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機動海賊ONE PIECE Destiny 601氏_第27話

Last-modified: 2008-01-28 (月) 00:04:58

機動海賊 ONE PIECE Destiny 第27回
「逃げろーっ!!」

 

 ナノハナの市場を、麦わら帽子の若者が駆け抜ける。その横では、アラバスタの民族衣装の下から
赤服を覗かせつつ同じように走る若者――麦わら海賊団の軽業師、アスカ・シンの姿があった。
 背後からは、マスケット銃を手にした海兵が多数追いかけてくる。そんな中、麦わらの男、ルフィ
はシンにさも楽しくてたまらないと言う笑顔を向けた。

 

「おうシン! お前も海軍に見つかったのか?!」
「いやまあ……見つかったって言うかなんていうか」

 

 痴漢と言う叫び声につい反応し、その場にいた一番怪しそうな大男に飛び蹴りを食らわせてみたら、
それは自分を捕まえる罠――より正確にはその予行演習だったとか。
 あまりの唐突な事態に誰もが錯乱し、ナタルなどは「君、ちょっとそこに座れ」と言い出し説教を
始め、自分もそれにつられてつい彼女の前に正座して説教を受けてしまったとか。
 フレイと言う伍長が「何時までそうしてるんですか? アタシは見てて面白いから良いですけど」
と言ったのにようやくそのアホな状況に気づいて逃げ出したとか。

 

 口にするのは流石にはばかられるよなあ、と。シンは言葉を濁すばかりだった。

 

「いやー、まさか煙のオッサンがこっちに来てたとはなー!」
「あー、そっか。ナタルさんが来てればそりゃああの大佐もいるか」
「ナタル? ナタルって誰だ?」
「ほら、ローグタウンで港に来てたあの人だよ」
「あー、あのおっかねえ目ぇした!」
「そうそう……いやーホント怖いんだ、あの人」

 

 慌てているのか暢気なのか、ルフィとシンはそんな事を話ながら市場を駆け抜ける。
 とりあえず、二人とも「シンがルフィを抱えて剃で逃げる」と言う選択肢が浮かんでいない辺り、
もしかしたら慌てていたのかも知れない。
 もっとも、ルフィの場合は素でそうした発想を浮かばせない男ではあったが。

 

「聞こえているぞ! 赤服のシン!!」
「げっ! ナ、ナタルさん?!」
「おー来た来たぁ!!!」
「喜んでる場合かーッ!!!」

 

 そこでいい加減に気づいた。剃使えば良いじゃんかと。咄嗟にルフィの首根っこを引っつかみ、掛
け声と共に瞬間的な加速でその場を離脱する。

 

「ええい待たんかーッ!!」

 
 

 

 ルフィ以外の誰一人として楽しめなかった追いかけっこは、どうにかシン達の勝利に終わった。
 無論、船に戻った直後、二人揃ってナミの鉄拳制裁を食らったのは、言うまでもない。

 

「アンタ達ねえ、少しは自分の立場ってもんを自覚なさい!」
「面目ない」
「ごめんなさい」

 

 ナミの前に正座し、はれ上がった顔を下げる二人だった。
 因みに、シンはこの日二回目の正座であった。
 ビビは汗をたらしながらナミをとりなしているが、他の男連中は、呆れた顔で眺めるばかりだった。
 メリー号は今、ナノハナを離れ、やや沖合いへと出ていた。
 ビビの方針に従い、船はこのまま一旦沖合いを回ってからレジスタンスの本拠地の近くに向かう予
定となっていた。
 まずは、レジスタンス達のリーダーに会い、交渉によって暴走を抑止しよう、と言うのだ。
 果たして、その暇はあるのか、むしろ、なるたけ早くバロックワークス、およびクロコダイルを倒
すべきではないのか。そんな風にシンには思っていたのだが、しかし、ここはビビの意思が尊重され
るべきかとも思われたので、とりあえず黙っていた。
 何より、彼女はまだ信じているのだ。アラバスタの民、彼等は同胞であり、きっと、話し合えば理
解は可能な筈だと。
 CE世界での止まぬ紛争の只中を兵士として潜り抜けたシンからすれば、それはいささか甘い認識
であると思えなくもない。ないのだが、しかし同時に、その、愚直とすら言ってしまえるだろう考え
は、たやすく否定出来ぬものでもあった。
 その為に、彼女は自分の命だろうが投げ打ってみせるつもりだと言う事ぐらい、シンでも理解は出
来からだ。
 それに。いざとなれば、自分達が戦えば良い。そんな風に、思っていた。

 

「ちょっとシン! アンタ人の話聞いてんの?!」
「へ? あ、いや聞いてます聞いてます」
「何で敬語になんだよお前は」
「いやあ……だってホラ、恐いじゃん?」

 

 呆れたようなゾロのツッコミに、ばつの悪そうな顔で応えると、更なるナミの鉄拳が降り注ぐ。

 

「そうポンポン殴るなよ! バカになったらどーすんだよ!!」
「アンタは既にじゅーぶんバカよ!!」
「そうだ! 手前ぇナミさんに口応えするたあどういう了見だ、ああ?!」
「お前は出てくんな! ややこしいだろうが!!」
「いやあ、楽しそうで良いなあ」
「「「何処がじゃあ!!!」」」

 

 突如割り込んできた声に、ナミ、サンジ、シンの三人が振り向けば、そこには。

 
 
 

「あ、こりゃあお取り込み中に失礼」

 

 船べりにしゃがみ込む、見慣れぬ男の姿があった。オレンジ色の帽子をかぶり、そばかすが目立つ
顔、上半身は裸で、下げた頭越しに見える背中には、何処かの海賊団の旗印らしい刺青が見て取れた。

 

「なっ?! こいつ何時の間に?!!」
「エース! エースじゃねえか!!」

 

 身構えたゾロを押しのけるように、ルフィがその男に近づいた。

 

「ようルフィ。元気そうで何よりだ」
「何だよ、お前の知り合いか?」
「おう、エースは俺の兄貴なんだ!」
「お前、兄弟いたのか?」

 

 ゾロやサンジによる驚きをよそに、ルフィは嬉しげにエースについて説明した。
 まだフーシャ村で暮らしていた、やんちゃな子供だった頃、エースにはまるで敵わなかった事や、
エースもまた海賊である事など。

 

「今なら俺はエースにだって負けねえけどな!」
「誰が誰に勝てるって? ったく……まあ、元気そうでなによりだ」

 

 苦笑したエースは皆に向き直り、丁寧に頭を下げた。

 

「いつもウチの弟がお世話に。まあ、こんなヤツだけど、みなさんよろしくお願いします」
「いやまったく」
「うわ、何て礼儀正しいんだ」

 

 エースの挨拶に、ウソップが言わずもがなの事を言い、シンはルフィとはかけ離れたその態度に驚愕
した。
 そうした、ある意味失礼極まりない反応も意に介す事なく、エースはにやりと笑った。

 

「ルフィ、お前、ウチの『白ひげ海賊団』に来ねェか? もちろん、仲間も一緒に」
「いやだ」
「あー、だろうな。言ってみただけだ」

 

 勧誘の言葉を間髪入れず拒否したルフィにも、楽しげに笑ってみせた。
 エースの用件と言うのは、簡単なものだった。何なのかは解らないが、一見すると何も書いてないよ
うにしか見えない紙切れを、ルフィに渡しに来たと言うのだ。
 そもそもエースは、一味の中で仲間殺しと言う大罪を犯した男追っている最中で、たまさかルフィの
噂を聞きつけ、近場だったので寄ってみたのだそうだ。

 

「出来の悪い弟を持つと……兄貴は心配なんだ。おめぇらもこいつにゃ手ぇ焼くだろうが、よろしく頼
むよ」

 
 
 

 そう、笑って言うエースの表情と言葉は、確かにルフィを気遣う心が、強く感じて取れた。

 

「次に会う時は、海賊の高みだ!」

 

 だからなのだろう。ルフィも、エースの言葉に無言で、しかし、しっかりと肯いてみせた。

 

「と……いけねえ。忘れる所だった。ええと、『赤服のシン』ってのは……?」
「ああ、俺だけど」
「へえ。良い目してんだな……アンタにも、渡すもんがあるんだ」
「俺に?」

 

 エースは背負ったリュックから小さな箱を取り出し、シンに放って渡した。

 

「お? 何だそりゃ」
「さあ……ええと?」
「まあ、開けてみりゃ解るって言ってたよ。誰から預かったかは、秘密にしてくれって事だった」
「秘密?」
「ああ、いずれ、時が来れば解る、だとさ……じゃあ、俺はそろそろ行くわ」

 

 そう言うと、エースは引き止める声にも振り向かず、ただ手を振って自分の船へと乗り込んで行った。
 おそらく、街でエースを見かけたのだろう、バロックワークスの配下ビリオンズが阻止しようとする
のもあっさりと火拳で撃退し、エースは去って行った。

 

 

「ウソよ……ウソ! あんな常識ある人がルフィのお兄さんな訳ない!!」
「俺ぁてっきりルフィに輪を掛けた身勝手野郎かと」
「……弟思いの良いヤツだ!」
「兄弟って素敵なんだな!」
「わからねえもんだな……海って不思議だ」
「ちょっと皆……」

 

 皆めいめいに好き勝手きわまりない事を口にする。

 

「で、シン。それ何が入ってんだ?」
「ん? ああ……」

 

 エースの見事な戦いぶりに、つい中を確かめる事も忘れていたのを思い出し、ルフィの言葉に、シン
は改めてエースから受け取った箱の蓋を開けてみた。そこには。

 

「これは……?!」

 
 
 

「お、おいシン?!」

 

 船べりに駆け寄り、シンはすでに遠く水平線の彼方まで去ったエースの船影を目で追った。

 

「あん? どうしたんだ?」
「さあ? 急にあんななっちまった」

 

 ゾロとルフィの言葉も、シンの耳には入っていなかった。そんな余裕もなかったのだ。何故、一体誰
がエースに「これ」を手渡したのか、何故、一体どうして「これ」がこの世界にあるのか、それだけに
頭を占められていたからだ。

 

 エースに渡された箱――その中にあったのは、間違いなく、フェイスの徽章、そのものだった。

 

To be continued...

 

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