ、早く来て! 今私達まで見つかったら全て水の泡よ!」

シンとナミが促す中、ビビは唇を噛み締めていた。その口の端から流れる血を見て、ナミは痛感した。

――この娘、強い……!

「大丈夫!!! あんたをちゃんと、アラバスタ王国へ送り届ける!!!」
「行こうぜ、二人とも」
「ええ……!」

急を告げるウィスキーピーク。炎が照らす海面に背を向けて、シンは船に向けて歩き出した。
燃える海のその向こう、アラバスタ王国に待ち構えているだろう、まだ見ぬ――しかし、彼には馴染みの悪夢に
対する、宣戦布告を胸に秘めて。

今度こそ、守ってみせると。

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