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第09話〜特訓開始!〜

Last-modified: 2011-12-07 (水) 13:12:29

「まだ来る気か!」
「ボウズ、限界だ!」
「大尉は戻って!」
「だが!」
「ストライクなら大丈夫です! それにメビウスのバッテリー、限界でしょ!?」
「……スマン! だが、ボウズも時間が無いぞ!」
「わかってます」
俺は近付いてくるMSを次々と落としながら、メネラオスの姿を確認した。
「健在か……アークエンジェルを逃がしたら、クルーゼもこれ以上の攻撃はしてこないはずだけど…」
クルーゼは猪武者では無い。
獲物を逃がしたら代わりの獲物で溜飲を下げるなんて馬鹿な真似をしないと
思いたいが……それに提督も離脱を開始している。
「キラ・ヤマト! フェイズスリー突破だ! 早く戻れ!」
「了か…チッ! あれはデュエルか!?」
砲撃を潜り抜けたMSが、一瞬何なのか悩んだが、追加装甲を施したデュエルだった。
「無理です! 少尉! 今戻れば…」
アイツ……大気圏を突破しながら攻撃する気だ!
「キラ・ヤマト!…」
「キラ君!」
1人で突っ込んで来るなんて……コイツは危険だ! 
自分だけは安全な場所で周りに死ねと言う男では無いが、ある意味、ソッチより始末が悪い。
自分の命も、周りの命も軽く見てるんだから!
「危ないんだよ! アンタはさ!」
アークエンジェルと距離が開くのを感じながら、俺はイザークに集中する。
ここで仕留めて…
「なっ!……オーバーヒート!? ストライクって、こんなに脆いのか!?」
インパルスだったら容易かった大気圏突破もストライクではそうも行かないようだった。
俺は各所で危険を知らせるランプが付くのを見て、戦慄していた。

第9話~~特訓開始!

「あ…気付いた?」
「……フレイ?……そうか…あの後…」
大気圏を突破しながらの戦闘はストライクに大きな負担を強いた。
試作機でもデュエルの方が、突破能力に関しては不備が無かったようだ。
整備の腕の差か? やはり、MSの管理と運営能力に関してはザフトの方がまだ上だから無理もない。
とにかく戦闘中に降下コースを外れた俺は、何とかデュエルを退けたが、コクピット内の冷却が不完全で
熱で気を失いかけた時、進路にアークエンジェルが来てくれた。
何とかアークエンジェルに辿り着いた俺は、格納庫まで入った記憶はあるが、そこから途切れている。
おそらく、そこで気を失ったんだ。
「アークエンジェルが来てくれなかったら……そう言えばここは? アラスカって事は無いんだろ?」
「うん。アフリカ…って言ってた」
「……参ったな……じゃあ、俺の所為で」
「気にしないで……それより体の方は?」
「大丈夫。まだ熱っぽいけど、軽い脱水症状だ……水、もらえるかな?」
「うん……じゃあ、私、お医者さん呼んでくる」
フレイはそう言うと、俺に水を差し出し、部屋を出て行った。
俺は水を飲んで一息つくと、頭の中を整理する。
冷却機能は弱いながらも機能してくれた。体の方は暫く休めば問題ない。
気になることといえばフレイのあの目だ。
思わず苦笑してしまう。それにハルバートン提督は無事なのか? 
俺は歴史を変える事が出来たのか? 
そして、もう一点。
「アフリカって言えば……居るんだよな」
俺にとって頼れる上官であり、おそらくは俺から夢を奪った張本人。
「副指令……今は砂漠の虎か」
「キラ」
その時、フレイが軍医を連れて戻ってきた。
診断の結果は予想通り軽い脱水症状。今日一日安静を言い渡された。
「何かあったら遠慮なく言ってね」
「……ああ。そうするよ」
俺は彼女の瞳の奥の色に気付いていた。
おそらく、彼女が俺に何を望んでいるかも……
「健気なもんだ」
「え?」
「いや、何でも無い」

何時の間にか少尉になっていた俺は個室を与えられた。その部屋で1日中、ボーっと身体を休める。
まあ、そうなってくると暇で、どうしても副指令の事を考えてしまう。
あの人が、俺の上官になって…少し違うな。俺がキラさんたちの事を知るに連れて、ある疑問が生じた。
あのブレイク・ザ・ワールドの後、ラクスさんが命を狙われたことを知らされた。
黒幕はデュランダル議長だって思われてるけど、俺にはそうとは思えなかった。
贔屓目かも知れないけど、あの人がそんな馬鹿な真似をするとは思えなかった。
キラさんは状況から怪しいと思ったそうだけど、そもそも、その状況からして可笑しい。
襲撃した側はコーディネイターの特殊部隊。
それに対し、された側の陣容はメインのラクスさんは民間人。
銃の訓練はしたことが無い運動神経だけの素人キラさん。
かつて勇名を馳せたとは言え、重傷を負い、義手に義足、おまけに距離感を掴みにくい隻眼の副指令。
元軍人とは言え、ナチュラルの技術将校だった
マリュー・ラミアス(白兵戦は強い事は分かったが、それでも…)あとは孤児院の子供が数名。
これで、襲撃された側は1名も負傷者が出なかったなどありえるだろうか?
しかも、襲撃したタイミングは津波で今までの家が壊され、“たまたま”MSを隠していた家で就寝
していた時。
俺は何者かの作為を感じたが、ラクスさんを見てると、そんな謀略を使う人には見えない。
なにしろ議長職を面倒くさがってる人だ。
それより子供の面倒を見ていたい人だし。
おまけにキラさんも自分から何かする人では無い。悪く言えば主体性に欠ける。
だが、新しく結成された体制側で精力的に活動してる人がいた。
その人物は、まるで以前から草案があったとしか思えない素早さで新体制を整備していった。
それがアンドリュー・バルトフェルド。
ネオザフトの副指令であり、
ネオザフトを理想の軍隊とまで呼ばれる規律と精神で各地の混乱を沈めた凄腕。
そして、襲撃犯をデュランダルの手下だと最初に言った人物。
そして、それ以前はラクスを立てザフトを脱走し、3隻同盟を結成させた。
多分、その時から新体制のプランがあったんじゃ無いだろうか? 
しかし、何らかの理由でラクスさんは新議長になる事を拒否。
そして、次の機会を待っていた。それがブレイク・ザ・ワールドを契機に起きた戦争。
睡眠を挟みながら、そんなことを考えてるとフレイが部屋に入ってきた。
考えを中断された俺は彼女を見つめる。
そうだな。副指令の事を考えるのは何時でも出来る。それより今は彼女の望みを適えよう。
「あ、あの……」
「フレイは、こんな事は不慣れだろうから辛いと思うけど、覚悟は出来てる?」
彼女の肩に手を置き、そう語りかける。彼女は顔を真っ赤にしながら頷いた。
難儀なものだな。嫌いなコーディネイターに縋るしか無いなんて……
「え、えっとね……私、初めてだから優しく…」
「悪いけど、出来ない相談だな。俺は荒っぽいので有名だ」
俺は、そう言いながら緊張から身体を硬くした彼女の手を取った。

「お、お願い……少し…休ませて…」
俺はグッタリと倒れ付すフレイを見下ろし、溜息を吐いた。
やれやれ、本気で体力の無いお嬢さんだ。
病み上がりの俺でも、まだ元気一杯だぞ。
「キ、キラ!? 何してんだよ?」
声に振り返ると慌てた表情のトールがいた。まあ、確かにショッキングな光景だろう。
「ん? トール? お前こそ?」
「俺は休憩だよ。交代時間。そっちは……なんでフレイが床で寝てるんだ!?」
「ああ、実はな……」
言って良いものか少し悩んだが、ある程度はみんなにも知ってもらってた方が良いだろう。
「フレイがパイロットになりたいみたいだから特訓してるんだ」
「「え!?」」
ん? 今、何故かフレイまで驚いてたみたいだけど? まあ、いいや。
俺は今までの経緯を話した。俺がオーブ行きのシャトルから引き返した時、フレイがストライクで
出撃しようとしていた事。そして、その後は俺の側にいて俺の回復に手を尽くしていた事を。
「今は基礎の段階で体力作りで走らせてるんだ。ついでに俺も鍛えようかと」
「そうかぁ、なぁんだ。俺、フレイがキラに献身的な理由ってサイから乗り換えたかと思ってた」
「んな馬鹿なことあるか。俺が回復しないと教える相手がいないからだよ」
まあ、そうなったら15歳の美少女と出来るんだし、歓迎だが、世の中そんなに甘くない。
「それにしても素直じゃないよな。フレイも」
「まあ、今までコーディネイターを嫌ってたからな。素直にパイロットになりたいから教えてください
 なんて言い難いだろ…って、ああ、フレイは気にしないで。俺も気にしてないから」
「え? あ、その…」
「でも、フレイがパイロットね……意外だな」
「……そうでもないさ」
フレイには兄弟は無く、母親も早くに無くしている。つまり、たった1人の肉親を先日失った。
1人残された彼女が復讐を考えても不思議では無い。
俺は彼女の瞳の奥にある色を思い出す。それは懐かしい……かつての俺と同じだったから。
俺は何故か呆然と見上げてる彼女を見る。
「今日は軽めに流すけど。明日からは本格的にいく。死ぬほど辛いから……覚悟しておけ」
俺の訓練は荒っぽいので有名だった。本来なら、もっとハードなんだけど、初日だしな。
「え?……はい」
彼女は15歳。ちょうど俺がアカデミーで強くなろうと、死に物狂いで鍛えていたときと同じ年齢だ。
俺はフレイ・アルスターに、昔の俺…シン・アスカを重ねていた。

「初めまして、シンくん。私はご両親と一緒に仕事をしてるエリカ・シモンズよ。よろしく」
「どうも…初めまして」
初めてじゃないんだけど……まあ、今の僕はシンなんだから初めてだよね。
そんな訳で、僕はモルゲンレーテに呼ばれていた。理由は僕が作ったゲーム。
「貴方が作ったというシミュレーター、貴方にとってはゲームね。見せてもらったわ」
失敗だったな……考えてみれば、あんな大掛かりなもの家の人に見つからないはずが無いよね。
「正直言って驚きだわ……君って天才ね」
当然だね。でも、天才なんて言われても嬉しくないけどさ。
「それで、折り入って相談…と言うより、お願いがあるんだけど…」
聞かなくても検討はつくんだけど……要するにさ、僕にOS作れって言いたいんだろうな。
黙って聞いてると、やはり予想通り。しかもオマケ付き。
「MSのOS開発にMS戦の技術指導!?」
「そうよ。貴方の作った作品はMSのOSに通じるものがあるの。それに貴方の戦闘…まあ、これは
 ゲームなんだけどね…素晴らしいものよ。正直言って参考にはならないけど、貴方と対戦すれば
 嫌でも強くなれるでしょうね」
何考えてんだか……まあ、見る目はあるし、気持もわかるけど……でも正直気が進まない。
確かにオーブの現状を考えれば、欲しいものはナチュラルでも使えるOSと実戦経験のあるパイロット、
この2つだ。だけど……
「その…僕はただの学生なんです」
だってさ、そんな事してたらマユちゃんと一緒の時間が……その、僕は良いんだ。僕はね。
でも、マユちゃんが寂しがるよね。ただでさえ両親は忙しいのに……
「でもね。貴方が協力してくれたら、お父さんも、お母さんも、家族との時間が取れるようになるの」
…………って、事はだよ。なかなか家に帰ってこないのはMS開発に関ってたんだ?
「そうしたら妹さんも、寂しい思いをしなくて済むのよ」
………い、いや…別に僕がいればマユちゃんは平気だよ。うん。
「そう言われても……」
しつこく食い下がってくるシモンズ主任。
そう言えば、以前もアークエンジェルの修理を引き換えに僕にOS作成をさせたんだっけ……
人を利用するのが好きだよな。
「もちろん謝礼は出すわよ」
見くびらないで欲しいな。僕がお金なんかで動くわけないじゃない。
「どうしてもダメ?」
今度は泣き落とし? そんな態度取られても……
「入ります」
そう言って、部屋に入ってきたのは……誰?……そ、そうだ。
シンの、つまりは僕の両親だ。
「どうなってますか?」
「それが……」
シモンズ主任は困った顔で説明してる。
でもね、なんと言っても僕はヤダよ。
そ、それにねちゃんとした理由もあるんだ。
僕は、本当のシン・アスカじゃ無いから、何かやってこの世界に変な影響を与えたくない。
それに、僕は何時元の世界に戻るか分からないんだ。
そうしたら残されたシンが困るじゃないか。
うん。そうなんだよ……別に今思いついたんじゃ無いよ。
「なあ、シン…」
そう言いながら、お父さんが僕の前に座る。隣にはお母さんが。
何と言ってもダメだよ。
マユちゃんとの時間…じゃ無く、友達のシンのためなんだから!
もし、お父さんが、OS開発や技術指導を勧めたら、僕に人殺しの道具を作れなんて酷いよ! 
そう叫んで泣こう。うん完璧だ。
「もしシンがOS開発をしてくれたら、マユに尊敬されるぞ」
「―っ!」
「何と言っても大の大人でも不可能な事をするんだからな」
「それにね、貴方がMS戦の指導なんてしたら、お母さんは勿論、マユにとっても自慢のお兄ちゃんね。
 ほら、パイロットって格好良いでしょ?」
「やります! 任せてください!」
そ、そうだよ。考えてみればマユちゃんに格好良いとこ…じゃ無くて……そうだ! 
マユちゃんをそれにオーブを守らなきゃ! 
前から考えてたじゃないか、訓練の事とか! そうだよ!
「あ、あの……息子さんって…その…シス…」
「ああ、お気になさらずに」
「昔っから言う事聞かせるには、マユの名前だせば一発ですから」

……あれ? 昔からって、僕がアナタ方の息子になったのは、つい最近なんですが?

続く

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