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機動海賊ONE PIECE Destiny 601氏_第36話

Last-modified: 2012-08-07 (火) 18:06:29

英雄と信じられていた人物の策謀と、不審の的であった王族の捨て身の行動によるその
打破――ともすれば、そこに住む者たちの意気を根こそぎ破壊しかねないその事実は、し
かし、当の国王自身による叱咤により、再建へのばねとなった。
 そのたくましさを、今ウソップとサンジは、目の当たりにしていた。

「あんだけの事があったのに、たいしたもんだなあ、この国は」
「王女がかわいいからな」
「関係あんのかそれ」

 つい先日の戦いで破壊された市街地は、すでに再建が始まっていた。
 各民家や商家は基本的にその家の者によって修繕が行われているが、母子家庭等人手が
不足している場合には、周囲の家の者が積極的に手伝い、また市内を巡回する王国軍兵士
もそうした家々への手伝いを惜しまず働いていた。
 商家の軒先には臨時の天幕が広げられ、格安で、あるいは無料で、物資の提供、炊き出
しさえ行われている。
 ついでに言うなら、海軍本部の将兵も行き来しているのだが、彼らはむしろ、この街の
中で浮いていさえいた。
 ウソップとサンジは、いまだ賞金もかからず手配書も出回っていないので、彼らと出く
わしてもある程度はシラを切ってしまえば良い。

 あくまでも、「ウソップとサンジは」である。
 だから、もちろんのこと――

「次はこの樽の上で逆立ちしながらのお手玉だ、見てろよー」
「「よし、ちょっと待てそこの800万ベリー」」

 ルフィに比べれば小額とは言え、紛う事なき賞金首「赤服のシン」こと、アスカ・シン
はその限りではない。

「なんだよ、俺はいまこの子たちに芸を」
「だから、少しは自分の立場ってもんを理解しろよこのアホは」
「ナミがいたらこの場がまず血の海になってたろうな」

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 数分後、子供たちの親がめいめいに子供の面倒を見ていたシンに例を述べ、子供たちを
引き取っていった。
「ったく、お前は手配書まで出回ってるんだから、ちったあ考えろ」
「どーも実感わかないんだよなあ」
「あのおっかねえ海軍少佐に追いかけられててまだ足りねえのか」

 三人連れ立って王宮へ向かうと、丁度海兵が「麦わら一味を引き渡せ」と衛士隊長であ
るチャカに詰め寄っているところだった。

「ほれ見ろ。アレに出くわすと面倒だぞ」
「解った解った……んじゃ、俺は先行ってるな」

 剃で一人姿を消したシンをよそに、二人は、知らぬ存ぜぬを通すチャカと挨拶を交わし
海兵の隣を通り過ぎて行った。

「その者たちがここにいると言う証拠は?!」

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 シンたちが戻ると、一行に割り当てられた部屋では、三日ぶりに目を覚ましたルフィが
空腹を訴えていた。

「三日……15食も食いそこねた!!」
「何で食事換算なのよ」
「それも一日五食計算だぞ」

 あきれるシンたちの脇では――

「あゾロ! お前また修行してたな! 駄目だって言っただろ!!」
「良いじゃねえか、なまっちまうんだよ」
「それと包帯! まだ取っちゃ駄目だって言ったろ!」
「動きずれえんだよ、アレ」

 重傷もかまわずまったく普段どおりに過ごすゾロに、船医であるチョッパーが文句を
言っていた。

「あっちもあっちで……」
「お前もだぞシン!!」
「うぇ、お、俺?」
「お前だって、全身の細かい血管やら内臓やら、あちこちボロボロだったんだぞ! まっ
たく、一体どうやったらあんな風になるんだか」
「おや、船長さんがお目覚めかい?」
ルフィが目覚めたことで一気に喧騒を増した室内に、女装したイガラムにしか見えない
人物が入ってきた。

「ちくわのおっさん?! 生きてたのか!!」
「まさかホントにそういう趣味が?!!」
「あ、テラコッタさんはイガラムの奥さんなのよ」
「似たもの夫婦にもほどがあんぞ……」

 テラコッタによれば、ルフィの目覚めを待って、宴会が催されることになっていたのだ
そうだ。
 つまり、今夜にもその宴会が開かれるということだ。

「おばちゃん、俺は三日分は食うぞ!」
「任せときな、若いもんの胃袋にゃ負けないよ!! 腕によりかけて作ってやるから、思
う存分食いな!!」

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 そしてその夜――アルバーナ王宮の大広間では、国王親子、重臣一同、および、麦わら
海賊団一味全員集まっての会食が開かれた。
 もっとも、「会食」などと言うさも上品げな言葉に似合いそうな空気など、ほんの数秒
ももちはしなかったのだが。
 他人の皿であろうがかまわず手を――文字通り――伸ばすルフィ、それに業を煮やし、
自分の皿にこっそり大量のタバスコを仕込むウソップ、ルフィの真似をしようとしてたし
なめられるチョッパー、調理の方法や材料などを聞くサンジなどなど、船での食事になれ
ているビビ以外は、誰もが戸惑う光景が展開されていた。

「なんと品のない……」
「この大広間での晩餐はもっと静かなものであるべきなのに……」

 室内に立ち控える儀仗兵たちも、そのあまりに野放図、あまりに野蛮、あまりに下品な
光景に眉をしかめ、つい、彼らの立場からすれば漏らしてはならぬ感想を漏らしてしまっ
た。
 だが。
 野放図で、野蛮で、下品で、しかし同時に、喜びと、生命力と、笑いに満ちたその食卓
は、たちまちのうちに、彼らをも巻き込んだ盛大な宴へと変化していく。
 歌と、踊りと、冗談と、笑いと――雨と共に失われていたものが、戻ってきたのだった。

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 宴の後、イガラム、ビビ、国王コブラを交えた一味の面々は、大浴場へと案内された。
 その豪勢な浴場のつくりは、皆を感心させずにはおかぬだけのものだった。
 ルフィ、ウソップ、チョッパーの三人がはしゃぎまわり、ゾロは湯船で船をこぎ始め、
そして。

「で、女湯はどっちなんだよ、おい」
「教えるかっ!!!」

 サンジがイガラムに女湯の方向を聞いて怒鳴られ――

「あの壁の向こうだ!」
「おいコラ国王てめえ!!!」

 コブラが誇らしげに女湯との間仕切り壁を指差し、イガラムに怒鳴られた。
 その後、皆で女湯をのぞき、ナミの幸せパンチ――代金10万ベリー――を食らったり、
その際間違って女湯側に落っこちたシンがビビによって殴り飛ばされたりなどがあった。
 やがて、喧騒が収まってから、コブラがぽつりとこぼした。

「……ありがとう」
「「「「エロオヤジ」」」」
「そっちじゃないわ!!」

 起き上がったコブラは、浴場の床に手をつき、深々と頭をたれて見せた。

「国をだよ」
「おいおい、いいのかよアンタ……国王がそんなまねして」
 その姿に、真っ先に反応したのは、覗き騒ぎにも参加していなかったゾロだった。
「これは……大事件ですぞ、一国の王が頭を下げるだなどと」
「イガラムよ、権威とは、衣の上から着るものだ。だが、ここは風呂場。裸の王などいるもの
か。私は一人の父として、この土地に住む民として、心より礼を言いたい――ありがとう」

 その姿に対し、ルフィは、ただその白い歯を見せ、笑ってみせるばかりだった。

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 ルフィの目覚めは、そのまま、彼らの別れの時の到来でもある。
 一味が今なおアラバスタにとどまっていたのは、一重に船長であるルフィが目覚めぬま
まだったからに他ならない。
 その、ルフィが目を覚ました。で、あるならば。
「今夜?!」
「まあ、俺も妥当だと思う。長居する理由がねえからな」

 ルフィが驚くように言うのに、ゾロが肯いてみせた。

「海軍の動きも気になる所だしなあ……おいシン、その辺なんか聞いてねえか?」
「ああ。昼間芸見せてる時とかに耳に入ったんだけどな、今アラバスタには、スモーカー以外
にもう一人大佐が来てるらしくてな」
「海軍大佐がもう一人? 誰よ一体」
「黒檻、とか言ってたかな。まあ、ともかくそっちの兵隊はアルバーナには来てないらしい。
となれば」
「なるほど……おいルフィ、お前が決めろよ」
「よし、じゃあもう一回アラバスタ料理食ったら行こう!」
「「「「すぐ行くんだよバカ!!!」」」」

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「あの、少佐……?」

 高速フリゲート艦ドミニオン、その、船尾楼にある会議室で、不機嫌をにじませた表情の上
司に、おずおずとフレイは声を掛けた。
 こういう表情の時には、成る丈なら話しかけない方が良いのは彼女も知っているのだが、今
後の行動方針を決めようと言う会議の場では、そうもいかない。

「とりあえず、お腹立ちなのは解りますけど……一応、会議中ですから、ホラ」
「解っている」
「やはり……お受けにはなられない、と」

 困ったような表情でつるりと頭をなぜるキャノンに、ナタルはため息を一つ漏らした。

「ああ。とてもではないがね。手柄を上げなかった、とは私も言わん。だが、それが到底昇進
に繋がるほどのものでないことは、自覚している。結局、バロックワークスの主要メンバーに
ついて我々は何もしていないに等しいのだから」
「大佐らは、結局お受けになられるご様子ですが」
「地位を力と考えておられるのだろう。それが、彼らを追うのに妥当な力であると」
「……少佐は、違うんですか」
「そう、だな。確かに、それは一つの考え方と言うのは私にも解るよ、フレイ。しかし、まあ
そうだな。それが私の考えかと言われれば――違う」
「なら、一体どうなされるんですか」

割って入ったキャノンに視線を移し、ナタルは続けた。
「地位は必要だろう。だが、それを得るのに、相応しい筋道を立てずにおくというのは、私に
とっては肯んじ得ない。大佐らのように、それをまげても彼らを追う為の地位を、と言うほど
地位に重きを置かない」
「ならば、何を?」
「決まっている。諸君だ。私と、諸君とが一つの力を為すこと。それこそが、軍と言う形での
最良にして最高の力のあり方だと、私は信じている」
「うっわ、真顔で言ったわこの人」
「何かね、伍長」
「いえ、何でも」

 そっぽを向いて舌を出すフレイに苦笑し、ナタルは改めて机の上に広げられた3通の手配書
に視線を落とした。

「まあ、当座は大佐らと別行動で、彼らを追跡……と言いたい所だが、恐らく、何らかの任務
に一度割り当てられるだろう」
「懲罰、と言うところですか」
「諸君の経歴には傷とはならん。あくまでも、私だけの問題だ」
「今更気にする者はこの船には乗っておりません。しかし」

 キャノンも、フレイも手配書に視線を向けた。

「えっらい大事になっちゃいましたねえ……まあ、七武海の一角が落ちたとなれば、仕方ない
かもですけど」

 モンキー・D・ルフィ、一億ベリー。
 ロロノア・ゾロ、6千万ベリー。
 アスカ・シン、5千800万ベリー。

 船員総額で、すでに2億以上――ルーキーの船としては、破格の賞金が、そこには記されて
いた。

To be continued...

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