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第22話〜約束〜

Last-modified: 2013-04-22 (月) 18:52:13

「なあ、世界は俺がMSに乗ることを望んでると思うんだ」
「どうしたんです少佐? 寝言ですか?」
俺とフレイが訓練に行こうとしたら、少佐に呼び止められ、何だか戯言を聞かされた。
「いやな、だって俺だけ仲間外れって酷くないか?」
「そう言われましても、どうやって参加を許可してもらいます?」
「そりゃあ…………俺が寂しがってるから?」
「……それで言ってみましょうか?」
「いい、遠慮する」
そんな顔されてもな……俺とキラさんだって、少佐には参加してもらった方が良いんだけど、
仮にもM1はオーブ軍の最高の軍事機密。おいそれとは他所に見せるわけには行かない。
それがオーブ製の戦艦アークエンジェルのクルーでもね。
俺達がフラガ少佐は、近い内にオーブに寝返るから大丈夫、なんて言っても誰も信じないだろ? 
これでも連合の英雄だし、今頃連合はこの人専用のストライカーパック、ガンバレルストライカーを
作ってるんだぜ。俺やフレイとは立場も格も違う。
俺の場合はオーブ国民で、かつコーディネイターだと言うこと。正直、連合に居る動機は少ない。
俺もアラスカ到着後はオーブに帰る気だし、オーブでも、その目論見で居るはず。
また、何より俺の戦闘技術はオーブが今、一番欲しているものだ。
そしてフレイの場合はキラさんのゴリ押しがあった所為。本人は何も言わないが、そうとう無理したはず。
あと、打算的な理由として彼女がバクゥのパイロットとして経験があったこと。
今のところ、オーブでは仮想敵国として、ザフトを最大のものとして置いてある。建前とは別に連合とは
裏で取引してるくらいだし、実際に攻めてくる可能性を問われたら、ほとんどの人がザフトと答える。
そんな訳で俺達と違って、少佐にはM1に触らせる理由が無い以上、オーブの訓練に参加させるわけには
行かなかった。
「ねえ、モビルス~ツゥ~」
「フレイの真似しないで下さい。気色悪いです」

第22話~~約束

「本日まで、ありがとうございました!」
オーブ軍の敬礼を受け、敬礼を返す。一応は俺に出来る事は終った。
明後日にはオーブを発つ。明日は出港の準備があるから訓練は出来ない。
「さて、行こうか」
「うん」
俺とフレイは荷物を取りに行くため、一旦宿舎に戻った。
今夜はアスカ家で宿泊することになっている。
「ねえ、アンタとシンの関係って、やっぱり秘密?」
「ああ、俺の出生に関することで、調べるのを手伝ってもらったんだよ。それ以上は秘密」
「出生?…」
それ以上は言わなかった。キラさんの両親とは、他のみんなと日にちをずらして面会した。
キラさんと…今のシン・アスカと一緒に。
俺は彼等に打ち明けた。自分の異常性が気になって色々と調べたって。その調べる最中に知り合い、
協力してくれたのが、稀代の天才?シン・アスカだという事にした。
その方が、どうせウズミの耳に入るんだし、俺達の関係の不自然さを誤魔化しやすい。
そして、貴方方が本当の両親では無いと気付いたと……
かなり驚かれたが、それでも俺は彼等に育ててくれた感謝の言葉を告げた。キラ・ヤマトが言いたかった
ことを。彼の代わりに……
ずっとキラさんは上手く言えなかったらしい。まあ、あの人は喋るの苦手…っていうより、口下手。
上手く伝えられない人だから。
だから、俺がそう提案して、実行した後、随分と感謝された。
そして、そのお礼がこれ。俺を自分の家に招待する事。
俺達をモルゲンレーテの敷地から出すなんて、かなり強引な手を使ったんだろう。
フレイも同行することになったのは、自然の成り行き、正確に言えば、許可したオーブの上層部が、
彼女もだと勘違いをしたから。まあ、今までずっと一緒だったんだし、勘違いするのも無理は無い。
でも……
「はあぁ……」
「どうしたの? 溜息ついて?」
フレイは悪くない。ただ、マユを挟んで川の字になって寝るという当初の予定が潰れたのは痛かった。

「どうだった?」
「懐かしい……本当に」
マユはフレイと一緒に寝ることになって、マユの部屋に行った。普段は全然使っていない部屋で、
今頃もう寝てる。
そして、俺は自分の部屋に……今はキラさんが使っているけど、変わらない風景。
今日、ここで、一緒に夕食を食べ、話して、お風呂に入って……マユはフレイと入ったけど。
やはり、フレイは連れてくるべきじゃ無かった。
……でも俺は、この家に帰ってきたんだ。
「明後日、もう明日か……やっぱりオーブを出るんだね」
「出たくは無いけどね……仕方ないさ」
なにしろアークエンジェルは連合にアラスカまで来いと命令を受けた軍艦だ。それを拒否する理由が
無い。これから待ち受ける出来事を話したとしても誰も信じないだろう。
万が一、信じても、今度はオーブの立場が危うくなる。
つまり、何が何でもアラスカには行かなくてはならない。
不安材料は山ほどある。すでに情報交換も終わり、キラさんが経験してきたことも詳しく聞いた。
まずは、オーブを出たら待ち構えているであろう1人のヤマト隊はともかく、3人のジュール隊は厄介。
キラさんの見てきた事を総合すると、かなり手強い相手だと思う。
「参った。アスランの能力で撹乱させる予定だったのに、まさか団結するなんて」
「悪い事は出来ないって見本だね」
「そうは言ってもさ、あそこまで酷くなるなんて、思ってもいなかったんだよ」
「うん。何か不自然だと思ったんだ。てっきり髪の毛かと思ってたんだけど、冷静に考えてみれば
 言動がおかしくなってる」
「まあ、その兆候はあったんだけどね」
「うん。だから、すぐには気付かなかった」
「おまけに、アイツ等を突破しても、今度はアラスカか……どうなるやら」
「なんだか、自分は無事に辿り着くって決まった言い方だね。それに…」
「ん? まあ、手強いけど、アスランが使い物にならないからな。フレイには気をつけさせる」
「本当に分かってる?」
「トールの代わりにフレイがか……絶対にさせない。約束する」
「……うん。信じる。でもそれだけじゃ無いよ」
「なに?」
「言ったよね。僕がアスランの自爆でやられた事」
「ああ、目が覚めたら何故かプラントに居たってやつ?」
「そう。まあ、フリーダムを手に入れられるチャンスだけど、ラクスまでオマケで付いてくる諸刃の剣
 ……聖剣伝説は伊達じゃ無いよ」
「たしかに聖剣って言えば両刃だけど……でも、正直いらない。フリーダムも俺には性に合わないし」
「でも、この後もストライクってのは正直言ってキツイと思うんだよね」
たしかに、俺の今後の目標をオーブ防衛を優先すると、ストライクではキツイ。
「でもさ、フリーダムどころか、デスティニーやストライクフリーダムが有っても、俺達だけで
 オーブを守りきるなんて不可能さ」
「まあね……でも、これ以上オーブ軍を強くするのも、現状じゃ無理だし」
「当然だな。そんなことより、先の見える政治家が必要だ」
「……シンは、やっぱり、あの時は連合に降伏した方が良かったって思ってる?」
「他に手は無い。ザフトに戦力が残っていたら話は別だが、あの時はザフトと組むことを匂わせても
 一笑にされるのがオチだ。まあ、だからこそ、ああも強引に攻めてきたんだろうが……どのみち
 ウズミじゃダメだね」
「……アスハじゃ無いんだ?」
そう。確かに俺は今までカガリもウズミも一緒にアスハと呼んでいた。何故なら区別する必要が、
無かったから。
「もしかして、期待してる?」
それに対する返答は保留。
「………会ったか?」
「うん。……あんなに違和感が無い相手と再会したのは初めてだった」
「違和感が無い?」
「うん。オーブには僕の知り合いが多い。そして、みんな変わった。例えばアマギ一尉。
 彼は、自分がカガリと一緒にオーブの惨状を招いたって後悔してるイメージが僕には強いけど、
 ここでは、オーブの政策に何の疑問も感じてない」
「なるほどね……カガリは?」
「彼女は、すでに後悔の時期を終えて、何を成すべきか、一生懸命考えてる。一緒なんだ」
「そうか……言われてみれば……じゃあ、決まりだな」
「ん?」
「俺はカガリの味方をする。先の事は分からないけど、当面はな」
「……そうだね。で、具体的には?」
「アラスカで、サイクロプスを起動させない。変な事にならなければ俺達はアラスカに取り残される
 予定だ。
 多分、ストライクのパイロットは少佐だった事にされ、俺はMS無しでアラスカに残される。
 そこで、戦闘が始ると同時に、サイクロプスの起動装置を破壊する」

無茶な作戦にキラさんも唖然としてる。
「出来るの? そんな事が?」
「俺をただのパイロットと思うなよ」
「……さすが、アスカ隊の隊長様だね」
からかうような口調。でも、信頼が見て取れた。まあ、実際にゲリラとやりあっていたら、MSの
パイロットだけをやっていれば良いってものじゃ無い。
文字通りゲリラ戦にも長けていなければならなかった。故に施設を防衛するために、施設の破壊方法を
学ばなければならない。
どちらかと言えば華々しくMSで戦うより、泥に汚れて銃やナイフを手にする事が多いくらいだ。
「とにかく。それでザフトの地上軍は壊滅的打撃を防げる。そうすればオーブへの強引な進攻も
 出来なくなる。カガリがどう動くにせよ、まずは時間が欲しいからな。
 そして、アークエンジェルごと、オーブに逃げる。そのまま亡命」
「う~ん、アークエンジェルの撤退が一番の難題かな」
「そうだな……でも、やるしか無い」
「そうだね……オーブまで逃げてくれれば、僕にも何とか出来ると思う」
「その時は頼りにする」
「ねえ、でも、それだったらフレイは、どうなるの?」
「もちろん誘う。アイツの戦闘力は当てに出来る。バジルール中尉は……難しいかな」
「そう……フレイが、君の誘いを断らない自信があるんだね」
「多分だけどな。それに断ったとしても、アイツは大丈夫だよ。俺が鍛えたんだ。パイロットとして
 だけじゃ無い。戦術も軍人の心構えもね。今のアイツなら、アスカ隊に入れても問題ない」
これは、俺なりの最大の賛辞だった。
「そうじゃ無くて……」
「なんだ? フレイがクルーゼに連れ去られる心配なんじゃ無いの? はっきり言ってくれないと」
「……君はフレイの事……どう思ってるの?」
「は?」
「フレイは……多分、君の事が……」
ああ、そういうことか……
「俺が好きなのは……一番会いたいのはステラだ」
「ステラって……」
「娘じゃ無く・・・・・・今はロドニアに居るはずなんだ」
「あ…!…そうか…」
「今は無理だ。手が出せない……でも、何とかしたいんだ」
ステラの件は未だに妙案が浮かばない。でも諦める気は無かった。
そのことに比べればアラスカから無事に戻ってくるなど、やり方が見える分、楽な作業だ。
「僕にも、手伝わせてくれる?」
「ああ、その時は必ず頼む。多分、アンタしか頼れない」
「うん……じゃあ、フレイは…」
「どうだろ?」
「へ?」
「だってフレイ、いい女だし…」
そう。フレイはいい女だ。隙があればやりたいと思うのも普通だろ?
「ちょ、ちょっと! さっきまで良い話してたのに…」
「それはそれ、これはこれ」
「うわ、最悪……だ、だったら僕、ステラのこと…………う」
「どうした?」
キラさんはステラのことを見捨てるなんて言えない人だと分かってる。
「分かってくれ、俺、ここに来て一度もしてないし……溜まってるんだ」
「そ、そんなの僕だって!…って、僕と違って、マユちゃんがくっ付いてない分、自分で処理すれば
 いいじゃないか!」
「自分でって……これ、キラさんの身体だぞ?」
「…………そうだった」
「まあ、アンタは自分で処理しようとした事が無いから気付かないのも無理はないけど」
俺はやろうとして出来なかった。つーか無理に決まってるだろ。
「うん。言われてみれば最初はトイレに行くのにも抵抗が……」
「あ! そう言えば、今思いついたんだけど?」
「何を?」
「入れ替わったのが俺じゃ無く、アスランだったら、どうなってたかな?」
「や、やめてよね……」
「じょ、冗談だよ。そんなに落ち込まなくても…」
「冗談って言われても、すでに想像しちゃったよ。僕の身体に入ったアスランの反応」
……うん。どう考えても最悪の行動しか取りそうに無い。
「ああ……悪かった」
「だったら、フレイ」
「いや、それは無理」
フレイ、少佐の邪魔さえ入らなければ、今頃は……
「だったら……」
「ん?」
「だったら、僕はマユちゃんと!」
「ちょっと待て!」
「僕の幸せプランは、フレイをお嫁さんにして、マユちゃんを嫁に行かせないことなんだ!」
「ちょっ! 何? その妙案!」
「それが、叶わないなら……」
ヤバイ! 目が逝ってる!……マユ道に反する行為だが、今のキラさんに理性は無い!
しまった! その前のアスランの話で、頭が変な方に飛んでる!?
「わ、わかった……フレイには絶対に手を出さない」
「……本当に?」
「本当だ」
我慢だ。ここは我慢するしか無い!
「約束できる?」
「約束しよう」
「絶対の絶対に?」
「絶対の絶対だ……って、しつこいぞ」
「……だって、シンの理性を信じろなんて」
「あのな……」
まあ、この人は俺の交遊関係を知ってるし、信じろと言う方が無理か……俺だったら信じないし。
「約束するよ。ただし……」
「ただし?」
「アラスカに行って、ここに戻ってくるまでだ。そこから先は保障しない。アンタがフレイの事を本気で
 好きだったら、俺より先に落せ」
「そ、それは……」
「まさか、アイツほど良い女、他の奴が黙って見てると思うか? グズグズしてたら、俺が手を
 出さなくても、他の奴が口説く……まさか、前のフレイやラクスさんみたいに向うから声を
 かけて来るまで待つつもりか?」
「わ、分かった……それで良い。戻ってきたら、今度こそ……」
「じゃあ、約束だな」
「うん……ありがと。戻ってきた時に……必ず…だから」
「分かってる。彼女には手を出さないし、無事に連れて帰る」
まあ、約束したからには仕方が無い。我慢して……でもオーブに戻った後は知らんぞ。

続く

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